石原インタ


――『シンデレラガールズ』の、これまでの作品との変貌振りを不安に思う既存の『アイマス』ファンも少なからずいるのではないだろうか。
――だが『アイマス』の総合Dを務める石原章弘氏は、そんな不安を吹き飛ばしてくれた。
拡大することが『アイマス』の本質
――いつ頃企画が立ち上がったのですか?
石:サービス開始は11年の11月末からなんですけど、企画自体は11年の4月辺りから、何となく始まっていました。
――アニメ放送もオープンになっていた時ですね。
石:そうですね。最初はアニメ放送開始と同時くらいの立ち上げを目指していました。
――ソーシャルは普段作っていらっしゃるゲームに比べて開発期間は短いですよね。その点も織り込んで?
石:それはありますね。家庭用のゲームって、短くても1年くらいはかかりますが、現状のソーシャルならそこまではかからないので。
ただアイマスプロジェクトにはソーシャルゲームを開発して実績が無いので、まずはソーシャル業界で一線級の活躍をされている
開発会社さんと一緒に開発できればなと考えて、最初は会社さんを探すところから入りました。
――企画自体は内部から上がってきたものなんですね?
石:11年はアニメかも決まっていたので、その勢いに乗じて『アイマス』を最大化して行こうという命題がありました。
ソーシャルはその一環といえますし、また『アイマス』というプロジェクト自体が割りと『恐れずに何でも手を出していく』
という姿勢で進んでいますから、ある意味、流行であるソーシャルに進出するのは必然だったような気もします。
――社内で企画書を作られた時のコンセプトは?
石:正直に言うと、これは二転三転していました。最初は素直に765プロアイドルのみが出演する、所謂アニメと同じ設定の
『アイドルマスター』のソーシャルを作るという考え方もありました。ただそれだと家庭用の簡易版みたいになるだけじゃないのか?
という疑念もあって……。ガラケー対応は『アイマスの拡大』を命題にしている以上は外せなかったので、そうするとハードの特性上
声やダンスといった『アイマス』のリッチな部分が削られてしまいます。そこが引っかかっていたので、結局『郷に入らば郷に従え』ということで
丁度流行しつつあった「カードゲー」というジャンルで勝負することにしました。決めたのが6月くらいだったような気がしますね。
ただ、ジャンルを決めたのはいいものの、今度はどうやって『アイマス』をカードゲーにするのか?について頭を悩ませました。
キャラ数が少ないので、ブシロさんから発売している『ヴァイス』を参考に、色々な作家さんが描いた各キャラのカードを準備するか?と言った案もありました。

――そういう方向性で開発されたソーシャルもありますよね。
石:ですね。まあ、七転八倒しつつも最終的には『アイマス』ワールド全体の中で、このソーシャルは何なのかっていうところから考えを詰めていったんです。
少し繰り返しになっちゃうんですけど、ソーシャルという土俵では歌も無い踊りも無い、テキストの分量がメチャクチャあるわけでもない。
色々と削った最小限の表現で765プロキャラを描いても、それは765プロを分かっている人だけが楽しめる、とても幅の狭いものになってしまう。
アイドルとは偶像。偶像は崇拝者がいるからこそ成り立つものです。だから『アイマス』はどこまでもいつまでも
ファンというものを増やし続けていってこそなんぼ、なのかなぁって。
石:だから今までのユーザーだけを対象にしたソーシャルを作ることはやめました。
じゃあどうしようかなって考えたんですけど、結局765プロが元々モーニング娘。を模して設定を作っていた所があるので
それじゃあ今度は時代に合わせて『AKB』を念頭に置きながら、アイドルの数を馬鹿みたいに増やそうと考えました。
だったらカードゲーというスタイルにもピッタリ!だなと。基本的に安易と言えば安易なんですけど。
そういう方向へ進むぞと覚悟を決めたのが7月くらい。一度方向を決めた以上は、もうめちゃくちゃに増やしてやろう
とにかくやってやろうみたいな感じでしたね。これまでの作品で漠然と描かれていた『アイマス』芸能界の中で
本来はそこにいたであろうアイドル達に、顔と名前、性格や物語を付けていこうって。一気に世界を拡張することで
既存のアイマスワールドが傷つくこともあるかもしれないとは思いましたが、既存世界が固まっていればいるほど新規参入は難しくなる。
とにかく新規ファン獲得が命題な以上、既存世界を壊す覚悟でやってしまおうと。
――過激なお話しですね。
石:誤解しないで頂きたいのは、壊す覚悟ではやりましたが、壊そうと思ってやった訳ではなく、むしろ765プロアイドルをより立てていく
という為でもあるんです。765プロアイドルは個性丸出しで、アイドルとPという状況だけでも、ある程度キャラを楽しんでもらえるとは思っています。
しかし、例えば両親の存在や学校の友達、アイドルとしてのライバル達がいると、また違った面がクローズアップできて
よりアイドルを深く表現することも出来る。特にライバルという存在は『アイマス』である以上は必要だと考えています。
『ぷちます!』みたいな日常世界もそれはそれでいいと思うんですけど、『アイマス』はアケの頃から、プレイヤーが別のユーザーがPしているアイドル達と
お互い切磋琢磨している世界がありました。そしてそのライバルがいる状況があるから、765プロのアイドルたちは勝利したり
時には敗北したりして、より人間味を増していく。
――ライバルがいるからこそ、アイドルは輝くということですね。
石:はい。そしてその考えは僕自身、ゲーム内の話だけではなく、リアルな世界でも同じだと思っています。
『アイマス』というコンテンツはトップを目指すものですから、常に何かが立ちふさがっているような感じは欲しいんですよね。
ライバルは『アイマス』以外のコンテンツが対象でも僕は構わないです。多分秋元康さんが乃木坂46という
AKB公式ライバルを作り出したことも、近い感覚なんじゃないかって、僕自身は勝手に考えています(笑)。

――765プロアイドルをまったく入れない案というものは無かったのでしょうか?
石:実はまったく別物にしてしまうという案もありました。でも『アイマス』という名前を使うからには、お客様が期待しているものもあります。
いきなり「春香いないじゃん。ヤメだ」となってしまっては、初動重視のソーシャルでは不利だという商売上の感覚もありましたが
『アイマス』というものに765プロは外せないという感覚が一番大きい理由です。キャラが多くなるからこそ、ゲームの中で最初は誰に焦点を合わせれば良いのか?
は重要です。だから765プロアイドルという大きな目印があった方がいいのかなと。で、そこから目移りしていく分にはいい、というのは昔からよく言っているんです。
むしろ特定のアイドルを、例えば春香をPしていても、他のアイドルがちょくちょく出てきて目移りする、というのは一番最初から通して変わらない考え方です。
アケの頃、担当していないアイドルから間違いメールが来ていたのは、そういうコンセプトがあったからな訳です。
とにかく特定のキャラだけじゃなくて色んなキャラに目を向けて欲しいと。
――その意味では、『シンデレラ』はさらに積極的に目移りさせる感じですね。
石:ですね。昔も今もやってることはあまり変わっていなくて、今回はただキャラの数が爆発的に増しただけみたいな感じです。
――確かに目移りする所もありながら、常に誰かと競い合う世界観はそのままですよね。
――初期からのファンの多くが、『アケっぽい』と言っていたのはそういうところもあるのでしょうか。
石:ソーシャルの世界って、元々アケのシステムに似ているんです。コミュニティを作りながら、お互いが競い合うみたいな感じが。
ソーシャルをやることになって調べた時も、僕自身はアケ開発歴の方が長いという事もあり、感覚的にはしっくり来るところはありましたね。
対戦って言うのは、人の心を瞬間的に高めるシンプルな仕組みではあるので、それがベースにある以上、ある程度は面白さが担保されているなと。
『アイマス』がアケ発祥でよかったです(笑)。

>監修する部分、任せる部分
――そうして開発会社が決定し、こういうカードゲーでやろうといった話になっていった訳ですね。
石:ですね。BNGは上物、つまり世界観を全部作り上げることが大きな役割でした。
――それが『お仕事』『ライブ』という表現、プレイヤー=プロデューサーだったりするあたりですか。
石:そうですね。プレイヤーがPというのは『アイマス』である以上必須だろうとなったんですが、この「プロデューサー」って文字結構長くて。
半角カタカナでも結構容量を喰うんで、テキスト書いている時、すごくイライラしました。もう少し短い言い回しにしておけばよかったって(笑)。
――あ、やっぱりそういう理由でカタカナは全部半角なんですね。
石:最初から演出は容量との戦いになってしまいましたからね。文字数は非常にシビアでした。
――システム的な所は?
石:信頼のある会社さんだったのでお任せしました。

――アイドルの数がとてつもなく増えましたが、ネタはお互いに出し合う感じだったのでしょうか?
石:沢山のアイドルを出すAKB方式のゲームにすると決めた際、バリエーションをどうやって出していくのか、という問題がありました。
他のソーシャルでも、まあ同じようなアイドルプロデュースものは、既に先行してあったんですが、僕はあまりピンと来ない感じがあって。
天使のアイドルがいたり、戦国武将アイドルがいたりするような世界観は、やっぱり『アイマス』じゃないだろ見たいな判断はあって。
最初はそういうのもアリにしないとバリエーションが出ないという話も出ましたが、最終的には年齢と出身地でバリエーションを作ろうという方向に決めました。
元々の『アイマス』でもそこそこ年齢幅はあります。これまでもゲームで新キャラを作る際に、毎回30歳くらいのアイドルがいてもいいんじゃないか?
という話は出ていたんです。ただ、いいとは思うんですけど、1キャラ2キャラだけ追加するって時には、冒険が過ぎるってのいうのが現実的な判断であって
そういうのは難しいだろうなとずっと思っていたんです。けど、今回なら出来ると。なので下は1桁から上は30くらいまで、年齢の幅を出そうと決めました。

それからアイドルがどこの出身かっていうことも入れていくことで、ご当地アイドルみたいな色を強く出せたら
バリエーションを増やせるかなとも考えました。響が沖縄出身でご当地アイドル感が出ていたこともありましたので、そういうのもありだろうと。
北海道出身で肌が白いアイドルとかいいよね、みたいな。で、そこまで決まれば後は誰が絵を描くのか?という問題が残りますが
あくまでも『アイマス公式商品』である以上は、公式絵師が絵を描かないとユーザーにも認めてもらえませんし、イラスト一枚でも
女の子のバックストーリーまで描けるとなると、やはりここは杏仁豆腐さんだろうと。『絶対に杏仁豆腐じゃないとダメ』ということも、夏前には言っていましたね。

――その現場を片目で見た気がします(笑)。
石:それで杏仁豆腐さんに依頼するイラスト点数を元の『アイマス』から少しずつ減らしていきました。
8月辺りからはもう『シンデレラ』に集中してほしかったので。
――なるほど。
石:後はイラストのテイストも、杏仁豆腐テイストに合わせるという事で決定しました。絵柄がバラバラなカードゲームが主流かと思っていましたが
あくまでも春香や千早と並んでもおかしくないテイストでいかないと、アイマスとしては認められないだろうなと。
――ある意味で地に足が着いた感じですね。
石:はい。まあ、それでも変なキャラはいっぱいいますけどね。というかバリエーション的には
キワモノの方に追いやられているキャラもそれなりにいますけど(笑)。
―― 一見普通そうに見えるヘレンは、出身地が「海の向こう」ですもんね(笑)。
石:時間的に後になればなるほど、どうしても怪しいものが出てきちゃうんですよね(笑)。
――既存キャラとの位置づけはどういう感じですか?
石:あくまでも、これまでの765プロアイドルと同じ世界観の中にいる人たちという設定です。実際765プロアイドルも普通にいるわけですし。
事務所関係についてはどうしても曖昧になってしまいますけど。元々ゲーム内でもスカウトされてきたアイドルとして出てきているので
その辺は厳密に決めない方がいいのかなと思ってます。よく言われるような杏ときらりは同じ事務所なのかっていうのは
公式設定には無いですね。
――最近はキャラ同士の会話が追加されていますね。
石:ですね。キャラそのものに人気が出てきた結果、フィードバックされている感じです。とにかく最初から「シンデレラ」がどうなっていくのかは
さっぱり分からなかったんです。765キャラに人気が集中していくのか、他のキャラに陽が当たっていくのか予想できなくて。
でも最初は新キャラが多すぎて分からないと言っていた人たちが、ある日にはもう全てのキャラの名前を憶えているみたいな状態になっていて(笑)。
そういう人たちが徐々に出始めて、キャラとしての魅力が伝わったんだなって実感できました。
765キャラが嫌いになった訳じゃないけど、他のキャラも好きになる人たちが増えていく。であれば求められる方向でキャラをある程度は縦に掘って行こうと。
それはゲーム内でも新規アイドルの追加や、シンデレラ劇場というコミックで実践されていますが、どうしても情報量の問題であまり深く掘ることはできない。
そこでCD企画をやってみたりして。キャラを縦に掘りつつも、新しくファンになってくれた人にこちらからどんどんと、新しい情報も打ち返していこうと。
その辺は『アイマス』初期に似ていますよね。『アイマス』も最初はキャラ同士が何も喋らないゲームでした。
ゲーム内では春香と千早に会話なんて無かったんですけど、コミックやCDなどのコンテンツで「こうやってしゃべるんだ」という情報を付加して行きました。
今回も少しずつ情報を付加していくことで、ユーザーさんとゆっくりキャラを育てて行ければと思います。
【既存アイドルと新アイドル】(続き)
――ちなみにどうして杏ときらりを一緒にしたがる人が多いんでしょうかね?
石:どうしてですかね?インパクトがありすぎるからでしょうか(笑)。でも、初めからユーザーさんがネットでキャラのことを取り上げてくれたのは
本当に有難いことでした。『シンデレラ』がおこまで一気に急成長した要因には、もちろんゲーム自体の、イラストの出来も大きいとは思いますが
『アイマス』コミュニティが元々ネット界隈にあった所に登場できたからという理由も大きいと思うんです。
本来ソーシャルって、モバゲーやグリーといったコミュニティの中で広がりつつtも、その外側ではあまり浸透していないことが多かったって思うんです。
だけど杏やきらりは外側でピックアップされた。そこは大きかった。ソーシャルは、まず知ってもらうことが難しい。その「知ってもらう過程」が
元々のアイマスコミュニティがあったことで、何段かはすっとばしてこれたのは、ファンの皆様に一番感謝したいところです。
――そのあとに凛のような王道キャラも盛り上がってきましたね。
石:やはりCMは大きかったですね。『アイマス』のキャラは765プロ以外もいるんだなって。凛はカード的に強くは無かったので
あまり話題にはならないかなと思っていたんです。でも、凛は最初にできたキャラだったから、思い入れがあったんですよね。
最初に杏仁豆腐さんの描いた凛の絵を見た時に「いける!」と思ったんです。色んな想像が膨らんでくる良い絵だと。
雰囲気も今風、という言い回しも旧いですが、今風な感じがよかったので。
――確かに今までにはいないタイプですよね。
石:携帯小説というのも、もう古いですけど、そのへんの匂いがするというか、時代性が少し新しくなった気がするんです。
キャラデザを始める時に、あまりイケてない女の子が綺麗になっていく、という方向性も考えたんですが、AKBなんて最初から全員可愛いんだから
ここは普通に全員初めから可愛くしようと。そう決めて最初に出てきたキャラですから、とにかく印象が強いです。
――他に気になるキャラは?
石:杏はものすごく注目されたキャラで、コンテンツを大きく広めた要因という意味で、印象深いですね。やはり良いキャラは伸びていく感じがしますよね。
まだまだ杏は伸びるんだろうなと、思わせるところがいいなと思いますね。AKBでもメンバーは多くても、選抜メンバーが先頭に立たないと
グループ全体が沈んでしまうように、ある程度は、誰かがこの『シンデレラ』の顔なのかっていう所を決めておかないとボケちゃうと思うんですね。
なので、ある程度選抜したキャラはこのコンテンツの顔として、頑張っていってもらおうと思います。
――30歳のキャラって誰のデザインが最初に上がったんですか?
石:高橋さんですね。モデルの人もいらっしゃいますが、それは公然の秘密です(笑)。
色気を全面に押し出せるキャラを登場させられたのも新鮮でした。この辺りの20代オーバーキャラのおかげでキャラバリエーションが広がった気がします。
――お酒が好きなキャラなんていうのも新鮮ですよね。
石:『アイマス』では一度、貴音が世界観の枠を破壊したところがあったので、まあこれくらいは大丈夫かなと思いました。
貴音は本当にギリギリセーフかな?いやアウトかなっていうキャラだったんです。喋り方、容姿、全てが謎の人の貴音でも受け入れて貰えたので
今回誰が来ても大きくは『アイマス』として、受け止めてもらえるかなと。まあとはいっても、凛のようなど真ん中ストレートは、バランス上必要になってくるんですが。
――かな子も王道と言えば王道ですが、彼女も割とデザインは初期?
石:かな子も割と初期デザインですね。最初に5キャラ、次に20キャラくらいまで増えて。そこからどんどん増えていって……という流れでした。
【ゲーム?サービス?】
――ソーシャル“ゲーム”と呼ばれていても、継続的なサービスという一面もあると思うのですが、その辺りについては?
石:僕は割とゲームというものを広い範囲で捉えているタイプです。アケの『アイマス』もそこに入っているんですけど
携帯にメールが入って明日来てくれと呼ばれてゲーセンにいく。その『ゲーセンに行く』所が既にゲームだと思うんですよね。
そういった人生にちょっとしたスパイスとか、ワクワクドキドキを提供するものは、大きく言ってしまえば全部ゲームなんじゃない?
っていうくらいの気持ちがあるんです。『アイマス』自体も、アケの頃からプレイしている人の生活を変えてしまうものを目指していた所があるので
『シンデレラ』を遊んでくれる人たちも、ゲームをやっている時間だけじゃなくて、やっていない時間も色々と思いを馳せたり
キャラのことを考えたりして欲しいですね。最初にゲームをスタートする感じはあっても、ゲームオーバーはこのゲームには無いですよね。
『アイマス』もゲーム毎にEDはありますけど、『アイマス』全体としては未だにゲームオーバーを意識して作っていないので
何か『アイマス』はずっと続いてるな、みたいな感覚はありますよね。でも楽しめなくなったらゲームではなくなる
修行というか苦痛はよくないことだと思っているので、適度な距離で『アイマス』と付き合って欲しいですね。
――ゲームは一本出したら終わりという感じがありますが、『アイマス』は色々とコンテンツがあって、それを含めてのサービスということですね。
石:ですね。元々アケのゲームだからそういうイメージで続けてきたのが、功を奏したんだと思います。ソフトを売ったら終わりじゃなくて
むしろそこからが勝負という感覚が未だに強いんですよ。だからサービスと言ったらサービスだし、僕の考えるゲームというものは、こっち方向なのかなと。

【音で広がる世界】
――『シンデレラ』を始めてよかった点は?
石:『アイマス』は長いが故に入りにくさを感じ方もいらっしゃると思うんです。歴史が深すぎて、今から春香を好きになってもキャラグッズが多すぎてついていけないとか
今までの歴史を知らないと申し訳ない気持ちになるから、やらない方が楽だみたいな気持ちもあるでしょう。
そういう所が良くも悪くも破壊されたところがあるのは良いところだと思っています。『アニマス』で何となく知って、PS3版はちょっと値段が高いっていう人でも
『シンデレラ』はとりあえず無料でプレイできるから、やってみたという人もいらっしゃいます。またずっと前にはゲームをやっていたけど
最近ゲームはやっていなかったなって人が再燃していたりとか。『アイマス』は元々皆が可愛くてニコニコしているだけのゲームという訳ではなくて
かなり殺伐としている世界観なんだってことを思い出した人も、沢山いらっしゃったようです。一部ではありますが、やっぱ『アイマス』はこの殺伐感だなって(笑)。
サービスイン初期は衣装が集まった途端に消えていって全然優しくない!みたいな。ただ、そういうのが苦手な人も当然いらっしゃると思いますので
脇道の展開も積極的にやっていこうと考えたわけです。
――CDも早い段階で出ていますね。
石:今回テキストの容量制限があったところ、無理を言って増やしてもらったんですけど、それでも台詞はもっとあった方が嬉しいと思うんです。
ただやっぱり限界があって、ユーザーにもっとキャラを好きになってもらうために、アイドルの種類をいっぱい出して、それだけで終わりっていう事にはしたくなかったんです。
だから、やはり一気にキャラを立たせる為に、視覚だけではなく聴覚方面でも攻めようと。声が付くっていうのは重要な要素です。
あとは歌があるとアイドルとして立つ感じがありますし。一番最初の企画立ち上げ段階でも構想自体は何となくありましたけど。
――サービス開始前だと、どう転ぶか分からないですもんね。
石:誰にも知られずにひっそりと消えていくようなゲームになってしまったら、流石に作れないなと思っていたんですけど、スマホでのサービスが開始されたタイミングで
行けるかなと思ったんです。あのタイミングですごくプレイヤーが増えたんですよ。ソーシャルは動きが速いので、やると決めたらすぐやるという感じで
バタバタして作っていたので、CDも作ると決めたらすぐキャラを決めて、仕様を決めて……って感じでした。でもそれもある意味では良かった。
作ると決めたらすぐ作れるような体制があったので。これまでの無茶なリリース計画の数々が、今回も行けるなって思わせてくれましたね(笑)。
――ああ……(笑)
石:でもどのキャラCDを出すのかっていう所は悩みました。旬の入れ替わりが激しすぎるんです。今これが旬って言われているけど
CD発売月に大丈夫かが分からなかったんですよ。さすがに動き始めてからリリースまでは、3ヶ月ぐらいはかかってしまうので
若干の不安はありました。だから人気があると考えるキャラはいれつつも、それだけに捉われず、色々なバランスを考えて
第一弾はこれでいいかと思える5人で決定しました。
――5枚同時というのは、フロントに5人が表示されるから、という話を伺った気がするんですが。
石:それはもう最初から決めていました。出すなら単位は5だと。ただ奇数なのでどうしても1つだけ少ないタイプが出てくるんです。
かと言って割り切って全部クールのアイドル、というのもできないですし。結果「キュート、クール」とそれぞれの枠から2人、パッションから1人選びました。
一発目は5人のバランスが重要かなと思っていたので。今回は横軸マトリクスの年齢感も重要な気がしたので、そこも含めようかと。
5人含めて『シンデレラ』を表さないとダメだ!みたいな考えでした。5人を見て、この世界観はなんとなくこういうものかなって、漠然と脳内に入る手法でいいかなって。

――音関係でさらにやってみたいことは?
石:ドラマはやっぱりないとダメかなと思って。ドラマを聴いてキャラの事を皆が分かったら、今まで見てきたアイドルのテキストから
浮いて出るものがあると言うか、こんな喋り方するみたいな想像が出来る様になるかなって。“プロデューサー”っていう発音一つでも
違いますしね。そこは大事かなって思うんですよね。
――5人それぞれ個性がありますよね。
石:あと最初、コロムビアさんにはCDをワンコインで出してってお願いしたんですよ(笑)。500円でやってください!みたいなことを言って(笑)。
でも500円は色々キツイって言われて。じゃあ600円でって(笑)。とにかく最初は5枚でアルバム一枚分以下にしたかったんです。
まあ結果的には皆様のお陰で売れ行きも大変良かったので胸を撫で下ろしています。
【シンデレラストーリーの続き】
――今後『シンデレラ』で注目して欲しいところは?
石:『シンデレラ』は『アイマス』だと思って最初からちゃんと企画しつつ運営もしています。ですから、こちらも今後ますます
キャラを楽しんでいただける機会を準備していくつもりです。それて『シンデレラ』をプレイしてくれている人には
『アイマス』の家庭用ゲームをプレイしてもらいたいですし、『アイマス』のアニメを見たり、ゲームをプレイしてくれている人には
『シンデレラ』をプレイしてもらえれば…とは思っています。ただ、もちろん個人的には全ての『アイマス』をやって欲しいんですが
あまりにも多岐に渡って色々な分野に手を伸ばしているので、実際は難しいだろうなと思っています。なので『出来るところだけやってください』
というのが、僕個人の本音です。ちなみに765プロのアイドルがこれから出てこなくなるということは全く無いですし考えていません。
『シンデレラ』は、あくまでも765プロをカメラの中心に据えて、そのカメラを引いた構図から見たように作っているんです。
時々は765プロアイドル以外のアイドルにも焦点が行きますが、カメラを引くと元通りみたいな。
ですから、これからも『シンデレラ』を楽しんでもらいつつも、『アイマス』の色々なコンテンツに手を伸ばしていってもらって
どっぷりと『アイマス』世界を楽しんでもらいたいですね。
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening