初めてのお仕事 side黒服


「あっ!黒服さーん!」
「おや?あなたはあの時の…」
情報を集める為に街に出ると元気な声がかかる。以前知り合った少女、梔子ユメだ。そして、先日の件でお礼をしたいと言ってきた
(お礼ですか。断るのは失礼ですかね?)
どうしたものかと考えていると一軒の店を見つけた
「あの店で奢っていただけませんか?」

カフェ

流石に学生に高いものを頼むのは気が引けるのでコーヒー1杯だけにした。飲んでる間、ユメさんは学校について話す。『ホシノちゃん』とやらの話ばかり…どうやらその子以外に生徒はいないようだ
(借金で廃校間近だと聞いていましたがそれ程とは。その『ホシノちゃん』とやらが強い神秘を持っているといいのですが。…しかし、そんな状況なのに本当によく楽しそうに笑いますね)
もしや返済の目処が立ったのかと思い聞いてみたら項垂れてしまった。申し訳ない事をした。どうやら仕事は一つを除いて全滅したらしい。その一つも街案内というらしいが連絡が…

(はて?街案内…?……!!)
私は慌てて自分の出した依頼を確認する。すると一件だけ応募があったのだ。念の為、連絡すると彼女のが鳴った
「申し訳ありませんでした」
失態だ。まさか本当に応募してくる者がいたとは。いや、例えそう思っていたとしても依頼した者の責任者として管理すべきだったのだ。応募してくれた者を待たせたなど自らの不手際を恥じる。しかし、当の本人は
「わっ!すごい偶然もあるんですね!」
全く気にしていなかった。だからといって失態が無くなるわけではないが、心が軽くなる。恥を見せたがわざわざ応募してくれたのだ。ちゃんと対応しなければならない
「改めて私の依頼を受けてくれますか?」
彼女は笑顔で了承してくれた


依頼を通して気付いた事がある。地元とはいえかなりアビドスの情報(正確性はともかく)を持っている事、やはり神秘を宿しているからだろうかぽやぽやした雰囲気ながらも意外と戦える事、そして、何故か笑顔でいる事だ。戦闘が終わった後、自分が銃弾で怪我を負っているのに私が無事である事にホッとしたように笑うのが不思議だった。…まぁ、最初に仕事だと言ったのに『黒服さんと探索するの楽しくて忘れてた』と言った時にはいわゆる馬鹿という人ではないかと思いました

とにかく、彼女は思ったより使える。荒事が得意ではない私にとってそういった者がいるのは利点だ。それに彼女はアビドスの生徒、何かに使えるかもしれない。そういった理由で彼女にビジネスパートナーにならないか提案したのだ。提案した時に一瞬変な顔をしたのは気になりますが…。やはり借金返済の目処が立たないからかこちらの提案に乗ってくれました

帰路の途中、彼女の言った言葉を思い出す
「楽しくて…ですか」
利用されてるとは思わずそんな事を言い出すのはやはり相当お人好しだ。そんな性格なら契約を結べば裏切る事はないでしょう
コーヒーを飲んだ店の前を通った時、彼女の笑顔を思い出す

…私も楽しいと思ったのは否定しませんが
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