ダービースタリオン  Ver1.0.1


ダービースタリオン  Ver1.0.1 (12月24日)

競走馬育成シミュレーションゲーム


本作は1991年から続くダービースタリオンシリーズの最新作として発売された。
据置では2004年のダービースタリオン04以来、
ゲーム機としては2014年のダービースタリオンGOLD以来であり、
2016年のアイテム課金制Android・iOS版のダービースタリオンマスターズを含めても
ダビスタのファンにとって待望の新作であった。

ダービースタリオンは何をするゲームかというと、
生産者・馬主・調教師を兼ねる立場で
自分の経営する牧場で牝馬へ種付けし、生産した競走馬へ調教を行い、
レースへ出走することを繰り返すもので、明確な目的というものは存在しない。
・全てのG1レースで1着を取る
・ランダムに決定される初期牝馬から血統を繋いで強い馬を作る
・思い入れのある馬同士の血統で競争馬をレースに出す
・最高獲得賞金額の競走馬を作る。
・生産馬で実在する競走馬に勝利する。
・新人騎手に自分の馬でG1勝利をさせる
など多種多様な遊び方ができるが、目的の達成手段の多くはレースで1着を取ることに収束し
その最たるものが現実にある最高峰のG1レースで1着をとる(優勝する)ことである。

今作については、一応のエンディングが存在しており、条件は親子2代ダービー制覇。
G1レースの日本ダービーにおいて牡馬(オス馬)で優勝し、
さらにその馬を種牡馬(父親)として生産した競走馬で日本ダービーを優勝するというものだ。

実際の競馬についても血統は重視されるが、ダービースタリオンというゲームは
"血統"という点に重点を置いて作られてきたゲームである。

発売前は今作のセールスポイント
・正統進化した「ダービースタリオン」
・迫力のHD映像で送る美しく多彩なレースシーン
・シリーズ初の音声実況
・ファンファーレ、本馬場入場曲はJRAの楽曲を使用
・2020年度JRAレーシングプログラム対応
・種牡馬・繁殖牝馬・ライバル馬が最新データ
・ブリーダーズカップでライバルと対戦
の情報に、期待値は高まっていたが……。

開幕したのは牧場主たちの障害レースであった。
(※本作に障害レースはありません。)


第一障害 ロード地獄

本作の問題点として必ず上がるロード時間の長さである。
生産者・馬主・調教師のそれぞれのコマンドを行使するにはメイン画面とそれぞれの画面を行き来する
必要があり、その度画面上の景色が変更され、それぞれに10秒以上のロードを必要とする。

一週間の内容として
・育成馬のコメント確認×馬の数
・入厩馬のコメント確認×馬の数
・調教×2×馬の数
これに突発イベントが加わり、その都度ロードが発生する。
一週の作業が終わるとさらに長めのロードを挟み競馬レースが開催される。(完全なスキップは不可)

とあるプレイヤーの計測によると20時間のプレイ中3.5時間がロード時間であり
ゲームプレイ時間の17パーセントがロード画面ということになる。

この件に公式はコメントを出さず、寄越したものはカレンダー(PNG画像)だけであった。


第二障害 レース自体

長いロード時間が終わってやっと始まるレースであるが、レースの内容自体に不満がある。

先行した馬が壁となり進路がなくなると横にスライドするように移動するもしくは高速反復横跳びをする。
グラフィックが綺麗になったのだが、動きがそれについていっておらず、
牧場主の愛馬は馬ではなく、さながらUMAである。
UMAとなるとレースでは末脚が足りず勝つことは難しい。
ほぼすべてのレースで先行馬が壁となり、史実馬もUMAと化して
最後の直線では画面外後方へと追いやられるのである。
騎手の選択や作戦指示(レース内容の指示)でUMAは回避できるわけではなく
ただひたすら“お祈り”をするばかりである。

向上したグラフィックについては馬のみであり、スターターや騎手はさながら蝋人形である。
そして実況で表示されるキャラクターはデフォルメされており、画面内のちぐはぐ感が加速している。

またテンポについてだが、ゲートに収まった状態でのアナウンサーの口上(特に意味のない)はスキップ不可であり、
レースについても最後の直線はスキップ不可であるため、ロード時間の長さも相まってテンポの悪さが如実に表れている。

白熱したレースを期待していた牧場主は出来の悪い映画を見ているような気持ちになった上に、
愛馬は実力を出せずUMA化した上、現実で活躍した馬も見どころなく負けていく様を見せつけられるのである。


