そしてキミはいなくなった


​第1話

ー璃緒の部屋ー
璃緒「ただいま」

浦山の独白
​───────ふと、写真立てに収まっているあの子とのツーショットの写真を見る。
あの日、三春は亡くなった。
……将来について語っていた次の日に、だった。

ー過去、2人の帰路

璃緒「お疲れ様ー……今日も疲れたね、三春」

三春「そうだねー……でも、夢を叶えるために弱音なんか吐いてられないよね!」

璃緒「……え、何その本の量」

三春「ふふ、これはねー……料理屋さんを開くために必要な物とか、どういうお店にするかー……とかについて書かれてる本だよ」

璃緒「ひゃー……これは本格的だね」

三春「いつかね、私の仲のいい男の子とお店を開くんだ。だから、そのために本気を出していきたいんだ」

璃緒「えー……いつの間にそんな仲のいい子がいたの?今度紹介してよ」

三春「もちろん!とってもいい子だって保証するよ」

璃緒「楽しみだなー。それに、三春の開いたレストランなんて、毎週通っちゃうよ。それこそ、お互いがおばあちゃんになるまでね」

三春「もう……来すぎだよー。……でも、そうだね……ずっと親友でいようね!」

第2話
ーその次の日ー
璃緒(次の日……あの日も、私は三春が死ぬなんて夢にも思ってなかった)

過去の璃緒「こんにちは、穂波さん。……?そっちの子は……」

過去の穂波「こんにちは、浦山さん。この人は宵崎奏って言うんだよ。今日は宵崎さんの曲作りの手伝いで出掛けてたの」

過去の璃緒「なるほど……よろしくお願いします、宵崎さん!ところで曲作りってなんですか……?」

過去の奏「こんにちは……はい、わたし達はチャットで歌を作っていまして。行き詰まっていたから、望月さんにもアイデアを頂こうかと……」

過去の璃緒「なるほど……凄いんですね……!」
過去の璃緒「……?すみません、電話が……。……え?三春が?」

第3話
過去の浦山
​───────その知らせは、何の変哲もない筈の日常に青天の霹靂として私の元にやって来た。

神室が交通事故で亡くなった……轢かれそうな子供を庇っての事だったそうだ。

昨日、ずっと親友でいようって言ったのに。
お店を開いたら毎週通うって言ったのに……何故三春は……そう考えると思考がぐるぐるしてしまった


白丸「璃緒、晩御飯何食べ……って、何考えてたんだ?」

ぼーっとしてたのに気付いて白丸が璃緒にそう問いかける。

璃緒「ああ、そんな時間か……いや、ちょっと三春が死んだ時の事をね」

白丸「……。……そうだ、璃緒」
白丸「……そうだな、続きを……。いや、辛いならいいが……」

璃緒「……うん。いいよ」

〜回想〜
過去の璃緒
​───────あの後、三春の死を受け入れられないまま無気力に家に帰ったことを、今でも覚えている。
あまりの急さに勉強も身につかず、何で三春が……とばかり考えていた。

そして葬儀式の日に出席して、白丸達に会って……ゴスペルグループへの誘いを断った。

……何もしたくなかったから

第4話
過去の璃緒
​───────
黒部や宮ケ瀬の誘いを断った後、私は学校を休む事が増えた。
三春のいない世界に意味なんてあるのか?とまで思う程に私は思い詰めていた。

そんな時……突然に私の家のチャイムが鳴った。

璃緒「……え、誰?」

えむ「こんにちわん……んん、こんにちは、璃緒ちゃん!」

璃緒「えむちゃん、か……。どうしたの?」

えむ「璃緒ちゃん、ずっと元気なかったから……心配になっちゃって……ね!」

璃緒「そっか……ありがとう」
眩しい。
いつもの笑顔がわたしに向かって放たれる……とても眩しい

えむ「ううん!友達だからね!笑顔になって欲しいんだ!」

第5話
過去のえむ「寧々ちゃん寧々ちゃーん!」

過去の寧々「どうしたのえむ……って、その人は?」

過去のえむ「あたしの友達!璃緒ちゃんだよ!」

過去の璃緒「ど、どうも……えむちゃんの友達やらせてもらってます……浦山璃緒です……」

過去の寧々「あ、いえ……。えむと一緒にショーキャストをしてる草薙寧々です……よ、よろしくお願いします……」

過去のえむ「自己紹介は済んだ?じゃあフェニラン1周しよっ!」

過去の璃緒「……えっ」

過去のえむ「璃緒ちゃんが笑顔になれるように!寧々ちゃんとあたしとの3人で!いいでしょ?」

過去の璃緒「……うっ!眩しい……まあ、いいけど……」

過去の寧々「えっと……ごめんね?」

第6話
過去の璃緒
​───────
それから私は、えむちゃんと草薙さんと一緒に色んな所を回った。
ジェットコースターやコーヒーカップ、お化け屋敷……とにかく色々な所を。

