もしも握野英雄の元上司が両津勘吉だったら(通常が自筆、太字がAI、赤字がリトライした箇所)


男性アイドル事務所である315プロダクションの休憩室では、FRAMEのリーダーであり元警察官の握野英雄が仲間たちと談笑していた。
「俺が一時期勤務していた交番は亀有公園前派出所って言う亀有駅の近くの交番だったんだよ……」

握野は彼の警察時代を思い出しながら語り始める。

4年前、握野が19歳で警察学校での演習を終えて、交番勤務の初日。彼は出勤するため、交番の最寄り駅の亀有駅にいた。
「……ん?」
すると、彼は駅のホームに1人の女性を見つける。背格好からして高校生だろうか?彼女は何かを必死に探しているような素振りを見せていた。
「どうかしたのか?」
「あっ、その、スマートフォンを落としちゃったみたいで……」

握野は自分が交番に行く規定の時間まで少し余裕がある事に気づき、
「わかった。俺も探すの手伝うよ」と言う。

握野は女学生と共に亀有駅の中で彼女のスマートフォンを探している途中
「お兄さんは何ていう名前なんですか?」
「俺は握野英雄だ。君は?」
「私は木村夏樹といいます。えっと……英雄さん、今日はよろしくお願いしますね!」
そう言って木村夏樹と名乗る女学生は握野に笑顔を向ける。

その時、近くにいた男性が「あ、両さんちょうど良かった、このお嬢ちゃんのスマホ探してるから手伝ってくれ」と何者かを呼ぶ。

「うーん……しかたねえなあ。手伝ってやるか」と"両さん"と呼ばれた角刈りで繋がり眉毛の警官であるらしき男性が握野と夏樹の方を向く。
「おう、スマホ探してるのはその女の子でいいんだな?」
「はい。手伝ってくれてありがとうございます。よろしくお願いします」と"両さん"に向かって夏樹が言う。

そして握野と夏樹と"両さん"は亀有駅を組まなく探した。しかし、夏樹が学校に間に合わなくなるギリギリの時間になる。
「夏樹、遅刻したらまずいから後は俺たちだけで探しておくよ、これ俺の連絡先」と夏樹の学校の時間を気にした握野は駅のホームで自身のスマホの電話番号を書いた紙を渡す。
「ありがとうございま……」
その時、「あったぞー!」と"両さん"が女性のスマホにしてはシンプルなスマホを手に持って2人の元に駆け寄る。
「あ、これです!本当にありがとうございました!手間をおかけして申し訳ありませんでした!」と夏樹が握野と"両さん"に頭を下げて言った後、笑顔で電車に乗って去っていった。

そして"両さん"に手伝ってもらったお礼をしようとお茶を奢るために自販機でお茶を買った握野は"両さん"と話す。
「探すの手伝ってくれてありがとうございます。そういえば貴方、警察官でしたよね?」
「ん?ああ……ここには今日から部下になる握野英雄という奴を迎えに来たんだ。少し遅いから道にでも迷ったんじゃないかってなってな……一応聞いとくけどそいつの事知らねえか?」と"両さん"が言う。
「あ、すみません、その握野英雄って俺です……」
「……それなら話は早いな。ワシは両津勘吉。さっき呼ぼれてた"両さん"というのはワシのあだ名だ。」
「両津先輩、よろしくお願いします」と握野は直属の上司となる両津に頭を下げる。

「こちらこそよろしく頼むぞ。ほれ、これがお前さんの警察手帳だ」
そう言って両津は握野に警察手帳を渡した。
その後、握野は両津に連れられて交番の中に入る。
「ここがこれからお前さんの職場になる交番だ。
……あ、大原部長が来た。挨拶しとけ」
そこに両津よりも年上に見える男性が入ってくる。
「はじめまして!今日からここに配属となりました握野英雄です!よろしくお願いします!」と握野が挨拶をする
「よろしく、巡査部長の大原大次郎だ。握野くんが道に迷っていなくてよかったよ。
それより亀有駅の駅員さんに聞いたが、お手柄じゃないか……握野くん、女性のケータイを探してあげていたなんて。両津にも見習って欲しいものだ。」と大原は言う。
「いやいや、ワシだって今回はそれを手伝ってましたよ!それに最終的に見つけたのはワシです!」
「ふむ、それは助かった。そうだ、早速だが今日はパトロールに行ってもらう。場所は任せる。今日は新人研修も兼ねてついて行ってくれないか?……頼めるか?」
「はい!わかりました!」
そして、両津と握野はパトカーに乗り込んでパトロールに出かけた。


しばらくパトロールした後、両津と握野が休憩がてらカフェに寄っているとそこで警察官が近くにいることに気づく。
「ん……あれは」
「知り合いですか、両津先輩?」
「ああ、まあな……あ、こっち来る」
その警察官は両津もよく知っている人物であった。
「どうも、こんにちは」とその警察官が言う。
「おお、本田じゃねえか。こんなところで何やってるんだ?」と両津が聞く。
「いえ、ちょっとこの辺りで事件があったもので……犯人を追ってきたんです」と警察官は言う。

「本田、ワシの隣にいるのが握野英雄だ。今日から亀有公園前派出所勤務になった。」と握野を両津が紹介した後、握野は座りながら礼をする。
「握野、こいつは本田速人。白バイ隊員で、ワシの友人だ。」
「よろしくお願いします、本田先輩。」と握野がまた座りながら一礼する。
「よろしく、握野くん。先輩には気をつけた方がいいよ」と本田は言った後、心の中で真面目そうなこの人も両津先輩に汚染されないと良いけど……と言う。

「あ、事件の通報が来たんでまた。」と言って本田が去った後、両津は握野に、「お前がネチネチ小姑みたいに五月蝿く言うから遊べやしねえ。真面目すぎんだよ、いくら警官だからって」と言う。
「でも、両津先輩はもう少し真面目になってくださいね。」と握野は言う。
「……ちっ、わかったよ。」
その後、両津はパトロールに戻った。
「……あ、あの、両津先輩。」
「ん?なんだ?」

「あっちの建物、燃えてます……火事みたいです……」と握野が言う。
そして彼が指さした先には燃えているビルがあった。
「なにい!?行くぞ、握野!」と言った後、両津は握野を連れてその建物の前に向かう。

燃えているビルでは校外学習があったらしく、高校生とその引率の教員がいた。
「中に人はいますか!?」と握野が言うと、
「男子が2名……まだ居ます……うう……」と女性教員の1人が返答する。
そして消防署に連絡を取っていた両津が、「事故で交通渋滞が起きて消防車が来るのに時間がかかるだと!?」と叫ぶ。
そして両津は握野に、「行くぞ!その男子2人をワシらで助けなきゃならん!」と言ってビルの中に駆けていき、握野もついて行く。

その頃、燃え盛るビルの中に居た男子生徒2人は……
「おい、しっかりしろ!」ともう1人の男子生徒が倒れていた友人に声をかける。
「……俺はいい……お前だけでも逃げろ……!」ともう1人の男子生徒が言う。
「バカ野郎!俺だけ逃げるわけにはいかねえよ!」と倒れた友人を背負ったまま、
男子生徒は言う。
「俺が不運なせいで……遂にみんなまで巻き込んでしまった……俺のせいだから置いていってくれよ、なあ!」と倒れていた男子生徒は言う。
「そんな事言うなよ、龍!お前のせいなんかじゃない!誰も悪くない!」と男子生徒はもう1人の"龍"という男子生徒を背負いながら言う。
「俺……お前には生きていて欲しい……」と言った後、"龍"という男子生徒は気を失った。

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「おーい、いますかー!」
「大丈夫かー?聞こえたら返事してくれー」
両津と握野は2人の男子生徒を探しながら燃えるビルの中を歩いていた。
「……返事がないですね」
「ああ、どうなってるんだ?」
その時、両津は床に何かが落ちている事に気づいた。
「……これは、学生証か?」
「え?本当ですか?」
両津が拾った学生証は、
既に避難していた生徒の中で姿を見かけなかった、2人の男子生徒の物であった。
「ワシらが探している2人の男子生徒の学生証がまだ燃えてないという事は、落としてからそう時間は経っていないな……2人はこの近くにいるはずだ!探そう!」
「はい!」

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「……もう少しだ、がんばれ」
「いたぞー!」
2人の男子生徒は両津と握野によって発見される。
「1人が気絶していて、もう1人が彼を背負っている……」と握野は呟く。
「じゃあワシが気絶している方を背負っていく。握野はもう1人に肩を貸してやれ」
気絶していない、もう1人を背負っている男子生徒が軽く足を怪我している事に気づいた握野が頷く。
「よし、行くぞ」と両津が言い、3人はビルから出た。
その後、両津と握野は救急車で運ばれた2人の男子生徒と付き添いで病院に来ていた。
「……両津先輩、さっきの火事って……」と握野が聞く。