第三障害 ミッション

本作にはチャレンジミッションというものがあり、用意されたミッションをクリアしていく必要がある。
ミッションをクリアしてオーナーランクを上げなければ施設の拡張ができないためである。

施設とは馬のステータス上昇に効果を発揮するいわゆるバフである他、生産馬を種牡馬(父親)にするためには
オーナーランクで解放される馬柵の拡張権利を獲得する必要がある。

ゲームの醍醐味である血統を繋ぐためには避けてと通れないものであるが、全体的に厳しめに設定されている。
ミッション内容は、牧場の生産実績・指定レースの勝利・馬券の的中などである。

特に馬券についてクソ要素が大きい。
なぜならダービースタリオンの本筋である生産に絡まないばかりか、馬券購入の画面操作が不親切で面倒な上に、
例にもれずロード時間を必要とし、なおかつ条件が厳しいからである。

高額当選にしろ、的中回数にしろ、反復して購入する必要があるため時間を要し、購入資金が牧場経営を圧迫していく。
丁寧なことに金策で強い馬に一点買いをすればオッズ(倍率)が下がる仕様であり、ひたすら馬券を買うことを強いられるのだ。

血統を繋ぐ本懐を遂げるには、据置機なのにやり込みと苦行の区別がつかないネットゲームのようなことを牧場主はこなさねばならないのだ。


第四障害 バグ


繁殖牝馬の庭先取引イベントの発生がなくなるというバグである。
繁殖牝馬(母馬)は競走馬を引退させる・毎年2月に発生するセリのイベントで入手するほかこの庭先取引というイベントで購入することができる。
庭先取引で入手できる牝馬は高額であるがステータスも高い馬で、生産する馬に引き継がれるステータスの基礎となることから
血統を作成していく中でも重要なものである。

毎年確定で発生するものではない上、庭先取引は売る側が牝馬を指定するため、牧場主が選ぶことはできず、機会を失うだけで痛手なのだが、
保有する馬の出走登録と庭先取引イベントが重なると庭先取引のイベントが発生しなくなるバグがあった。

高額な繁殖牝馬を購入する資金が集まるころには、馬柵を拡張して保有馬の数が増えていることからほぼ毎週レースがある状態で
今作のエンディングである親子での日本ダービー制覇へ王手を掛けた状態で繁殖牝馬を入手できなくなるのだ。

進行不能ではないが、血統を作ることがメインのゲームで致命的である。



この他にも大小の不具合がある。
ダートは不向きと評価した調教師がまたダートのレースへ登録したり、
母馬へ種付け(1×2)しても配合についてポジティブなコメントをしたり、
ライバル馬の年代管理がされていなかったりだ。

不具合でないにしろ良くない点として
仮想配合のシステムが実用に適していなかったり、
出走馬の管理が煩雑だったり、
初心者向け解説が初心者向けでない内容だったりというところが挙げられる


今作のセールスポイントについて振り返る
・正統進化した「ダービースタリオン」
 ロード時間と不具合も進化
・迫力のHD映像で送る美しく多彩なレースシーン
 馬だけ綺麗な前残りワンパターンレース
・シリーズ初の音声実況
 導入される利点は特にない
・ファンファーレ、本馬場入場曲はJRAの楽曲を使用
 で?
・2020年度JRAレーシングプログラム対応
 で?
・種牡馬・繁殖牝馬・ライバル馬が最新データ
 データだけでその通りに活躍しない

・ブリーダーズカップでライバルと対戦
 →これのみが、そこそこ盛り上がっている


ダービースタリオンは一定の層に支持され続けているゲームである。
これは現実の競馬があってこそであり、シリーズとして前作と比べられ続ける宿命にある。
今作についてはグラフィックの向上やレースシステム等で前作を超えようと試みた結果
思うような出来にならず、中途半端に地雷原の中央へ着地したように感じられる。 

近年の実際の競馬場の高速馬場と芝生の荒れない外側有利を再現しようという試みは感じられるが、
開発期間の事情か技術力かそれを叶えられず、ロードが長くなったばかりか、
史実の馬の栄光に泥を塗り、システムは使いづらい。
ユーザーが求めているものは結果であり過程ではない。
今作は求められた形に収まらなかったモノのなれの果てではないだろうか。

障害を飛越した牧場主はゴール板を通過したその足でウマ娘へと駆け抜けていった。
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