シャルルの悲壮


『シャルルの悲壮』はカロリング物語群の伝説の一つであり、唯一シャルルマーニュが主人公の物語。若きシャルルマーニュが天使ヒミルトルーデに恋をし、まだ見習いのローランをお供にヨーロッパ中を巡り回りヒミルトルーデに愛を伝え、振られるまでの冒険話。


あらすじ
プロローグ
王子シャルルは外出中にヴァンパイアに襲われるが、そこを空から舞い降りて来た天使が退治する。その姿に見惚れたシャルルは様々な方法で天使を言いくるめて城に連れ帰った。天使は神にまだ名前を与えられていない事に気づき、シャルルは彼女をヒミルトルーデと名付けた。

一章
城の者達は彼女の品位と美貌に魅了され、王子が止ん事無き姫君を妃として連れて来たと勘違いしてお祭り騒ぎになり、一人も彼女の正体に気づかなかった。
シャルルはヒミルトルーデの目的がヴァンパイアの退治とエッツェルの宝剣の回収である事を聞き出して、その助力を申し出た。ヒミルトルーデは反対したが、王子として怪物を見過ごせない、何より命の恩を返すために手伝いたいと力説して納得させた。

二章
次の日、シャルルは騎士見習いのローランを連れてヒミルトルーデの旅について行った。旅先でよく危機に陥るが、その度にヒミルトルーデの知恵で乗り越えた。
遺跡を探索し、吸血鬼を退治し人々を助ける内に仲間が増えていった。聡明なイングランドの王子、天使の威光を見抜き敬服する大司教、シャルルを連れ戻しに来た聖剣使いの智将、魔剣と魔法の馬を持つ剣士とその妹……、ローラン一人だったお供は十二人に増え、彼等は十二勇士と名乗る様になった。

三章
シャルル達はついに吸血鬼の親玉を見つけた。ヒミルトルーデは危険だから着いてくるなと言ったが蛮勇な騎士達は聞き入れなかった。ヒミルトルーデは仕方なく十二勇士に呪いを弾く加護を与え、シャルルに魔を祓う光の力を与えた。十二勇士は吸血鬼の子たちと戦い、ヒミルトルーデとシャルルは吸血鬼の王アインナッシュと戦った。
戦いは苛烈を極めたが、アインナッシュは心を支配する魔術でシャルル達を操ろうとするも加護に弾かれ、幻覚で翻弄しようとするも知恵と勇気で破られる。不死身の命もヒミルトルーデに無効化され、シャルルの十二色に輝く光の力でアインナッシュは子諸共消し飛んだ。
しかしアインナッシュは悪霊として蘇り、全ての植物に取り憑き世界を赤く染め上げてシャルル達を呪おうとした。ヒミルトルーデはシャルル達に「目を閉じろ」と言い、月から妹を呼び出した。妹は呪いとアインナッシュの霊を全て掌に集めて月に持って帰り、世界は元に戻った。アストルフォだけは目を開けて高きを見てしまったので理性を失ってしまった。

四章
魔王アインナッシュを討伐したシャルルの名声はヨーロッパ中に広まり、崩御した父の跡を継いだシャルルはシャルルマーニュ(皇帝シャルル)と呼ばれる様になった。皇帝となったシャルルマーニュを取り込もうとした隣国のダウフェルは娘を嫁入りさせようとするが、シャルルマーニュはヒミルトルーデを隣に寄せて「彼女以外を伴侶にする気はない」と拒否し、ダウフェルは腹を立てて軍を率いて攻めて来た。
テュルパンはシャルルマーニュとヒミルトルーデが正式な夫婦ではない事に気づいてシャルルに「ヒミルトルーデ姫を妻の様に扱うならちゃんと結婚しなさい」と咎め、シャルルマーニュはこの戦争を終えたら思いを伝えようと決意する。
ダウフェル軍を追い返し、イタリアまで追いかける途中、アルプスの山奥でシャルルマーニュは奇妙な遺跡を見つけた。そこでエッツェルの霊に出会い、自身がエッツェルの末裔である事を知る。そして遺跡の最奥に刺さる朽ちた剣を引き抜くと剣に宿る軍神マルスとシャルルの光の力が混ざり合い三十の色に輝く聖剣となった。これこそがエッツェルの宝剣であると理解したシャルルは、聖剣を持ち帰りヒミルトルーデに渡した。
シャルルは「私は貴方を愛している。我が人生全てを捧げる代わりに、貴方の時間を100年だけ、私に預けてくれないか」と言った。ヒミルトルーデは「私の時間は神に委ねられており、誰かを特別に思う心を神は作らなかった。己の時間も心も無い私には加護しか与える物がない」と言った。聖剣はシャルルマーニュを主としていたので受け取る訳にはいかないと言い、ヒミルトルーデは聖剣にジュワユーズと名付け繁栄と栄光の加護を与えて返した。役目が終わったヒミルトルーデは天に帰った。

「待ってくれ!俺はまだ、アンタに何も返せていない!」
「いいや、そなたは私に名をくれた。それで充分だ」

エピローグ
聖剣ジュワユーズの威光に敵は怯み、戦争はすぐに終わった。しかしヒミルトルーデを失った悲しみは癒えなかった。国に帰ったシャルルを息子のシャルロが迎えた。シャルルは幼いシャルロを抱き抱え、聖剣を掲げて城に凱旋した。シャルルは息子に「私はヨーロッパを統一し、世界を平和にしてみせる」と言い、剣と子を強く抱きしめた。


登場人物
シャルルマーニュ
この物語の主人公(シャルルマーニュ伝説って名前なのにシャルルが主人公の作品って全然ないんだよね)。好青年として書かれている
「"寂しい"を理解できず、泣く事も震える事もできないヒミルトルーデに、寄り添ってやりたかった。俺はアイツの心に残ってやれたのかなぁ…」

ヒミルトルーデ
ヒロイン。媒体によっては精霊や魔法使いの時もあるが、主流なのは天使という事になっている。作中では冷徹なのに慈悲深い才女として書かれている

十二勇士
媒体ごとに何名か入れ替わったり省略されている。ローランとアストルフォは基本的にいる。実は十二勇士全員が出てくる二章が一番長い

アストルフォ
シャルルを守る為にあえて目を開けて周りを警戒していた
その結果、高きの魔眼を見てしまい理性が蒸発したが本人は気にしてない

アインナッシュ
この物語のラスボス。別の世界では死徒27祖と呼ばれていた。ラスボスに相応しい実力の持ち主だったが、ヒミルトルーデ一人にミンチにされた。
止めを刺す事しか出来なかったシャルルは少し拗ねた

高き朱
起動実験として呼ばれた。調整中でまだ寝ぼけているので力の制御もあまり出来ておらず、喋れない

シャルロ
最後に出てきた。作中だと母親は描かれていないが「消去法でヒロインのヒミルトルーデしかいない」派と「描写されてないだけで息子の元ネタ的にヒルデガルドがいる」派に分かれている


余談
実はこの話は実際にカールとヒミルトルーデ(アース)に死徒から助けられた吟遊詩人達が各地で誇張して語ったのが元であり、悲愛の話では無かったのだが教会が何故か厳しく取り締まり、結果『シャルルの悲壮』が残り続けた。
ヨーロッパの外に逃げた吟遊詩人がシャルルとヒミルトルーデ結ばれる話を教会から届かない所に残し、異説異伝としてヨーロッパに逆輸入される事もある。
最近ではカール大帝の妃にヒミルトルーデが存在した事が発覚したため異伝の方も少し注目され始めた

*ちなみに史実ではカール大帝はエッツェルの子孫を自称してる
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