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月光が冷たくカーテンの隙間から差し込んでいる。それを反射して輝くのは床に散乱した空の缶チューハイ。身体だけは大人になったけれど、美味しさなんて何も分からない酒の抜け殻は横たわっている。

それの隣で、私はぐちゃぐちゃになったお気に入りの服を着て、染めた髪を乱れさせて、死んだ獣みたいにジッと月を眺めていた。だがその輝きは胸の中にぽっかりと空いた穴を照らして痛めつけるようで。

アルコールにぼやける頭でどこかに行かなくては、と思った。1人で泣いてしまったら、2度と立ち直れない気がした。
ふらりと立ち上がって、化粧もせずに夜の街を歩き出す。行く場所は、既に決まっていた。



「あーけーて!るーいー!あーけーろー!」
「眠いよはーちゃん...今何時だと思ってんの...」
「いいでしょ!早く中入れてよ寒いの!」
「うわっ酒くさ...」

彼氏の部屋よりも慣れた部屋。自分の部屋の次にずっと過ごした勝手知ったる空間に上がり込んでベッドに入ってやる。さっきまで寝ていたのか、あいつの熱と匂いが染み込んでくる。

「上着脱ぎ捨てないでよぉ...靴もぐちゃぐちゃだし...」
「うっさい、ルイがやって。...ちょっと喉乾いた」
「お水?ちょっと待ってね用意するから...」
「なんだあるじゃない、もらうね」
「え...あ、僕のレモンサワー!」


ガンガンと頭の中で何かが叩かれるような目眩を感じながら出された麦茶を飲み干す。火照った身体を伝う冷たい水はクールダウンにはちょうどいい。

形のいい眉毛を八の字に垂らして心配そうに私のことを見るのは大石累。幼稚園の頃いじめられてメソメソ泣いてるのを庇ったらずっと着いてきて、大学生になった今でも付き合いのある生意気だけど可愛い同い年の弟分。
ずっと後ろについて回ってくるのは今でも変わらないが、高校生くらいからはーちゃんはーちゃんと煩く騒がなくなった気がする。鳩見莉緒という名前があるのになぜ名字からなんだ、と怒ったからかもしれない。

「んで、どうしたの?はーちゃん。あんまりお酒なんて飲まないのに」
「...彼氏と別れた。浮気してたの、あいつ」
「...そっか」
「信じられる!?こーんな可愛い彼女いて浮気とか...!もうっさいっあく!ホテル帰りにばったり遭遇するとかありえないんだけど!私の時より高いホテルだったしさぁ!」
「はーちゃん...生々しすぎる...」

ちょっと言うだけですぐ困った顔をするこのヘタレを見ると、少し安心する自分がいる。昔よりちょっと体は大きくなって、顔もちょっとだけカッコ良くなったけれど、あの頃の弱虫ルイとは変わってはいない。

「うーん...でもどうしようか、どこか遊びに行ってきたら?これから大学もお休みだし」
「お金無いよ...アイツに使っちゃったんだもん」
「そっかぁ...じゃあ、また新しい出会いを探すとか...」
「ふ、ふふふっ!なにそれ、童貞が一丁前に!それにそんな男に飢えてるわけじゃ無いから!」
「う、別に童貞だって...」

そう言って狼狽えるルイがいつもと比べてとても愛らしく思えた。酒の魔力か、元からの本心が酔いで出てきたのかは分からない。だが、この胸の空洞を埋めてくれる愛情を彼に向けたのは確かだった。

「...ね、卒業させたげよっか」

すり、と彼の首元を撫でて耳元で囁く。慌てふためくルイの唇でも無理やり奪ってやるつもりだったが、思っていた反応とは違っていた。

「本当に、それでいいの?」

変に光って見えるルイの目。
初めて見る弟分のオスの眼差しは浮ついた酩酊感に氷を当てられるような気分だった。少し酔いが醒めて、止めようとしたが手遅れだった。

「あ、ごめ...ちょっと待って...んむっ」

いつの間にか肩に回されたルイの腕はガッチリと動きを抑えて逃げることも出来ず、侵入を許してしまった。口の中を蹂躙する少し太めの彼の舌は、丁寧に私の舌を撫で上げて甘く背中を痺れさせる。

「まっへ...るいぃ...まってよぉ...」
「だーめ。いっぱい気持ちよくしないと...」

ルイは妖しく囁くとさらに強く私の肩を抱き寄せて、余ったもう片方の手でお尻の上辺りを撫で始めた。まるで発情期の猫ちゃんをあやすように優しく、甘く、女の子を蕩けさせるような...。
まだ直接触られてもいないのに、じゅくじゅくと少しずつクロッチを濡らしている感触がある。これじゃ、まるで本当に発情しているみたい。

「...ね、はーちゃん?脱がしていい?」
「ばっ...!だっだめ!自分で脱ぐからっ!あっち向いてて!」
「わ、わかった...」
「ぜったい!ぜったいだかんね!こっち向いたらマジでもうゼッコーだから!」
「わかったよぉ...」

スゴスゴと引き下がるルイを見て、ゆっくりと脱ぎ始める。自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえた。まだ口の中にルイの味と感触が残っている。腰のあたりにもルイの手の感覚が焼き付いている。

このまま、最後まで体を許してしまったらどうなるのだろうか。愛されて、染められて、体の内側から作り替えられてしまうような、そんな行為。
それは恐ろしく、だがそれ以上に魅力的だった。
今謝れば、きっとルイは許してくれるだろう。何事もなかったように朝を迎えるのだろう。
しかし、それでも今日胸に灯った炎は消える事はなさそうだった。
下着も脱いで生まれたままの状態になった。ルイに何も隠していない背中を見せるのが恥ずかしくなって、覚悟を固めて振り返った。

「お、終わったよ!好きに見れば...っへ...?」
「うあ、は、はーちゃん...?そっその...もう見せるの...?」
「あ、あんたもなんで脱いで...」
「だ、だってこっちも脱がないとって...」
「そ、そういうことじゃ...」

いつの間にかルイの方も脱いでいた。だが、ルイはもう中学生の頃にプールで見たような貧弱な体ではなくなっていて、まるでアスリートみたいにしなやかで逞しい、男の体になっていた。

「はーちゃん、すごい綺麗...」
「うっさい...へんたい...」

見られるのが居た堪れなくなって、ルイの胸を背もたれにして膝の上に座る。もしかしたら、もうすでに我慢できなかったのかもしれない。

「はやく...優しくして」
「ん、分かった」

ルイは私を後ろから抱き込むと、足を絡ませて強制的に開脚させ、アソコを優しく弄びはじめた。
繊細だけど、太くて骨ばった男の子の指。2本入ってきて、バタ足みたいに掻き回しながら私の気持ちいいところを探ってる。

「んやっ♡あっ、うぅっ♡この姿勢、恥ずかしいからぁっ♡ひゃうんっ♡」
「かわいいよ、はーちゃん...」
「やめへっ♡耳、だめぇ...っ♡」
「大好きだよ、はーちゃん。あの日からずっとずーっと大好きだよ」
「やだぁっ...こんなカッコしてる時に言うなぁっ...♡うひゃあんっ!」
「...はーちゃん、ここ弱いんだ...」
「や、やめっ♡よわくなっ、あぁんっ♡よわく、ないからぁっ♡」

1番気持ちいいところを探り当てられ、しつこくそこをいじられながら耳元で愛を囁かれる。一片のプライドが精一杯の虚勢を張っていたが、すでに限界は近付いていた。そもそもルイはもっと可愛い弟みたいな奴だったはず。なのにずっと力負けして、抱きしめられて、低くなった声で熱烈に囁かれて。

「うぁっ♡やめっ、ちくびだめっ♡もむなぁっ♡」
「はーちゃん可愛い...」
「ひうっ♡そ、そこっ♡あと、ついちゃう...♡」

首筋にキスと甘噛みをされる。これは自分の女だと主張するような男としてのマーキング。私の神経を昂らせるための甘噛み。
あ、ルイは今から本当に私のことを抱くつもりなんだ。
間抜けにも、ようやく今更になってそれが実感を伴い始めた。

「ふぁぁっ...!やっ...うそっ...♡」
「あっ...はーちゃん気持ち良かった...?」
「ち、ちがっ!ちがう、から...」

ルイに抱かれる私。それを想像しただけで急に我慢出来なくなって、はしたなく潮を吹いてイってしまった。
もう本番になってもいないのに息も絶え絶えで、一回だけなのにほとんど限界に近かった。
だがルイの方はようやく下準備が終わったと言う感じで、ゆっくりとパンツを下ろした。出てきたのは元彼のよりもずっと太くて長い、女の子に入れちゃダメなもの。

「ひぅっ...う、うそ...」
「はっ、はーちゃん、もういれていい...?」
「まっ...まってっ!」

ゴム越しでも分かる、はち切れんばかりの凶悪さ。私のおへそのあたりまで刺し貫いちゃうルイのおちんちん。
恐ろしく、だがそれ以上に発情してしまうのが仕方ないものだった。

「あのね?ワガママ言うけど...向き合ってシよ?」
「うん。顔見れないもんね」
「あといっぱいギューってして」
「分かった」
「それとチューもたくさんして」
「もちろんするよ」
「あと...やさしくして?」
「......それは頑張る」

ベッドに座るルイと向き合いながら、ゆっくりとルイの元に腰を下ろしていく。対面座位というやつだっただろうか?少しずつおちんちんが入ってきて、ゴム越しなのにみっちりと詰められて、拡げられて逃げられない。
長いこと時間をかけてようやく腰を落とし切ったが、もうすでに限界。それだけで2回ほど軽くイってしまっていて、膝が笑っちゃってる。

「くっ...はぁっ...♡これ、これぇっ...♡やばい...っ♡」
「は、はーちゃん大丈夫...?」
「だいじょぶ、だからぁっ...♡でも、ちょっとやばいっ...♡ね、ちゅーして...♡おねがい...♡」

ルイは何も言わず、ただ微笑んで口付けをしてくれた。今度は舌を入れない、ソフトな口付け。唇を唇で相喰み、番の2人の体温と親愛を共有するようなキス。
多幸感は魔法みたいに頭を痺れさせ、唇を離す頃には下腹部の痛みよりも快感の方が上回っていた。

「ルイ...?ね、動いていいよ...?」
「わ、分かった...痛かったら言ってね?」

そう言ってルイはゆっくりと腰を揺らし始めた。片方の手はガッチリと私の背中に回し、もう片方の手は私のお尻を支えてる。ピッタリとくっつき合いながら、ゆっくりと出し入れを繰り返すスローセックス。

「やっ♡これっ♡これすごっ♡ふあぁっ♡るい、るいぃっ♡」
「はーちゃんっ、大丈夫...っ?」
「いいからっ♡もっと...やんっ!おしり、もむなぁっ♡」

首筋にマーキングされて、お尻を遠慮がちに少し揉まれて、耳元で私のことを気遣って。全部優しいくせに、膣内に入っているものだけが優しくない。ナカに全部詰め込まれて、ぴっちりと一ミリも余すことなくゴリゴリと抉ってきて快楽神経を爪弾く。そのくせゆっくりと動くものだから、発散されずに少しずつお腹の中に溜まり続けた。

「あぅっ♡きもちいいっ♡きもちいいよっ♡るいっ、るいっ♡ふあぁっ♡ばかになっちゃうっ♡わたしっ♡るいのことしかぁっ♡」
「いいよはーちゃん、一緒にばかになろ?」
「あっ♡ぅあっ♡はぁっ♡そっ、そんなことっ♡ひゃぅんっ♡いってもぉ...っ♡やっ♡あぁぁっ♡まっへ♡きちゃうっ♡しゅごいの、きちゃっ♡」
「はーちゃん、ぼくも...っ!」
「きてっ♡いっしょ、いっしょだからっ♡ずっと...ひゃあんっ♡やっ♡きっ、きちゃっ♡あぁぁっ♡イっ...ぐぅぅ....っ♡」

おなかの1番大事な女の子のところでキモチイイが爆発して戻れない。ゴム越しにルイの熱を感じながら、それを少しでもナカで感じようとはしたなく搾り取ろうとしているのが分かった。

「ご、ごめん...ちょっと今、無理かも...」
「大丈夫だよ。ずーっと一緒だもんね?」
「...ばか」

悦びに震える身体で何とかまともな声を搾り出す。いつもより少しだけ得意げなルイの笑顔が恥ずかしくて顔を胸元に埋める。
慣れ親しんだ鼓動と体温。少しだけ汗ばんでしっとりした肌。果てしない安心感と多幸感。ここが私の終の住処なのだとなんとなく心が理解してしまった。

「ね、ルイ」
「どうしたの?」
「あの...ね?その、私すごいバカでワガママだけどね?えっと...ずっと、一緒がいいなって...いい?」
「...もちろん」
「...えへへ♡」
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