死神の災難


ああ、とんだ災難だ
死神はローブに覆われた肩を上下させながら呟いた

事の発端は現世でのこと
死神はいつものように人間の魂を回収しようとしていた
目の前に横たわるは若葉色の髪をした若い男
死の象徴たる彼を捉える瞳は鋭い闘気を宿していたが、その命は既に風前の灯火であった
死神は男に向かって鎌を振り下ろした
だが、その刃が魂を狩ることはなかった
振り下ろした鎌を阻んだのは、男を庇うように立つ一人の男の刀だった

おもわず圧倒される程の殺気を纏った着物姿の男が、死神を見据える
その鋭い瞳はどこか庇われている男に似ていた
「悪ィが、コイツは渡さねェ」
男はそう言うと刀を構え、一気に振り抜いた
直後、神速の斬撃が死神に向かって飛んだ
死神はすんでのところで避けたが、すぐに次の斬撃が飛んでくる
男の瞳には「決して狩らせはしない」という強い覚悟があった
死神は止まることのない攻撃を必死にかいくぐり、なんとかその場から逃げ出すことに成功した

現世と黄泉を繋ぐ三途の川のほとりで、死神はやっと安堵のため息をついた
幽霊に魂の回収を邪魔されるとは、なんと情けない
だがまたあんな目に合うのもごめんだ
あの男の魂を回収するのは暫くよしておこう
死神はそう心に誓った

だがこの時の死神は知らなかった
彼らとはいずれ再会することを
そして、あの時の若葉色の男がいずれ自身の王となることも
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