剣、返して下さい!


題名:剣、返して下さい! 作者:草壁ツノ

----------------
<登場人物>
勇者:伝説の剣を誤って泉に落としてしまう。
女神:泉の女神。借金に悩まされている。
----------------- 
<役表>
勇者:不問
女神:女性
------------------
■注意点
女神がファービーの役をやるシーンがあります
----------------------
■台本の規約について
 過度なアドリブ×
 一人称の変更×
 作中のキャラクターの性別変更×
 人数変更×
 不問→演じる方自身の性別を問わない役、という意味
 両声の方→男性が女性役、女性が男性役を演じる〇
 (その際はほかの参加者の方に許可を貰った上でお願いします)
----------------------

台座に刺さった剣をなんとか抜こうとする青年

勇者:んんん......んむむむ......だあーッ!
   やった。やっと抜けたぞ! 苦労させやがって......
   それにしても、これが世界に一つしかない伝説の剣か。確かに神々しいな。
   この辺の束の部分の装飾とか結構凝ってるし。いやあ、わざわざこんな遠くまで来てよかったな。
   さて、目的は達成したし、家に帰るとするか。お、おわわ、うわっ!
   あっ(泉に落とす)

女神:チャポン

勇者:うわぁーッ! やっちまった! 泉に剣落としちまった!
   ええ......どうする、まぁまぁ深そうなんだけどこの泉......
   潜る? いや無理無理無理。オレカナヅチなんだよな。うわあ、どうしよう......

女神:パアアアア......

勇者:うわっ、まぶしっ!

女神:お困りですか、人の子よ

勇者:あ、あなたは、泉の女神様!?

女神:はい。

勇者:認めた。あのっ、あのっ! 俺、この泉に剣を落としてしまったんです。それで......

女神:みなまで言わなくても分かっております。人の子よ

勇者:自分が聞いたくせに。

女神:ンンッ。(咳払い)......あなたが落としたのはこの金の伝説の剣? それとも銀の伝説の剣?

勇者:……。

女神:どうかしましたか?

勇者:泥棒!

女神:えっ。

勇者:返せよ! 俺の伝説の剣!

女神:で、ですから、お好きな方を差し上げると......。

勇者:伝説の剣は世界に一本だけなの! そんな金とか銀とか偽物じゃなくてっ。
   そんな何本も伝説の剣があったら、日本で一番うまいラーメン屋が複数あるのと同じじゃん!

女神:複数ある方が選べてお得じゃないですか。

勇者:はーっ、駄目だこの女神。何も分かってない。

女神:むっ。なんですか、さっきから。私も良かれと思って金か銀か、選べるようにしてるんですよ?
   それなのにあまりにも失礼じゃないですか。

勇者:恩着せがましいな。いいですか女神様、俺はそんな偽物じゃなくて、元の伝説の剣を返せって言ってるんですよ。ほら、早く。

女神:……。

勇者:どうしたんですか。ほら早く。

女神:元の剣は返せません。

勇者:はぁ? なんで!

女神:なんでもです。

勇者:おかしいでしょ! 元の持ち主は俺なんですよ!

女神:あなたは引き抜いただけでしょう。それを言うなら、この辺りの土地は私のものです、それなら私が所有者です。

勇者:な、なんてやつだ……。

女神:別に、あなたがどちらの剣もいらないなら結構です。私は泉に帰りますから。あっ(紙が落ちる

勇者:なんだこれ? 督促(とくそく)状?

女神:あっ、それは!

勇者:……「泉の女神様、次の期限内に借金ピー百万円を返していただかないと、泉の水を全部抜きます。村長より」?

女神:……

勇者:こっちは?「伝説の武器、高価買取キャンペーン!当日買取、即金でお支払い!」

女神:……えっと。

勇者:なるほどね?

女神:ち、違う、誤解です! これは、あの。知り合いに頼まれて!

勇者:知り合いに。

女神:本当なんです、信じて下さい!

勇者:濁った嘘つきの目をしていますわ。

女神:違います、私は泉の女神なんですっ、清純さを売りに今までやってきて……!

勇者:そうですかそうですか、なるほど……。

女神:ああ、1ミリも信用していない顔……。

勇者:まぁ、いいんですよ僕は? 女神様に伝説の剣を盗まれた、と。街で言いふらしても。

女神:人でなし......私にどうしろって言うんですか?

勇者:だから、元の剣を返して下されば。

女神:それは出来ません。

勇者:なんでだよ!

