災難


「う・・・うん・・・」
カガリはゆっくりと瞼を見開いた。
カガリの瞳にうつるのは見知らぬ天井だった。
「ここは・・・」
カガリはおぼろげな意識の中、
自分がどうしてこうなったのかぼんやりと考えた。
「起きたのか」
そんなとき自分とは違う男の声が聞こえ、
カガリはびくりと肩を震わせた。
「まったくなんなんだお前は」
男はため息をつくと、カガリに一本のペットボトルを渡す。
飲めということだろうか・・・
カガリはおとなしく男からペットボトルを受け取ると、
疑いもせずに口をつけた。
中身は水のようでカガリの喉を潤していく。

知らない男からもらった物に警戒せずに口をつけるとは、
ずいぶん不用心な女だな。
俺はそう思いながら女に渡したのとは別に持っていた
もう一本の水の入ったペットボトルに口をつける。
「で?お前はどうしてうちにはいってきたんだ?
 俺の家にはお前みたいな女が欲しがるような宝石もブランドものもないが?」
「そ・・・そんなものいらない!!」
俺の問いかけに女はそう返す。
「じゃあ何をとりにきたんだ?俺の家に」
「ひ・・・人を泥棒みたいにいうな!!
わ・・・私はそ・・・その・・・
ご・・・ごはんをわけてもらいにきただけだ・・・」
「ごはん?」
女の言葉に俺は面食らう。
食事も満足に食べられないほどこの女は生活に困窮しているのか?
俺はふと女の恰好を見る。
女の服に疎い俺にはわからないが、
女の恰好は日々の生活に困窮する貧しい女の子には見えない。

「ごはんね・・・何が食べたいんだ?」
俺は女に問うた。
不法侵入してきた女なので警察に突き出してもよかったが、
俺はこの女に不思議と嫌な気持ちを感じなかった。
ほしいのがごはんだというのなら、
一食くらいこの女に与えて、
さっさと帰ってもらったほうがいいだろう。
もっとも女の子が喜ぶようなスイーツなんかはうちにない。
どんな答えが返ってきてもバランス栄養食か、
せいぜい即席めんくらいしか出すことができないが、
まあ相手は不法侵入の空腹な女の子だ・・・
この際食べ物に対する文句は言わせない。
俺は目の前の女の子の答えを待ちながら、
再びペットボトルに口をつける。

「“せーえき”だ」
「ブッ!?」
俺は女から飛び出したその言葉に思わず水を噴出した。
今のは聞き間違いか・・・?
「なんて・・・?」
「だ・・・だからお前の“せーえき”をだな・・・」
聞き間違いじゃなかった・・・
なんてこというんだ・・・こいつは・・・
せーえき・・・間違ってなければ〇液のことか?
敵意がないからと思っていたが、
こいつ見た目のわりにとんだ痴女じゃないか!!

せーえきがほしい。
男にそう伝えた瞬間、
目の前の男はひどくうろたえていた。
そんなにいけないものなのだろうか・・・?
自分はただ食事をわけてもらうだけなのに・・・
サキュバスの友人たちから聞いた話だと、
せーえきは男の下半身から出てくるらしい。
それさえもらえればいいんだ・・・それさえ・・・
カガリはうろたえている男のズボンに手をかけた。
「お・・・おい・・・やめ・・・」
カガリは力に任せて男のズボンを、
男のはいていた下着ごとずりおろした。

なんでこうなった・・・
なんで俺はあったばかりの女に、
ズボンと下着を下ろされているんだ・・・
思わず現実逃避しそうになりながらも、
ズボンをおろしてきた犯人の顔を見る。
「きゃ・・・きゃああああ!!」
女の口から甲高い悲鳴が上がった瞬間、
女の頭がぐらりと揺れ、
女の身体が倒れそうになった。
「お前!!」
俺は自分のズボンをあげるより先に、
女が頭をぶつけないように、
彼女の頭を思わず手で支えていた。

俺は女が頭をぶつけなかったことに、
ホッとすると女の顔を見ると、
女は本日二度目の気絶をしているようだった。
俺は今度はため息をつくと、
女を抱え上げると再び俺が普段使っている、
ベッドの上に彼女を寝かせることにした。
そしてそこで彼女によっておろされたズボン(+下着)も、
ついでとばかりに俺はあげると、
そのままベッドのすみに腰をおろし、
二度目のため息をつく。
本当になんなんだ・・・と・・・
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