「高校生連中の隣の部屋にいた爺さんのタバコの不始末だよ」

「やっぱり、アイツは悪くなかったんですね」と軽い足の怪我で直ぐに手当てが終わったもう1人を背負っていたかなり大柄な男子生徒が言う。
「ああ、お前らはなんも悪くねえ」と両津が言った後、まだ眠っている方の男子生徒の病室に入っていく。

そして握野はかなり大柄な男子生徒と2人きりになる。
「やっぱりアイツは悪くなかったってどういう事だ?」と握野が尋ねる。
「えっと、もう1人あなた方に助けられた生徒は俺の友達で……滅茶苦茶運が悪いやつなんですよ。それで今回の火事も自分の不運のせいだって思ってるみたいで……」と男子生徒が言う。「そりゃ、俺も言えるなら言いたいけど……赤の他人の俺の言葉より友達の君の言葉の方が心に響くんじゃないか?」
その時、両津が病室から出てきて、「お前は帰って休め、今日1日よく頑張ったからな、これはワシのわがままじゃない、さっき電話してきた大原部長の命令だ」と握野に言う。
握野は渋々うなづいた後、男子生徒に「じゃあ君の友達に、『君の不運は確かに変えられない。だが、人を幸せにする努力はできるし、それが例え結果に結びつかなくてもその努力したという過程だけで嬉しく思う人もいる』と伝えておいてくれ」と言った後、病院から去る。

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握野が帰った後、眠っていた男子生徒が目覚めたので両津とガタイのいい友人である男子生徒が病室に向かう。
「龍、大丈夫か!」と友人の男子生徒が言う。
「ああ……お巡りさんありがとうございます」と"龍"は言う。
「あ、用事で帰っちゃったけど、もう1人お巡りさん居てそのお巡りさんから……」と友人が握野からの伝言を"龍"に伝える。
その時はまだ、数年後に"龍"が後に握野と芸能活動をしてユニットを組む事になるとは誰も知らなかった――。

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翌日、亀有公園前派出所
「昨日の火事の原因はタバコの不始末だったらしいですよ」
「またかよ!本当に喫煙者はろくな事をしないな!」
「ええ、全くです」
その時、中川が「おはようございまーす」と言いながら出勤してくる。
「おう、おはよう」
と大原が挨拶すると同時に握野がまだ来ていない事と彼がまだ中川とは対面していない事に気づく

「握野くんはまだ来ていないかね?」
「はい、まだ来ていませんね」
「じゃあ先に中川くんと握野くんを会わせるとしよう、中川くん、握野くんが来るまでちょっと待っていてくれ」
数分後、握野が「おはようございます!」と元気よく出勤してくる。

「あ、君が噂の握野君だね、僕は中川圭一と言います。よろしくお願いします。」
「あ、どうも……握野英雄です、よろしくお願いします!」

中川と握野の短い会話が終わったあと、握野は大原に話しかける。
「あの、大原部長……昨日俺に仕事を切り上げるようにお気遣いしてくださったって本当ですか?」
「ああ…握野くんは初日なのにとても良く頑張っていたから早めに帰ってもいいだろうって思ってな」
「その件ですが、昨日助けた少年が悩んでいたようなのでもう少し勤務して側にいてやれたら良かったなと……いや、大原部長を責めている訳ではありません、俺の事を気遣って下さってむしろ感謝しています……大原部長?なんで泣いているんですか?」

大原部長は泣きながら、「君が警察の職務に対してこんなに懸命で直向きな事に感動しているんだ、言われた事以上の事はやらないのが大半で、まあそれは言われた事以上のことをやるのが難しいから仕方の無いことだが。それどころか両津みたいにサボりたがる人間すらいる。
……上司であるわしが握野君の気持ちを汲み取ってやれなくてすまなかった。これからは間違っていると思ったり、こうした方が良いと思うならどんどん言ってくれ」と言う。
「大原部長がそんなに気になさることではないですよ、それに俺は大原部長にお気遣い頂いた事に感謝しています。だから謝る必要なんてありません」
「そうか、そう言ってもらえると助かる。……さて、握野君、
わしは会議があるので行く。勤務前にそこで居眠りしている両津は起こしておいてくれ」
「分かりました……行ってらっしゃい」と握野が言った後、立ちながら眠っていた両津の身体を揺すって起こす。
「立ちながら大原部長の目の前で居眠りするなんて、両津先輩……もう、起きてくださいよ」
「んあ?もう時間か……ふわぁ〜」とあくびをしながら両津が言う。
「お前はいつも寝坊ばかりしおって……今度遅刻したら減給だからな!今日はしっかり働けよ!」と大原部長が言うと、
パトカーに乗り込んで去っていく。

