【閲覧注意】 アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


※訂正 ケンジ・ミヤザワ→ソーセキ・ナツメ(夏目漱石)
   素で間違えました、切腹いたす

「月がきれいですね」
一度、目の前の愛人の姿を見たことがある。
すべてが終わった、メサイアが崩落して…艦長も共にした日。ミネルバが落ちて、クルーも命を落とした日でもある。
生きていることが、僕には実感できていない。今でも、ちょっとだけ…。
避難していた基地で見たことがある。その時は、クルーや現状、それにこれからの事でてんやわんやとしていた。
「…ソーセキ・ナツメですか?」
「おや、知っていたか。では、返答を聞きたい」
「死んでもいい、と言った方がいいですか?」
「…
「死んでもいい。都合が良くて、安心できる…僕は、この言葉を嫌いにはなれません」
死ねばいい、じゃない。死んでもいいは、それは何か大切なもののために犠牲になってもいい。
でも、犠牲になりたくない、死にたくはない。生きて会えることは、とても素晴らしく当たり前になるべきこと。それが難しい世の中で、僕としてはどうすればいいか分からないままだ。このままで良かったのか、選ぶより命令される方が。
けど…命令で、ここに来たのではないのは確かだ。自信はある。
薄っぺらい正義で、きっとここに居る。笑ってもいい、でもこの気持ちだけは嘘は付けないや。
選んでその気持ちがあるから、この人の隣に居る。
少し息を吐き、じっとアレクセイさんを見つめる。普段と変わらない、温厚でどこかちょっと胡散臭い笑み…。

「好きです、愛しています。死んでも良いくらいに…貴方が、アレクセイ・コノエを僕は」

「待ってくれ」
「えぇっ?どうされました?」
見ると、アレクセイさんは顔を手で覆いながら地面を見ている。何かまずいことでも言ったか?
「君の返答を、聞きたい。君もその返答をしているんだ、それを止めたくはないが…こう、真正面で言われてしまうと」
「えぇー…そりゃあないですよぉ、アレクセイさん。ヘタレていいのは僕くらいで十分でしょうに…」
ここまで来て、この人もヘタレるんだなぁ。そんな思いとともに、僕は気づくと笑っていた。馬鹿にしているんじゃあない、その姿を知れたことが嬉しいんだ。
僕はアレクセイさんのすべてを知らない。全部知れていないから、知らないアレクセイさんを知って嬉しい。
それよりも、もういいでしょう。貴方の顔を見たいから、顔を上げてほしいと僕は彼の頬に手を添え言葉にした。
「く、ぷぷ…もう、いいですよ。ほら、顔を上げてください。キスしますから、動いちゃだめですよ?」
「情けない…、いやちょ…んぅ」
「…ん。はい、じゃあコレでいいですか?」
言葉でそうなるなら、このくらいがちょうどいいでしょう。
歯が当たらなくてよかった。いつもアレクセイさんから、キスされることが多いから…こうやって自分からもした方が良いのかもしれない。
…タリア艦長があの時、あんなことをしたのが良く理解出来なかった。けど、今なら解ってしまう。
解ってしまうから、なおさら…彼女のしたことが、ひどく残酷であることを知る。
「…タリア艦長、ボクも好きな人が出来ました。でも、僕はあなたのように身勝手に成れますかね?」
「答えられない人の答えを望むかね?」
「では、貴方は?貴方は僕をどうしてほしいですか、身勝手で良いですか。それとも従順?」
アレクセイさんはじっとこちらを見る。まっすぐな目、僕はこの目が好きだなぁ。
「君のままでいい。私が知っているのは、反応がオーバーで、滑るダジャレを言って冷やかされ、それでも、ひとを知ろうと気遣える笑みの絶えない君が良い」
「ひっどい人だなぁ…。そ、そんな僕としては滑っていないし…たぶん」
「それはすまないな。…アーサー、こっちを見てほしい。そう、…キスしていいか?深く、長いやつだ」
「…そんなこと言っても、するでしょうに。…っ」
ほら、返答も聞かないでしてきた。
身勝手な人だなぁ、本当に。


「ウィル、お墓参りに行こう。コノエさんも一緒に」
僕の唐突な発言に二人は一緒になってこっちを向いた。手に持っていた書籍から、目をはずし…驚きを隠せていない。特にウィルは驚きから、なんとも言えない複雑な顔で、おそるおそるこっちを見つめながら。
「え、でも」
「お願い。どうしても、あの人に報告したいんだ。…この日だから、この日じゃないといけない。どうか、一緒に」
「…うん。わかった」
短い間で、ウィルは応えてくれた。
苦しいはずだ、でも…本当はもう、いいと思っている。ウィルのく諦めに近い、その気持ちに付け込んでしまう。
それでもこの日じゃないと。メサイアが落ちた、この日だから言いたい。
コノエさん…アレクセイさんは深く聞かず分かった、と返事を一つだけしてから、身支度を済ませる。
飛び切りいい花とワインを買っていこう。
もう、ウィルはもう成人している。アレクセイさん的には、もう少し大人になってからが良いかもしれないけど。今は、許してほしい。
そうして買い物を終わらせ、タリア艦長の墓の前へと立って…僕は、ようやく切り出した。

「タリア艦長、貴方に報告があります。僕の勝手ではありますが…だからこそ、あなたに聞いてもらいたい」

「僕の好きな人を、紹介させてください。…名前はアレクセイ・コノエ」

「僕は、この人を…──アレクセイさんを、愛しています」


…遠いところから、僕の名前を叫ぶ声が聞こえた気がした。
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