女神:だって、お金に困ってるんですもん!

勇者:ぶっちゃけたなおい!

女神:ぶっちゃけますよ、だって私も切羽詰まってるんですから!

勇者:そもそもなんで女神が借金してるんだよ!

女神:それは......

勇者:理由によっては俺の対応も変わってくるぞ。

女神:......実は、この泉、結構噂になってるみたいで。

勇者:噂?

女神:物を落とすと金か銀になって帰ってくるって。

勇者:それで?

女神:そのお......あまりにも皆に感謝されるからぁ......その......嬉しくなっちゃってぇ......

勇者:それで?

女神:大盤振る舞いするうちに借金がかさんでしまいました。てへっ。

勇者:プルルルル あ、もしもし。村長さんですか? 実はですね、泉の――

女神:アーーッ! ちょっと待ってください、お願いしますっ!

勇者:うるさいな、完全にお前の自業自得だろ。とっとと泉の水全部抜かれちまえ。

女神:そこをなんとかぁ。お願いしますよ勇者様ぁ。私、この泉を追いやられたら住む場所無くなってしまうんですう。

勇者:知るか。大阪の道頓堀にでも引っ越ししろ。

女神:お願いしますぅそこをなんとかぁ!

勇者:完全にプライド捨ててるな。

女神:分かりました!伝説の剣はお返し出来ませんが、それ以外のものを差し上げます! これならどうですか?

勇者:それ以外のもの~? 例えば?

女神:うーん。そうですね。ちょっと探してきます。ドボン。ブクブク......

勇者:大丈夫かな......なんか信用ならないんだよなあの女神......。
   あ、戻ってきた。

女神:パアアア......

勇者:毎回やるんだそれ。

女神:持ってきました! これなんかレアですよ!

勇者:なに、そのずぶ濡れの雑誌?

女神:1968年の少年ジャンプです、第一号ですよ第一号! これはレアでしょう!

勇者:水でベチャベチャで使い物になんないね。次

女神:ブクブク......

勇者:というか紙で出来たものを水中に保管するなよ。それぐらい考えたら分かるだろ。
   あ、戻ってきた。

女神:パ......

勇者:もうそのSE毎回いらないから。で、それはなに?

女神:ファービー人形です!

勇者:え、なにこのフクロウみたいなぬいぐるみ。

女神:流行ったんですよ当時は。こうやって撫でたりすることで反応するんです。

女神:イッヒッヒ ハハオ ハハオ

勇者:いや怖い怖い怖い! それしまって! 早く!

女神:むう、これも駄目ですか......

勇者:っていうか女神様、実は結構年いってるよね?

女神:ンンッ(咳払い)なんのことでしょう。

勇者:他には無いの?

女神:泉佐野市のクーポン券......

勇者:ははっ、泉だけにね。

女神:ふふっ。

勇者:......あのさ、今のところゴミしか無いんだけど。

女神:困りましたね。

勇者:本当にそう思ってる?

女神:勿論です。

勇者:ホントに?

女神:あーっ(わざとらしく)
   私そろそろバイトに行く時間でした。すみませんがこの辺で......

勇者:おい待てこらこの野郎。逃がすと思ってんのか。

女神:くっ、逃げ切れませんでしたか。

勇者:ほんといい根性してるなお前な。......ん、待てよ。それっ。

女神:ぽちゃん。

女神:どうしたんです。突然泉に石を投げ始めて。

勇者:女神様。

女神:はい。

勇者:今泉に落とした石、金の石にして返して貰えます?

女神:えっ?

勇者:なるほどな。初めからこうすれば良かったのか。この辺、石コロは山ほど落ちてるからな。
   あ、待てよ。このデカい石とか金にして貰えれば、とんでもない価値になるんじゃねえか?

女神:ちょ、ちょっとちょっと......

勇者:うし、それじゃあこの辺にあるもの全部泉に放り込んでいくか!
   女神様、ちょっと今からまとめて入れていくんで、全部金に変えて貰えます?

女神:ちょ、ちょっと待って下さい!

勇者:んじゃまずはどれから......

女神:か、返します! 剣返しますからやめてください!

勇者:あ、もういいよ剣は。こっちの方が金になりそうだし。ほら女神様、早く早く。

女神:......も、もう泉の女神なんて、やめてやるーっ! るーっ! ぅーっ!(エコー)

<終>
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening