【閲覧注意】アーサー♀→タリア艦長


タリア艦長に教えてもらったメイクしかできないアーサー♀の話
※アーサーがタリア艦長に無自覚片想いしてます
※ドロドロしてて暗いです
※時系列は種自由少し前くらいです

「アーサー、ちょっといいかしら?」
ミネルバの廊下を歩いるところをタリア艦長に呼び止められる。
「あ、はいっ!何か問題でも?」
「いえ…そんな大層な事じゃないわ。いいからついてきて」
そう言われて彼女の後をついて歩くと艦長室に通された。
彼女らしい、無駄な物の無いきちんと整理された部屋。デスクにはお子さんだろうか…小さな男の子と一緒に写った写真が立てられてあった。
しかし意外だったのはシーツがぐちゃぐちゃだったこと。厳格な彼女のことだから、こういう所も几帳面だと思ってたけど…
意外だなーなんてぼんやりしていると艦長に小突かれた。
「ジロジロ見回さないでちょうだい。ほら、そこ座って」
言われた通りに椅子に座った。艦長は対面の椅子に座る。
「あなた、化粧はした事ある?」
「え、お化粧ですか?…恥ずかしながらありません、エヘヘ…」
誤魔化すように笑ってみせると艦長は呆れたようにため息をついた。
「あなた今年でいくつよ?もう子供じゃないんだから…」
「う、すみません…」
仕事以外のことでも怒られてしまった…。
でも、メイクって言ったって、道具も種類もいっぱいあって何が何だか…全然分からない。
「…しょうがないわね。いいわ、私が一から教えてあげる。今日は私がやってあげるから、次からちゃんと化粧するように」
「え…ええっ!?良いんですか!?」
「そうじゃないとミネルバの副長として示しがつかないでしょう?じっとしててちょうだいね。」
そう言って艦長は一つ一つ丁寧に教えながら私にお化粧をしてくれた。
ベースメイク、アイメイク、チーク、最後にリップ…と施されていく。
至近距離にある艦長の真剣な顔に思わず見惚れていたら、あっという間に仕上がった。
「これでよし…うん、可愛くなったじゃない」
かわいい…かわいい、か…。頭の中で反芻する。私にはいつもの自分の顔に見えるけど、艦長が言うなら可愛くなっているんだろう。
「次港に寄った時にメイクセット一式買うこと。分かったわね?…アーサー?」
「あぁ…はい!了解であります!」
その日、私は鏡を見る時間が少し…いや、だいぶ多かった。

…………

「…ん………」
意識が浮上していく。なんだか懐かしい夢を見た気がするが、視界がはっきりした頃にはもう夢の内容は朧げだった。
いつもより少し早い起床だけど、二度寝できるような時間でもなかったので体を起こす。いつものように朝のルーティンを終えて、後は化粧するだけ。
ドレッサーの前に座ると、まだ眠そうにしている顔がある。
メイクブラシを手に取ろうとしたところで、今朝の夢を思い出した。ミネルバで、タリア艦長に初めての化粧をしてもらった日。
瞼をくすぐるブラシの感触も鮮明に思い出せるくらいにあの日のことを覚えている自分の意地らしさに自嘲する。
…未練がましいにも程がある。

止まっていた手を動かして、メイクブラシを手に取る。そして今朝見た夢の、あの日のことを思い出しながら顔に色を乗せていくけれど、出来上がったのはやっぱり不恰好なメイク。
彼女と同じ口紅、彼女と同じ香水、彼女と同じアイライナー…全部あの時してもらったのと同じものなのに、いつまで経っても上手くならない。むしろ下手にさえなっている。
今ではルナマリアやアビーの方がずっとお化粧が上手になって、私は未だ彼女に教えてもらったメイクしか出来ないでいる。
でもいいの、良いんです。貴女以外にお化粧を教えてもらうなんてしたくない。
子供のようなわがままを言って、改めて鏡に向き合う。

…忘れられないなら、せめて。
もう帰らない貴女へ。
あの日のことで思い出されるのは貴女の顔ばかり。
見惚れていたせいで貴女がしてくれたお化粧はぼんやりとしか覚えていなくて。
それでいて、もういない貴女の顔を思い出すのも辛いので、せっかく教えてくれたお化粧はどんどん下手になっていきます。
馬鹿でしょう?笑ってください、艦長。あの日みたいに、また……

頬を撫でる涙の感触が貴女の指に似ていたのは、きっと気のせいじゃない
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