過去の璃緒「……ふぅ」
ついため息を漏らしてしまう。

過去のえむ「……ど、どうだった?」

不安そうにわたしに聞くえむちゃん。
それに対してわたしは……

過去の璃緒「……うん、楽しかったよ」
ちゃんと楽しかった……嘘はない。

過去のえむ「……!良かった!やっと笑顔になってくれたね!」

過去の璃緒「笑顔……。えむちゃん、えむちゃんは何でそんなに私の事を……」

過去のえむ「……?当然だよ!あたしの友達が悲しそうな顔をしてたら、あたしはほっておけない!」
当然とまで言い切った。
つくづくこの子は眩しいな……。
あの子も……きっとわたしにはそう思うんだろうか

過去の璃緒「……」

過去の寧々「……浦山、さん?」

過去の璃緒「……あ、大丈夫だよ、草薙さん。……ただ、あの子が……三春がいたら、わたしにも笑顔になって欲しいって言うかな……って」

過去の寧々「……それは……。きっと浦山さんの中で答えは出てるんじゃない、かな」

過去の璃緒「……。……そうだね。ありがとう、えむちゃん、草薙さん」

過去のえむ「ううん!気にしないで!あたしも璃緒ちゃんの笑顔が見れてよかったよ!」

過去の璃緒「……ふふ、そうだね」

そう言って、私は……三春のお供え物の為にお土産売り場に行った。

過去の璃緒「……。……あれ、桐谷さん?」

偶然お土産売り場で何かを買おうとしている桐谷遥に声を掛けてしまった。

過去の遥「貴方は……」

過去の璃緒「浦山璃緒です。すみません、同級生を見かけたからつい声をかけちゃって……」

過去の遥「ううん、大丈夫だよ」

過去の璃緒「……桐谷さんは何を買おうとしてたの?」

過去の遥「ん?このフェニー君グッズを買おうとしてたんだ。今日入荷されたばかりの新商品だから、確実に確保しておきたくてね」

桐谷遥が見るのはフェニー君の小さなぬいぐるみ。
彼女はそれをおもむろに手に取ると即座にレジへと向かってしまった。

過去の璃緒「……。……私も、これにしようかな」
彼女が立ち去ったあとのお土産売り場で1人呟いた

第7話
璃緒「……と、まあこんな感じだよ。えむちゃんの助言があったから、最初に断られた時よりかは貴方達のチームに入っても良いかなって思ったの」

白丸「なるほどな……えむちゃんはさながら功労者……ってところか」

璃緒「そうだよ〜?だから黒部もえむちゃんに多大な感謝をしてね」

白丸「ああ……そうだな」

璃緒「……っと、黒部は夕飯のリクエストを聞きに来たんだよね。私はハンバーグで」

白丸「了解した、後で呼ぶから来てくるよな」
〜白丸退室〜

璃緒「……」
セカイに移動

〜教会のセカイ〜
ミク「いらっしゃい、どうしたのかな?」

璃緒「……ちょっと、話したい事があってね。いいかな」

ミク「もっちろん!」

璃緒「……ありがとう。……昔、友達に「友達には笑って欲しいもの」って言われてさ。……どうかな、今の私、皆の前でちゃんと楽しそうに……笑ってる?」

ミク「うん!とっても、楽しそうだよ!」

璃緒「……良かった。……うん、本当に良かった……三春にも届いてるといいな」
(ここで璃緒のカットイン)

璃緒「……!ごめん、黒部から夕飯が出来たって来ちゃって……また来るね」
〜セカイから抜けて〜

ミク「……うん、本当に安心したよ……もう、心配要らないくらいにね」

璃緒「お待たせ。今日のご飯は……」

白丸「くじ引きの結果、浦山のリクエスト通りにハンバーグになったぞ」

千代里「あたしとしてはオムライスも良かったけど……」

うみの「贅沢言わないの。ほら、璃緒も座りな」

璃緒「うん……それじゃ」

全員「頂きます」

第8話
ー翌日ー
夕方、ー宮益坂女子学院ー
璃緒「……」

こはね「あ、あの!すみません!これ落としましたよ!」

璃緒「……あっ、ありがとうございま……」
彼女を見た時に一瞬三春がフラッシュバックする……が、それ以上の感覚は無い。
彼女は三春ではない女の子だ

こはね「……?どうかしました?」

璃緒「いえ、何でも……」
彼女からフェニーくんストラップを手渡される

こはね「……そのフェニーくんのストラップ、限定品ですよね。もしかして……フェニラン、よく行くんですか?」

璃緒「……!は、はい……!1度おすすめされて行ったんですが……ハマってしまって……」
つい語ってしまった……引かれてないかな……?

こはね「そうなんだ!私もよく行ってて……あっ、えっと……立ち話もなんだし、喫茶店で話しませんか?相棒……仲のいい友達のお父さんがやってる喫茶店があるので……」

璃緒「……!はい、喜んで!」

……三春、私は今日、1人友達が増えたよ
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