誰も知らない今までとこれから


「また、大活躍だったね。クロ」

 学校からの帰り道、友達と別れて歩き出したところこでキャメルは笑って声をかけてきた。
 クロコダイルはまだ大きさに馴れていなくてちょっと首は痛いが褒められる事への嬉しさの方が上回っているようだ。胸を張ってそうだろうと頷く。
 今回の事件はもしかしたら友達や自分が死んでいたかもしれないと考えるとクロコダイルも内心肝が冷えていたが敵をやっつけたという事件解決への安堵と達成感が恐怖を上回っていた。
 

「それよりアニキはガマンしろよな。部屋の菓子もオバケが出した菓子も食べやがって! 家で沢山食べてるだろ」
「あんなにいっぱいは食べたことないもの。どれもとっても甘くて美味しかったよ」
「⋯⋯足りないのか?」

 思い出しただけで歯車に駆け巡るお菓子の味に無い瞳を輝かせていると下からクロコダイルが小さく呟いた。

「やっぱり母さんにくらい言おうかな⋯⋯」
「駄目だよ」

 小さな頃は無かった革手袋が人差し指を立てて歯車の、おそらく口の部分に当てられる。
 見上げていた歯車に今は見下されているが見えないお化けには影をかけることもできない。

「皆には、ないしょ。私はクロだけのお兄ちゃんだもの。⋯⋯クロしかいらないよ」


 見えなくなったあとが面倒だしね。という気持ちも1ミリくらいあるものの吐き出す言葉は真実だ。
 キャメルはもっとこのヘンテコな町で弟と遊んで、巫山戯て、戯れたい。そこに余計なものはいらないし邪魔だ。

 そんな少し危うげな思考回路などクロコダイルは知らないので仮初の兄の言葉に照れながら

「ワガママだな⋯⋯わかったよ」

 と、返事した。
 季節は秋。
 来年も、再来年もこうして家路を一緒に歩いているかは誰も知らない。
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