第四節 心響かせろ、愛馬との凱歌


「英霊とは、今の俺達ではなく、無辜の人々による幻想とイメージが混ざり合ったモノなんよ。……だからまぁ、お前とウインブライトなら……そうもなるわな」

カルデアに召喚された時、ユタカさんが何処か感慨深げに溢した言葉をふと思い出す。

「ぐっ……‼︎まだまだ‼︎」
《マサミさん‼︎》
「【……しぶと過ぎるぞ】」

ジャンボナンプラーからの蹴りがモロに入り、一瞬意識が飛びかけるも、せんせの薬(宝具)が発動し、奥歯を噛み締めながら踏ん張る。

「……大丈夫、コレが俺の戦闘スタイルだし……陳宮さんに吹っ飛ばされまくった、前の高難易度イベ周回よりはマシだな、マスター」
《うっ……そろそろいけますか?》
「ああ、パリス君のスキルもそろそろいけるだろ?後は……」
「【行くぞサバンナストライプ‼︎】」
「……やった」

彼等はランダムに姿を変えながら此方を攻撃してくる。硬い防御のトロイアンホース、重い攻撃のジャンボナンプラー、そして……

「【祖国の精霊達に奉る‼︎踊れサバンナストライプ‼︎】」
「ぐうっ…」

闇の方のコヤンちゃん並みに、スリップダメージ系の状態異常をばら撒くサバンナストライプが……やっと来てくれた。

「【……何が狙いで、そこまで粘る】」
「……俺は、魔術師としては音楽魔術の使い手だ。だからこそ、ブライトとの思い出をしたためた……このバラードが宝具になるのは当たり前の事でね。
……今の貴方には、音とすら認識出来てないだろうけど」

此方の声を、認識出来ないからこその立ち回り。幾重にも重なった鎧をぶち抜く……粘りに粘った果ての音楽で出来た馬上槍は今、この手に収まった。

「ブライト‼︎眉毛輝かせろ‼︎」
《アポロン様‼︎》

太陽神の眼(偽)[B+]によって、まずサバンナストライプに引き継がれていた防御強化が解除され、そして凛々しい眉毛[A]により俺の宝具威力と力(Buster)が研ぎ澄まされ……代償に、せんせとパリス君の、全ての状態異常も俺の元へ集まる。

「……この譚詩曲は、俺達の軌跡。我例えこの身が砕けようとも‼︎お前の背中は決して譲らず‼︎」
「そしてマサミと一緒なら‼︎俺に立ち塞がる障害も敵も居ない‼︎」
「「さぁ、行こう‼︎【響け、響け、俺達の栄光の歌】(ソング・オブ・ブライト)‼︎」

呪いが、火傷が、毒が、宝具によって再現された香港や中山の大歓声によって俺達の力へと書き変わり、馬上槍の輝きがどんどん増す。

「【っ…トロイアンホース‼︎】」
「「無駄だぁ‼︎‼︎」」

着弾した瞬間、大音量の譚詩曲(バラード)が響き渡り相手の体制を大きく崩し、大打撃を相手に加える。けれど

「【……よくやった、迎撃だ‼︎トロイアンホース‼︎】」
「………‼︎」

俺と同じ様に、タタラを踏みながらも堪えた彼が突進してくるが……。

「悪いね、どうしてもキミだけは自分に仕留めさせてくれって我儘言われちゃって」

すっと、人差し指で指し示した天空。既に夜も明け昇る朝日を背にして

《……【輝かしき終天の一矢】‼︎》


太陽の矢が、トロイの木馬を打ち砕いた。
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