KOTYe2020総評 修正案 5/30版


時の流れの下では、様々なものが変わりゆく。
環境も、価値観も、そしてクソゲーも。
「afterチーズwithママの時代における、ニューアブノーマルとは何か」
新たな問いを掲げ、新たな段階に入った2019年のクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)は、多様なクソ要素が相互に作用するコンボを決めた『崩壊天使アストレイア』が制した。
しかしそれは幕引きではなく、あくまで一区切りでしかない。
アウトサイダーなりの矜持を胸に灯し、ハンターたちは今も道なき深淵に挑んでいる。
ただし心せよ。
怪物と闘う過程で自らが怪物と化さぬように。
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ。

KOTYe開闢より13年目となる2020年、初の選評によって雪割り桜が咲いたのは3月のことであった。
干支2巡目の始まりを祝うかのごとく、干支を題材とする『神様のしっぽ ~干支神さまたちの恩返し~』が奉納されたのである。
十二支+巫女で13人もの攻略ヒロイン擁立に挑んでいるが、多すぎて作り切れていない。
立ち絵と一枚絵の差分があからさまに不足しており、それを設定やシナリオ展開で無理やり誤魔化そうとしているのが一目瞭然である。
私服登校として巫女服で学園に通い、一枚絵限定の衣装はすぐさま汚されて通常衣装に着替え直し、場合によっては面と向かって会話中のヒロインすら表示されないなど、何かにつけて寂寥感が漂う。
また、全員の顔見せと親睦を13連直列で綴る構成は冗長で、個別の短さやヒロイン間の格差拡大にも繋がっている。
なまじ美点も備えているだけに、最優先で整えるべき箇所の見誤りが目立つ、歯抜けの美形のような残念さであった。

春先に縁起の良い作品で開幕を飾れたおかげか、探索行は続く成果を着々と上げ始める。

次に発見されたのは、アストロノーツ・シリウスが築いたゴーストタウン『絶対女帝都市~叛逆の男・カムイ~』であった。
荒廃した近未来を舞台に、圧政を敷いて男を迫害している高慢ヒロインたちを屈服させていくというコンセプトであるが、お膳立てが即席すぎて成立していない。
ヒロインは街頭ビジョンを通して一方的に煽ってくるばかり、対する主人公は単純な囮作戦であっさりと敵本陣中枢へと肉薄し、迅速にHシーンへとなだれ込んでいく。
シーン数稼ぎのためか、油断して逃げられたり逆レイプされたりするシュールな展開は挟めど、基本的には主人公が力押しのタイマンで圧倒する。
個の武力によって支配者として君臨するヒロインたちに対し、見た目こそコブ○寄りだか不死身の英雄ではない主人公がどう挑むのか、その答えがこれである。
前提に反して敵が弱く、因縁にも乏しくては、打ち破るカタルシスを得ようもない。
また、昨年『ギルドマスター』で暗転フリーズの恐怖を振りまいた反省からか、ゲーム性は全削除に近い大幅カット。
簡素なマップを端から潰していき、敵と遭遇すれば戦力の単純比較で勝敗を決するだけの作業にまで簡略化されている。
あとはここまでの流れをヒロインの人数分だけ繰り返し、最後は主人公の旧知と思しき新キャラが登場した途端にぶった切りエンドである。
漫画なら次から掲載誌が変わりそうな急展開だが、本作に今の所続編の予定はなく、叛逆の男はプレイヤーを煙に巻いたまま何処へともなく去っていった。

廃都市を旅立ったハンターの前に、体中にブーメランを生やした痛々しいオ○ニストが現れた。
その正体こそ、謎の新ブランドJADEの意欲作『LOVE・デスティネーション』である。
開始するやいなや、多種多様な自己満ルビの乱用が目に余る。
「人生(ルート)」「本能(ゴースト)」「現実(そ)の」「草食系(そんなん)」「生き方(キャラ)」「生き方(スタイル)」「教育方針(スタイル)」「全選択(フルオプション)」「自動台車(トラック)」「図★(ずぼし)」等々、挙げていけばきりがない。
要所でのみ効果的に使われているわけでもなく、ルビと本文のどちらがわかりやすいかすら定まっていないため、頻繁に上から読むか下から読むかの判断を迫られる。
しかも、普通に読む漢字にも余すところなくルビが振られているせいで、その中に紛れた特異なルビだけに着目するのも難しい。
その上、ひらがなの指示語にはもれなく傍点が付けられ、引用符も使用過多であり、強調手段を満遍なく使いすぎて強調になっていない。
以上のように文章全体に眼球を躓かせる無用な装飾が跋扈しているため、文字を追うだけで視線の障害物競走を強制され、苛立ちと徒労感が募っていくのである。
筆致も回りくどく抽象的で、簡単なことを難しく書いて悦に入っているだけの悪文と評して差し支えない。
そして肝心の内容には、おまいう主人公本位な胸糞ご都合主義が蔓延っている。
要約すると、「底辺を自認するおっさん主人公が過去にタイムリープし、お偉方を説教風に罵倒している間に、死の運命を回避したパパやママが暗躍してすべてを解決してくれる話」である。
主人公は「上級国民サマ」が常套句の卑屈で嫌味なクズで、相手の事情や心情に一切寄り添わず、何もしない自分のことは棚に上げた上で上から一方的にこき下ろす理想論リンチが得意技。
黒幕の横暴を耐え忍んでいる大人たちに、「お前は真の限界まで頑張らずに、やらない言い訳してるだけの甘ったれ」という主旨の罵声を浴びせる何様の化身であるが、作中では勇者のごとく持ち上げられる。
一方で黒幕も、完璧独善上級国民フェミ女特殊工作員にして未来の売国独裁総理大臣という偏った盛りすぎ設定に対し、具体的な驚異としての描写に乏しく、口先だけの小者にしか見えない。
そして、その黒幕を処理するのはライターのかんがえたさいきょうの両親たちで、裏で根回しするか武力介入するかして後腐れなく打倒してくれる。
特に痛々しいのは、黒幕に反抗しようと決めた矢先に街中で同時多発爆破テロが発生し、母親から「テロにテロで報復して黒幕一味を全滅させた」と電話がかかってくるオチ。
母親のてへぺろ口調とコント風の頓狂なBGMも相まって、神経をヤスリで逆撫でしてくる。
どのルートでもこの調子で、主人公は罵倒を終えたら結果報告を聞くだけである。
しかし主人公はなぜか「俺は……勝ったんだ……」とほざき、事の顛末を父子の武勇伝と自画自賛して、やったった感を心ゆくまで満喫する。
ここまでくると、バカ田大学出身者ですら「これでいいのか?」と零すのではなかろうか。
また、ヒロインたちには期待ごと予想を裏切る隠し設定やシナリオ展開が山盛りで、さながら地雷の見本市。
実は淫紋入りドM、男の娘と思わせて実はふたなり、実は膜だけ残して薬漬け陵辱調教済みの新品性奴隷など、大型属性地雷が居並ぶ。
地雷展開も多く、脅迫して調教、昏睡拉致逆レイプ、ふたなりがヒロインに挿入、ヒロインの一人は実質本番なし、ツンデレがデレる瞬間をカット等々よりどりみどりである。
こうしたやりたい放題を「お気楽コメディ」と定義する公式サイトは結果的に嘘まみれになっており、製作者とプレイヤーとの感性の隔たりや、エロゲーのお約束に対する無知を感じさせる。
「型を身につけていない者が型破りを目論むと形無しになる」を地で行く浅薄さであった。

地雷の連鎖爆発から生還したのもつかの間、その衝撃は10年間眠っていた人型機械を呼び覚ましてしまう。
戯画謹製の古代兵器、『ジンキ・リザレクション』による侵攻の始まりであった。
本作はロボットバトルものを装っているが、プレイ時間の大半は飽き飽きする日常の反復でしかない。
ゲーム内期間30日×1日4回のコマンド選択に対し、イベントが少なすぎるのが原因である。
平時は操縦者であるヒロインとの交流や訓練を重ねて戦闘に備えるのだが、基地内での親睦および訓練は一文字の描写もなく、ただSD絵が表示されるだけ。
汎用デートイベントは最初の戦闘を迎える前に枯渇し始め、以降は既視感が唸りを上げるほどの使い回しが続く。
このループする日常によってシナリオは極度に水増しされており、合間で語られる本筋は非常に薄い。
大雑把な人物紹介と状況説明を済ませるだけで期間の半分が過ぎ去り、中盤でようやく現れた敵部隊は個性を把握する間もなく次々と退場していく。
戦闘シーンも、各機1枚ずつしか無い立ち絵と搭乗者の顔グラだけの紙芝居で、躍動感が感じられない。
最後は、無理のあるヒロイン無双や敵の内輪揉めによる自滅といった荒業で強引に幕が下ろされる。
ワンクールのアニメなら、本筋はせいぜい2~3話分、残りを新規要素の無いエンドレスエイトで埋めて打ち切りくらいの惨状である。
その上、不親切なフラグシステムがシーン回収の苦行度を格段に高めている。
陵辱シーンは戦闘ごとに存在する敗北バッドエンドに付随しており、全回収するには各ルートに平均4回ある勝敗判定にそれぞれ1度ずつ失敗する必要がある。
しかし、判定に使われるステータスの現在値及び勝敗のボーダーラインは明示されず、しかも分岐は強制で、勝てる戦闘にわざと負けることはできない。
つまり、ちょうど目当ての戦闘まで勝ち進んだところで負けるように、見えないステータスを、見えない勝利条件に合わせて、毎回手探りで調整するしかないのである。
加えて、一部のHシーンには「ランダムイベントで入手した特定の衣装を着用した上で、特定の場所でランダム発生」という面倒な発生条件がある。
これをヒロインの人数分、3周に渡って繰り返さなければならない。
必然的にシーン回収はスキップ全開のリトライ作業と化し、評価基準は「効率的か否か」へとシフト。
E-moteを筆頭に見栄えがする演出も、テンポを阻害する障害に転じて牙を剥くのである。
表面は美しく塗装されていても、中身は10年前どころか前世紀の遺物級であり、現代に呼び戻されたこと自体が不幸であった。

負の連鎖はまだ終わらない。
ジンキ復活が呼び水となったのか、今度は墓場からのリザレクションが発生した。
あかべぇそふとすりぃの『墓多DYINGZOMBIES ~Second Chance for BEAUTIFUL LIVE~』が、ゾンビもどきによるカチ込みを仕掛けてきたのである。
第一印象は、『ゾ○ビランドサガ』の基幹コンセプトを丸パクリしたゾンビアイドルもの。
しかし実態は、アイドルよりも、ゾンビよりも、下ネタやマフィアとの抗争に重きを置いた重度のバカゲーであった。
歌やダンスのシーンは少ない上に端折られ気味。
代わりに、ロックと称して実弾を発砲し、銃撃や爆破から客をかばう肉壁となってアイドルとしてステップアップしていく。
ゾンビ設定にしても、ゾンビ姦で特殊性癖持ちにアピールするシーンはなく、濡れるとゾンビ肌隠しのボディペイントが落ちると言いつつ普通に入浴するなど、あまり活かされないどころか時折忘れられる。
一方、ギャグ要素においては尋常ならざるセンスが剥き出しである。
中でも、首から下がシリコン製のヒロインがオナホを材料にして右腕を復元するも、オナホに芽生えていた自我に肉体を乗っ取られる展開は白眉といえよう。
バカゲーとしてなら面白くないわけではないが、“ゾンビでアイドル”というメインコンセプトが息絶えていては本末転倒である。
かくして、はしゃぎすぎた“修羅の国・墓多”は修羅の国・KOTYeにその名を刻みつけた。

ゾンビ臭が初夏の風に拭われたころ、ensembleが野に放った『Secret Agent~騎士学園の忍びなるもの~』が、忍ぶどころか暴れ始めた。
KOTYeの二大鬼門たる騎士と忍者を共に込められた本作は、タイトル発表と同時にハンターに察知されて追跡対象となっていた。
しかしエントリーに至った理由は皮肉にも、詰め込みすぎた設定の消化不良である。
例えば、女性と接するのが苦手な主人公はヒロインたちと普通に会話し、結婚含む将来設計が自由にならない財閥令嬢はスムーズに主人公と結ばれる。
描写も全体的に雑であり、最序盤のキャラ紹介イベントが一巡する間にヒロイン全員が主人公に惚れ、悪役はいつ改心したのか不明なまま主人公のピンチに駆けつけるなど、唐突な展開が繰り返される。
そもそも、近未来である作中において、忍者と騎士の設定はごっこ遊びレベル。
忍者といっても現代風の諜報員で、クナイや手裏剣は忍者っぽさを出すための小道具に過ぎず、主人公は忍びなれども忍ばない。
ミスや油断から幾度となく一般人に見つかるだけでなく、素性の隠匿より目前のトラブル解決を常に優先し、時にはクナイを投げてからおもむろに姿を表す。
任務からして、意訳すれば「謎の文○砲使いの正体を暴け」であるため無辜の者に害はなく、上司である母も「青春を謳歌しながら任務を遂行しなさい」と能天気で緊迫感に欠ける。
また、騎士の実態は強権を持つ生徒会役員と各委員会長の集まりでしかないし、学園ならではといえるイベントにも乏しい。
以上をもって、Secret Agent、騎士、学園、忍びなるものの各要素は否定され、タイトルの形骸化は見事に成されたのであった。

夏には、探索先のハンターたちから3通の暑中見舞いが届いた。
ヒロインのヤンデレビッチストーカー出力が高すぎて、主役のはずのメガネ属性が死んでいる『メガスキ! ~彼女と僕の眼鏡事情~ 伊波乙葉編』、
メイン要素がドロップアイテム収集であるにもかかわらず、会敵機会と戦闘回数に制限を設けてセーブ&ロード地獄を誘発した『創神のアルスマグナ』、
主人公とヒロインを光秀と信長の生まれ変わりに設定するも、登場人物を総動員した現代豆知識の開陳ラッシュが横行しすぎて麒麟が来ないと評された『彼女がアイツで、俺はだれ!?』、
と続いた選評からは、旅路の順調さが伺い知れる。
その淀みなさは住人たちに滔々と流れる大河を想起させ、酷暑にひとときの涼をも届けたのであった。

しかし、まだ暑苦しい夏は終わらない。
製作がSAGA PLANETSでライターが5人の時点で、かの『カルマルカ*サークル』の二の舞と予想されていた『かけぬけ★青春スパーキング!』が、前評判通りに参戦したのである。
前例にもれず、ライターごとに人物設定と主題の取り扱いがブレブレで、作品全体を貫き支える軸が覚束ない。
まず主人公は義妹と二人暮らしの苦学生で、敵視している親族からの援助を断固拒絶中という境遇である。
しかし、個別に入るとあっさり援助金に手を付けて遊び呆け、敵役も実は悪人ではなく主人公が誤解していただけと判明する。
プレイヤーが見たいのは壁を乗り越える過程であって、挑まずに諦めたり壁が勝手に消えたりする様子ではない。
ヒロインたちの性格や反応もルートによって異なり、二面性や三面性を遺憾なく発揮している。
また、「青春」という主題も漠然としており、それこそ甘くも辛くも苦くも、どうとでも描けるものである。
それを複数ライターに投げた結果、ルートによってジャンルすらバラバラなしょっぱい結果に。
メタネタパロネタてんこ盛りのドタバタやらイチャラブやら感動系やら、とにかく節操がなく、それでいて大半がド平凡オブ平凡ズな使い古しエピソードの羅列にすぎない。
数撃ちゃ当たる方式では外れ弾が増えるのは自明であり、フルプライスで1~2ルートしか好みに合わないともなれば、不満の声が上がって当然といえよう。
残念な福袋のような損失感を購入者に味わわせ、改めて複数ライターの危険性を世に示した作品であった。

ようやく炎暑を乗り切ったのも束の間。
ソーシャルディスタンス軽視という新たな火種『Honey*Honey*Honey!』が、新規ブランドおうちじかんによって生み出された。
男女は2m離れて生活するように定めた“男女接近法”なる設定が最大の特徴である。
舞台となる学園内でも通路やベンチが赤青に塗り分けられており、特に教室側が赤一列で男子が入室できない廊下は「なかなかパンチの効いた廊下だ」と作中でも称賛されている。
掴みは良しとしても、男女の濃厚接触を制限する厳しい条件をエロゲーに設け、物語をどう展開するつもりなのか。
製作者の出した答えは「無理筋設定なので無視する」であった。
登場人物たちは普段から2mを意識して生活しているようには見えず、むしろ近づいていて当たり前で、たまに思い出してその時だけ人目に気を付ける程度の存在感しか無い。
ストーリー構成は抜きゲーの最小テンプレをなぞるのみで、共通でキャラと世界観の紹介が済めば分岐してエロ三昧である。
個別の内容も、
「取り締まる立場なのに自分だけ交際するのはずるいと言われた→今後は交際許可をどんどん出します→大団円」、
「教え子と男女の関係なのがバレた→幼児の頃書いた婚姻届があるから淫行じゃない!→万事解決万々歳」
のように、シュール未満の三文芝居である。
看板だけ奇を衒って耳目を集めたところで、中身と食い違っていればペテンでしかないと身をもって示した一作であった。

2m詐欺を切り抜けた矢先に、SUKARA DOGが『スケベな処女のつくりかた』で完成詐欺を披露。
タイトルで調教モノを仄めかした上で、まだ処女なだけで最初からスケベに仕上がっているビッチをヒロインに据え、とかく未完成品が問題になりがちな業界を鋭く風刺してみせた。

秋の暮にはクライマックスに向けて狩猟ペースが向上し、発見後に判断保留ないしは調査続行となっていた作品の選評が次々と届きだした。
今年もまた、祭りが始まる。

皮切りに、evoLLが閉鎖空間『Hではじめた絶品バーガー ~え?ご注文はおっぱいですか~』を領域展開した。
特筆すべきは各種CGの少なさで、「絵をいかに減らすか」から逆算して物語が作られている。
ハンバーガーショップの店先で声をかけられた主人公が、そのまま住み込みでアルバイトを始める場面から幕を開け、最後まで敷地外の様子は描かれない。
この方法で、背景は時間帯差分を含めて10枚程度にまで削減。
立ち絵はヒロイン3人に仕事着とコスプレが1枚ずつで、表情差分はあれどポーズは常に一定である。
一枚絵は一応ミドルプライス相応の45枚あるが、質はいまひとつで、一枚絵限定の衣装も無いためバリエーションに乏しい。
さらに、差分が平均4枚と少ないせいで地の文との齟齬が多発し、入れているのに入ってないエア挿入すら発生している。
シナリオもあって無きがごとくで、共通は各ヒロイン1回ずつのラッキースケベだけで半分を占め、個別に入り次第すぐに性交渉乱舞で終了する。
尺稼ぎに主人公の怖い顔ネタが採用されているが、具体的な描写も顔グラも無しに連発したところで、モブが逃げる際の悲鳴と逃走音を混ぜたようなピャー音の不快感が耳に残るばかりである。
また、ヒロインの顔アイコンは無駄に大きく、セリフのたびに現れては消えてを繰り返すため、特にHシーンでは鬱陶しい。
そしてUIは、メッセージウィンドウの透明度調整すら不可能な充実度である。
見せ場といえば、風でスカートがめくれた瞬間だけ黒ストッキングが消失する超常現象くらいか。
フィクション内で外出自粛を厳格に守った、閉塞感に満ちた狭い世界での全方位戦術であった。

