【閲覧注意】 アレクセイ・コノエ×TSアーサー・トライン


秘密基地、と言うのは人を魅力し、ずるずると落ちぶれさせていく悪魔のスペースだ。
普段真面目な人をいとも簡単に、その快適な雰囲気に馴染ませ、飲み込む。それを幾度も繰り返し、さらには成年、大人でさえも魅力にとりつかせていった。
幾度も撤去を経ても、人と言うのは単純な生き物だ。次こそは、次こそは…と、秘密基地を生み出すべくスペースを確保していく。そうしてスペースの次には、人がくつろげるほどの家具に家電さらには娯楽を充実させていった。
秘密基地、とは一種の麻薬に似た行為かもしれない。
…だが最近では、あまりの自堕落的に片づけをしないでいたため、アーサーの怒りが爆発し、こっぴどく怒られた。ついでに手痛いげんこつも食らい、青少年たちは痛みに悶え、大人はその様変わりに驚き恐怖する。
コノエはもはや止められないで静観を選択、のちに…やはり妻は可愛い、と豪語する始末。ただ、考えたくないだけかもしれない。
以降、自主的に片付ける頻度が増しコノエとアーサーたちからホワイトボードに簡易的な黒板シート、さらにはこの秘密基地にある備品等を記すように、と日誌まで追加されてしまった。

「ほら、キラくん。そこのパソコンも片さないと…あとで監査に指摘されちゃうから。今度の監査は厳しい人が来るからねぇ」
「はぁい」
よっこいしょ、と呟きながら取り付けられた黒板シートに、折り畳み式ホワイトボードを手際よく片していくアーサー。キラはアーサーに言われた通りに、パソコンを片手に、菓子の入ったビニール袋を持ち返事をする。
「ヨウラン、向こうの段ボールもちゃんと移動させてよね」
「へーい」
「ヨウラン?」
「イエス、マム」
テキパキ、と無駄な動き無く片づけを進ませ、気が付けばスペースの半分はアーサーによって手際よく片されていた。普段しっぽを下ろしている姿だが、今回は輪っかを作るように留められ、邪魔にならない髪型。
その作業風景を、ムウとハーケン隊のマーズ、ヒルベルトは手を止めながら見ている。特に三人はアーサーの下半身、臀部に注目している。
「けつデケぇよな。副長」
「ありゃあ、安産型だぞ。あれで人妻とか…」
軍服と言うキッチリとした格好。
裾のおかげでラインはごまかされているが他女性クルーよりも、だいぶハリがある方だ。胸部の方も、動くたびに揺れている、と解るほどの大きさ。脱げばその大きさに納得するほど、豊かなモノ。
じっくりと議論でもするかのようにアーサーの姿ばっかり追う大人たち。その様子に見かねたキラが、むすり、と片づけないダメな大人たちに怖くも無い喝を入れた。手には数冊ほどの成人向け冊子が握られ、ムウへと突き付けられる。
「ちょっとムウさん、これのほとんどムウさんが持ってきたんじゃないですか。片してくださいよ」
さらに追撃するように、シンからどやされてしまう。
「おっさん、コノエ先生…艦長にどやされても知らないっすよぉ」
「わーったって…」
このままコノエによってマリューに告げ口されたくないからか、体を起こし作業へと取り掛かる。ハーケン隊の二人も、同様に動き出した。

