パーシュパティの物語


 パーシュパティ(獣の王の意)は、シヴァ神の化身とも、シヴァ神とパールヴァティの息子とされる神である。
その姿は、ドオーや猛る黒い牡牛として描かれることが多い。
この神の誕生には以下のような物語が存在している。

 ある時、シヴァ神が苦行(ヨーガ)に熱中して、妻であるパールヴァティは数万年ほど放置された。
彼女はディーヴィ(インド神話のヌオーの始祖)に、そのことへの不満を漏らしていたそうです。
ディーヴィは夫としての責務を蔑ろにしたシヴァ神に怒っていたので、パールヴァティにある物を与えました。

 それは、シヴァ像やシヴァリンガとも、○ィルドのようなシヴァ神のそれを象った物ともされていますが、異説が無数存在して不明です。
パールヴァティが正気であれば受け取らなかったでしょうが、そうとうにシヴァ神への不満が溜まっていたので、彼女はそれを受け取りました。

 とはいえ、貞淑なパ―ルヴァティは、貰った物で自身を慰めることは出来ませんでした。
ですが、ソレがあまりにも見事なモノでした。
そのため、ついつい頬を赤らめならがら、それを舌で舐めたり、口で吸ったりしたのです。

 その時、シヴァ神は苦行の最中でしたが、妻の異変に気が付きました。
苦行の最中だったせいか、宇宙を見通す第三の目は、おぼろげにしか妻の姿を捉えられません。
それでも、妻が何かに一心不乱に奉仕している様子はわかりました。
シヴァ神は激怒し、間男を殺すべく、苦行を放り投げて、妻のいる場所に向かいます。

 パールヴァティは、シヴァ神が凄まじい怒気を放ちながら、自身の部屋に近づいていることに気が付き、ソレを地上に投げ捨てました。
シヴァ神がパールヴァティの下に来たのは、その直後だったそうです。

 シヴァ神は、激怒しながら妻に、『間男をどこに逃がした』と詰め寄ります。
パールヴァティは、思わず怯んで下を指差します。
シヴァ神は、即座に地上に降り立ちました。
 その頃、地上ではパールヴァティの放り投げたソレが、彼女の睡液によって神性を獲得し、大きく震えていました。
その振動は、地上を崩壊させかねないほどだったそうです。
この怪物の姿は、毒針を露出させた巨大なドオーだったと言い伝えられています。

 シヴァ神は、即座にその怪物が、間男であろうと判断し、自身の手で引き千切るべく襲いかかりました。
高位の神々でさえもシヴァ神なら鎧袖一触でしたが、その怪物にはシヴァ神の攻撃が効きませんでした。
むしろ攻撃すればするほど、その神は巨大になり、放つ震動は地上のみならず天界や宇宙まで崩壊させかねないほどになっていきます。
その神は激しく怒っていました。
『お前は夫としての責務を果たしていないのに、妻には責務を強要した』
『苦行に熱中して、妻を蔑ろにして放置したのに、それを謝罪しないのはどういう了見だ⁉』
『お前は自分を棚に上げて、妻の貞淑を信じなかった 許しがたい! そのような男は、我に潰されて死んでしまえばいい!』

 そう、その怪物は、パールヴァティの怒りの化身であり、神や男の傲慢を裁く者だったのです。
怒りの化身に、憤怒の姿勢で挑めば、勝てるはずもありません。
シヴァ神は、怪物の怒りの声を聞くうちに、妻への態度を反省しました。
無論怒りの化身である怪物は、それで止まりません。
あと少しでシヴァ神が潰されて死ぬところで、パールヴァティがやって来ました。
彼女の訴えを聞き、その怪物は自身の役目の終わりを悟り、もとの道具の姿に戻りました。

 パールヴァティとシヴァ神は、お互いに相手に謝罪し、夫婦としてやっていくための、さまざまな決まり事を決めたのだそうです。
こうして、シヴァとパールヴァティは仲を修復し、この事件は終わりました。

 その後、シヴァ神とパールヴァティの双方から、自身の化身であり息子であることを認められた、その怪物はパーシュパティと名付けられたそうです。

 上記の神話からか、パーシュパティは因果応報に裁き、破壊と再生、夫婦の不和の解消を司る者として現代のインドで信仰されています。
また、怒りの対象外以外には慈悲深く、病気や飢餓で苦しむ人々を救った逸話もあります。
他には、自身の怒りで、怒りの対象者以外に危害を加えてしまった場合は、必ず倍にして報いるのだとか。
そのため、この神の信徒の中には地震による死を神聖視する者もいるそうです。
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