【晴晋】モーニングアイスブレイク


 ぼんやりと水面に浮かぶように目が覚めて、鼻孔をくすぐる香りが馴染みのないものだと気づく。
 昨夜はやたらとはしゃいでしまっていた。マスター君に新宿のなんだか聞き覚えのある名の雑貨店を教えてもらって、晴信との食事がてらせっかくだからと立ち寄って、アイスだの駄菓子だの買い込んで、そうしてボーダーへと戻った頃にはまあまあ気持ちよく酔いも回っていた。
 その後のことはまあ、こうして残すこともないだろう。ドンなんたらで買ったあれこれとか、それに晴信がめっぽう乗り気で可愛かったことだとかは、まあ、僕だけが知ってればいいことだ。
 ガリガリと削る音に合わせて、煎った豆から華やかな苦味が香ってくる。遠くに聞こえるヤカンの音と、電気コンロを止めるカチリの操作音。それだけでもう、数分後の期待が高まるものだ。
 淹れたてのコーヒーカップを持ったまま、晴信は僕の枕元に手を伸ばしてきた。昨夜出して、食べさせあって、そのまま溶けてしまったアイスクリームがそこにはある。ひとさじ掬ってカップに落として、ほらと渡されてつい、晴信の瞳を見返してしまう。
 与えられるひとつひとつの仕草は何よりも雄弁だ。
 ああ、僕、愛されてるんだな。
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