小説・小人の靴屋(浅野浩二)


昔、ある町に、若い頃から、ずっと、まじめに、良い靴を作り続けてきたおじいさんが、おばあさんと住んでいました。
おじいさんは、若い頃は、元気でしたから、朝から晩まで 靴を作り続けても、それほど疲れることもありませんでした。しかし、靴をつくり続けて、50年、経ち、さすがに、おしいさんも、寄る年波には勝てず、近頃では、一日に、一足を仕上げられれば 上出来というような状態でした。
おじいさんの腕は、確かでした。
おじいさんは、真面目で、負けず嫌いで、勤勉な性格だったので、「歳なんかに、負けてたまるか」、と、自分を鼓舞して、頑張って、朝早くから、寄る遅くまで、靴をつくり続けました。
しかし、やはり、寄る年波には、勝てず、若い頃とは、違って、一足の靴をつくるのにも、かなりの時間が、かかってしまいました。
しかし、おじいさんの、つくる靴は、丈夫で、見栄えも良く、長持ちするので、つくった靴は、すぐに売れました。
靴屋は、町に、ほかにも、ありましたが、おじいさんの、靴つくりの、腕前は、町で一番でした。
しかし、老化による体力の低下は、気力だけでは、どうすることも、出来ず、若い頃は、一日、10足、つくることも、出来ましたが、老いた今では、一週間で、一足、つくれるか、どうか、という状態になってしまいました。
靴を、あまり作れないので、次の靴を作る為の、靴の皮を買うお金も、ありませんでした。
そんなわけで、おじいさんもおばあさんも 苦しい生活をしていました。
さらに、おじいさんは、老眼で、目が悪くなっていて、手も震えるようになっていて、皮の切り方も、下手になっていて、皮を切りそこなって、失敗して、切ってしまい、せっかく買った、高い、靴の皮を、無駄にしてしまう、ようなことも、ありました。
おじいさんは腰痛で、おばあさんは、変形性膝関節症に悩んでいました。
それで、毎日、整形外科に通っていました。
ある日。
おばあさんは、とうとう、おじいさんに、
「おじいさん。もう、あなたは靴を作るのは、無理だと思います。店をたたんで、息子夫婦の世話になりましょう」
と、提案しました。
靴の売り上げより、靴の皮を買う原価の方が、はるかに、上回ってしまっていて、靴屋の経営は、損益分岐点を割り、さらに操業停止点を、下まわってしまっていますから、商売を、続ければ、続けるほど、損をすることになってしまいますから、商売をやめるべきだ、という、おばあさんの、意見は、当然といえば、当然です。
しかし、おじいさんは、渋い顔をして、おばあさんの、提案を黙って、聞いていました。
おじいさんも、迷いましたが、これが最後の、仕事になるかも、しれないとの不安を持ちながらも、靴を、つくることに、しました。
おじいさんは、「もしかすると、これが 最後の仕事になるかもしれないな・・。もう 靴職人は、出来なくなるかもしれないな。それなら、この最後の靴を、一生懸命、全力を尽くして、作り、良い靴に仕上げよう」
そう思って、おしいさんは、丁寧に型紙に添って、慎重に皮を切り始めました。
しかし、体力が衰えているので、作るのに、時間がかかり、そして、その日は 雪模様だったので、手元も暗く、ようやく、皮を切り終えても 針に糸を通して縫い始めることは出来ませんでした。
なので、続きは明日にしよう、と、おじいさんは、仕事場の机の上に 切り取った皮を丁寧に並べました。
おじいさんは、おばあさんと、一緒に、食事しました。
靴を、作ることが、出来なくなって、しまったので、収入は、ぐっと減って、しまっていて、その日の夕食も、パンとコーンスープだけでした。
「天にまします、我らの父よ・・・」
二人は、敬虔なクリスチャンでしたので、目をつぶり、手を組みあわせて、深く頭を垂れ、主の祈り、を、してから、食べ始めました。
「ばあさん。美味しいよ。不思議だね。何で、こんなに、美味しいんだろう?」
おじいさんの、目から、涙が、ポタリと、落ちました。
涙の味つけで、パンを食べた人間でなければ、人生の味は、わからない、というゲーテの、格言があるように、涙の味つけのパンは、きっと美味しいのでしょう。
食事が終わると、二人は、寝室に入りました。

天国で、心優しいマー坊とヤン坊、という、二人の小人の天使が、この様子を見ていました。
「おじいさん。かわいそうだね」
ヤン坊が言いました。
「そうだね」
マー坊もヤン坊の意見に、賛同しました。
「ねえ。マー坊。僕たちが、二人で、夜中に、こっそり、おじいさんに代わって、靴を作って、あげたら、おじいさんは、靴屋を、つづけられるよ。おじいさんは、きっと喜ぶよ」
と、ヤン坊が言いました。
「うん。そうだね」
と、マー坊は、ニコッと、微笑みました。
「よし。決まり。じゃあ、おじいさんと、おばあさん、が、眠りに就いたら、僕たち、二人で、靴を作ってあげよう」
ヤン坊は、ウインクして、パチンと指を鳴らしました。
真夜中に、二人の、小人の天使が、天から、降りてきました。
ヤン坊と、マー坊、の二人の小人は、足音を立てないように、そーっと、おじいさんと、おばあさんの、寝ている部屋に行きました。
もっとも、身長5cmほどの、極めて小さい、小人ですから、普通の速度で歩いても、足音など、しないでしょう。
しかし、小人の二人は、緊張していますし、それに、小さい、といっても、小さな、ネズミなどの、動物が、ちょろちょろ、走れば、音は出ます。
また、おじいさんと、おばあさん、が、神経質で、小さな物音で、目を覚ましてしまう、ということも、考えられないわけでは、ありません。
それで、二人の小人は、足音を立てないように、そーっと、おじいさんと、おばあさんの、寝ている部屋に行きました。
おじいさんと、おばあさんは、グウグウ、ガアガアと、大きな寝息を立てて、寝ていました。
人間は加齢とともに、筋肉が弱くなります。これは体全体に当てはまることですが、舌を支えている筋肉である、喉周辺の筋肉も弱ります。これらの筋肉が弱まると、睡眠時に、舌が咽喉に落ち込みやすくなり、気道を狭くしてしまいます。その結果、老人は、いびきを、かきやすくなるのです。
二人の小人は、顔を見合わせて、
「しめしめ。しっかり寝ているぞ」
と、喜び合いました。
二人は、老夫婦の寝室から出ると、靴を作る仕事場に、行きました。
仕事場には、昼間、おじいさんが、型紙に添って、慎重に、切り取られた皮が、丁寧に並べられていました。
二人の、小人は、
「よし。これを、明日の朝までに、なんとしても、縫い上げるぞ」
と、強い口調で、意気込みました。
二人の小人は、
「仕事だ、仕事だ、いい靴作れ、僕らは 靴の妖精だ、働き者の、おじいさんのために、朝になるまで 靴作り・・・」 
と、駆け声をかけて、歌いながら、一心に、皮を縫い、小さな槌で形を整えました。
そして、最後にキュっキュっと、靴を磨いて、靴を作っていきました。
「ああ。疲れた」
ヤン坊が言いました。
「がんばれ。あと少しだ」
マー坊が、励ましました。
二人が、靴を、磨き上げた、ちょうど、その時です。
「コケコッコー」
と、一番鶏の鳴き声が、聞こえました。
「はあ。疲れた」
「僕もだ」
「しかし、間に合って、よかったね」
「さあ。はやく退却だ。僕らは、見つかっては、ならないからね」
「そうだね。おじいさん。これ、見たら、びっくりするぞ。ふふふ」
そう言って、二人の小人は、急いで、天にもどりました。

翌朝になりました。
「ふあーあ」
おじいさん、が、あくびをしながら、目を覚ましました。
おじいさん、は、郵便ポストへ行って、新聞をとってきました。
新聞では、あいかわらず、イスラム国が、各地で、自爆テロを、起こしている、記事が、書かれていました。
そして、アメリカの大統領候補で、泡沫候補のはずだった、共和党の、ドナルド・トランプ氏が、各州で、民主党候補に、勝っている記事も、載っていました。
そして、イギリスの、EU離脱の記事も、載っていました。
「やれやれ。困ったものだ」
と、おじいさんは、ため息をつきました。
(まさか、わしの息子も、イスラム国の戦闘員になったりは、しないだろうな)
おじいさんの頭に、そんな、一抹の不安が、よぎりました。
おじいさんは、新聞を読みながら、おばあさんが、起きるのを待ちました。
しはしして、おばあさん、が、起きてきました。
「やあ。おばあさん。おはよう」
「おはよう。おじいさん」
月並みな、挨拶をしたあと、二人は、朝食をとりました。
朝食といっても、あるのは、昨日の夕食と同じく、パンと、コーンスープだけです。
「さあ。昨日の、靴を、完成させよう。もしかすると、これが、最後の仕事になるかもしれないから、しっかりした、立派な靴を、完成させるぞ」
朝食が済むと、おじいさんは、そう言って、仕事場に行きました。
仕事場に入ると、おじいさんは、びっくりしました。
無理もありません。
なぜなら そこには 昨日、切っておいた皮が、すっかり綺麗に縫いあげられて、素晴らしい出来の靴が、そろえて、置いてあったからです。
「一体、これは、どういうことなんだろう?」
「一体、誰が、仕上げたんだろう?」
「おーい。ばあさんや」
おじいさんは、おばあさん、を呼びました。
「なんですか。おじいさん?」
おばあさんが、仕事場に行きました。
「ほら。みてみろ。昨日から、作り始めた、靴が、いつの間にか、出来上がっているんだ」
そう言って、おじいさんは、机の上の、靴を、おばあさんに、指差しました。
「ほんとうだわ。出来ているわ」
「でも・・いったい 誰が?」
「うーん・・誰だろう」
「一体、誰が、何の目的で、靴を、仕上げてくれたんだろう?」
「おじいさん。あなたが、昨日、完成させたのでは、ないのですか?」
おばあさんが、聞きました。
おじいさんは、即座に、怒りました。
「ふざけるな。わしは、歳をとったとはいえ、まだ、認知症にもなっていないし、記憶力だって、衰えていない。これは、わしが、作ったのではない」
おじいさんは、怒って、言いました。
しかし、認知症のような精神疾患は、自分では、認識できないものなのです。
病識がないからです。
認知症患者は、「オレは認知症なんかではない」、と思っているのです。
その逆に、病識がある人は、認知症ではないのです。
つまり、「オレは認知症かもしれない」、と、思えるような人は、認知症ではないのです。
しかし、おはあさんは、おじいさんを、認知症あつかいすると、おじいさんが、怒るので、そして、また、おばあさんも、おじいさんの、日常の会話や、行動から、認知症になったとは、思えないので、おばあさんは、おじいさんの、言うことを信じることにしました。
「一体、誰が、作ったのだろう?」
おじいさんは、考えあぐねました。
「きっと、誰か、心の優しい人が、この世の中には、いるのですわ。その人が、きっと、夜中に、そっと、靴を仕上げてくれたのですわ」
おばあさんが、言いました。
「そうだな。そうとしか、考えられないな」
と、おじいさんも、言いました。
「ともかく、この出来栄えだと、この靴は、間違いなく、いい値で売れるぞ」
おじいさんが思ったとおり、その靴は、その日のうちに、びっくりするくらいの 良い値段で、一人の紳士に買われていきました。
おじいさんは、そのお金で、靴1足分の皮を買いに行きました。
そして、また、丁寧に、皮を切り、その日も、薄暗くなったので、机の上に、皮を並べて、仕事場に置いておいて、みることに、しました。
今日のような、不思議なことが、また、起こるのか、どうか、確かめたかったからです。
翌朝、おじいさんが、仕事場に行ってみると、やっぱり 昨日と同じように 素敵な靴が2足、一足は、若いご婦人用、一足は、紳士の為のおしゃれな靴が、ちゃんと 出来上がっていました。
そして、また、二足とも、高い値段で、売れたのでした。
おじいさんは、驚いて、そのお金をもって、今度は 四足分の皮を買いにいき、戻ってくると、すぐに丁寧に、靴用の形に、切り取って、また、仕事場を後にしました。
やはり、次の日の朝には、可愛い子供靴に、シックな婦人靴、丈夫な仕事靴と、歩きやすそうな軽い靴が、ちゃんと 出来上がっていました。
そんなことが 毎日、続いて、起こるのです。
さすがに、おじいさんも おばあさんも 一体 誰が、こんなことをしているのか、それを知りたいものだと思いました。
そこで、おじいさんは、その夜は、靴の皮を、仕事場に置いておいてから、ベッドに横になって、そして、夜中に、そっと、仕事場をのぞいてみることにしました。
その夜中のことです。
仕事場の時計が、ボンボンと、12時を打ったころ、なにやら、仕事場で、動いているものが見えました。
それは不思議なことに、なんと、そこには、二人の小人がいたのでした。
おじいさんも、おばあさんも びっくりぎょうてん、しました。
思わず、声が出そうになるのを、じっと我慢して、二人の小人のすることを、見ていました。
小人たちは、
「仕事だ。仕事だ。いい靴作れ、僕らは 靴の妖精だ、働き者の、おじいさんのために、朝になるまで靴作り・・」
と、歌いながら、すばやく、皮を縫い、小さな槌で形を整え、最後に、キュっキュっと靴を磨いて、あっという間に 素晴らしい靴を 作ってしまいました。
そして、靴がすっかり出来上がると、二人の小人は ランプの火を消して、日の出の始まりそうな薄闇の中に消えていってしまいました。
おじいさんも おばあさんも 自分たちが見たことが 信じられない思いでしたが、出来上がった靴を手にとって、つくづくと眺めてみれば、やっぱり、それは、素晴らしい出来だし、なにより、きれいな仕上がりでした。
二人は、黙って、テーブルに坐って、いつまでも、小人の作った靴を眺めていましたが、ふと おじいさん、が、ため息をついて、言いました。
「夜中に、靴を作っていたのは、小人の妖精だったのか」
おじいさんは、そう言って、腕組みをして、考え込みました。

「ふふ。おじいさんも、おばあさんも、喜んでるぞ」
二人の、小人は、そう言って、天国から、おじいさんと、おばあさん、を見ました。
おじいさんと、おばあさん、の二人は、黙って、テーブルに坐って、いつまでも、小人の作った靴を眺めていましたが、ふと、おばあさんが言いました。
「ねえ。おじいさん、あの二人の小人は 裸でしたよね。靴の妖精といっていたけれども、寒さは感じないんでしょか?」
「さあ。それは、わからん」
「私たちが、これまでよりも、楽な暮らしが出来るようになったのも、あの二人の小人の、おかげでしょう。だから。御礼をしてあげましょうよ」
おばあさんが言いました。
「お礼って、一体、何をするのだ?」
おじいさんが、おはあさんに、聞きました。
「私、今日は、二人分の小さな服をつくるわ。やっぱり、小人は、寒そうだもの。それと、彼らに合った、小さな靴もつくってあげるわ」
おはあさんは、そう言うと、早速、ちいさな服と靴を、作り始め、その日のうちに、作りあげました。

天国の小人は、それを、見ていて、「ふふふ。楽しみだね」と、喜びあいました。
その夜、二人の小人は、いつものように、天から舞い降りてきて、靴屋に行きました。
きっと、おばあさんが、自分たちの、体のサイズに合う、小さな服を作って、置いておいてくれることを、期待して。
二人の小人は、いつものように、おじいさんと、おばあさん、に、気づかれないように、そっと、家に入りました。
善事と悪事は、人に気づかれないように、そっと、やるもの、なのです。
仕事場の、机を見ると、その夜は、二人の小人の予想通り、机の上に、小さな箱が置いてありました。
そして、箱の中には、二人の小人の予想通り、小さな布切れ、が置いてありました。
二人の小人は、喜びました。
「やった。あれが、僕たちに、対する、お礼のために、おばあさんが、作ってくれた、服と靴に間違いないぞ」
二人の小人は、ウキウキして、箱の中に着地しました。
すると、どうでしょう。
小人の足が、箱の中に、ピッタリと、くっついてしまいました。
ゴキブリホイホイのように、箱の中に、接着剤が塗ってあったのでしょう。
「うわっ。これは、どういうことだ」
二人の小人は、驚くと同時に、両足が、箱の中に、くっついてしまっているので、バランスを崩して、倒れてしまいました。
すると、小人の体も手も顔も、箱の中に、ベッタリと、くっついてしまいました。
もう、これで、二人の小人は、身動きすることが、出来なくなりました。
これでは、ゴキブリホイホイそのものです。
「うわっ。これは、一体、どういうことなんだ?」
「どうして、こんな、意地悪をするんだろう?」
「わからないよ。これじゃあ、まるで、ゴキブリホイホイにかかった、ゴキブリと同じじゃないか」
二人の小人は、途方に暮れたまま、もがきました。
しかし、一旦、くっついてしまった体は、どう、あがいても、無駄でした。
とうとう、二人の小人は、あがくのを、あきらめました。
しばしして、おじいさん、が、ぬっと、二人の小人の前に、姿を現しました。
おじいさんは、箱の中に、くっついている、二人の小人を、冷たい目で、見ました。
「ふふふ。とうとう、捕まえたぞ。この、ワル小人ども」
おじいさんは、意地悪そうな口調で、そう小人たちに、言いました。
「あっ。おじいさん。どうして、靴を作ってあげた僕たちに、こんな意地悪をするんですか?」
「こんなイタズラは、やめて下さい。僕らを自由にして下さい」
二人の小人は、おじいさんに、言いました。
「ふざけるな。このワル小人ども。お前達は、自分が何をしたのか、わかっているのか」
おじいさんは、鬼のような顔で、怒って言いました。
「わかっています。おじいさんが、歳で、靴をつくれなくなってしまったので、代わりに、僕らが、つくって、あげたのです」
ヤン坊が言いました。
「恩着せがましいことは、言うつもりは、ありません。けれども、こんなことは、恩を仇で返すような、行為じゃないでしょうか?」
マー坊が言いました。
二人の小人は、何で、良いことをしてあげたのに、どうして、こんな、意地悪を、されるのか、わからないので、困惑した顔つきで、おじいさんを見ました。
おじいさんは、おもむろに、話し出しました。
「わしは、この町で、一番の、靴つくりの職人だ。歳をとって、昔のように、たくさん靴を作ることは出来なくなったとはいえ、靴つくりは、わしの、唯一の、生きがいなのだ。わしの誇りなのだ。お前達は、わしの、唯一の生きがいを奪ってしまったのだ。こんな、悪事をする、お前達は許せん」
そう言うや、おじいさんは、二人の小人の入った箱を、燃えさかる暖炉の炎の中に、投げ込みました。
「ああっ熱いー」
「おじいさん。ごめんなさい」
「おじいさん。許してー」
二人の小人は、必死になって、おじいさんに、助けを求めました。
しかし、おじいさんは、聞く耳をもとうとしません。
二人の小人の入った、箱は、暖炉の炎の中で、メラメラ燃え始めました。
「ああっ熱いー」
「おじいさん。ごめんなさい。もう、勝手に靴を作ったりしません」
「おじいさん。助けてー」
二人の小人は、必死になって、おじいさんに、助けを求めました。
しかし、おじいさんは、小人たちを、助け出そうとしません。
おじいさんは、二人の小人を見ながら、
「だめだ。お前たちを、生かしておくと、また、どこかで、年老いても、頑張っている、職人の、生きがい、を、勝手に、奪ってしまうだろうからな」
と、厳しく言いました。
そして、とうとう、二人の小人は、焼け死んでしまいました。
おじいさんは、二人の小人の入った箱が、燃え尽きてしまうのを、確認すると、ほっと、胸を撫で下ろしました。
「やった。これで、わしは、また、靴を作ることが出来る」
おじいさんは、嬉しそうに、そう言いました。
こうして、おじいさんは、また、若い時のようには、量産は出来ないものの、コツコツと自分の生きがいである靴つくり、を、することが出来るようになりました。

めでたし。めでたし。

教訓。「人から、生きがい、を奪ってはいけません」

平成28年8月16日(火)擱筆
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