二組の双子と、【プロローグ】


 大抵の物語は「いつも通り」が壊れることで始まる。それがものすごく気付きやすい時もあれば全く気づかない時もある。俺の場合は前者だ。

 まずは自己紹介でもしよう。俺の名前は五六暉仁。よく「名前なんて読むの?」と聞かれるから初めに言っておく。名字がフノボリで名前がテルトだ。俺には弟が三人いる。一人目の弟は俺と同じ学年だ。お互い早生まれと遅生まれだったから双子ではないが同じ学年になった。名前は五六照史。アキトと読む。あとの二人の弟たちは正真正銘本物の双子だ。一卵性双生児だから見た目もそっくり。流石にずっと家族をやっているから区別くらいつくが、パッと見ただけでは兄弟である俺でも間違えかねない。名前は五六邑と五六津だ。それぞれユウ、シンと読む。これだけ読むのに苦労しそうな名前ばかりつける親の名前は一と花だ。ご想像通りハジメとハナである。別にこの名前が嫌いではないがもっと読みやすい漢字もあっただろうにと思ってしまうことはどうか許してほしい。まだ年齢を紹介していなかったな。俺と照史は高校二年生。下二人は中学一年生だ。次が一番大事なことだが、俺ら兄弟には 霊感がある
 俺の場合、「霊感」というものを生まれながら持っていた、わけではない。それでも十七年生きてきた人生のうち半分以上の年月を霊感を持って過ごした。霊感に目覚めたのはいつだったか。小学生になるかならないかくらいの頃だったはず。それくらいしか覚えていない。夏だったような気もするし冬だったような気もする。でも霊感が出現した時のことではっきりと覚えていることがある。絶対に忘れることのできない、記憶。どんなに忘れようとしたってきっと忘れない。記憶喪失になってもすぐに思い出すんじゃないかなって思うような、そんな、記憶。俺が________。
 俺と違って、弟たちは生まれた時から霊感を持っていたらしい。ただ照史(あきと)の霊感は微弱で姿を見ることができてもかなり薄いらしい。霊感が薄いということは危険を察知しにくいということだ。今でもその霊感の少なさは変わらない。俺の霊感が出現する前は照史がしょっちゅう全く霊感のない俺に危ない場所を教えてくれていたが今は立場が逆になっている。別に残念ではない。むしろ頼ってもらえるというのは嬉しいことだ。
 双子は照史の逆でべらっぽうに霊感が強い。だからと言って安心はできない。むしろより危険かもしれない。幽霊であっても濃くはっきりと見えるため人間との区別がつかない時があるのだ。特に邑(ゆう)は区別がものすごく下手な為、間違って取り憑かれかける、なんてことも結構ある。今のところ取り憑かれたことはないが。
 心配事は多いが、まあびっくりするくらいここまでは順調に何事もなく過ごしていたのだ。その日まで。
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