次いで、Lose発の魔列車『まいてつ Last Run!!』が、レールを外れて戦場へとなだれ込んだ。
主な不満点は、売り方とエロの削減である。
いわゆる完全版商法を採用し、ファンディスクを無印版と抱き合わせてのオーバープライスでのみ販売。
しかも、無印部分はブラッシュアップと称して裸立ち絵などのアダルト表現が削減されており、不完全版商法とも揶揄された。
追加部分のエロは単純にシーン数が少なく、無印39回に対して追加19回と半減している。
さらに、パッケージで最前列に大きく描かれている新ヒロインのHシーンが1回も無い。
一応公式サイトに記載はあるが、シーン数を合算でしか表記しないなど長所を誇張し短所は矮小化しており、リボ払いの勧誘文句さながらである。
とはいえ、過去作の高評価が落差をより際立たせていることもあり、評価としては“汚い売り方のガッカリゲー”あたりに落ち着いた。
しかし本作はこの後、不名誉な脚光を浴びることになる。
事件発生は発売から約1ヶ月後。
Loseの要請により、大手データベースサイトから、本作を含むLose名義の全作品に関するデータおよびレビューが根こそぎ削除されたのである。
期待するがゆえの苦言と改善への切なる願いが渦巻くさなかに、メーカーの実績とユーザーの批評の積み重ねを、ただ黙ってごみ箱を空にでもするかのように消す。
この行為は単なる批判隠しには留まらず、ユーザー生成コンテンツにメーカーが介入した悪しき例として反発を招いたばかりか、旧来のファンに後ろ足で砂をかけて一般に逃亡する意思の現れとも見做され、業界史でも一二を争う規模の大炎上を巻き起こした。
慌てて本作のレビュー以外のデータ復旧を認めたところで、失った信用は戻らない。
鉄道事故を埋めて隠す「埋鉄」作戦の発動は、更なる怒りと失望をもたらすだけの逆効果に終わった。
「まいてつ全部入りプロジェクト」としてエロ要素の補填も始めてはいるが、去った者には届かず、残った者からは冷ややかな目を向けられている。
惨憺たるラストランの終点は、未だ見えない。

悲鳴のように哀しく響く汽笛が徐々に遠ざかっていく中で、野盗の襲撃が発生する。
それはエロ有りRPGで知られるエウシュリー作、『天冥のコンキスタ』による不意打ちであった。
「シンプルなステージクリア型のSRPG!」という触れ込みは正しいものの、シナリオとゲーム性の両面において単純さが度を越している。
睡魔族の主人公が魔王の死をきっかけに覇権を狙って決起するストーリーであるが、やることといえば目先の敵対勢力への襲撃もしくは防戦しかない。
しかも主人公は脳筋で、戦闘は常に力押し。
余計な挑発をしてはピンチを招き、わかりきった状況分析をドヤ顔で披露してはイキり倒すアホだが、作中では策士扱いである。
メインヒロインは、主人公への賛美と説明的セリフを繰り返すだけのBOT。
ほかのヒロインたちは任意加入でメインストーリーには絡まず、Hシーンも「くっころを経て魅了一発で完堕ち」のワンパターンで2回ずつしかなく、雁首揃えてモブエロ要員の域を出ない。
挙句、伏線らしきものは放置して打ち切りエンドである。
中心人物の心情や動機をシンプル化の名目で削り落としてしまっては、もはや物語とは呼べまい。
SRPGパートも悪い意味でシンプルであり、マップは狭く、育成の自由度は低く、戦略性に乏しい。
何をするにも敵の捕獲ありきのシステムが特徴といえるが、その捕獲にはストレスが伴う。
弱者狙いの玉砕戦法しか知らない敵の群れを、数人しかいない捕獲スキル持ちで片っ端から捕らえるしかないからである。
SRPGは、パズル的な面白さにストーリーやキャラといった装飾を組み合わせてこそ娯楽たりうる。
そのいずれもが不十分な本作は、単なる作業感の塊にすぎない。
仰々しい設定に反し、お山の大将を目指す野盗のチンケな略奪をトレースするだけの、剥き身の脳筋特攻将棋止まりの出来栄えであった。

