反響


道満×カリオストロ
非エロ
付き合ってないけど肉体関係はあります
たぶんどっちもマスターとの絆15くらいある
カルデアの伯爵は不幸を撒き散らす呪いの人形が持ち主に大切にされて若干挙動がバグってる感じだといいな
大したことないけど吐血、内臓破壊っぽい描写あります
でも雰囲気は甘い
捏造設定多数あり
4/21ぴっしぶにも投げました
内容は全く一緒です





反響


「ごめん、道満。カリオストロを助けて」
 悲痛な顔をした人類最後のマスターにそう請われたとき、道満は自分の胸に浮かんだ感情を咄嗟になかったことにした。

 とある特異点を解決するためレイシフトした先で、カルデアの一行は襲撃を受けた。襲い来るエネミーをなんとか撃退したものの、マスターと同行していたカリオストロ伯爵の霊基に異常が生じた。
 急いで拠点を設置して解析したところ、魂を蝕む呪いを受けたと判明した。襲撃は囮で、呪いが本命だったのだろう。
 カリオストロ伯爵を強制退去させてカルデアに帰還させる案も出されたが、それこそが敵の狙いである可能性もあった。仮初めのエーテル体だけでなく霊核まで侵食する呪いであった場合、ストームボーダーの内に時限爆弾を持ち込むことになる。可能であれば現地での解呪が望ましい。
 そんなわけでカルデアの食堂で甘味を堪能していた道満は、呼び出しを受けて嫌々ながら特異点にレイシフトしてきたのだ。

 呪いを受けたカリオストロ伯爵は、一行が拠点とした廃墟の寝台に横たえられていた。襲撃からずっと彼に付き添って魔力を送り続けていたマスターは、休ませるために他のサーヴァントが連れ出している。 
 魔力や呪いの影響を受けやすい頭髪は本来の輝く白銀が見る影もないほど艶のない黒に染まり、白磁の肌は黒い稲妻のような亀裂で埋め尽くされている。黒の外套の再臨姿と相まって、暗闇を濃縮した塊が寝台の上で蠢いているようにも見えた。伏せた目蓋の奥の眼窩は空洞で、鮮やかな緑と赤の両眼はすでに内側から喰われたことがうかがえる。
 対象を苦しませることではなく呪殺が目的ならば、ここまで時間を掛ける必要はない。
 カリオストロ伯爵がかろうじて人の形を保っているのは、マスターからの魔力と超再生の神秘のおかげだった。呪いに侵食された部位を切り捨てて再生し、また侵食される。その繰り返しがもたらす苦痛は、生きたまま千の刃に引き裂かれるに等しいだろう。そして破壊と修繕の均衡が崩れたとき、呪いはカリオストロ伯爵の霊基を黒く塗り潰し食い尽くす。

 道満は横たわるカリオストロ伯爵の傍らに立ち、不機嫌な顔でその変わり果てた姿を見下ろした。
 マスターがあれほどに憔悴しているのはカリオストロ伯爵を心配してのことだが、自分が彼に庇われたのだと察してしまったことも大きい。確かにあの呪いは、悪意と敵意によってマスターを狙って放たれたものだった。そして人類最後のマスターは、自分のために誰かが傷付くのをことさらに忌避する。
 しかしカリオストロ伯爵がマスターを庇ったというよりは、呪いがカリオストロ伯爵に引き寄せられたという方が正しかった。魔術的な守護を受けていない伽藍堂のヒトガタは、とても効率的に悪意や呪いを惹き付ける。
 だからこそノウム・カルデアのメンバーは、かつて異星の使徒として敵対したカリオストロ伯爵がマスターの傍に侍ることを許容した。その運用の意図を知らないのは、マスター本人とシールダーの少女と新所長というお人好しの面々くらいだろう。
 道満にとって忌々しいのは、カリオストロ伯爵自身がそれを当然のものとして承諾していることだ。
 生前のカリオストロ伯爵は人々の悪意を吸って混沌と破滅を撒き散らす、生きる呪具のような男だった。そのように望まれたから、そのように生きた。
 それが今や善意の塊のような人類最後のマスターに絆されて、献身的な身代わり人形の真似事をしている。結局は、どちらもいいように利用されていることには変わりないというのに。

 そしてもうひとつ、カリオストロ伯爵が解呪の術者として道満を指名したことも気に食わなかった。マスター曰く「私の中身に詳しい道満殿なら、きっと何とかしてくださるでしょう」と意識を失う寸前に言い残したとかなんとか。
 たしかに伽藍堂という性質に加えて改竄を受けたカリオストロ伯爵の霊基は不安定なところがあり、その調整を道満が担当している。しかし道満にしてみれば、それはかつての自分(と表現するには些か事情が複雑すぎるのだが)の後始末と証拠隠滅を兼ねているに過ぎない。あとは、ちょっとした欲の発散と憂さ晴らし。
 それが、なぜだか懐かれた。そもそも平安京でカリオストロ伯爵がリンボにされた仕打ちを思えば、初めて道満の顔を見た瞬間に怒りを露にするか踵を返して逃げ出してもよさそうなものだ。しかし、カリオストロ伯爵はそうしなかった。
 さらには調整にかこつけて生前の屋敷を再現した道満の自室に入り浸ったり、どこぞの特異点で拾ってきた微弱な呪いや化生を伽藍堂の内に貯めこんで道満に見せにきたりする。
 おかげで道満はこうして、自分が丹念に手入れを重ねてきた人形が他人の手で好き勝手に蹂躙され破壊される状況を目の当たりにする羽目になった。しかも呪う対象を誤るような、どこぞの三流呪術師によって。

