ありきたり、でも大切なそんな日


オーブ首都のオロファト。その都市にある有名スポットに昭弘・アルトランドは待ち人待つ為にテッカ島を離れてここに居る。なんて事はない、そう所謂デートの待ち合わせだ。

アレから色々あったがようやく戦後処理に目途が付き慌ただしく悲惨な出来事は終わりを迎えて、今居るこの待ち合わせ場所ではあの戦場の喧騒とは違う人々の様々なやかましさで溢れていてた。

(……これが俺達が守ったモノか)

何処か誇らしい気持ちを抱きながらラフタを待つ。デートなどそんな余裕も相手も居なかった昭弘はこの日の為にタービンズの他の姐さん達やルナマリアやメイリン更にはアグネスからも色々なアドバンスを貰った。特にメイリンから言われた事を頭の中で思い返す……

『いいですか。ラフタさんが何を着てても「良いと思う」とか生返事で返すのだけは絶対にダメですからね。女の子のオシャレは……』

(……妙に押しが強かったがなんでだ?いやごちゃごちゃ考えても俺には分からんか)

予定の時間まではまだそこそこある。こういったのは予定より早く先に居るものだと特に言われた。当然予定より遅れるなんてのはよっぽどの事態でなければ遅れないと思うが……忙しく動き続ける人々や談笑する親子等を眺めながら昭弘はこの日までに言われた事を頭で思い返しながら待つ。因みに何処かの准将がある日妙な寒気を覚えたというのはまた別の話。

「昭弘♪」

後ろから名前を呼ばれて待っていた声の方へ振り返る。普段の動きやすさを重視していた服装から全く正反対の様な服装のラフタが居た。そして見慣れぬその姿に何処か衝撃を受けながら受け取ったアドバイスの意味を改めて思い知った。

(見慣れた服じゃないだけでこうも違うものなのか……いやだからこそか?)

「どう?」

「……あぁ、いiんん!み、見違えた」

危うく言いそうになった言葉を無理矢理修正しつつどうにか言葉を絞り出す、その言葉にどうも悪戯っぽい表情をしたラフタは昭弘の脇腹を小突きながら

「ふーん。昭弘からそんな言葉が出るって事は……そういう事かな?」

「いや、その!」

「いいのいいの。どうあれ私の為に頑張ってくれたんでしょ?さ、行こ」

昭弘の手を引きながら駆けだす満面の笑みを浮かべるラフタに奇妙な安心を覚えた昭弘達は人ごみの中へと紛れてれ二人で色々な店をめぐり続ける。

「私としてはこっちが似合いそうなんだけど……サイズの問題でダメかー」

「すまん」


「かなり甘いな……」

「クレープだもん。そっちのも一口頂戴♪」


「私はこれが可愛いと思うんだけど昭弘はどれがいい?」

「俺は……こっちだな」

時間も昼頃を過ぎ日差しを強く感じる様になったが昭弘とラフタは一度噴水がある広場のベンチに腰掛けお互いにパンフレットを眺め次の行き先を考えてた。

「んー!次は何処に行こう?」

「さっきは西館の方だったからな。今度はこっちの東館の方に……」

「ちょっとそこのお二人さん」

二人の前にカメラを片手に持った毛先が金髪の紺色、首に掛けたゴーグル、動きやすさを重視した上着とタンクトップを着た男がこちらに

「お前は、あの時の?」「……確かテッカ島の特集を組むとか言ってたフリーのジャーナリストじゃない?」

「覚えててくれて嬉しいぜ!昭弘にラフタ!」



「最近まではユーラシアの方を見て回ってんだが……一旦補給も兼ねてオーブに来たんだ。そしたらたまたま二人を見つけてんだ」

「って事はこの後またテッカ島に?」

「団長には後で俺の方から話を付けておくがそれでいいか?」

「助かる!そんじゃ決まったらこの連絡先に頼むぜ。しかし、二人共いい顔してるな……そういう関係に?」

ジェスは真っ直ぐな瞳で二人を見て二人にあるモノを悟った様に言う、昭弘は赤面しラフタは見せつける様に腕に抱きついた

「そー言う事。…どうせならこのまま一枚いいかしら?」

「いいのか!じゃ一枚……」


まだ動きが硬い昭弘と自然体で腕を組むラフタの一枚を撮り終えそのままジェスは待ち人の件を思い出し早足で二人から去っていった。そんな彼を見送った昭弘はまだ腕を組んだままのラフタに声を掛ける

「なんで撮らせたんだ?別に今じゃなくても……」

「今じゃないとダメなの!テッカ島でだと『鉄華団の一員』としてしか認識されないからダメ。もうあんたはフリーじゃない、ってアピールしておかないとまだまだあんた宛にお見合いの話が来続ける事になるの!」

そこまで言われて昭弘はようやく気が付いた。確かに鉄華団を中心にしたコンパス関係者には二人の仲は広まっているが外部にはまだ浸透していない情報ではあった。既にマシマ家からも手を回してくれてるとは言え無理に通してくる相手も居ない訳ではない、それを思えば彼のジェス・リブルを通して広めるのは有効な一手ではあるだろう。そう言い切ったラフタは少しヘソを曲げているように見える。

「……そうか、そうだな。」

「分かった?なら次の東館の方にもアクセサリーショップがあったはすだから次はそっちに行くわよ」

ベンチに置いておいた荷物を持ち直し昭弘を引っ張る様に先を行くラフタ。

ラフタをこかさない様に小走りで掛けてすぐに隣に追いついた昭弘。

最近の他の団員お見合い事情の会話する昭弘。宇宙に居るタービンズとの今後をどうするか悩むラフタの話。周りの耳に入ってくる様々な会話はありふれた日常でもあるが、二人にとっては今日が終わっても続いてくとても大切なそんな一日
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