ホワイトデーのお返しに意味を持たせた奴はまだ許せないけど。


3月14日、ホワイトデー。

「母ちゃん、姉ちゃん、これバレンタインのお返し」

少し恥ずかしそうに、息子が駄菓子をパンパンに詰めたポリ袋を渡してきた。

「おー!ありがとうな!」
「すごい…宴が出来るくらいの量だ…!」
「食べるのは1日1個だけだぞ」
「ちぇっ」
「にしても、こんな量よく買えたな?お小遣い足りたか?」
「全部ゲーセンで取ってきたのだし、あと1ヶ月貯めてたから全然残ってる」
「そっか、本当にありがとうな息子!」
「へへ…」

頭を撫でてやると、息子は照れくさそうに笑って鼻の下を指で擦る。

「そしたら俺からも、はい!まずは娘に!」

息子の後ろで待機していた旦那が、娘にピンクの可愛らしい小箱を渡した。

「可愛い!ねぇ開けてもいい?」
「どうぞどうぞ」
「………わぁ!マカロンだぁ!」

旦那が娘に送ったのは、ピンク、緑、黄色、白色のマカロンだった。

「ありがとうパパ!大事に食べるね!」
「うん!それじゃあ次はママへ!」
「おう」

あたしの両手に収まるくらいの箱を旦那から受け取る。
箱を開けると、アイシングの掛かった美味しそうなバウムクーヘンが現れた。

「今年は担当の娘達の間で話題になってるお店の物にしたんだ、試食してみたら細かく切ったニンジンが入ってて、すごく美味しかったかよ」
「そうか!食べるのが楽しみだなぁ、ありがとう!」
「……なぁ、何で父ちゃんは毎年母ちゃんにはバウムクーヘン渡すんだ?」
「あたしも気になってた!どうして?」

子供達に問われ、旦那と目を合わせる。
そして笑い合い、「内緒!」と2人で声を揃えて言った。










『エース!あの!君にキャンディを渡したのはそう言う意味じゃなくて!』
『違うエースが嫌いとかじゃないんだ!君への気持ちは君が卒業したらちゃんと言葉で伝えるって心に決めて……あ゛!!』
『〜〜〜っああもう!エース!俺は君が好きだ!卒業した後改めて言うから!今日のことはとりあえず忘れて!!』

誰かからか、自分で調べたのか、ホワイトデーのお返しの意味を知ったトレーナーさん。
休み明けにいつもの畑で落ち合った瞬間見事に自爆して、やけになって告白して、挙げ句の果てに忘れろと言って何処かへ走り去ってしまった。
残されたあたしは、1晩経っても罪悪感と羞恥心が残っていたあたしは、トレーナーさんが走って行った方を見ながら、その場にへたり込んだ。

『……忘れろって…んな無茶なこと言うなよぉ……』

頭の中でトレーナーさんの言葉がリピートされ、忘れたくても忘れられなくなり、熱くなった顔を両手で覆った。

終わり
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening