もうお前の色だから


アレが、真人という呪霊。
領域から戻っても、心の靄は晴れない。
「日車、またあの領域か?」
俺に気付いた脹相が心配そうに駆け寄ってくる。
「急に居なくなったか……んっ、ふ、ん、んんっ」
まだ言葉を紡ぐ唇を荒く塞ぎ、貪る。
「ん…っ、は、はぁっ………こんなことろで」
脹相が潤んだ目でじとりと睨み付けてくる。
「すまない……」
そう言って抱き締めると、それが当たり前の様に背中に腕を回してくる。
ああ、なんて可愛らしい。
「今日の日車は甘えん坊か?」
「どうやら今の俺はそうらしい」
そう返すと、背中に回した腕を伸ばして頭を撫でてくる。
心地よい感触を味わいながら、更に強く抱き締める。
「……過去に戻れるなら、君の全てを俺のものに出来たのに……」
「俺はお前しか知らないぞ?俺の全てをお前で染めておいて、そんなことを言うのか?」
「だが、ここは…ここだけは違うだろう」
そう言って唇に触れ、そしてまた奪う。奪われたものを奪い返すように。
「ふっ、ん…、んぅっ、ふぁ、んっ」
ちゅく、ちゅると水音を立てながら舌を絡め合う。
これを教えたのは俺だ。そう、他の誰でも無い。
その事実に溜飲が下がる。
唇を離し、名残惜しむように伸ばされた舌に繋がる糸が切れるのを見送る。
「……すまない」
「……そう簡単に許す訳には行かないな。来い。俺がどけだけお前の色に染め上げられているか、分からせてやる」
耳や項まで紅くしながらそう言って力強く腕を引かれ、そしてそんな彼に俺はまた惹かれるのだ。
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