バック・ドロップ・ギア 3話


バックドロップ・ギア 3話

■比率 ♂4:3♀

※比率は目安です。全員の負担が少なくなる比率を記載しております。



□役表□

〇斉藤玲児♂(さいとうれいじ)20代後半
 元暴力団担当の刑事。過去に闇を抱えているタイプの主人公。
 高身長のイケメンをイメージして演技してもらえると。
 時々熱血。


〇白塚 澪♀(しらつかみお)20代前半
 ふわふわしたOL。素直で穏やか。
 清楚系王道ヒロイン。
 綺麗で可愛い私立大学のテニサーにいる感じをイメージして演技してもらえると。


〇佐山 茜♀(さやまあかね)
 元レディース暴走族総長。
 口が悪いがちょろい。美人。玲児の同級生。
 田舎のヤンキーをイメージして演技してもらえると。


〇安藤♂20歳から23歳くらい ※兼可
 ネオン街のキャッチ。態度と口調が軽い。
 玲児とは昔から仲が良い

〇大場♂or♀40代後半から50歳くらい ※兼可
 玲児の親変わり。とにかく優しい。
 かつてはバーテン、今は喫茶店のマスター

〇白金♂60代
 「白金組」の組長。
  義理と人情を重んじる昔ながらのヤクザ。関西弁
  普段は優しいが
 
〇櫻田♂ ※兼可
 「白金組」構成員。組長に忠誠を誓い仁義を重んじる。
  若いので言動に軽さがあるが組長からの信頼は厚い。

〇凛太郎♀
 5歳くらいの男の子

・父♂
・母♀
・友人♂

・宗司♂
 斉藤の父、刑事

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OP

◆喫茶大場 数年前
◇寝ている幼少期のレイジを見ながら話す大場と宗司

宗司 今日も夕飯、ありがとうな。
大場 気にしないでよ。宗司くん。にしても大きくなったねー。レイジくん。
宗司 そうだな。親の俺でもびっくりするほどびっくりするほどのスピードで大きくなりやがる。
大場 ふふふ。すっかりパパだね・・・。
宗司 母親がいなくてもこんなにしっかり成長するんだ。春香がいたらきっともっと立派に・・・
大場 またそんな険しい顔して。春香さんのことは残念だったけど、レイジくんは今でも十分幸せだよ。
宗司 だと、いいんだけどな。
大場 レイジくんもお父さんが大好きみたいだよ?
宗司 ん?
大場 レイジくん。大きくなったらお父さんみたいな刑事さんになりたいんだって。
宗司 ふふ。そうか。

◇レイジを撫でる



3話

◆喫茶大場 前

安藤 レイジさーん!おはようございます!
斉藤 もう十時だぞ。
安藤 俺らからしたらおはようの時間なんですよ!
斉藤 はいはい
安藤 今日こそ遊んでってくださいよー!!
斉藤 行かん。つーかなんだ?お前の店。また名前変わったのか?「クレオパトラのような美しい女性は男性にいやらしいことをします」
   google翻訳みてぇだな。
安藤 オーナーが中国人だからっすかね?
斉藤 だからって、あんまりだろ・・・

◇櫻田登場

櫻田 レイジさん。おじきがお呼びです。
斉藤 あぁ、白金さんとこの。
櫻田 聞きました。刑事辞めたんですね。
斉藤 そうなんです、だからもう白金さんと付き合うことも・・・
櫻田 だからこそ頼みたいことがあるとおっしゃってました。
斉藤 人の話聞いてます?
櫻田 お願いします。
斉藤 はぁ・・・
安藤 いってらっしゃい!




◆白金組 事務所

櫻田 レイジさん連れてきました。
白金 おぉ、レイジー。就活中のとこ、すまんな。
斉藤 いえ
白金 ちょっと頼みがあってな。まぁ立ち話もなんやし、座りや。
斉藤 はい



白金 実はな、東京の本部に行かへんといかんくなってしもてな。
斉藤 はぁ
白金 そいでな、ちょっと預かってほしいものがあんねん。
斉藤 いや、櫻田さんとかその他の人たちに頼めばいいじゃないですか。
白金 櫻田も予定あんねんな?
櫻田 はい。サンレオ・ピュールランドに行きます、
斉藤 えらくメルヘンなところへ・・・
櫻田 嫁がサンレオファンでして。どうせ東京に行くなら一緒にと。
斉藤 なるほど。
白金 ワシも櫻田もおらへんかったらどの道なんもでけへんからな。たまには全面定休日って訳や。
斉藤 ヤクザも定休日があるんすね。いや、けどですね。ヤクザから物預かるって。なんか怖いんですけど。
白金 そんな心配せんで大丈夫や。おい。連れてこい。
斉藤 え?生き物ですか?



◇凛太郎登場

白金 おぉ、来た来た。
凛太 ・・・。
白金 ほら、お兄ちゃんにこんにちはって
凛太 こんにちは。
斉藤 こ、こんにちは。
白金 アンパンマン面白かったか?
凛太 アンパンマンじゃないよ?仮面ライダー
白金 ん?ようわからんけど面白かったか?
凛太 うん
白金 そうかそうか。
斉藤 え?えーっと。お孫さんかなんかですか?
櫻田 担保です。
斉藤 担保!?
白金 まぁ、人質ってやつやな。
斉藤 物騒にもほどがある・・・
白金 この間、取り立てに行ったんやけど。



白金 そこの家は借金がかなり膨れ上がってもうてな。そういう家はなんかしら金目の物を預かって払わせるようにするのがうちのやり方なんやけど
   なーんもあらへん家でな。
斉藤 それで、子供ですか!?誘拐じゃないっすか!
櫻田 ちゃんとご両親には許可をいただいてます。
斉藤 ご両親・・・。
白金 まぁ、払えんかったときはウチでこいつを育てんのもありかなーとおもてな。
斉藤 孫のようにかわいがってますもんね・・・
白金 とりあえず、今日から2,3日預かってくれや。ほら、凛太。レイジお兄ちゃんによろしくって。
凛太 よろしくお願いします。
斉藤 ・・・。



櫻田 これ、凛太郎が持ってきた荷物と親の住所です。(リュックを渡す)
斉藤 あ、はい。
櫻田 住所はあくまでも緊急用ですのでくれぐれも親には会わせないようにお願いします。
斉藤 はぁ・・・
櫻田 中途半端なことしてしますと、返済意欲がなくなってしまいますので。
   おじきもそのつもりのようなので。
斉藤 わかりました。
櫻田 あと、これもよかったら。(パンフレットを渡す)
斉藤 ・・・。なんすか?これ・・・
櫻田 サンレオ・ピューレランドのパンフレットです。
斉藤 いらないんですが・・・
櫻田 僕らが行くので
斉藤 浮かれてるとかのレベルじゃねーぞ!



◆喫茶大場 前

安藤 おかえりなさい、レイジさん!
斉藤 ああ。
安藤 あれ?なんかちっこいのついてきてますけど・・・
斉藤 あぁ。こいつは・・・
凛太 ・・・
斉藤 ちょっと、2、3日預かることになって。
安藤 ほえー。親戚かなんかっすか?
斉藤 まぁ、そんなとこだ。
安藤 かわいいっすねー。名前はなんていうの?
凛太 凛太郎・・・。
安藤 かっこいい名前だねー!
凛太 ありがと。
安藤 でも、レイジさん。子守りだったら女の人にも協力してもらったほうがいいと思いますよ?
斉藤 なるほど。それもそうか。
凛太 ・・・?
安藤 うんうん!
斉藤 あ、あと。これ。いるか?
安藤 パンフレット?しかもサンレオ?
斉藤 もらったんだけど、いらねーし。店の子にでも渡してくれ。
安藤 え?あ、ありがとうございます。


◆メイド喫茶 ホワイトエプロン

メイド おかえりなさいませ!ご主人様!
白塚 って!かわいい!!!!
佐山 レイジ!なんだ?このちっこいの。
斉藤 ちょっと2、3日預かることになってな。
白塚 かわいい!!(凛太を抱きしめる)
凛太 痛いよ、お姉ちゃん
斉藤 子守りなら女の人に協力してもらったほうがいいって友達に言われたんだが・・・

白塚 ジュース飲む?お菓子は?
凛太 の、飲む

斉藤 正解だったみたいだな・・・
佐山 あ、あぁ・・・



白塚 凛太郎くーん!次これ着てみてー!
凛太 また!?やだよー!

佐山 で、なんなんだ?あいつ。
斉藤 あぁ。白金さんのとこから預かってきた。
佐山 おいおいおいおい、マジかよ・・・。白金のおっさんは確かに私たちには優しいけど、ヤクザだぜ?
   あんまり関わんねーほうがいいってずっと言ってるじゃねーか。
斉藤 まぁな・・・
佐山 刑事になりたての頃に仲良くなったんだっけ?

白塚 凛太郎くん!可愛いすぎ!!(抱きしめる)
凛太 んー!んーんー!(苦しそうに)

斉藤 今じゃ俺も刑事じゃなくなった訳だしな
佐山 そうだぞ?もう一般人だ。

白塚 あ!凛太郎くんお口にお菓子付いてるよ?
凛太 ふぇ!?あ・・・
白塚 ふふふ

斉藤 ちょっとまってもらっていい???
佐山 私もそう思ってた!!
斉藤 白塚さん!
白塚 え?なんですか?
斉藤 なんか雰囲気があれだったから!
佐山 あれだった!!
白塚 あれとは・・・?
佐山 あれだった!あれだった!エロ漫画で見る奴だった!
白塚 えろ!?
凛太 ねぇレイジ兄ちゃん、僕のリュックは?
斉藤 あぁ。はいよ。
凛太 よかった。あった。(リュックからぬいぐるみを取り出す)
斉藤 とったりしないっつの
白塚 なーにそれ?
凛太 ぬいぐるみ
白塚 かわいいねー
凛太 うん。ママとパパがくれた。
斉藤 そっか・・・
佐山 ふーん
凛太 僕の宝物なんだ・・・。
白塚 凛太郎くん!(抱きしめる)
凛太 え!?んー(苦しそうに)

佐山 レイジ。どんな理由で預かったのかわかんねーけど。ちゃんと親のとこに返してやれ。
斉藤 そうだな。

◆喫茶大場

斉藤 今、帰りました。
大場 お帰りー!ってなんかちっこいのいる!
凛太 こんばんわ
斉藤 すみません。色々とありまして・・・



大場 なるほどねー。
斉藤 2、3日だけ、よろしくおねがいします。
大場 ごはんは食べたの?
凛太 うん。おねえちゃんのとこで
大場 お姉ちゃん?
斉藤 佐山のとこです。
大場 ふーん。レイジくんにしては考えたねー。凛太郎くんもおねえちゃん達と遊んだほうが楽しいもんね?
凛太 ううん。ほんとはもっとレイジ兄ちゃんと遊びたかった。
大場 あら
斉藤 ・・・
凛太 お父さんいつもあんまり遊んでくれないから。レイジ兄ちゃんともっと遊びたかった。
大場 そっか!じゃあさ!明日は二人で遊んできな?
斉藤 え?
凛太 うん。遊びたい!
大場 公園でも行ってきなよ!お弁当作ってあげるから!
凛太 お弁当!
斉藤 公園。行きたいのか?
凛太 うん!
大場 明後日だったら勾当台公園(こうとうだいこうえん)でフリーマーケットやってるんだけどねー。
斉藤 そういえばそんな時期ですね。
大場 明日も天気良いみたいだし。行ってきな?
凛太 わかった!
大場 それなら今日はもう遅いし、寝たほうがいいね。レイジくんのベッド貸してあげな?
斉藤 はい。俺は店のソファー借りてもいいですか?
大場 うんうん。そうしよ。



斉藤 凛太郎、寝ました。
大場 疲れてたんでしょ?慣れないとこにいたら大人でも疲れるからねー。
斉藤 あの、大場さん。
大場 んー?
斉藤 この子の親。なにしてんすかね?
大場 んー
斉藤 俺は親がいなかったらわからないですけど。金がないからって手放すものなんですか?そんなに軽いものなんですか?親にとっての子供って。
大場 うーん。それはちょっと違うかな?
斉藤 違う?
大場 どんな親でもね。子供は大切な存在だと思うよ?大事で愛おしくて。それでいて変わりがいない。
斉藤 だったら。
大場 だからこそ、決断しなくちゃいけないこともあるんだよ。
斉藤 俺には・・・よくわかりません。
大場 それはレイジくんが早くに親を亡くしたから?それとも、レイジくんに子供がいないから?
斉藤 きっと、どっちもだと思います。
大場 じゃあさ。会ってきたらいいよ。凛太郎くんの親と。
斉藤 え?でも白金さんに親とは会わすなって。
大場 それは凛太郎くんを。でしょ?
斉藤 ・・・。
大場 ふふふ。その顔。
斉藤 え?
大場 レイジくんのお父さんも、なんかに気づいた時。その顔してたなーって。
   その顔をした後いっつも飛び出していくんだよ。そして事件を解決してた。
   レイジくん。君が今ここにいるってことは、君には確かに両親がいたってことなんだよ。
   母親は命を懸けて、父親はそれを全力で応援して・・・。そうやって生まれてきた子供が大切じゃない親なんていないんじゃないかな?
斉藤 ・・・。
大場 それは凛太郎くんの両親だってそうだと思うよ?
斉藤 ちょっと、行ってきます。
大場 お父さんと同じだ(小声で笑いながら)
斉藤 え?
大場 ううん。なんでもないよ。気を付けてね!



◆古いアパート 
◇インターホンを鳴らす斉藤

斉藤 こんにちは
父  は、はい・・・
斉藤 夜分遅くにすみません
父  えーっと、どなたでしょうか
斉藤 実は・・・



◇父と母が並んでソファーに座る

父  凛太郎は元気なんですね・・・
斉藤 はい。時々さみしそうにしますが、元気です。
父  凛太郎に会わせてもらえませんか?
斉藤 それは・・・。できません。
父  ・・・
斉藤 どうして、凛太郎君を渡したんですか?
父  あいつには何不自由ない生活をしてほしいんです。
斉藤 どういうことですか?
父  私は会社を経営していました。軌道に乗るまではすごく大変でしたが、妻と二人で必死に働きました。
   おかげで経営は順調で、そのときできたのが凛太郎です。
あいつが小学生に入るとき、私の会社はリーマンショックの影響で大きく傾きました。
   経営が回らなくなって資金を融資してもらったのがあの白金組です。
   自分でもバカなことをしたと思っています。しかし、当時の私の会社の状態では、ああいったところくらいしか融資してくれませんでした。
斉藤 たとえそうだとしても、凛太郎を手放す理由にはならないと思います。
父  あなたにわかりますか?段々と苦しくなっていく生活の惨めさが。
斉藤 ・・・
父  あなたにわかりますか?愛する人の生活が自分のせいで苦しくなっていく悔しさが。
斉藤 ・・・
父  私は会社を畳みました。そんなとき古い友人が誘ってくれたんです。自分の会社のとある部署を任せたいと。
   そうすれば元の生活に戻れないまでも、親子三人で暮らすのに不自由はしなくなります。
斉藤 じゃあどうして、凛太郎を
父  友人からの連絡が遅れているんです、そうこうしているうちに支払いの期日が来ました。
   凛太郎を人質にすれば支払いの期日を伸ばしてくれるということでした。
斉藤 警察に言うのは考えなかったのですか?
父  そんなことをして友人にバレたら。部長の話もなくなってしまいます!
斉藤 だからって!
父  もうすぐなんです!もうすぐまた親子三人で前みたいに暮らせるようになるんです。
   友人から連絡が来て、2、3日もすれば契約金が・・・
斉藤 そうすれば凛太郎も元に戻れるんですね。
父  はい。それに絶対、危害は加えないという約束で、凛太郎を預けました。
   友人から連絡がきたらすぐに迎えにいきます。
斉藤 わかりました。絶対に迎えに来てくださいね。
父  はい。必ず。




◆公園

斉藤 良い天気だなー。ここらへんで弁当食べるか。
凛太 ・・・。ここ来たことある。
斉藤 ん?
凛太 パパとママと来たことがある
斉藤 そっか・・・
凛太 お外にいっぱいお店があったの
斉藤 外に?フリーマーケットか。
凛太 うん(人形をリュックから取り出す)
斉藤 こいつも連れてきたのか
凛太 うん。ここで買ってもらったんだ。(人形を出しながら)
斉藤 ふーん
凛太 目に僕の名前が書いてあるんだって。僕はわかんないけど。
斉藤 名前?
凛太 うん。(人形を渡す)
斉藤 ほんとだ。目に「R」ってかいてあるな。凛太郎のRか。
凛太 また、ここにみんなで来れるかな?
斉藤 ・・・
凛太 ここにいたらパパとママは来てくれるかな?
斉藤 パパとママに会いたいか?
凛太 うん・・・会いたい。

◇車が止まる
◇白金登場

白金 おーい、レイジー。
斉藤 白金さん
櫻田 すみません、予定より早く帰れることになったので。
斉藤 そうですか
白金 凛太郎ぉー。元気やったかー?
凛太 うん・・・
櫻田 ご迷惑をおかけしました。
斉藤 いえ・・・
凛太 ・・・
白金 よーし、おじさんの家に帰るかー!
凛太 ・・・
櫻田 ?
白金 どした?随分元気なくなってもうてるけど・・・
凛太 レイジ兄ちゃんともっと遊びたかった。
斉藤 凛太郎・・・
白金 そうか。わかった。もともと今日までレイジんとこにいる予定やったからな。
   今日はレイジんとこに泊まりいな?
凛太 うん





白金 ほな、たのんだで?レイジ。
斉藤 はい。
白金 随分と気に入られてるみたいやけど、あくまでこいつは人質。言い換えれば商品や。
   変な気起こすんとちゃうぞ?
斉藤 わかってます

◇白金、車へ移動

櫻田 レイジさん。実は明日が最後の返済期限なんです。
斉藤 どういうことですか?
櫻田 明日までに負債の半分、3000万を返済できないと凛太郎はおじきの養子になります。
斉藤 そんな。どうして・・・
櫻田 我々はヤクザです。ケジメを付けないといけないときはしっかり付けます。
斉藤 けど!
櫻田 今回、おじきが本部に呼ばれた理由はウチの組の売り上げが落ち込んでいることが原因です。
   おじきは昔かたぎの商売をやり続けてます。仁義を重んじるやりかたってやつですね。
   だから取り立てもほかの組に比べれば甘い。そうなると必然的に売り上げも下がってしまうんです。
   今回だってかなり返済の期限を延ばしてますし、もう待てなくなってしまいました。
斉藤 けど明日って早すぎませんか・・・
櫻田 ほんとは大事な人質の凛太郎をすぐにでも返してもらわないといけないんです。
   けど、白金さんはまだやさしくて・・・
斉藤 ・・・
白金 なにやっとんねん、櫻田!はよいくぞー!
櫻田 はいっ!今行きます!
斉藤 でも、どうしてそれを俺に?
櫻田 レイジさんならなんとかしてくれるかと思って。
斉藤 は?
櫻田 おじきも俺も、ほんとはこんなことしたくないんです。
斉藤 櫻田さんも白金さんも、ヤクザ向いてませんね
櫻田 よく言われます

◆古いアパート
◇電話をしている父

父  そんな!!話と違うじゃないか!!!!
友人 飲みの席での話じゃないか・・・。まさか本気にしてるとは思わなくて。
父  ・・・
友人 すまん、力になれなくて・・・。
父  ・・・

◇電話が切れる

父 ・・・
母 あなた?大丈夫?明日が期限よね?
父 ・・・
母 大丈夫よね!?あなた・・・?あなた!?


◆喫茶大場 前
◇掃除をしている斉藤

安藤 おつかれさまでーす
斉藤 よぉ。
安藤 いつにも増して、テンション低いっすねぇー。ちっこいのは家かえったんすか?
斉藤 今日帰ることになってるんだ。今は部屋で寝てる。
安藤 あ、そういえば。これ(パンフレットを取り出す)
斉藤 あぁ。
安藤 うちの店の女の子たちがこのページ見て盛り上がってたんすよ。
斉藤 ん?
安藤 このキャラクター知ってますよね?
斉藤 あぁ。さすがの俺も知ってるな。
安藤 リリィちゃん。ご当地リリィーちゃんとかで有名ですよねー。
   パンフレットに書いてあったんすけど、リリィちゃんはサンレオが一番最初に作ったキャラクターなんです。
   リリィちゃんの特徴は瞳に「L」って文字が入ってるんですけど。
   まだ手作りで人形を作ってた頃にデザイナーが間違って「R」の文字を入れてしまったものがあるらしいんですよ。
斉藤 ふーん
安藤 それが世界にたった2体しかなくて3000万円前後で取引されてるんですって。これです。(パンフレットを見せる)
斉藤 ほーん。ん?これって・・・
安藤 はい?
斉藤 ちょっと行ってくる!
安藤 レイジさん?

◆喫茶大場 中
斉藤 大場さん!凛太郎は?
大場 え?部屋にいないの?

◇部屋を見に行く斉藤。しかし凛太郎はいない。

斉藤 くっそ、どこ行ったんだ?

◆メイド喫茶 ホワイトエプロン

斉藤 凛太郎来てませんか?
白塚 来てませんよ?どうかしたんですか?
斉藤 いや・・・。ありがとう
白塚 斉藤さん!?

◇店を出る斉藤

斉藤 あいつが行きそうな場所・・・  

◇回想

凛太 ここにいたらパパとママは来てくれるかな?

◇回想終了

斉藤 公園・・・!


◆公園
◇ベンチに座る凛太郎、走ってくる斉藤
◇公園はフリーマーケットで賑わっている

斉藤 凛太郎!
凛太 レイジにいちゃん。
斉藤 急にいなくなったりしたらびっくりするだろ?
凛太 ごめんなさい。
斉藤 どうしてこんなことしたんだ?
凛太 もしかしたらパパとママがいるかもしれないと思って。
斉藤 凛太郎・・・
凛太 レイジにいちゃん。パパとママに会いたい。
斉藤 凛太郎。それ、貸してくれ。
凛太 ?(ぬいぐるみを渡す)
斉藤 パパとママは大事か?
凛太 え?
斉藤 大事なものを守るときは他の大事なものを手放さないといけないことがあるんだ
凛太 大事なもの。
斉藤 この人形・・・。手放せるか?
凛太 わかった。人形あげるから、パパとママのところに帰りたい。
斉藤 おうちに帰るためには。これから行くところでどんなに怖くても、絶対お前の気持ちを伝えないといけない。
凛太 がんばる
斉藤 約束できるなら俺が絶対返してやる。
凛太 うん!約束する!
斉藤 行くぞ

◆白金組 事務所
◇ソファーに座る白金、向かい合う斉藤、凛太郎

白金 おう、来たか
斉藤 ・・・
凛太 ・・・
白金 なんやふたりして怖い顔して
櫻田 凛太郎。レイジさんのとこ、楽しかったか?
凛太 楽しかった。もっと遊びたかった。
白金 ははは。また遊んでもらったらええ。
斉藤 凛太郎。
凛太 ・・・。うん。僕、パパとママのとこに帰りたい。
白金 ・・・
櫻田 ・・・
白金 そんなこといままでいわへんかったやろ。どないした?凛太郎。
斉藤 白金さん。凛太郎を家に帰してやって下さい。
白金 ・・・。レイジまでなにわけわからんことぬかしてんや?
凛太 家に帰りたい
白金 レイジ・・・。お前なぁ・・・
斉藤 こいつには何の罪もありません、お願いします返してやってください。
白金 おい!レイジぃ!お前なにあまっちょろいことぬかしとんのや!!
   なんや?ちょっと預かっただけで父親気どりか?
   ガキん頃から親おらへんかったお前に何がわかんのや?あぁ!?
斉藤 わかんねーよ!!
櫻田 レイジさん!それ以上は!
斉藤 わかるわけねーだろ。わけわかんねーよ。
   親にとって子供は大事なもんなんだろ?じゃあなんで簡単に手放すんだ?
   大事だからこそ手放す?ふざけんな。
白金 わからんならだまっとけ!
斉藤 黙ってられっかよ!こいつも俺と同じみてーに親の気持ちがわかんねー大人になっちまうじゃねーかよ!
   もう罪のない子供が不幸になるのを見たくないんだよ!!
白金 まだあのことを・・・。
櫻田 すみませんおじき。レイジさん、今帰らせますんで。
白金 待てや、レイジ。
斉藤 ・・・
白金 ワシにメンチ切ったんや、なんか考えはあるんやろな?どう落とし前つけんねや。
斉藤 これです。(ぬいぐるみを渡す)
櫻田 これは・・・?
白金 人を馬鹿にすんのもいい加減に・・・
斉藤 これは3000万以上で売れます
櫻田 もしかして?(ぬいぐるみを取る)
斉藤 サンレオ好きな奥さんに聞いてみてください。
白金 どういうことや
櫻田 瞳を見てください。
白金 あ?
櫻田 「R」・・・。嫁に聞いたことがあります、これは売れます。
白金 ほーん。凛太郎、こいつ大事なもんなんやろ?ええんか?おじさんに渡しても。
凛太 大事なものを守るときは大事なものを渡さないといけないから。
白金 そうか
斉藤 今日の返済額は3000万ですよね?
白金 あぁ。わかった。凛太郎、帰ってええ。
凛太 やった!レイジにいちゃん!!
斉藤 あぁ。


◆古いアパート 前

凛太 ばいばい、レイジにいちゃん。
斉藤 凛太郎、パパとママを大事にするんだぞ?
凛太 うん!
斉藤 じゃあな。
凛太 レイジにいちゃん。もう会えないの?
斉藤 またお姉ちゃんたちのとこ遊びに行こうな
凛太 うん!バイバイ!

◇走り出す凛太郎、反対方向に歩く斉藤

※遠くで聞こえる声
母 凛太郎!?
父 帰ってきたのか!?


3話「可愛い子には」

ed
◆公園
◇フリーマーケットで賑わっている

白金 よぉ、レイジ。探したで。
斉藤 白金さん・・・
白金 毎年よぉ賑わってるな。
斉藤 この間はすみませんでした。
白金 (無視して)ワシも柄やないことするもんちゃうな(つぶやく)
斉藤 え?
櫻田 レイジさん、少しいいですか?
斉藤 はい?
白金 ・・・
櫻田 はい。

◇歩く斉藤、櫻田、白金。ひとつのフリーマーケットの店で止まる

斉藤 ん?
櫻田 見てください
斉藤 これは・・・

◇たくさん並ぶリリィちゃんのぬいぐるみ

櫻田 あのぬいぐるみ、偽物だったみたいです。
斉藤 そんな・・・。
櫻田 ここの店の人が趣味で自分のイニシャルを目に入れてるだけみたいです。
斉藤 そんな、じゃあ凛太郎は・・・
櫻田 いつも通りのうちのペースで回収するそうです。凛太郎の父親も就職先が見つかったようですし。
白金 安心せぇ。攫ったりせぇへんわ。
斉藤 どうして・・・
白金 よく言うやろ。孫は目に入れても痛くないって。

end
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writening