女神エレオスかく語りき 英雄編


『エレオスの掌(てのひら)』について
 正直に言うと、暴論だと思うの。
だってねえ、私達って人間が好きだからどこにでも着いて行ったのよ。
だから、世界中に私達を象った像があるなんてあたりまえのことだし、女神エレオスとしての私の影響範囲なんて、皆無とまではいかないけれど、そこまで広くないと思うわ。
ただまあ『エレオスの掌(てのひら)』の概念を完成させたのはヘロドトスだから、彼に決めてもらうのが一番かもね。
カルデアみたいな場所、彼大好きなはずだから、来ないかしら?

征服王イスカンダルについて
 ふふふ、彼にねえ、『エレオスの掌』は月に届いていたのかと聞かれたわ。
私は『ひ・み・つ』と言って、『あなたは女の人に脱いでもらうより、脱がせるほうが好きでしょう』と言ったら、『然り然り! さすがは女神エレオス、男の浪漫を理解しておる!』って見ていて気持ちよくなるくらいに大笑いしていたわ。
私が誤魔化しているだけなの、わかっているのに、ああいう風に対応してくれるのだから器が大きい人ね。

ちなみに、マスターには話してしまうけど私は月に『エレオスの掌(てのひら)』は届いていないと思うわ。
だってねえ、月の王様に像をプレゼントしただけで、月を自分の領土みたいに言うのは暴論だもの。
あら? 月に行ったのは事実なのかって。
ええ、月にも行ったし、いろいろなところに行ったわ。
言っても信じてもらえないようなものも、たくさん見たし。
そういえば、マスターも宇宙旅行をしたことがあるのでしょう?
だったら、今度二人で宇宙の旅の話をしない。
きっと楽しいと思うわ!

アレキサンダーについて
 少年の頃の彼はギリシア悲劇にも興味津々のようね。
とくにカッサンドラ―の話をよくせがまれたわ。
なんでも、彼のお母様がカッサンドラ―の大ファンだったのと、師匠のアリストテレスが熱く語っていたから興味津津だったみたい。
でもねえ……さすがに閨の様子は聞かれても答えられないわ。

ペンテシレイアについて
 可愛い私の娘……
テティスの気持ちが良くわかるわ。
戦場では誰だって死ぬ可能性があるのだから、どんなことをしてでも生き残らせてあげたかった。
でも、カルデアでまた会えて良かった!
あの子は、私を避けるけど、いつかは笑顔で話し合えると信じている!
でも……やっぱり避けられのはつらい、泣きそう。

アキレウスについて
 露骨に避けられているのよねえ。
まあ、確かにいろいろとあったけど、私は恨んだりはしていないんだけどねえ。
でもまっすぐで純情な子だから、気にしてしまうのでしょう。
まあ、焦っても仕方がないし、少しずつ距離を詰めましょう。

アタランテについて
 あの子ったら、私を前にするといつもかしこまっちゃうのよ。
マスターの部屋でゴロゴロしている時みたいに、リラックスしてくれると良いのになあ。
ところでマスターはあの子のことはどう思う?
私としてはマスターがあの子のことを貰ってくれると嬉しいんだけどなあ。

パリスについて
 ……彼には本当に悪いことをしたわ。
まさか、あのような大惨事になると思わなくて。
といっても、彼は謝罪を受け入れてくれないのよ。
自分の意志で選んだことだからって。
生前の彼には何もしてあげられなかったから、この一時は出来る限りのことをしてあげないとね。

アポロンについて
 正直に言うと苦手ね。
なんというか、賢いはずなのに恋愛沙汰になると、いきなり知能指数が落ちるのよ彼。
あと私は戦神アレスの妻だから、諦めて、ね。
と言うと、恋は障害があるほうが燃えるとか言い出して押し倒そうとするの。
恋愛方面での飽きの早さは、私相手だとどこかに消えてしまうみたいで……
本当に苦手……

アルテミスについて
 とても真面目な子ね、真面目過ぎて心配だったけど、恋愛に興味を持って、恋人を得て幸せそうな姿は見ていて和んだわ。
でも、あの子は真面目ゆえに、処女の誓いを破ったら、神霊であることすら辞めて恋人に殉ずるつもりだったの。
アポロンは自身の半身を失うことを恐れて、あの凶行におよんでしまった。
それが原因でアルテミスとアポロンは永遠に断絶してしまったわ。
恋人を失って狂い果てた彼女を見るのは辛かったし、恋人と再会させたら余計に狂ってしまった。
あの子がカルデアで定期的に自虐的になるのは、そういう理由があるの。
だから優しく見守ってあげてね。


オリオンについて
 アルテミスの最愛の人、あの子の恋人が務まるのは彼しかいないわね。
きっと彼のナンパ癖も、アルテミスのストレスを定期的に吐き出させるためにしているんだと思うわ。
ええきっと、私を定期的にナンパするのもそういう理由だと信じているわ!

ヘクトールについて
 本当に悪いことをしたと思っているわ。
トロイアを復興したからと償えることでも無いと思うけど、出来る限りのことをしてあげないとね。
でも彼にそれを言うと、『御身にはもう何をしても返せぬほどの大恩を賜りました。 このヘクトール、御身に全てを捧げる責務あれど、御身よりこれ以上賜る物は無し』って返されちゃって。
どうすればいいのかしら?

 ヘラクレス
 彼も私相手に気まずそうにするのよね。
メガラーの件は、嫉妬に狂ったヘラ様が悪いし、まあ私が贈った竈は壊れたけど子供たちは無事だったんだから問題ないでしょう?

ヒッポリュテーの件は、元凶のヘラ様はゼウス様にオリュンポスで逆さ吊りにしてもらったし、誤解は解けたのだからいいでしょう。

ケイローンの件は正直に言えば怒っていたこともあったけど、ケイローンがあなたを許したいじょうは私から言うことはなにもないし。

それに私は彼に感謝しているんですよ。
彼はギガントマキアでゼウス様と我が夫アレスと一緒にテュポーンと戦ってくれた。
彼の加勢が無ければ、ゼウス様も夫も死んでいたでしょう。
だから感謝こそあれ恨みなんて無いし、本当に恨んでいたら彼の子供達を聖域に匿ったりしませんから。
なんとか誤解をとけないかなあ。

ケイローン
 出来の良すぎる子、立派に成長しすぎてまるで甘えてくれないの。
産まれたばかりの、あの子は本当に可愛くて、しかも素直だしで文句無しだったわ。
でもアルテミスとアポロンの修業を終えてからは、他人行儀になってしまって。
やっぱり私が子供っぽいからかなあ……

 アスクレピオス
 彼との話は面白かったわ。 なんというか一を聞いて十を知るというんだっけ。
そのような感じで、些細な事で大きな気付きをするから、私もただのヌオーだった頃みたいに色々と一緒にやったわ。
彼の子供たちも優秀で、エフェソスの医療技術も公共施設の改良も進んで、これらの技術を他の都市に移転できればよかったのだけど、ゼウス様に止められてしまったわ。
その後は、死者蘇生さえ可能にしてしまったがゆえに、ゼウス様の雷霆で亡くなってしまった。
ええ、その力は人が手に入れるには、まだ前提条件を満たしていないと言っても、彼は聞き入れてくれなかったわ。
言い続けるうちに、私も彼の中で愚かな神という部類にくくられてしまった。
せっかくカルデアで再会できたのだから、仲直りしたいわ。
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