 そして道満は深い溜め息を吐くと、鋭い爪をカリオストロ伯爵の胸に突き立てた。その手は抵抗もなくズブズブと沈んでいく。もはや勝手知ったる他人の霊基である。まともな人間やサーヴァントであれば在ってしかるべき拒絶反応が、カリオストロ伯爵相手ではほとんど感じられないのはいつものことだ。
 そして道満はぬるま湯のような温かさと呪いの冷気が入り混じる霊基の内側を探りながら、カリオストロ伯爵を侵す呪いに心のなかで語りかける。
 ああ、取り憑く先を誤ったお前。伽藍堂の器は心地よかろうよ。人も獣も、呪いさえもその誘惑には抗えない。だから朽ちた寺に、木の虚に、髑髏の中に潜り込むのだ。そこに温かな安寧があると信じて。

 呪いは突然の邪魔者も侵食しようと試みたが、道満には容易く弾かれる。そして道満はやはり術師の技量は平凡だと断じ、こんな木っ端な呪いで死にかけるカリオストロ伯爵がむしろ無防備に過ぎるのだと怒りさえ感じた。
 そして道満の手はカリオストロ伯爵の心臓にたどり着く。呪いの核が取り憑くならば大抵はここだ。そしてそれは的中した。
 やはりなんの芸も面白みもないと呆れながら、道満はカリオストロ伯爵の心臓を一息に握り潰す。心臓は霊核と直結しているがそのものではないため、破壊してもすぐに退去することはない。
 間一髪で心臓から逃げ出した呪いの核が、伽藍堂の内側を暴れ回る。仕留め損なったのではなく、あえて逃して泳がせる算段だった。
 意識のないカリオストロ伯爵の身体が痙攣して跳ね上がり、口から真っ黒な血が溢れ出す。
 しかたなく道満はそこに自分の口を重ねて黒い血を啜り上げる。呪いの混じった血は苦くて不味い。道満は眉をしかめながら、カリオストロ伯爵の口の奥から飛び出してきた呪いの核を肉食獣に似た鋭い牙で噛み付き捕らえた。そのままずるりと引き抜いて掴むと、手にした呪いを検分する。
「はあ、まったく。とんだ手間を取らせてくれましたねぇ」

「ごふっ……、ゲホッ、ゲホッ」
 カリオストロ伯爵は激しく咳き込みながら意識を覚醒させた。その白銀の髪と白磁の肌は本来の色を取り戻している。超再生の神秘で修復した赤と緑のオッドアイを瞬かせ、傍らに立つ道満の姿をみとめると身を起こした。
「おや、道満殿。来てくださったのですね。ありがとうございます」
 満面の笑みを浮かべて礼を述べるその姿は、口元が血塗れでさえなければ演劇の一場面のようである。
「マスターに請われた仕事をこなしただけです。それであなた、死にかけた上に心臓を潰されておいてなぜそうも嬉しそうなのです」
 その曇りのなさすぎる笑顔が気に食わない道満がしかめっ面で言うと、カリオストロ伯爵はコテンと首を傾げた。
「おかしなことを仰いますね。私の性質をお忘れですか」
 カリオストロ伯爵は見る者の望むように役を羽織るが、その本質は伽藍堂の器である。それは受け取った感情を反響して敵意には敵意を、好意には好意を返す。
「私が嬉しそうな顔をしているということは、道満殿が嬉しいということでしょう」
「は?」
 その言葉に道満は、思わず検分途中だった呪いの核を手の中で握り潰した。
 その同時刻、カリオストロ伯爵に呪いをかけた術師はえげつない呪い返しによって瞬時に絶命した。
 敵に繋がる貴重な手がかりをうっかり失ってしまったことに珍しく焦る道満をよそに、カリオストロ伯爵は寝台から立ち上がる。
「ところで道満殿。この特異点を解決してカルデアに戻ったら、私のオーバーホールをお願いします。もちろん、あなたの仕事ぶりを疑うわけではありませんよ。道満殿の腕のよさは私もよく知っています。しかし、万が一があってはいけませんからね」
 そしてカリオストロ伯爵は血で汚れた自身の姿を見下ろしてやれやれと首を降ると、一度霊体化して豪華絢爛な衣装を身に纏った姿で実体化した。
 いや、汚れを消すのはともかくなぜ着替えた。そう突っ込みたくなる道満を置き去りにして、カリオストロ伯爵は部屋の扉に向かう。
「では私はマイマスターに労りとお誉めの言葉を頂戴してまいりますので、これにて失礼」
 そうしてカリオストロ伯爵は道満を振り返り片目をつむってウインクを飛ばすと、部屋を出ていった。ちなみにウインクはかの清少納言女史直伝である。

 そして部屋に一人取り残された道満は誓った。あの男、帰ったら絶対に一晩中泣き喚かせてやる。




お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening