ラクスの望み


キララク求婚SS
「愛していると言って」の過去話。
種自由エンディングの直後。キラとラクスがぴーぴー泣いております。
!キャラ崩壊、解釈違い、誤字脱字要注意!
IQ5の作者がラクス様ってどんな事が好きで何考えて生きてきたんだろう?とない知恵を絞り出し、妄想した産物がこちら。プライベートな彼女の公式データ少な過ぎない?ラクス様あなたは一体何が大好物なのですか?にわかドルオタには分からぬ。ラクスファンの有識者の皆様是非情報が有れば教えて下さい。(土下座)

それでもよろしければ以下本編です。










オルフェ・ラム・タオ、イングリット・トラドールとの戦闘が終わり、マイティストライクフリーダムで地球に降り立った2人、キラとラクス。

ここはオーブのアカツキ島である。
2人は生まれたままの姿で、夕焼けに黄昏た空の下、水平線に沈み行く太陽を寄り添って座り込み、海岸線から眺めていた。

数時間前まで愛を言葉と身体で確かめあっていたキラとラクス。
少しずつ落ち着きを取り戻したのだろう。隣り合っている互いの手をとり、小さく繋ぎ、ぽつりぽつりと話しはじめた。

キラは憑き物が落ちたかのように穏やかな表情をしている。
「そういえば、あの時、合同作戦が終わった後、話そうって言ってたよね?……あれは、何についてだったの?」

「……………。」
ラクスは想定外の問いを受けたかのように亜然とし、暫く押し黙っていた。

あのファウンデーション王国とユーラシア連邦との合同軍事作戦から、それはもう色々とあった。正直なところ、今まで、ラクスはその話題について遥か遠く忘れ去っていた。
今それを話さなくてはいけないのかと内心思うが、キラのこちらを真剣に見つめている瞳を見たら、誤魔化すことは出来そうにもない。

彼女は重い口を開いた。

「……そうでしたわね。お話しましょう、とわたくしが言ったのでしたわね。……怒らないで聞いてくださいますか?」

先程、おだやかに微笑んでいたキラから一転し、現在の彼の表情からは何も読み取ることができない。

「……内容によるよね。……最後まできみの話はちゃんと聞く。……話して。」

キラは珍しく、やんわりと強い口調でラクスに話すよう、促した。

ラクスは詰めていた息を小さく吐き出した。
「…分かりました。きちんとお話しします。」
これから先、2人の間で起こるであろう事態への不安から、キラの手をきゅっと握りしめた。

「合同作戦が終わったら、結果の成否に関わらず、あなたにはコンパスから退いて頂くつもりでした。
……勿論、キラの意思で始められた闘いだということは分かっております。
…わたくしが、あなたの意思を許可もなく奪う、ということは、身勝手で傲慢であるとも何度も思いました。
……ですが、それ以上に、終わらない争いに、傷付いて擦り減り、再び壊れそうになっているあなたを、ただ見ているのは嫌だったのです。」






ラクスの瞳には涙が浮かんでいたが、彼女は決して零すまいと必死に堪えているようだった。

「…あなたが、キラが平和に笑って過ごして下さるなら、わたくしの隣にいて下さらなくてもよかったのです。……寧ろ、それはわたくしの側では叶いません。ですから、コンパスでのお仕事も、軍も退いて頂いて、オーブのご両親の元にあなたをお返しするつもりでした。」

「………………………………。」

キラは自身の気持ちを言語化することが出来なかった。
勝手な決断を下そうとしたラクスに腹が立つのか、呆れているのか、悲しいのか、そんな風に彼女が思い詰めるまで、ラクスを追い立てた自分が情け無くて不甲斐なくて、自分に怒りを感じるんだかで、感情がしっちゃかめっちゃかになっていた。

キラ自身の幸福を1番に考えてくれているのが優しくて、陽だまりのように温かな心を持つ彼女らしい。
……では、ラクスの幸せは?彼女の本当の望みは?何処にある?






「……キラ?」

キラからは返事がない…。俯いてしまったため、長い前髪に隠れて、表情は見えない。

ラクスは鬱鬱と考え込んだ。
こんな事を聞かされて、多分呆れて怒っているんだろう。もしかしたら嫌われてしまったのかもしれない。
それでも、彼女がキラを愛する気持ちは1ミリも揺らがない。
ラクスは決心していた。どんな事があっても、彼からもう決して離れない、ということを。

ラクスにとっては、ファウンデーションとの争いは、「キラが死んだ」と聞かされ、オルフェに何度請われても、己の中からキラの存在を消すことが不可能であると言う事実を強く突きつけられた一件でもあった。
キラの存在がいなくなる、という現実を認知した瞬間、ラクスの心は崩壊し、何か別のものに置き換わっていくことを酷く実感した。
だからラクスは、己の心を奮い立たせ、守るため、絶対に彼女の中から、キラを消すまいと必死に抗った。

どうして、あの時、キラの手を離すことができると思ったのか、彼の隣で笑い合う人が自分でなくてもいいと思えたのか。今となっては、そんな考えは酷い欺瞞である。
ただラクス自身のせいで最愛の人の心を壊したくなかったから、これ以上傷付けたくなかったから。全て己の恐怖心からくる依怗だ。

ラクスが抱いている、キラに対する強い執着を伴ったこの気持ちも、依怗と言えばそうなのかもしれない。
しかし、この気持ちに、嘘偽りは一つもない。不確かな世界でこれだけは断言することができる。愛しているから彼が必要なのだ、と。

この話し合いで2人の仲が険悪になってしまったとしても、2人には未来がある。
ラクスにとって交渉術は得意中の得意分野だ。言い方は悪いがキラを上手く言いくるめてしまう自信はある。
そうは言っても、心から大切で愛しいと思うキラのこと…。
ラクスは恐る恐る、キラの顔を覗き込んだ。

「…………、色々言いたいことはあるけど…………、
ラクスは、'それ'で、よかったの?
……きみの本当の望みはどこにあるの?それでラクスは幸せになれるの?」

キラの瞳から次々と涙がこぼれている。静かにしとしと、と、降り始めた明け方の雨のように。

「!!!」
久しぶりに目にしたキラの涙だった。

そんな思考に至ったのは一瞬で、ラクスはこぼれ落ちる彼の涙に驚き焦った。
今まで何度も泣いているキラの姿を目にしたことはあったが、ラクス自身が泣かせるなんて、想像外であり、実行しようと思ったこともない。

「キラ!どうしたのですか?やはり、あの闘いで負傷したのですか、どこが痛いのですか?どうしましょう、」
ラクスはおろおろと取り乱し、キラの全身を、怪我が無いか検分するため、隈無く確認し始めた。

キラは、自身の頬を拭おうしているラクスの手を掴んで、思い切り抱き締めた。

ラクスは一度痛みに顔を歪めたが、キラの涙を止めることを優先すべきだと思い、彼の力強い、拘束紛いの抱擁を無言で受け入れた。

「……違うよ、心が痛いんだ。……ラクスのせいだ…。」

「っ!!!…………。」
ラクスはかなりの衝撃を受けた。キラの言葉に呆然とし、動揺した。

幾許か、冷静になろうとする思考の中で、ラクスは、キラが泣き出す前に言っていた言葉を反芻した。

『ラクスは、'それ'で、よかったの?
……きみの本当の望みはどこにあるの?それでラクスは幸せになれるの?』

(……わたくしの本当の望み、幸せ?)
ラクスは、今まで自分の意思でやりたい事をやり通して生きてきたつもりだった。彼女にとって悲しいことも辛いこともたくさんあったが、それは生きている人間にとって等しく同じこと。その分だけ喜びや幸福も同時に存在する。自分が不幸であるとは決して思ったことはない。……でもそれは本当に?……分からなくなった。

ラクスは混乱のまま、キラに問いかけた。何とかして彼の涙を止めなければならない、と。

「…わたくしの、せいで、キラが泣いていらっしゃるのですか……。では、どうすればあなたは泣き止んで下さいますか?……キラには笑顔でいて欲しいのです……。」

キラははらはらと涙を零しながら眉間に皺を寄せ、顔を顰め、静かに怒りを顕にしている。
「まだ、分かんないの…?ラクスが隣で笑っててくれなきゃ、1ミリも笑えないから。……そうやって思うんだったら、一生側にいてよ……。」

キラは小さな、涙声でぼそりとつぶやいた。
「……じゃなきゃ、泣き止まないから。」

キラの言葉を聞いたラクスは、堰を切った様に涙を流し始めた。
やがて、幼子の様にわんわんと嗚咽をあげて泣いた。

キラは静かに泣きながら、ラクスの頭を撫で、優しく彼女の震える肩を引き寄せた。
溢れる涙を抑えることなく、暫く2人は抱き合いながら泣いていた。




ラクスは思いきり泣き、すっきりとした、晴れ晴れとした気分だった。
茜色に染まった穏やかに波打つ海を見つめていた。それから、視線はそのままに、キラの手をそっと繋ぎ、落ち着いた声音で話しはじめた。

「……キラ、聞いて下さいますか?……わたくしが今まで、何を見て、感じて、望んで、生きて来たのかを。」




ラクスはまるで物語りを語るように、朗々とした口調で話し始めた。

幼少期どのようなことが好きで、何に興味を持っていたのか、父と母と家族とどのように過ごしていたのか。
12歳くらいの頃から、プラントで歌手活動を始めたこと、と同時に父の政務の手伝いも始めたこと。
アスランと初めて言葉を交わした時のこと、貰ったハロ達のこと。
慰問先で見た人々の表情、彼等のために歌うこと以外で、何ができるのかと思い悩んだこと。
平和の歌姫としてプラントの市民に望まれた姿と彼女本来の姿とのギャップで悩んでいたこと。

それから……、
キラとの出逢い。そして、別れ。再会して、また別れ、再び宇宙で巡り合ったこと………。
逃亡先で父が死んだ報せを聞いた時のこと。
自身の行動一つで志を同じくする仲間達が何人も死んでいったこと。
ラクスの膝の上で泣いているキラを見て、この男の子を心から支えたいと思ったこと。
傷付いてボロボロになりながらも、カガリとアスランと一緒にキラが自分の元に帰ってきてくれたことが、どうしようもなく嬉しかったこと。
オーブでおだやかに過ごした2年近くのこと。初めてキラと想いを通わせた時のこと。
ラクスの命が狙われて、キラが再び闘いに身を投じる羽目になってしまった時のこと。
カガリの思い悩む姿を見て自分がすべきことを必死に考えたこと。
ミーアが自身の代わりに死んでしまった時のこと。
デュランダル議長が提唱する、ディスティニープランに全力で争うことを決意した瞬間のこと。

プラントにキラが付いてきてくれた時のこと。
ブルーを貰って本当に嬉しかったこと。
キラと共に闘いたくてコンパス総裁を引き受けたこと。
終わらない闘いに身を投じ、日々衰弱していくキラを見つめていた時のこと。
自身の決断が引き金となり、ユーラシア連邦が核で焼き払われ、キラが死んだと聞かされて、後悔と悲嘆に暮れたこと。
監禁中、キラの生存を諦められなかったこと。
ラクス自身もアコードと同様の存在だと聞かされて、彼ら、アコード達の存在を憐れに思ったこと。
キラがアルテミス要塞まで迎えに来てくれた時のこと。
プラウドディフェンダーでキラの元に出撃した時のこと、共にフリーダムで闘った時のこと。




一言も挟むことなく、キラはラクスの凜として静かな声音で語られる、彼女の物語りにじっと耳を傾けていた。

ラクスはキラに向き直り、繋いでいた手に力を込め、寂しそうに微笑みながら、ぽつりぽつりと話した。

「キラにも、以前、話しましたね。
……『世界はあなたのもので、そしてまたあなたは世界のもの。生まれ出てこの世界にあるからには』
と、おっしゃっていた母の言葉を。
……わたくしは何処かで自惚れていたんだと思います。本当のわたくし自身の望みを曲げてまで、母の言葉通り、人に、世に望まれているのならば、……世界の奉仕者であらんと、己の役割を果たそうと。…わたくし1人の力で成せることなど、高が知れているのに…。
…可笑しいですわよね…。ディスティニープランを否定したのはわたくし自身の意志であったのに……。
父からも物心ついた時から、『いくら親しい相手の言うことでも、きちんと自分自身で、託された言葉の本当の意味を考えるようにしなさい。考え続けるとを投げ出してはいけないよ』
と、言い聞かせられてきましたのに…。
……今となっては、母の真意は何処にあったのか分かりませんし、確かめようもありません。」

「ラクス……。」
キラは自嘲めいて儚く笑うラクスが今にも消えてしまいそうで、不安になり、腕の中に引き寄せようとした。

ラクスはキラの両の手を握り、上下に軽く揺らした。
「……ですが、キラが気付かせて下さったのです。わたくしが、本当にやりたいこと、望むこと。」

「…えっ、僕?」
キラは驚きで目を丸くした。

「はいっ!キラのお陰ですわ。
……わたくしは、わたくしの望みは……………、わたくしは、……歌を歌って、あなたの隣で、生きて行きたい。キラがいらっしゃる所がわたくしの還る居場所なのです。」

ラクスは晴れやかな顔で微笑んでいる。

「それに、あの時言いましたでしょう?
『わたくしの意思はあなたと共に在ります。これからも、幾久しくよろしくお願いいたします。』と。」

キラは言葉なく、ラクスの美しい微笑みに見惚れていた。

「……キラが月に迎えに来て下さった時から、もう心は決まっておりましたの。」
ラクスは小首を傾げながら悪戯っぽく微笑んだ。



「え"。」

キラから驚愕の声が出た。
(……僕、あんなに泣いて駄々こねたのに、ラクスの意思はもう決まってたってこと?……何それ。)
相変わらず、ラクスはキラの思考の範疇を軽々と超えていく。彼女には散々醜態を晒してきたが、今更になって、キラはラクスの前で号泣した事実を恥じた。

ラクスははにかんで微笑みながら、
「わたくしが、キラのお側に、お隣に一生いても、本当によろしいのですか?」 
と、キラに問いかけた。

彼女は真剣な表情でキラをじっと見つめている。

真摯なラクスの様子に気押されたのか、キラもラクスに真剣に向き合いたいと思ったが、上手く言葉が出てこない。
キラはようやっと、搾り出すように応えた。

「………うん。」

ラクスは満面の笑みを浮かべている。
「ふふふふふ。では、プロポーズですわね。改めまして、幾久しくよろしくお願いしますね?キラ。」

「……うん、こちらこそ、………幾久しくよろしくお願いします……?」

キラは少し遅れて、先程、自分が号泣しながらラクスに言ったことを思い出していた。

(……いや、あの…。意味的には違くないんだけど、なんか、もうちょい雰囲気とか、指輪とか、花束とかさ、何も用意してないし。カッコ付かないよ。これじゃあ……。)
プロポーズをするのに、彼には意外と理想のシチュエーションや拘りがあったようだ。

ラクスはわずかに頬を膨らませた。
「……どうして疑問系なのですか?……本当は、キラはわたくしと生涯を共にするのはお嫌なのでしょうか……?」
彼女は悲しそうな顔で落ち込み始めた。

「はあっ!?そんな訳ないでしょ!?結婚するに決まってるから!!!今すぐするから!!!……てか、後から離婚しようとしたって、絶対認めないから!!!」

キラは物凄く焦っていた。まずは彼女の誤解を解かなければ、と無意識に大きな声を出していた。



ラクスはキラの大声に驚いたのか瞳を見開いてきょとんとしている。

「……ふふ、うふふふふ、っふふ、ふっ、ふふふ。ひっ、ふふっ、ひっく、ふひふふふ……。」

暫く、動きを止めていたラクスだったが、くすくす、と笑い出した。その笑い方は、今にも噴き出しそうになっているのを必死に堪えている様で。

「?????……………………………。」

キラは間の抜けたようにぽかんと口を開いた。こんなに大笑いをしているラクスを、彼は出会ってから初めて見たのかもしれない。
少しばかり冷静になると、キラはとある事実に気がついた。
……完全にラクスに弄ばれている。思い返せば、あの落ち込んでいた顔もどこか芝居がかっていた。そして、勢いで、恐らく彼女の思惑通り、プロポーズしてしまった。
キラはあまりの羞恥とやるせ無さに手で顔を覆った。そして、指の隙間から恨めしそうにラクスを少し睨んだ。

「……ラぁクぅスぅー」

ラクスはどこか吹っ切れた様子で、
笑いすぎて目に浮かんだ涙を拭いながら、謝罪の言葉を口にした。

「…ごめんなさい、キラ。だって、嬉しかったのですもの。あなたと同じ気持ちだと言うことが分かって……、はしゃぎすぎてしまいました…。」



(………はあ………、もう…。本当にこのピンクのふわふわお姫様は……。)
キラはラクスのかわいらしい悪戯で完全に毒気を抜かれた。お陰で肩の力が抜けた。それから乱れた息を整えるため、大きく深呼吸をした。

スゥーハアー

今度こそ、ラクスの身体をキラの胸にやさしく引き寄せ、すっぽりと包み込んだ。



「ラクス、あのさ、僕も、きみに聞いて欲しい……………」

キラも同じように話そうと思った。ラクスに知っていてもらいたいと思った。ラクスに出会う前、出会ってから何を感じて何を見て、望んで、生きてきたのかを。




陽は沈みきり、海岸に夜の帷が降りようとしている。幾つかの星々が瞬き始め、三日月が微かな月明かりを落とすまで、2人は語らい続けた。
 
   おわり









※追記※
2人仲良く語らうことは非常に良い。しかし、早く、服を着なさい。風邪引きます。以上スーパー全裸タイムでした。
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