天使様とオモテとウラ


⚠️シスターkis♀ちゃん概念に狂わされたので書いただけの、全てが雑なゆるふわssですので読む時は頭を空っぽにして現実から離れてお読みください。





ここは、とある王国の辺境の村。
辺り一帯では一番大きく、けれど王都に比べると格段に長閑な、肉製品や乳製品などを名物とする農村。
昼御飯を食べ終わって、子供達は外に駆け出した。
「仕事終わったし遊ぼうよ!」
「ごめんね、先に行っててくれる?妹の面倒見なきゃいけなくて……」
「じゃあ僕も手伝う!」
「俺も!」
「私も!」
「良いの?!ありがとう」
はしゃいでいた子供達が一人の少女を気遣う、そんな微笑ましい光景に、周囲の村人達は畑仕事の手を一旦止める。
互いを思いやるやり取りを暖かい目で眺めていた彼らだったが、その内一人が思い出したように声を上げた。
「ああ、そう言えばそろそろなくなるところじゃないか? 修道院の食料」
「そうだったな、じゃあ今日持ってくか」
「え? なら俺が行くよ」
「そんな! 俺にも手伝わせろよ」
「いやいや、ここは僕が」
「ハァ、お前ら若いもんには余裕が足りん。……儂が行く」
「おい、爺さんもどうせ『天使様』目当てだろ! カミさんに叱られろ!」
「……必死すぎないか、君達……」
修道院の話に入った途端に睨み合い出した彼らに、この中で唯一人新婚である村に滞在中の行商人だけが呆れたようなツッコミを入れる。
辺境にあるこの村の名物は四つある。
二つは先程も挙げた肉製品、乳製品。また、村中で栽培されている小麦。
そしてもう一つは、教会。
正確には、『天使様』────そこにいる一人のシスターだ。


「おーい、シェリーさん!」
声を掛けると、背を向けていた彼女は振り返った。金細工のように長い睫毛に縁取られた透き通った碧色の双眸がこちらを映す。
美しいシスターだった。
紺色のシスター服をきっちり着込んでいるもののウィンプルは被っておらず、絹糸を思わせるサラサラとした髪は剥き出しになっている。長いプラチナブロンドの毛先は瞳と同じ色に染まり、白皙の美貌は絵画で見る天使を想起させた。
シェリー、と名乗るそのシスターは、こんな辺境でシスターをやっている理由が分からないほど麗しい容姿で常に優しげに微笑んでおり、誰にでも人当たりが柔らかいことから、村人から『天使様』と呼ばれていた。
「──どうか致しましたか?」
「あー、えっと、その、そろそろ食料が」
「あら、ありがとうございます」
箒をそっと横に置き、食料を受け取る彼女の楚々とした佇まいにまだ若い村人は赤面する。
食料を見て、今夜は少し豪勢にしましょうか、と微笑んだ彼女は若者を見て小首を傾げた。
「大丈夫ですか? お怪我をなされているようですが……」
「っ?! い、いえ、少々転びまして!」
「そうなんですか」
そう言うこともあるのですね、と頷いたシスターを見て、彼は胸を撫で下ろす。危ないところだった。彼女のところに行く役割を巡って大喧嘩が起こったなんてバレてしまったら、心優しい彼女はきっと悲しんでしまう。
「あ、神父様にもお伝えしておきますね」
そう言って立ち去るのを引き留めることもできず、初心な若者は立ち去る彼女の後ろ姿にただただ見惚れていた。


子供達と目線を合わせるために屈んで話をしている、優しげな容貌の男がいた。
東洋の血を引いているらしく、珍しい黒髪は頭の頂点に双葉のような毛がぴょこんと飛び出して、少年と言った方がしっくりくる幼げな顔立ちの愛嬌を増していた。
この村の教会に、シスターと共に最近赴任してきた年若い神父。
シェリー、もしくは天使様と呼ばれているシスターとは違い、彼は神父様とだけ呼ばれている。
けれどそれは決して、彼が村の住人から嫌われていると言う訳ではない。彼は村の面々にシスターとは違う好かれ方をしており──具体的に言えば、年嵩の面々には孫のような目で見られ、子供達には遊び相手として認識されていた。
年頃の男女が部屋は離れているとしても同居しているというのに、二人は一切そんな雰囲気を感じさせず、もしかすると訳ありの姉弟なのかもしれない、と村の住人には思われていた。
神父は、海のように深い青の瞳で子供一人一人の顔を真っ直ぐと見つめ、真剣な顔で念を押した。
「と言うわけで、あそこは底なし沼だから近寄らないように! 分かったか?」
「「「わかったー!」」」
良い返事だな、と子供達の頭を順番に撫で、彼は相好を崩した。
「神父様」
「うわっ! ……っと、何か?」
次の瞬間、唐突に背後に現れたシスターに、神父は驚いて声を上げ、それから振り返る。
「こちら、村の方から頂きました」
差し出された食料の数々にああ、と頷いて彼は薄ら顔を綻ばせた。
「今夜は少し気合を入れて作りますね?」
「え、本当?! ……お、俺達は神に仕える身ですから、程々に!」
「はいはい、分かりましたよ」
一瞬声を跳ねさせた神父を見て、微笑ましげにクスクスと笑うシスター。一緒になって子供達も笑う。
それが恥ずかしかったのか神父はこほんと咳払いをして、
「さて、ところで君達、さっき注意したことは──」
「神父様照れてるー」
「照れてるー」
「ちょっと静かにしようか!!」
きゃー、と声を立てて子供達が散らばる。
はぁ、とこめかみを抑えた神父を見て、シスターはこそり、口元を抑えて吹き出した。


「今の所、全く怪しまれることはない」
「成程、ならば、その内もう何人か」
──深夜、煌々と輝く黄色の月がほぼ頂点へと移動して家々を照らし出している時刻。
村の付近の森の中で、見るからに怪しい三人の人間が寄り集まって会話していた。
その内の二人は、村に滞在していた新婚の行商人夫婦の姿もあった。
彼らは、隣国の諜報員。
その任務はこの国を調べることで、もう一人は彼らと国の橋渡し役だった。
森の中で話すのも当然。こんなところを誰かに見られたら任務の全ては無駄に終わってしまう。
けれど、そんな彼らの背後から──
「──何を、話されていらっしゃるのですか?」
「「「ッ?!」」」
涼やかな声が響いて、一人の女が姿を現した。
月光を反射して煌めく金青の髪、真珠のように白く輝く肌。全身を紺色に統一したその服装は、あの村に来てからほぼ毎日のように目にした色彩。
「隠れての逢引きかと思っておりましたが、それにしてはもう一人いらっしゃいましたし、○○○から来たとは? 貴方達は中央から来たとおっしゃっていましたが」
行商人の夫婦ともう一人────隣国の諜報員の雰囲気が変わる。
消すしかない、と眼に戦闘の意思を宿した彼らを前にして、シスターが俯いた。
観念したか、と思った瞬間──くらり、眩暈がして彼らは頽れる。
「──ああ良かった、ちゃんと効いてたか」
俯いていたシスターが顔を上げた。
その顔に、覚悟を決めた悲壮感はなく、ただただ背筋が凍えるようなうつくしい笑みが浮かんでいた。
夫婦のふりをしていた二人は殆ど毎日目にしていた、見慣れた笑み。
お人好しだと決め付けて、碌に疑問を抱いたこともなかったそれに、けれど初めて彼らは胸中で問いを叫ぶ。
──お前は何者だ、と。


教会にて、神父は書類と睨み合っていた。
幼さを残す大きな紺碧の瞳は今は鋭く細められ、眉間に皺を寄せたその姿は子供達には決して見せないものだ。
けれど、次の瞬間、彼は更に顔を顰める。
「──あらヨイチ、こんな夜更けに何をしているの? 夜遊びは身体に良くなくてよ?」
「煩いな」
夜でも目立つ金青の髪の女は、煽るように口元に手を当てて笑う。
それから、早く補給しろ、と不躾に銀のチェーンに繋がれたロザリオを差し出した。
「あ、お前また痺れ薬無駄にしたな?」
「必要に駆られてだ」
早くしろ、と言い放つ彼女の、昼とは打って変わった傲慢な態度にヨイチと呼ばれた神父は思い切り舌打ちする。それもまた、彼が子供には見せないと決めている一面だ。
「ったく、それで遺体の方は? ちゃんと始末してるよな?」
「随分と偉そうな口を聞けるようになったのねぇ。安心しろヨイチ、奴らと密会相手、三人揃って情報は全部吐かせたし裏も取れてる。それでしっかりあの沼に沈めてきた。あれは楽で良いな」
「あー……一応子供達には伝えといたけど見つかる可能性だってあるんだからな? 俺は子供殺すの嫌だから徹底しとけよ? クソ皇帝」
「はいはい。相変わらずお人好しだな、ブルーロックの申し子は」
「うるせー舐めんな。本当のお人好しだったらこんな状況、とっくに自死してるだろ」
まるでそれが取るに足らない日常の一部分であるかのように気軽に交わされる物騒な会話。
けれど、確かにそれは彼らの日常だった。


「ぎょーしょーにんのお兄さん達、行っちゃったねー」
「悲しい?」
「うん、あの人達優しかったから。どこに行ったのか天使様なら分かる?」
「……天使様、と呼ばれるのは少しむず痒いのだけど……多分きっと、私達にはとてもいけないような遠くね」
「そうなの? そこって楽しい?」
「さぁねぇ、行ってみたことがないから分からないわ」
「天使様にもわかんないことってあるんだね!」
無邪気な子供の声に、美しいシスターは苦笑した。


蛇足の補足
ミヒャエル→Michael→ミシェル→シェリーとかいう手抜きの偽名。
悪巧みするならやっぱりただのシスターじゃダメだよなと思ったのではい、ファンタジーで良くある王家の影!やらせてもらいました!
多分kis♀ちゃんは今は滅んだ帝国の血筋で、ノア(影のNo.1、まとめ役)に拾われた感じです。
能力的には新人の中では抜きん出て優秀な十一人(新世代世界十一傑の面々)に入る位優秀なんだけど上の人に素性がバレるとちょい不味いので辺境の任務ばっかやってる。
期待の新人潔君とは一度始末した人数で負けてからめちゃくちゃ仲が悪いよ!でも多分肉体関係はあるよ!爛れてやがるぜ!
ブルーロックは孤児を集めた影養成機関で、元々はとあるイカれた元影によるたった一人のノアのコピーをつくるための場所だったが色々あって潔の他にも何人か卒業生がいます。
ようミヒャってロレンツォに声かけられてここではシェリーで通してるって手を振り払うシーンを書きたかったけど文才がなかった。
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