時間にして、三十分。
ほとんどの物が片され、あとはこのスペースから持ち出さなければいけない。
「艦長、この間腰いわしたみたいっすけど…大丈夫っすか?俺持ちますよ」
すると、シンは段ボールを抱えようとするコノエを見つける。以前、秘密基地にてヴィーノとヨウランの作ったびっくり箱によって、腰をやってしまったのだ。そのまま、一生分の付き合いとなり…今でも、腰には気を付けている。流石に負い目を感じたようで、コノエの腰をいたわるように動き始めることが多くなっていた。
シンは代わりにコノエが持とうとした段ボールを持ち、逆にコノエはシンが持っていた書籍を抱える。
「すまんな…歳は取りたくないものだな」
「痛いですか、やっぱり?」
「まぁな。…さて、これくらいなら監査は何も言うまい。…あのバカたれが居ないのが残念だよ」
「あーハインライン大尉は呼び出されちゃいましたから…」
この場に居ない、設計局に呼び出されたハインラインに対しコノエは眉をひそめ、恨めし気に言葉を紡ぐ。ハインラインはこの秘密基地の利用者であり、仕事こそ持ち込みはしないが…遅れた青春を謳歌するようにはじけていた。
コノエからしてみれば、だいぶ悪ガキにあたる。ザフト軍からの付き合いで、教え子だが…まさかここまでかみ合ってしまうとは、嘆くほど。
ここ最近、ハインラインに対しぞんざいに扱い、バカたれや悪ガキめ、と口に出てしまうほど参っている。しかし、そういえばこんな奴だったな…と懐かしくも思うが、最終的に頭を悩ませるが勝っていた。
過去のコノエとハインラインは模範的な良き先生と生徒の関係であったし、議論もする仲であった…はずだった。
それからしばらく。
あれだけ物があったスペースは30分ぐらいになって、ほとんど物が片付けられ少し使用された、くらいで済まされる外観となった。
「それじゃあ、今回はここまで。もう言われないように自主的に片づけていくんだよ、ね?」
アーサーは笑みを浮かべ子供に接するように、優しい語り口で言葉を紡ぐ。こてり、と首をかしげる仕草も付いていた。本来なら、アーサーとて彼らに軍人らしく規律ある姿勢を求めている。シンたちの年齢と境遇を考えるに、少しでも…と言いう親心にも似た感情があった。
例外に、大人はちゃんと節度と規律を準じてほしいのが本音だ。
母親か、先生を相手にしている気分だ、とコノエ以外はそう思っているが…口に出さない。ちょっとでも下心を見せれば、背後に立つコノエからの冷たい圧が返ってくることを、十分に知っていた。
「はーい」

「うーっ…今日は珍しく早く終わりましたね」
アーサーはそう言いながら背中を思いっきり伸ばしていく。伸ばし終え次に肩をぐるぐると回し、肩甲骨を動かした。
コノエはと言えば、力み過ぎたこともあり腰をトントンと叩き、ベッドに腰を下ろす。
「そうだな。ぐうう…あー、腰をやってから変に力んでしまうな」
「腰痛みますか?シップ、貼りましょうか」
「……なんだか情けないな」
「ナチュラルでもコーディネイターでも、腰くらい壊しちゃいますし、歳は取りますよ。…はーい、お客さまー横になってくださいねー」
どこに何が有るかを把握しているようで、机の引き出しからシップの入った袋を取り出す。。袋を持ちながら、コノエに横になるように促す。軽快な声で、身を乗り出す形でコノエをやんわりと痛めないように押し倒した。押し倒され、さらには背中を見せる体勢にとらされながらもコノエは嬉しそうにしている。
「せめて旦那さまで…つめたっ」
上着等を脱ぎ、腰をさらしながらペタペタと、鼻歌を歌いながら機嫌よく張っていくアーサー。コノエはと言えば、それを止めるつもりは無いが、腰に来る急激な冷たさに悲鳴を上げていた。なんとも間抜けな声ばかり、この声を聴けるのはアーサーだけであるし、一生そのままだろう。
ふと、アーサーの手が止まる。
「…アーサー?」
コノエが、妻の名を呟く。すると、アーサーは上に負担が掛からないように、両手で支えながらわずかな体重がかかる程度に済ませる。アーサーの体系とコノエの体系、ずいぶんと余剰分が出るくらいの差があった。
「男の人、ですね」
「今更かね?…背中よりもこっちにしてくれ、温くていい」
くすり、と小さく笑いながらコノエはアーサーの正面に来るように体勢を変える。アーサーを導くように両腕を伸ばし、抱きすくめるように胸に収める。アーサーを抱きしめれば、洗剤の香りと共に奥底にミルクの香りがする。
抱きしめられて恥ずかしがるような年頃でもない夫婦なら珍しくもない。それでも、ふとした瞬間の男、と言う認識が生まれれば、顔を赤らめるくらいに恥ずかしさがこみあげてきた。今のコノエに下心は無い、そう決めつけ…胸に顔をうずめる。時々、髪を指で梳き、うなじをカリカリと掻いては気を引こうとする。
深く顔をうずめ…トクトク、とコノエの心臓の音が聞こえる。規則正しい正常な動き、生きている動きだ。
アーサーはその音を聞き入れながらゆっくりと目を閉じた。

──…おやすみ。

遠くからやさしく語り掛けるような、そんな声が聞こえた。
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