「煙草と滅んだ世界」


題名:煙草と滅んだ世界 作者:草壁ツノ

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<登場人物>
男:不問 今が楽しければいいと思っている。タバコを吸う男性。
女:女性 世界が滅びればいいと思っていた。タバコを吸う女性。
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<役表>
男:不問  
女:女性  
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■注意点
特に無し
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■利用規約
・過度なアドリブはご遠慮下さい。
・作中のキャラクターの性別変更はご遠慮下さい。
・設定した人数以下、人数以上で使用はご遠慮下さい。(5人用台本を1人で行うなど)
・不問役は演者の性別を問わず使っていただけます。
・両声の方で、「男性が女性役」「女性が男性役」を演じても構いません。
 その際は他の参加者の方に許可を取った上でお願いします。
・営利目的での無許可での利用は禁止しております。希望される場合は事前にご連絡下さい。
・台本の感想、ご意見は Twitter:https://twitter.com/1119ds 草壁ツノまで
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*夕方、ビルの屋上でタバコを吸っています

男:「(煙を吐く)......あ、お姉さんもタバコ?」
女:「ええ、そう」
男:「そっかぁ。それにしても最近タバコ高くなったよねぇ」
女:「そうね。もう車買うぐらいの価値になってしまったから」
男:「ホントそうなんっすよぉ。......って言っても、もう誰も居なくなったこんな世界で、金とか関係無いんすけどね」
女:「そうね。(煙を吐く)......ねえ、世界が滅んでしまうとか、考えたことあった?」
男:「え? どうだろう」
女:「私はあったよ。早く滅んでくれ......って、ずっと願ってた」
男:「ほーん。願いが叶った感想は?」
女:「ふふ。今はくっそつまんないなって思ってる」
男:「ハハハハ。そらそうでしょう。世界が滅んじまったらもう何もやる事が無いんだから。
   あとはもう、ただただ生きる事を消費するだけの人生だ」
女:「そうね。実際になってみないと分からないものね......。
   嫌な事って、消えてもまた、別の嫌なものに置き換わるだけなんだって、今回の事でよく分かったわ」
男:「お姉さんまじめってよく言われない? そんなこと考えたってもうしょうがないでしょ。
   あとはこの限りある資源の中でどれだけ楽しむか、それだけだよ」
女:「そうね。ところで、あなたはこれから先どうするの?」
男:「ん、俺っすか? どうだろうな。特に何も考えちゃいないっすけど。ほら、飯も食えてるし」
女:「確かに食事には今のところ困ってないわ。でも、ただこのまま毎日漠然(ばくぜん)と生きるというのも違うんじゃないかしら」
男:「そうっすか? 俺としちゃまぁ、あとは可愛い子、綺麗なお姉さんとか......恋人とかがいれば、もう万々歳なんすけど」
女:「あ。私は生憎とあなたみたいな人はタイプじゃないから。ごめんなさい」
男:「あぁ? 失礼な事言う人だなぁ。俺まだ何も言ってないっすよぉ」
女:「ふ、あなた目がやらしいのよ」
男:「失敬な。俺にだって選ぶ権利がありますう」
女:「あーら。私こう見えても、前の職場だったら社内一の美人で有名だったのよ?」
男:「へっへっへ。自分でそんな言う事言っちゃう辺り、いやぁ俺にはちょっと合わないっすね」
女:「ま。許さない」
男:「へっへっへ。そうすね。ま、とは言っても......(煙を吐く)、こうやってのんびり煙草吸ってりゃ嫌な事なんもかんも忘れられる。
   今はとりあえずそれでいいかな~って思うんすよね」
女:「(煙を吐く)......ふふ、あなた、問題とか先送りにするタイプでしょ」
男:「え。なんで分かるんすか」
女:「目の前の問題ごとから目を背けるタイプだって今のでなんとなく分かったわ」
男:「ははは。おおむね間違いないっすね。まぁでも、せっかくこうやって滅んだあとの世界で、たまたま俺ら二人がこうしているんだ。
   ま、恋人にはなれなくても友達ぐらいにはなってくれてもいいんじゃないっすか?」
女:「ふふふ。それは、あなたの態度次第ね」
男:「あ~。俺だって、あんたのその高飛車な態度、どうにかしないと、そのうちどっか飛んでいっちゃいますからね」
女:「ふふ。考えといてあげるわ」

男:「そういや、姉さんは今日、飯はどうするんすか?」
女:「私? いつもの缶詰と、ドライフルーツ」
男:「うはー。わびしい~。あ、そういや、俺この間近所のコンビニで、酒たくさん貰ってきたんすよ! どうっすか一緒に」
女:「お酒......そうね、最後に飲んだのなんて、もういつ以来かしら......赤ワインはある?」
男:「ははは。ありますよぉ。やっすいやつですけど」
女:「あら、嬉しい。一緒に乾杯する相手が、いささか不満だけど......」
男:「あ、そんな事言っちゃうんすね? いいですよ、俺が責任持って赤ワイン全部飲ませていただくんで」
女:「あーもう。冗談よ、冗談。そんなに心が狭いと、女性にもてないわよ?もう」

男:「それにしても......(煙を吐く)はーあ。世界が滅びる前に、もっと色んなことしとくべきだったなぁ」
女:「(煙を吐く)......ふぅん。なにか、やり残したことでもあったの?」
男:「なんでしょうね。そう言われると難しいすけど......気に入らない上司ぶん殴ってやりたかったなー、とか」
女:「ふふ、そんな事? そうね、私は――もっと、素直に生きてみたかったな」
男:「仕事なんか適当にして、もっと行きたい場所、色々行っとくべきだったなぁ」
女:「周囲に気ばっかり使って、薄っぺらい友達ばっかり増えた。少なくてもいいから、本当に心許せる友達が欲しかったな」
男:「お。そういう意味じゃ、今そのポジションに一番近いの、俺じゃないすか!?」
女:「ふふ、素直な気持ちで言わせて貰うわね。あなたみたいなのは、お断りよ」

<完>
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