握野は両津と中川と書類整理をした後、休憩の為に休憩室に行ってお茶とお菓子を飲みながら談笑する
「麗子と寺井はまだ有給なのか?」と両津が中川に尋ねる。
「はい、今日まで休暇だったと思います」と中川はそれに答える。
「ここの派出所にまだ他にも勤務している方がいるんですか?」
「ん?ああ、そういや昨日から有給だから握野はアイツらに会ってねえか……」
「はい」
「……まあ明日には来るだろうからその時紹介してやる」
その時、外から「あのー、すみません」って声が聞こえてくる。
「おう、どうした?迷子か?」と両津が言うと、派出所の前に1人の少年が現れる。
「あ、昨日のお巡りさん!」
「おう、お前は確か昨日会った男の子だよな?」
「うん!あのね、僕ね、
ゴリラのお巡りさんじゃなくてサメのお巡りさんにお礼を言いたいんだ!」
この少年は昨日、両津と握野がパトロールしている際に母親の元に送り届けた少年である。最も両津はその時は競馬ラジオをイヤホンで聞きながらなのでほぼ何も役に立っていなかったのであったが。
「おーい握野、昨日の迷子のガキがお前の事ご指名だぞ!」と不機嫌そうに派出所の中の休憩室に向かって叫ぶ。
「あ、はーい」と言いながら握野が外に出てくる。その時彼は心の中でサボっていた両津先輩の自業自得なのに……と呟いていた。

「それで今日はどんな用事かな?」と握野は優しく少年に語りかける。
「昨日ママの元に僕を連れてってくれた優しいサメのお巡りさんにお礼を言いたかったんだ!ありがとう!」
「いやいや、どういたしまして、お母さんの所まで送ってあげられて良かったよ」
「うん、でもね、僕どうしてもサメのお巡りさんにお礼が言いたくて……あ、そうだ、お巡りさんは警察官だからこれあげる!」

そう言って少年は警察の紋章を象った絵を書いた紙を握野に手渡す。
「わあ、すごくよく書けてるじゃないか!ありがとう!」
「警察の紋章って書くの難しかったけどすごくきれい!サメのお巡りさんの心みたいにきれい!顔はちょっと怖かったから最初はびっくりしたけど……」
「アハハ……顔怖くてごめんな……」
「でも、顔が面白いけど音楽聴いておサボりしてたゴリラのお巡りさんより、顔が怖いけど真面目なサメのお巡りさんの方が、僕はお巡りさんに相応しいと思うよ!」と少年が笑顔で言う。
「そ、そうか……そんな風に言われると照れるな……」
「それにね、サメのお巡りさん、カッコいいと思うよ!顔はちょっと怖いけど、優しそうだもん!」
「え?……そうか、
ありがとう……」
「あ、そろそろ僕のママが公園で待ってるから行かなきゃ、バイバーイ!」
「おう!バイバイ!これからは迷子にならない様に気をつけてな!」
「うん!バイバーイ!」と言って少年は母親の元へ走っていく。
「握野、お前子供に好かれるタイプなんだな」と両津が言う。
「いえ、そんな事ないですよ」
「いやいや、
ワシも近所の子供と時々遊ぶけどあそこまで慕われてはおらん。」
「俺より子供に顔怖がられてないんだから、両津先輩だってきちんと話せば仲良くなれますよ……もっと怖がりな子だと俺の顔見て逃げ出す子もいますし……」
「まあ、確かにお前の言う通りかもな……それじゃあワシは今からその辺の子供と遊んでくるか!」
「……ほどほどにしてくださいね……」
両津が交番から出ようとしたその時、派出所の前にパトカーが止まる。
「あれ?
部長が帰ってくるにはまだ早いはず、誰だろ」と両津が言う。
「おう、両津、久しぶりだな」
「あ、中本警部!お久しぶりです!」
「両津、お前も元気そうで何よりだ。それで、両津、お前に頼みがあるのだが」
「なんでしょうか?」

中本警部はしばらく黙った後、「警察と自衛隊との合同合宿に参加して欲しい。災害支援やテロ対策はこの2つが手を取り合って協力しないと出来ないという世論になっているのだ。」と両津に言う。

数日後、両津は握野を誘って1泊2日の、警察と自衛隊との合同合宿に参加していた。
「いやー、まさかこの歳になってこんな合宿に参加する事になるとはな」と両津が言う。
「両津先輩、なんかすみません……俺まで参加させてもらって」と握野が申し訳なさそうに言う。
「いやいや、気にするな。
それこそワシがお前を拒否しても部長がワシの監視役として参加するようお前に頼み込んでいたに違いない。……と言っても部屋割りは警察官と自衛官のペアの2人1部屋だからワシとお前は別室確定で、あまり監視役の意味はねえがな」
そう言って2人はそれぞれの部屋に向かう。

両津が部屋を開けるとそこに既に彼のこの合宿での自衛官のペアが既に居た。
彼はかなり整った顔立ちをしており、鍛えられた逞しい身体をしていた。
「あー、ワシは両津だ。よろしく」
「はじめまして、自分は信玄と言います。よろしくお願いします、両津さん」
両津は彼が名乗った信玄という名を歴史被れ故に名乗った二つ名と認識した。
「次の予定が2時間後だからワシは寝る。五月蝿くして起こさん範囲で好きに過ごしてくれ」と両津が2段ベッドの上段を相談もなく占拠し、眠る準備をする。
「あの……俺も一応ここの部屋割りでは同じ立場なんですが……」
「ああ、そうだったな……でもワシはあんまり細かい事は気にしない質なんだ。」
そう言って両津は再び眠りにつく。
「……はぁ……まあいいか……」

信玄は合宿のペアである両津の傍若無人な振る舞いに呆れるものの、短時間だからと我慢しようとする。

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一方その頃、握野は同室のペアの自衛官と趣味が合い意気投合していた。
「原宿のパンケーキ屋で滅茶苦茶美味いの知ってるんですよ!」
「すげえな、原宿まで行けるなんて、俺も甘いもん好きだけど英雄君ほど顔良くないから女の子の視線キツくて原宿なんてとても行けねえや」
「いえいえ、そんな事ないですよ!……あ、そろそろ2時間経ちますね。行きましょうか」
「そうだな、行くか!」
2人が廊下に出ると、中本警部と両津が立っていた。
「あ、両津さん、
そういえば先輩のルームメイトはどこにいるんですか?」と嫌な予感がした握野が両津に尋ねる。
「ワシが2段ベッドの上で寝てたら、ベッドから落ちたみたいでその時にワシの下敷きになって背中と首痛めたらしく、医務室で検査してから合流するらしいぜ」
握野は両津の返答に呆れ返ってその場で頭を抱え込む。
「両津、お前は相変わらずだな。」と中本警部が言う。
「いや、今回はワシ悪くないっすよ……」
「まあ、お前の悪運の強さは今に始まった事ではないしな。それよりも、握野、お前に頼みがある。

「若輩者の俺でできることで良かったら……」
「災害支援やテロ対策のために自衛隊との合同合宿に参加したのはいいのだが、実は私も両津も災害支援はともかくテロ対策に関しては専門外だ。そこで、もしこの合宿中にテロが起きた場合に備えて、君の力を貸して欲しい。」
「わかりました」

中堅やベテランの警察官の部類である両津や中本と違い、新人の握野は警察学校で最新のカリキュラムで勉強した為、近年の情勢に近い内容のことを習っていたのだ。
「そういや最初の内容は会議室でやるのか……親睦会か何かかなぁ」と3人の話に置いてけぼりの握野のペアの自衛官が話を聞きながら呟く。

数百組の警察官と自衛官のペアが集まった会議室
「……と言うわけで、今回の訓練内容は災害支援とテロ対策についてだ。訓練とは言え、災害支援については命に関わる事態になる可能性もある。皆、心してかかるように」
「「「はい!」」」
「それでは、
この後昼食を食べたら早速演習を始める。集合場所と時間は事前に伝えたものから変更はない。」

「両津先輩、昼ご飯食べに行きましょう」
「いや、ワシはルームメイトの様子見に医務室に行ってから行く。」
握野はここ数日一緒にいただけで食い意地が張っていると分かるレベルの大食いの両津が、食事時間を先延ばしにし、減らしてまで見舞いに行く事を知って今まで持っていた両津への悪いイメージを少し改めた。

医務室
「信玄いるかー、悪ぃな、ワシのせいで怪我させてしまって」
「あ、両津さん……とりあえず検査して異常無しですし、もう痛みも引いてるので午後から自分も訓練に参加できます……大事には至らなかったですし、両津さんだってわざとやった訳じゃないですから気にしてませんよ」と信玄は笑顔で言う。
「そっか……ありがとよ」
「いえいえ」
「そうだ、飯でも食いに行かないか?」
「いや、自分は……」
信玄が断ろうとした瞬間、彼の腹の虫が鳴る。
「……すいません」
「いやいや、
食欲は人間にとって大事なものの一つだ。合宿の食事はブッフェスタイルだから好きなだけ食べられるらしいし」
両津が笑顔で信玄の手を引き、昼食会場に行く。
しばらく後、両津がブッフェで用意されていた分の6割ほどを平らげ食べ過ぎだと、料理を用意したシェフと今回のメニューを監修した栄養士達から言われていた。

午後の演習
「今回の演習は、災害時に想定されているテロリストが立てこもった建物に突入する訓練だ。この建物にはテロリストが人質を取って立て籠もっている。突入班は人質の安全確保と犯人の制圧、他の者は建物の外で待機し、突入班が人質を連れて出てくるのを待つことになる。なお、突入班と待機班とテロリスト役人質役の組み分けはくじで行うものとする。」
両津と信玄のペアは待機班に、そして握野とルームメイトのペアはテロリスト役になった。
「英雄君良い奴すぎてテロリスト役なんて演技でもキツそう」
「俺なんて悪人面だから絵面だけならテロリストっぽさもあるっちゃありますけど、貴方なんて優しい顔だから違和感バリバリですよ」

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その頃、両津と信玄は待機班として演習に使う建物の外で待機していた。
「頑張りましょう、両津さん」
「つっても待機班は救護メインでドンパチ撃ち合うのがねえからつまらん」
「いや、待機班だって結構重要ですよ。もしもの時に救助が遅れると大変ですから」
「お、そろそろ演習始まるぞ」
「そうですね」
「それでは、演習開始!」
待機班の2人が建物に入ると、
他の待機班のメンバーと共に1階と外のスペースを使い、設営をし、簡単な手当をできるようにした。
「大怪我をした人は救急隊を待つべきだが、軽い手当なら自分たちでやらないといけませんね」
両津と信玄は荷物を置いて、外の椅子に座る。

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その頃、テロリスト役を演じている握野と自衛官である彼のペアはテロリストになりきりつつも、人質役を縛っていた。
「演習なのに彼らを拘束しなきゃいけないなんて心が痛むよ英雄くん」
「ですよねー、まあ本番に近くなきゃいけないのは分かりますけど」
「いや、そんなに痛めつける必要は無いだろう」
「ん?誰だ!?」
「俺は自衛隊だ!テロリストはお前たちだな?」
「いや、俺たちは……」
「抵抗するなら容赦はしないぞ!」
「いや、ちょっと待って
英雄くんの顔怖いからってホンモノのテロリストだと勘違いしてるのか!?それ実弾……」

握野は「演習ですよね?」と言いつつ装備を捨て、丸腰になる。
「おいおい、冗談だよな?」
「あ、はい……すいません、脅かすつもりはなくて」
「いや、気にしなくてもいいよ」
握野が笑顔で言う。
「しかし、本物のテロリストもこういう感じなのかな」
「本物はもっとヤバ
いんじゃないですか?……とりあえずテロリスト役の俺らが投降して演習は終わらせましょう」
そんなこんなでグダグダの演習は終わった。

その夜、両津は信玄に荷物を動かされ、下のベッドにいた
「あー、お前に怪我させたわけだから仕方ないけどな……」
「いえ、両津さんのせいじゃありませんから、本当に大丈夫です。それより明日は朝から訓練があるんですから早く寝ましょう」
「そうだな、そうするか」
「電気消しますよ」
「おう、頼む」
信玄が消灯して数分後、両津
は眠りについた。

翌日、大規模射撃訓練が行われていた。
「命中率は概ね問題ないようだな。では実際に射撃してみよう。各人最大50発撃てる弾倉を配布するのでそれを使って目標の25m先の的に狙いを定めて構え、引き金を引く。今回配った銃は従来のものと違うBB弾を込められた銃にしてある。誤射が起きたらまずいからな」

なんやかんや言ってみんな気合が入っているようだ。
「うう……」
握野は銃の扱いに慣れておらず不安になる
「難しいよね、俺も苦手なのに新人の英雄くんはもっと大変だと思う」
握野のペアの自衛官が話しかける
「ええ、正直言うと怖いです」
「でも、演習だから大丈夫だよ」
「はい、頑張りましょう」
「お、準備ができたようだな、では各位、はじめ!」
両津と信玄のペアは待機班のため、射撃は行わない。


「……!」
握野は銃をまあまあ上手く使いこなせるようになった。
「よし!」
その時、「えー、それでは待機班も合流してください。」と指示が入り、両津と信玄達も加わる。

しばらく狙撃した後、「今までは的を狙ってましたが、次はお互いに向けて狙撃してください。実弾じゃないので安全です。」と指示が入る。

握野がさすがに無理だとうろたえて立ち尽くすと、何者かに肩を狙撃されて何故か気を失う。

目を覚ますとそこは病院であった。
「あー、実弾銃が何故か混じってましてね、それで誤射があったんです。幸い貴方は大怪我に至りませんでした。」
どうやら数日間眠っていて合宿はいつの間にやら終わっていたようだ。
そこに両津が入ってくる。
「お、目が覚めたか」
「あ、先輩。俺、何日くらい入院してたんですか?」
「ん?2日間だ」
「2日間!?そんなに長く入院してたんですか!?」
「ああ、まあな」
「じゃあ俺、
無断欠勤に……」
「いや、大丈夫だ。それどころかワシの落ち度かもしれん」
握野は両津が自分が悪いといい、驚く
「いや、両津先輩は関係ないです!」
「実は間違えてワシが持ち込んだ支給品の銃なんだ。他の銃とそっくりで誰かがうっかりお前に向けて撃ってしまったようだ」
「でも両津先輩はわざとじゃ……」
「……頼み込んでケジメとしてワシは謹慎処分にしてもらった、なあに謹慎なんて慣れてるさ」
そう言って両津は部屋から退室し、その後握野が退院して復帰した時は欠員がその時出ていた別の交番に派遣になった為、亀有公園前派出所の面々と会うことは二度となかった……


「と、いう訳で俺の記憶と両津先輩から聞いた話だ」
このように握野はFRAMEの仲間たちへ亀有公園前派出所、そして両津のことを語った。
「というか火災ってもしや……」
「なんだよ、龍」
「その火災で英雄さんとその……両津さん?が救った2人って俺たちの事じゃないですか!」
「ええ!?」
「……ああ」
「…………そういえばそんな気がする」
「そんな気がしてたわ」
「いや、まあ火事で救ったのは俺じゃないけどな」
「えええ!?」
「そんなに驚くことか
?両津先輩がその時居なくて俺一人だったら……やりたくは無いが取捨選択で、多分気絶していたお前を見捨ててお前の友達だけを助けていたと思う。俺にお前を運べる自信なかったから」
「……なんかすいません」
「別に謝ることないさ」
「うううううううううううううううううううううううううううう」
握野の話を聞き終え、涙を流す木村。
「お、
おい、龍、泣くなよ……」
「だって、あの時もし英雄さんと両津さんが助けに来てくれてなかったら多分俺、アイツと一緒に死んでて2人ともこの世にいなかったんですよ……それに、あの時期って凄く悩んでいて、もし英雄さんが『君の不運は確かに変えられない。だが、人を幸せにする努力はできるし、それが例え結果に結びつかなくてもその努力したという過程だけで嬉しく思う人もいる』という言葉をアイツから俺に伝言頼んでなかったら……今頃、あの時の悩みから立ち直れずに消防士にもアイドルにもなってなかったと思います……」
大切な仲間の人生を4年前に、いい方向に知らないうちに変えていた握野であった。
「……あの時の警察と自衛隊との合同合宿に英雄もいたのか」と今度は信玄が握野に言う。
「……ああ、やっぱり両津先輩の言ってた"シンゲン"ってお前の事だったのか」
握野があの時に何者かに撃たれた肩の辺りを見る。
「両津先輩が言ってた"シンゲン"に会ってみたいって、優しそうな人だなって、ずーっと思ってたんだ」
「自分も両津先輩が少し語ってた部下の事、気になってたんだ……あの実弾で撃たれた騒ぎの時は、救急車が来てて、両津さんが実弾どうこう言っていた救急車に乗り込んでいたのでその彼の部下が撃たれたんだなと分かったんだ。……でも両津さんは部下の名前言ってくれなかったし、その件は新聞にも載らなかったから安否がずっと気になっていた」
信玄は当時の心配だった気持ちを思い返す。
「まさか、その両津さんの部下と一緒にアイドル活動をする日が来るとは思ってなかったよ、英雄」
「ああ、俺もだ、信玄……」

その時、FRAMEのプロデューサーが入ってくる。
「皆さん、そろそろ仕事なので現地に向かう時間です」
「そういえば今日は何の仕事なんだ?」と握野がプロデューサーに尋ねる。
「えっと、315プロ総出のバラエティー番組で握野さんには出演の他にも司会の1人、FRAMEは全員参加で、信玄さん、木村さん、岡村さんはドラマの撮影、山下さん、舞田さん、古論さん、北村さんはCMの収録 ……全部葛飾区内で行います。バラエティー番組は葛飾署にも協力してもらいます。」

「分かりました!」と3人が返事した後、事務所から移動の車に向かう。その途中で3人は会話をする。
「葛飾署管内に亀有公園前派出所があったから、もしかしたら両津先輩にも会えるかもしれない……!」と握野が言う。
「俺も両津さんに会ってみたいです!あの時のお礼言い足りないですし……」と木村が言う。
「昔の部下と昔助けた人と昔合宿で同室になった人間が一緒にアイドルやってるって知ったら驚くだろうなあ……自分は一緒にいたの2日だけだから忘れられてるかもしれないが」と信玄が言う。
「そんな事無いですよ、きっと」
「ああ」
3人の表情は晴れやかであった。
その後、現場に到着し、撮影が始まった。
撮影は夕方までかかったが、握野は何とか無事にクランクアップした。
その帰り道。
「あの、握野さん」

そう呼び止めるのは大原部長であった。
「お久しぶりです!大原部長!……元気そうでなによりです、両津先輩はいらっしゃいますか?」と握野が笑顔で言う。
「……実は、両津は今長期出張中なんです、海外で」
「え!?……そうなんですか……残念です、お礼を言いたかったのですが……」
「両津は今年いっぱいは戻ってきませんが、伝言なら預かりますよ?」
「じゃあ、
俺と、後俺の仲間から伝言頼んでもよろしいですか?」と握野が警察の関係から外れて、敬語を使ってくる大原部長に複雑な思いを抱きつつ言う。
「ええ。」
「じゃあまずは俺から、『両津先輩、俺は今アイドルやってます。辛いこともあるけど、常に前向きな両津先輩の事を思い浮かべて頑張ってます。俺はあなたに勇気を何度も貰ってます』伝言よろしくお願いします。」と握野が言う。
それを聞いて、木村が「じゃあ、次は俺の伝言をお願いします、大原さん。『両津さん。あなたが4年前の火災の時助けてくれた人です。あ、名前は木村龍と言います。あなたがあの時俺を助けてくれたおかげで、今こうして生きています……今は握野英雄さんと一緒にアイドルやってます。不運体質は治らないですけど、両津さんと英雄さんが生かしてくれたこの命、誰かの為に使いたいです。助けてくれてありがとうございました。』……この内容です」と言う。

最後に信玄が「自分の分の伝言、言いますね。『両津さん、貴方は覚えていないかもしれませんが、貴方と1泊2日の合宿で一緒になった信玄誠司という者です。自分も握野英雄とアイドルを一緒にしています。貴方のこと、只者じゃないと思っていたけど、今の自分の仲間を救っていたと聞き、そう感じた自分はただしかったんだなと思います。自分は貴方の事を尊敬してます。』……これで以上です。では、失礼します。」と伝え、頭を下げた。
大原部長は3人に「わかりました、必ず伝えます。」と伝える。
その後、握野は木村、信玄と共に帰路に着いた。
その後、
FRAMEはかなりの売れっ子アイドルになった。
その影には3人を救い、3人を繋ぎ、絆を更に深くした両津勘吉という1人の男がいるが、それはFRAMEの3人の秘密であった。

終わり
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