│マッシュ・バーンデッドとプリンセス次兄│


ある日のアドラ寮
マッシュとフィンの部屋

フィン
「マッシュくーん、そろそろみんなで図書室に……」

マッシュ(頭にライオンが齧り付いている)
「あ、いま行くよ。フィンくん」

フィン
「うわー!?サバンナでよく見るやつ!?」

レモン
「キャー!マッシュくんがワイルドな姿にィ!!これもいい!!」

ドット
「どうしたッレモンちゃ……流血試合だー!」

ランス
「これは……昔アンナといっしょにみたミュージカルの!?」

マッシュ
「どうしたの、みんな。顔が真っ青だよ」(ファーン)

フィン
「君は全身真っ赤だけどね!?その、その頭のライオンなに、本物……!?」

マッシュ
「ああ、このコ?このコは僕の二番目の兄ちゃん――――ファーミン兄ちゃんの友達だよ。
兄ちゃんからの手紙を持ってきてくれたんだ」

フィン
「伝書鳩ならぬ伝書ライオン!?」

ドット
「いやいや、ちょっと待てよ。たしか、前にお前の兄貴の手紙運んできたやつ、そいつたしかネズミじゃなかったか」

マッシュ
「うん。そのコにも齧られた」

ランス
「その前はたしかウサギさんだったな?」

マッシュ
「うん。そのコにも齧られた」

レモン
「一週間前はワンちゃんで、10日前はヤギで、15日前はワシで、23日前はコツメカワウソでしたね」

マッシュ
「うん。みんなに齧られた」

フィン
「のきなみ齧られとる。一回くらい自衛しようよ」

ランス
「しかし妙だな。
普通、手紙を運ぶ動物はフクロウさんが一般的だ。
お前の兄はずいぶんバラバラだが、なにか理由でもあるのか?」

マッシュ
「実は、ファーミン兄ちゃんはすごく動物に好かれやすいんだ。
じいちゃんがいうには、赤ん坊の頃から兄ちゃんのとこには森の動物達がいっぱい遊びにきてたんだって。
いまもよく、公園でイヌやらネコやらハトやらをハーメルンしてるよ。
そんで動物たちは兄ちゃんにベタ甘でしてな。みんな率先して手伝いを申し出る。
とくに手紙配達は兄ちゃんから直接"お願い"される人気のお手伝いで、順番に回さないとすねて大変なことになるんだよ」

レモン
「わぁ……かわいい。なんだかメルヘンですね!」

ドット
(はしゃぐレモンちゃん、かンわえ~。ちゅきで~す)

マッシュ
「ほんとに兄ちゃんの動物人気はすごいんだ。
兄ちゃんが森の中を歩いてると、リスからどんぐりをプレゼントされたり、ワニから魚をプレゼントされたり、パンダから笹をプレゼントされたりなんてしょっちゅうだったよ。
じいちゃんは、兄ちゃんが将来ちゃんと人間社会に馴染めるかどうか心配してたけど、いちおう人間の友達はいるみたい」

フィン
(森の生態系が気になりすぎてあとの話が入ってこない)

マッシュ
「そんな兄ちゃんに人間の友達がつけたあだ名、
"◯゛。◯゛◯ープリンセス"」

フィン
「すごい配慮がんばってる!!」

ランス
「あだ名が何歳(いくつ)の頃についたかで善意によるものか悪意によるものか意味が変わるな」

マッシュ
「兄ちゃんの友達だから、きっと悪い人じゃないよ。
兄ちゃんが学校辞めてぶらぶらしてるの知って、仕事先とかいろいろ紹介してくれたみたいだしね。
さっきのあだ名だってファーミン兄ちゃんがイヤがったらすぐやめてくれたし」

レモン
「フフ……いいお友達なんですね」

マッシュ
「逆にデリザ兄ちゃんはしつこく"プリンセス"呼びして最終的にサンドストーム(プロレス技)喰らってた」

ドット
「……イイ(性格してる)兄貴だな」

マッシュ
「とにかく動物に好かれるファーミン兄ちゃんのおかげで、いまでもうちには動物がよく遊びに来ましてな。
犬や猫やウサギやスズメや」

ランス
(連れて行ったらアンナが喜ぶな……)
妄想アンナ
『みて、お兄ちゃん。かわいいウサギさんだよ~♡』

マッシュ
「クマやトラやハシビロコウや」

フィン・ランス
「もうマッシュくん/お前の家には遊びに行かない!!!」

マッシュ
「えっ……?」(ガーン)

妄想アンナ
『怖いよぅ、お兄ちゃん……』
ランス
「大丈夫だアンナ!お前のためなら兄ちゃんは、ゴジ◯にだって勝ってみせる!!」

マッシュ
「あばばばばばななななナゼぜぜぜぜ????」

フィン
「いやだってムリだよ!猛獣出るんでしょう!?
家の中が常時開園サファリパークなんでしょ!?」

マッシュ
「クマ太もトラ吉もずっと家にいるわけじゃないよ」

フィン
「名前つけとる!いやそれでも!」

マッシュ
「基本家にいるのはハシビロコウのドゥウムだけ」

フィン
「ペットにお兄さんの名前つけてるの!?」

マッシュ
「つけているというか、ドゥウム兄ちゃん本人だと思ってたというか……」

ドット
「え、どゆこと?それ、訊いていいやつ?」

マッシュ
「ドゥウム兄ちゃん、就職してから家を出たんだけど、それと入れ替わるようにハシビロコウが家に居着いて。
あんまり兄ちゃんに似てるもんだから、じいちゃん以外みんな兄ちゃん本人なのかと思ってた」

レモン
「お会いしたことないけれど、そんなに似てるんですか?ハシビロコウとドゥウムお義兄様」

マッシュ
「うん。ドゥウム兄ちゃんが帰ってきてハシビロコウと並んだときも気づかなかったし、なんなら本人も気づかなかった」

フィン
「せめてご本人は気づこうよ!?」

ドット
「オマエの兄ちゃんはどこに自己の軸を置いてんだ」

マッシュ
「僕らは、
"ドゥウム兄ちゃんは分身が得意だから家に残してきた僕らがさみしくないように分身一匹残していったんだ"
って思ってた。

ドゥウム兄ちゃんは、
"家を出た私が恋しくて、かわりに人形でも置いているのかと思った。
なに、鳥。これが?
……私が帰ってきてから3日、まったく動いた気配はないが"
って言ってた。

ついでにじいちゃんは、
"あんまりハシビロコウのことドゥウム、ドゥウム呼ぶもんじゃから長男が家を出てったさみしさを紛らわせようと雰囲気似てるハシビロコウをドゥウムと思い込んでたのかと……"」

ドット
「優しさゆえの相互勘違い(アンジャッシュ)」

マッシュ
「それにフィンくんたちは兄ちゃんの友達(動物たち)に襲われるかもって心配してるみたいけど、大丈夫だよ」

フィン
「なんで言い切れるの!?」

マッシュ
「どんな猛獣より僕のほうが強い」

フィン
「真理!!」

マッシュ
「だから安心して遊びに来てね。
具体的に言うと次の休暇日」

レモン
「次のお休み?なにかあるんですか?」

マッシュ
「いま届いた手紙に書いてあったんだ。
その日は兄ちゃんたち、みんな休みで家にいるんだって。
この間はタイミングが合わなくてじいちゃんにしか紹介できなかったから、あらためてみんなを紹介したくって」

レモン
「お義兄さま方勢揃い!?
これは未来の嫁としてしっかりご挨拶(外堀埋め)しなくては!」

マッシュ・ドット
「「えっ?」」

ランス
「フッ……浮かれるのはいいが、その前に試験があるのを忘れるなよ。
もし赤点を取れば、休暇が補修で潰れることになる」

マッシュ
「ハッ……!ヤッベ……!」

レモン
「大丈夫です、マッシュくん!そのためにこれからみんなで勉強するんじゃないですか!
ぜったい合格点取って、堂々とお家に凱旋しましょう。
私、(妻として)ばっちりサポートしますから!!」

ドット
「ま。しゃーねぇからつきあってやるよ。
ねんのため訊いておくがマッシュ、家族の中になんらかのアレルギー持ってる人間はいるか?
ハーブティのなかにはアレルギー物質を含むやつもあるからな。注意しとかねぇと」

ランス
「あいかわらずキャラに似合わないマメさだな。まあいい。
とりあえず、俺も人数分のアンナうちわとブロマイドを用意しておくか」

レモン
「みんなで頑張ればきっと大丈夫です。ね、マッシュくん!」

マッシュ
「……うん。ありがとう、みんな」

レモン
「ふふふ……」

ドット
「へへ……」

ランス
「フッ……」



フィン
「……」

フィン
(どうしよう……)


フィン
(どうしよう、すごくいい話にまとまろうとしてるのにマッシュくんがいまだにライ◯ンキ◯グなのが気になって話に入っていけない……
自室なのにすごいアウェイ感。
たすけて……



たすけて、マッシュくんのおじいさん!!)





――――魔法局某所

(ピーン)
レイン
「そこは俺じゃないのか!?」(ガバッ)

隠密活動中ファーミン
(ビクン!)
(うわ、なんだこいつ。こっわ)
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