宴もたけなわとなったところで、Wonder Foolの『まおかつ! -魔王と勇者のアイドル生活-』が舞台に上がった。
魔王でアイドルをコンセプトに、勇者として異世界に召喚されたプロデューサーが、元魔王のヒロインたちをアイドルとして育成していく物語である。
しかし、アイドルと異世界の組み合わせが面白さに寄与していない。
異世界ものではよくある、潜在的な需要はあれど未開拓の概念を現代から持ち込んで一人勝ちするパターンをなぞっているため、アイドルもののお約束ともいえる苦労や挫折とは全くの無縁。
後に結成されるライバルユニットも良き競争相手という立ち位置で、現代の設備や道具も「開発した」の一言で簡単に入手し、文字通り敵も障害も存在しない。
かといって大成功の軌跡を華々しく描けているわけでもなく、ありきたりなアイドル活動をして普通に成功するだけなので爽快感もない。
しかも、大胆不敵な編集のせいで物語は穴だらけであり、盛り上がりそうな場面でも容赦なくカットされている。
プロローグでの魔王との対決からして、「では始めようではないか勇者よ!」から1クリックで決着。
本筋ではさらに酷く、ユニット名を決めて基礎レッスンを始めたあたりで半年後にジャンプしたかと思えば、もう人気アイドルグループとしての認知を得ており、音痴を克服したばかりだったヒロインは歌姫級の歌唱力になっている。
肝心の過程は、「色々あった」の一言でキンクリの彼方である。
その色々を描いてこその物語なのだが、あるいは平々凡々に順風満帆すぎて描きようがなかったのであろうか。
記念すべき初ライブですら二言三言のMC以外は省かれており、ここぞというところには悉くスポットライトが当たらない。
個別は例によってHシーンの羅列で、隙間にかろうじてシナリオの欠片が存在する程度。
その内容も、倒れた主人公をひたすら看病し続けるだけ、突拍子もなく復活した真の魔王討伐に旅立って1クリックで8ヶ月後のエピローグに飛ぶなど、アイドル要素が薄い。
歌でいえば、イントロから即アウトロにつないで終わったり、間奏だけが続いたりするような、拍子抜けの詰め合わせアルバムとでも評すべき仕上がりであった。

続いて、まさかの二の矢が戦場に飛来した。
スワン系列の捨てブランドと見做されていたももいろPocketが、二作目となる『オレは姫武将を孕ませたい!』を排出したのである。
現代からタイムスリップしてきた主人公の視点で描く戦国武将女体化ものであるが、歴史や武将へのこだわりや習熟が感じられないどころか、内容が薄いを通り越して無に近い。
おもな原因は、歴史上の大戦や大事件が秒で終わり、何事もない幕間が延々と続くバランスの悪さである。
信長・蘭丸・光秀のルートでは、本能寺の変を回避するとタイムパラドックスにより主人公が消滅するジレンマがテーマとなるが、尺の9割は「主人公がどうすればいいか悩む→Hシーン→悩む→Hシーン……」の繰り返し。
オチはヒロインごとに若干変わるが、結局どうにもならずに諦めた主人公が信長を見捨て、本能寺の変を数行の説明で片付けて終わる点は共通している。
信玄と謙信のルートは川中島の戦いを決着させないことが目的となるが、要は余計な真似をして歴史を変えなければいいだけであり、何の面白みもない。
信玄ルートは戦場に出ても活躍しすぎないように俺tueeeけど自重する話、謙信ルートは二重スパイごっこで越後と甲斐を何度も往復して健脚になる話である。
退屈が骨身にしみる中、信玄エンドだけは悪い意味で衝撃的といえる。
病床の信玄を救うべく、主人公は信玄との間に生まれた子から異能の力を借りて現代に戻るのだが、その際に
「必ず戻ってきます。貴方の為なら、タイムマシンだって発明してみせますよ」
と約束しておきながら、帰還した瞬間に
「戻る方法がなくなってしまった……」
と絶望して何もかも諦める。
数日後、信玄の生まれ変わりと思しき女性と出会って感動にむせび泣き、過去に残した妻子は放置して自分だけハッピーエンドである。
CG関連も、相変わらず粗雑そのもの。
孕ませをタイトルに冠しておいてボテ腹立ち絵はなく、バストアップになるまで拡大して誤魔化しており、ときにはそれすら忘れて引きの立ち絵を表示するミスも発生する。
また、主人公を直接関わらせないことで本能寺の変関連のCGを0枚に削減しており、ルートヒロイン3人にはEDの一枚絵すら存在しない。
そして背景は使い回しが多く、どこの領地でも城内・城門付近・城下町の景色が同じである。
Hシーンも、絵柄やアニメーションは不安定で、テキストは見ればわかることを念入りに語る食レポのように冗漫かつ味気ない。
さらに、読み込みのたびに5秒以上固まる仕様も前作からしっかりと受け継がれている。
これだけの空疎を1GBに集約し、お値段は貫禄のフルプライスである。
強いて褒めるとすればただ一点、「射精に至った!」「果てる!精液が放たれる……!」「射精する……彼女の中に放つ!」など、射精時に必ず生じる一瞬のダイナミズムだけであった。

祭りの締めくくりは、新種のキメラ『まごかつ ~可愛い孫のためなら中出しOK…~』との遭遇戦となった。
CG・設定・ストーリーの狂いが絡み合うイカれた作風は、アパタイト老女シリーズの新境地と呼ぶにふさわしい。
まず、「定年を迎えた老ヒロイン視点で男の子を次々と逆買春していく」というコンセプトの時点で相当に人を選ぶ。
これが、極めて限られた性癖の持ち主のためだけにと開き直った結果ならば、それはそれで見上げた心意気といえよう。
しかしヒロインの容姿はせいぜい中年止まり、竿役もバキバキの青年にしか見えず、コンセプトと乖離している。
貫き通す気がないならば、尖った看板を掲げるべきではない。
さらに、デッサンと塗りの狂いが酷く、ヒロインは単なる年齢不詳の域を超越している。
コラ画像じみたつるつる小顔、首から下の質感はブリキのおもちゃ、脇腹に乳袋があるスーツにもフィットしてみせる変幻自在の体型変化、絶頂時に股から放出する触手じみた肌色の体液など、見れば見るほど、ヒロインがミュータントではないかという疑惑が膨らんでいく。
加齢による体型の崩れを新解釈で表現した前衛芸術だとしても、常人の理解が及ぶところではあるまい。
ストーリーも、稚拙で短い中に確かな狂気を孕んでいる。
少年たちを玩具で釣って逆ハーレムを作っていくのだが、ターゲットは揃いも揃ってばあちゃんに欲情する守備範囲モンスター揃い。
最終的にはばあちゃんを性的に独占したいと主張するまでに進化し、ここで説き伏せればハーレムエンド、失敗すれば親に通報されて逮捕エンドとなる。
この展開は選評者をして「逮捕こそトゥルーエンド」と言わしめ、狂気の世界に残された最後の良識として、住人たちの心にせめてもの救いをもたらした。

冬を前にめぼしい標的をあらかた狩り終え、ハンターたちは余裕を残して締めくくりへと向かう。

捜査や推理をせず、お粗末な真相を後生大事に隠しているヒロインと仲良くなって口を割らせる話をミステリーと豪語した『鍵を隠したカゴのトリ』、
似たようなプレイを繰り返してからヤリ捨てるだけで変化に乏しく、テキスト・塗り・声の調子に至るまで、全体的な質の低下が指摘された『巨乳女士官洗脳催眠「お前のような男の命令に従う訳がないだろう」』、
ペラペラ設定の脳筋姫たちが迷宮に突撃しては嬲られるだけのワンパターンで、主人公が敵味方の二役を演じている伏線をスルーして正体バレせずに終わる『プリンセスクライシス』
の3作を、年を跨いで次々と制圧。

そして予備期間終了間際の1月31日には、
「1ヶ月前まで2020年だったのか。ならばほとんど2020年みたいなものだな。」
と言わんばかりに、『黒ビッチギャルがキモオタに堕ちるまで ~監禁〇辱配信日記~』が転がり込んできた。
『懺悔島』と『ブラック企業』を排出してきたTRYSET Breakは、これで3年連続エントリーの達成である。
本作は、タイトルに含まれる各要素の精度が低い。
監禁○辱とあるが、どちらかといえば神待ち援交からのほのぼのレ○プであり、鬼畜要素は薄弱。
動画配信にしても、物語を動かす重要な要因にはなっておらず、プレイの一環程度の軽い扱いでしかない。
撮影されている場面のCGは全20枚中6枚と1/3にも満たず、うち2枚はトイレ盗撮である。
また、感嘆から喘ぎ声に至るまで、あらゆる「ああ」が「嗚呼」に置換されており、ヒロインのギャルっぽさを著しく損ねている。
これでは、公式サイトの見出しを「せいひんじょーほー」のようにひらがなで表記する工夫も台無しであろう。
片や主人公のキモさは煥発しており、クリーチャーじみた醜悪な体型を惜しげもなく晒している。
中でも、陰茎しか描かないチンファンネル系の表現と見せかけて、射精と同時に光学迷彩を解除して豪快にフレームインする手法は一定の評価を得た。
全体的に格調低くまとまっているといってよく、マイスターとしての貫禄すら漂い始めたTRYSET Breakの動向は今後も注視されることであろう。

以上をもって全エントリー作品22本が出揃ったところで、本年の大賞および次点を発表する。

次点は、
『ジンキ・リザレクション』
『天冥のコンキスタ』
『オレは姫武将を孕ませたい!』
『まごかつ ~可愛い孫のためなら中出しOK…~』

そして大賞は、
『LOVE・デスティネーション』
とする。

2020年は12ヶ月どの月の発売タイトルからも選評が届き、7年振りとなる全月制覇、グランドスラムが達成された。
にもかかわらず、豊作感と同時に飢えも覚えるのは、不満点の多くに手抜き感が付随するためであろう。
特にシナリオの空疎化は深刻で、おもに設定の消化不良がコンセプトの実現を失敗に至らしめている。
すなわち事前情報と実態の食い違いであり、この傾向は前年から引き続き変わっていない。
評価する際に事前情報も考慮されるのは、エロゲーが千差万別な性的嗜好を前提とする娯楽であり、良し悪しと同等以上に合う合わないが重要視されるためである。
事前情報とは売り手の掲げた約束であり、買い手はその約束に対価を払う。
ゆえに、内容以前に事前情報を魅力的に整えない限り手に取ってすらもらえない。
すでに製作者が確固たる信頼を得ているなら話は早いが、そうでないなら事前に開示する絵柄や設定が最優先、次にエロ、シナリオは往々にして後回しとなる。
そして途中で力尽きたとき約束は果たされず、絵は良く設定も面白そうでありながら欠点だらけの作品が排出されるのである。
本年のエントリー作品の大半がこのパターンに該当するなか、次点以上の作品はさらに踏み込み、掲げたコンセプトを自ら卑しめる段階へと到達した。
主役のロボットとエロを単純作業の底なし沼へと沈めた『ジンキ』、
シンプル化の大義を掲げてゲーム性とシナリオを骨まで削った『天冥のコンキスタ』、
戦国武将の知名度にタダ乗りする安直な企てすら失敗した『姫武将』、
奇を衒うためだけに特殊性癖をぞんざいに利用した『まごかつ』
いずれも凡俗から一歩抜きん出た、深淵に名だたる難物といえよう。
しかし、いずれも手抜き感を払拭することは叶わなかった。
対して『LOVE・デスティネーション』は、あり余る熱意が引き起こした暴走事故の産物である。
土台を支えるキラキラルビがもたらす疲弊、軸となる何様主人公への嫌悪、そして脇を固める地雷ヒロインズへの失望。
盛りだくさんな要素が渦を巻き、幾重にも重なり合って引き起こされたクソの厚みは、他を圧倒する威容を成している。
とりわけ、ルビの乱用で文章を汚し、シナリオゲーの根底たる「読む」行為に終始負担を強いるやり口は、過去のKOTYeにおいて類を見ないものであった。
熱意をもって道を拓き未知へと至ったその功績には、素直に敬意を表したい。
強者との戦いと未知への好奇心こそ、歴戦の魔王を擁する黄金期の思い出に安住せず、現役として旅を続けるハンターたちの原動力なのだから。
よって『LOVE・デスティネーション』をKOTYe2020の大賞に選出し、本年随一の実力と気概を備えた革新者として賛称する。

さて、結果発表は終えたが、ここでひとつのやり残しと向き合わねばならない。
それは、Loseの炎上騒動後に届いた選評で提示された、
「盤外要素でも作品本体の評価に影響を与えうるのではないか?」
という問いかけである。
そこで返答を兼ね、KOTYeのコンセプトと理念を再確認しておきたい。
まず、KOTYeはゲームの出来の悪さで雌雄を決する戦場である。
よってメーカーの言動が俎上に載るのは、ゲーム内容の欠点に紐付いた原因として、でなければ余談として、このいずれかに限られる。
これを踏まえて一連の騒動を振り返ってみると、ゲームの内容は悪化していないどころか、結果的には一定の改善に繋がっている。
にもかかわらず不平不満の抜本的な解消には繋がらなかったのは、炎上の主な原因がゲームの内容ではなくメーカーの言動にあったからにほかならない。
メーカーの意図はどうあれ、「都合の悪い批評は強制削除し、旧来の支持者を養分の絞りカスとして切り捨てようとしている」と判断されたことが根源であり、問題の本質はオタクの権利と誇りの両方を侵害した点にこそある。
ゲームの「出来」が本件に及ぼした影響は限定的である一方、メーカーに対する反発や怒りといった悪感情は創作物にまで流入し、ゲームの「印象」をも著しく悪化させた。
つまり「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のことわざ通り、「作者が嫌いなので作品も嫌い」な状態に陥ったといえよう。
これは社会心理学においてバランス理論とも呼ばれ、認知の不均衡を解消しようとする自然な心の動きである。
「作者と作品は別」だと理屈ではわかっても、感情はそう簡単に割り切れるものではない。
それでも、KOTYeが「ゲームの出来がすべて」という基幹コンセプトを掲げている以上、理性に基づいた断固たる線引きが必要なのである。
メーカーが史上稀に見る大失態を犯したとしても、ゲームの内容と固く結びついていないならば余談であり、KOTYeにおける評価を左右することはない。
これを曲げる行為は、感情に任せて自己満足のために行動し、自ら掲げたコンセプトを歪めることを意味する。
それはクソゲー誕生の構図そのものであり、まさしく怪物と闘う過程で自らも怪物と化した姿ではないか。
ハンターとは、復讐や快楽のために虐殺を行う者ではなく、怪物と合体して勃ったまま死ぬ弩級変態でもない。
罪も業も覚悟も背負い、敬意と感謝を抱いて怪物と闘う者のことである。
作品と真摯に向き合い、本質を探って解体し、咀嚼して味わい、腑に落として血肉に変え、止揚に至りて供養と成す。
そのための標として、「クソゲーを掴んでしまった怒りや憎しみを笑いに昇華する」というKOTYeの理念は存在する。
ユーモアとは、理不尽や不条理を寛大な心で眺め楽しもうとする精神の発露である。
嫌う対象を笑いものにしてやろうと画策するのではなく、哀しき怪物の顛末を、まとわりつく負の感情ごと、どうにか笑い話に着地させようと足掻くのだ。
たとえ今が、後に黄昏期と呼ばれる痩せた時代なのだとしても、いつか笑って話せるように。
そのための一歩を共に踏み出すために。

最後に、自ら排出した本年の大賞作をコメディと称したJADE御大に対抗し、我々なりの喜劇論を提示してKOTYe2020の結びとする。

「負の中に正を求め、悲劇の中にユーモアを見出す。それこそKOTYeが目指す“愛ある旅路の果て(LOVE・デスティネーション)”である」
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