兄弟弟子が海軍時代仲良かった概念


コビーはクザンを慕ってたしクザンはコビーを可愛がっていたという概念
概念っていうかただの妄想
こんなやり取りがあったんじゃ?(あったらいいな)をつらつらと書いてみました


*コビー雑用時代
クザンが自己鍛錬で軍艦バッグしようと廃船置き場へ向かったある日の夜。
昼間は忙しいため鍛錬は寝る時間を少々削ってやるしかない。
殴り続けた結果、普通ならそうはならない抉れ方をした船の脇に、見覚えのある姿が転がっていた。
「あらら…」
師匠が気に入って故郷の海から連れ帰った雑用…の片割れが、寝こけている。
なぜ…と思いつつよく見れば、その小さな手の甲はボロボロで血が滲んでいた。
昼間は雑用の仕事に、ガープやボガードの指導を受けていたはずなのに、まだ鍛錬をしていたというのか。
「無茶すんなァ…まったく」
クザンはどうしたもんかと頭をかいた。
起こすのは忍びないが、こんなとこで寝てれば体も痛めるし風邪を引きかねない。
面倒くさい。
けれど、やっぱり自分の弟弟子(になるかもしれない子供)を放ってはおけなかった。
そっと起こさないように抱き上げる。
初めて会った時より全体が引き締まって背も伸びたようだが、見た目通り軽かった。
雑用の仕事も加味して、指導内容をボガードが加減しているはずだというのに、こんな小さい体で無理し過ぎじゃないかと心配になる。
「…なにをそんな急いでんの、お前は」
つぶやきのような問いかけは夜の空気に溶けていく。
雑用の部屋ってどこだ…?と思考を巡らせていると、前からもう一人の片割れが走ってきた。
どうやら宿舎を彷徨わずに済みそうだ。

こういうやり取り?があってクザンが気まぐれに稽古つけてあげたりして、次に会った時には教えたことはしっかりモノにしててどんどん吸収していくコビーを弟弟子としてしっかり認めたとか…


*コビーが曹長に昇格
「もう昇格か、早ェな」
「流石わしの弟子。やりよるわい」
昇格の知らせが張り出された掲示板の前で喜んで跳ねてる弟弟子達を、離れたところで眺めている。
「で、どうだった?」
「…何がですか?」
「弟弟子を指導してみた感想は」
ニヤリと笑うガープに少し驚く。
気まぐれでコビーにちょっと色々教えてやってはいたけれど、知られていたとは思わなかった。
「…勤勉で物覚えのいい生徒をもつと、自分が教官に向いてんじゃねェかと勘違いしそうになる」
「ぶわっはっは!なるほどな」
それはわしも覚えがある。
お互いを褒め称え合うコビーとヘルメッポを見るガープの目は、穏やかだがどこか遠くを見ているように見受けた。
自分もかなり早く昇格していった自覚があるけれど、果たして彼らはどうだろう。
実力があっても席が空いてなければ上にはいけないし、何よりまだ若い。
経験は場数で増やしていくものだから、若すぎる二人はある程度のところで止まるだろうけれど。
「ありがとうございます!」
ぼんやり考えていたクザンの思考を、よく通る声が遮った。
気づけば、弟弟子達がガープの前に集まっていた。
ガープに撫でられて髪をぐしゃぐしゃにして笑うコビーに、身だしなみを気にするふりで照れ隠しするヘルメッポが微笑ましい。
「あの…」
コビーがこちらに向き、見上げてくる。
「クザンさんに色々教えてもらったことで、昇格できたんだと思います。ありがとうございました」
「いや…おれァ大したことしてねェよ」
律儀に頭を下げるコビーに首を振る。
どんな良い教官でも結局教えたことを活かせるかは本人次第で、これはコビーの努力の結果だ。
ふいに、コビーがジッとこちらを見つめてくる。
何か、期待されている、らしい。
「あー…ともかく、頑張ったな。おめでとさん」
ぽんぽんと頭を撫ででやると、途端に花が綻ぶように喜色満面になった。
「えへへ…ありがとうございます…!」
…そんなに喜ぶようなことか?
なぜだかこっちが照れくさくなってきた。
こんなのはいつぶりだろう。
「ちょうどいい時間だし、メシでも食いにいくか」
このむず痒さを隠すように、コビーとヘルメッポの肩を抱く。
「ごちそうしてくれるンすか!?」
「おう。お祝いだ、お祝い」
「よっしゃあ!ごちそうになります!」
「え…あ…、いいんですか?」
素直に喜ぶヘルメッポとは逆に、コビーは戸惑ったように視線を彷徨わせた。
褒めて欲しがるわりにこういうとこは遠慮がちなのが、不思議な性格してんなと思う。
「おー、しっかり食ってデカくなれ」
「そうじゃクザンから言い出したんじゃから遠慮はいらんわい!」
「いや、アンタが言うなよ…」
「えっと、ご馳走になります」
ガープと弟弟子二人を連れ立って歩き出す。
「つーか、ガープさんは自分で払ってくださいよ?」
「えー、大将のお前のほうが高給取りじゃろう」
「その大将への昇格蹴り続けてたのはアンタだろ…」
肉か、魚か…、さて、どこの店がいいだろうか。


*頂上戦争後
まさかこんなことになるなんて。
あの巨大な戦いの後、センゴク元帥が職を退いた。
その後任に自分を推されるなんて、思いもしなかった。
しかし、そうすんなり話は行かず。
政府のお偉いさんは赤犬を推して、その赤犬本人も引く気はないようで。
いつも面倒ごとを避けてきたけれど、今回は。
今回だけは、身を引くつもりはない。
元帥になれるチャンスなんて一度しかない。
行きすぎた正義が最後にどうなるかなんて、自分が嫌と言うほど知っている。
あの狂気の炎に若者の命をくべるなど、断じて許容できない。
これは、自分の海軍人生を掛けた大勝負だ。

何となく海を見たくなって、急ごしらえで整えられた港でぼーっと海を眺めてた。
すると、後ろからこちらへ歩み寄る気配がした。
「出歩いていいわけ?」
振り向いて問えば、相手は少し困ったような微笑を浮かべた。
「寝てばかりだと体がなまっちゃうので…それに、声が止まないのが…ちょっと」
「…そう」
包帯を巻いていつも着ているジャージを羽織ったコビーの顔色は悪い。
ろくに眠れていないのだろう。
あの混乱の中で目覚めてしまった見聞色の覇気。
それがどうも、コビーのものは相当強いらしく、絶えず聞こえる誰かの感情に悩まされてる。
戦争を生き残った皆が、それぞれ心に折り合いをつけ、前へと向かい始めているだろう。
最近の海兵達の関心はおそらく、元帥がどちらになるのか。
そして、それを決めるのが数日後にとある島で行う『決闘』だった。
「…受けるんですか、決闘」
「ああ。あいつも引かねェんだ。もう、こうするしかねェのよ」
「そう、ですか…」
海軍の行く末を思う色々な声に疲れているのだろうが、こうも暗い顔なのはそれだけではないらしい。
「心配してくれてんの?」
「…っ」
コビーの目が見開いて、開きかけた口が閉ざされた。
自分が聞いたせいなのに、泣きそうな顔をされてしまって、どうしたらいいか困った。
「あー…まァ、あれだ…心配しなくてもさっさと終わらせてくるからよ」
そう言って頭を撫でる。
こんなの気休めにもならない。
決闘なのだからそんな軽い物のはずもない。
それはきっと、コビーもよく分かっているだろう。
コビーが目を伏せて、それから、息を大きく吸って吐いて。
次に見開いた時には。
その瞳に憂いはなく、確かな光があった。
「じゃあ、僕もさっさと覇気を使いこなして、クザン元帥のお役に立たないといけませんね」
将校になる条件は一つ、得られましたし。
ニカっと笑ったコビーに一瞬何も言えずにいた。
なんてことだ。
逆に自分が励まされた。
命を張って赤犬を止めようとしたあの経験が、覚悟が、この子を成長させたのかもしれない。
「…期待しとくわ」
はたして、自分はこの子に胸を張れるような元帥になれるだろうか。

心配だけど引き留められないし、必ず帰るなんてことも言えない。
赤犬と青雉が対立してた時の海軍本部の雰囲気ってどんな感じだったんでしょうかね…


*決闘後
「おいコビー…目を擦んのはやめろって」
「…うぅ、わがってま゛ず…っ…ぐずッ…」
げほげほと噎せるコビーの背中をさするヘルメッポに、そんな二人を見守っているスモーカー。
彼らの前には深手を負ったクザンが眠っていた。
たまたま同じ時に見舞いに訪れた三人だったが、クザンの姿を見てしばらくしてコビーが泣き出したのだ。
「…っ、こんなこと、言ったら…きっと怒られちゃう…けど…」
「ん?」
ヘルメッポがコビーの顔を覗き込む。
息を呑み、呼吸を落ち着かせながら、コビーはポツポツと語った。
「ぼく…、クザンさんが、生きて、帰ってきてくれたの…うれしい…っ」
良くないけど、良かった…とつぶやいて、また一筋涙をこぼした。
ずっと黙っていたスモーカーが、少し考えるような表情をして。
「そのひでぇ顔を怪我人に晒す気か?一旦顔洗って落ち着いてこい」
そう言ってコビーに退室を促した。
コビーはそれに頷き、のそのそと席を立つ。
一緒に行ってやれ。とヘルメッポにも促し、ヘルメッポも素直にそれに従い、軽く敬礼してコビーを支えながら部屋を後にした。
パタン、と扉が閉まり、二人が離れていったのを見送って、スモーカーは正面に向き直した。
「…で、怒るのか?」
「……怒る気力もねェよ…」
スモーカーの問いかけにもぞもぞと動いて、クザンは光を遮るように手の甲で目元を隠した。
10日も続いた闘いに死ぬ覚悟がなかったはずもない。
それなのに、情けで生かされて、帰ってきた。
多くのものを失って、残ったのは敗北の事実だけだ。
コビーの優しさが、すごく暖かくて、とても、惨めだった。
「なァ」
「なんだ」
「なんであいつは怪我してたわけ?」
10日ぶりにみたコビーの頬が、片方だけうっすら赤く腫れていた。
ガープの特訓によるものかと思ったが、最近は傷まみれになることも減っていたはずだ。
しばしの沈黙の後、喧嘩だ。とスモーカーが答えた。
「喧嘩?あいつが?」
「ああ。食って掛かったのもコビーの方だ」
「…まじで?」
「マジだ」
クザンの知る限り、コビーは相手から挑発されても乗ることはほぼなかった。
唯一、ヘルメッポを悪く言われた時に相手を口で言い負かしていた記憶があるけれど。
「らしくねェな…なんでよ」
「……あんたをバカにされたからだ」
「…」

『自分の信念のために、10日も戦い続けるなんて貴方に同じことができますか!?』
『僕を罵りたいならいくらでも罵ればいい!殴りたければ殴ればいい!!』
『けど、命を懸けて戦い抜いた人を…』
『僕の尊敬する兄弟子を馬鹿にするな!!』

スモーカーは途中からそれを目撃した。
誰かが呼んできた中将によって仲裁され、言い返しはすれど手を出さなかったコビーは、口頭での注意で済んだようだ。
クザンは思ってもなかったことに言葉を失って、それからごろりと横に寝返ってスモーカーに背を向けた。
「あんの、バカ……ッ」
小さな、絞り出すような声だった。
スモーカーは微かに震える肩から、そっと目を反らした。

コビーは泣き虫なので…憧れてる人が片足なくして帰ってきたら泣きたくもなるでしょうね
W7あたりでクザンに憧れて大将になるってコビーが言い出したり、いやそこはガープさんにしとけよ…って言われたりする話も思いついたけどまとまらなかったのでボツ
そういえば、コビーの目標はあくまでも大将なんですよね
ルフィの海賊王に対して、海軍のトップである元帥ではないんだなーと、ふと思いました
自由ではなくなるからですかね…?


*クザン出奔後
可愛らしい相棒とのふたり旅は、宛のない旅。
自由故にありとあらゆる場所へ向かい、自分が見ていたものは世界のひとつの側面でしかなかったと思い知らされる。
どこに向かう?
何をする?

俺は、何者だ?

何十年と積み上げたものはとうに失った。
けれど、本当に大事なもの…手放せない確かなものは、ある。
それを叶えたい。
それを守りたい。
さあ、どこへ向かう?
何をすればいい?

俺は、何者になればいい?

瓶の底から中身をひっくり返すには、上に乗った重しをどかすしかない。
それをすれば、瓶の中身はめちゃくちゃになるだろう。
たくさんの犠牲は避けられない。
けれど俺は、それを実行する。
たとえ世界に恨まれて、失望され、お前の敵になるとしても。
もう、お前の尊敬する俺ではないが、お前に残せるものはあるんじゃないかと思っている。
お前は俺の大好きな人に似ている。
俺はその人のようになれなかったけれど、お前なら、きっと。
俺を、ガープさんを越えていく。
お前が明日の正義になる。
俺が生きていることを泣いて喜ぶお前を、まっすぐで純粋なお前を。

天竜人(クズ)の犬になんてさせない。

これは、俺のエゴだ。
だからやりてぇようにやる。
それが自由ということだろう?


*おまけ
こちらを見る目に驚きと、微かな怯えが滲む。
自分は今どんな顔をしているのだろう。
恐ろしい顔か、ああでもきっと、情けない顔をしているのかもしれない。
「…クザンさん…?」
幼気だった顔が随分と精悍な顔立ちになった。
背もまだ低いだろうが、あの頃に比べたら見違えるほど、立派になったものだ。
「あの…」
どうして、自分を顧みないのか。
自分の正義のために肩書すら利用するのは、本当にそっくりだけど。
なんで、こんなところに来てしまったんだ。
海賊(海のクズ)の巣窟に来て、ただで済むわけないだろうに。
愚かで、まっすぐで、愛すべき…
「な、なにを…、…?!」
心に決めたことは覆せない。
だから、守ってやることもできない。
だったら。
あんな奴らにお前が傷つけられるなら、穢されるくらいなら。
その傷は俺がつけたい、穢したい。
「やめ…、やだ!離して…!」
いっそ、恨まれて、憎まれてもいい。
「クザンさん!やだぁ…!やめて、くださ…ッあぁ」
コビー。
すべてが終わったら、その時は。

英雄(おまえ)が海賊(おれ)を殺してくれ。


愛があっても幸せにならないっていうか、あるからこそ苦悩してますね
最後のはこの概念で手を出すか出さないかで手を出した場合の話です。感情が、重い…
なお手を出さなかった場合は監督√になりそう。原点回帰(?)かな?
どっちを選んでも地獄なのは変わらない!
まじで兄弟弟子の掘り下げや過去回想が楽しみです
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
無限ツールズ

 
writening