幸運と約束の白い指輪


エースと契約して3年目、今日も朝から彼女の畑仕事の手伝いをする。

「雑草の生えるスピードが早い…」
「もう春だからなー、しっかり根っこから抜かないと栄養取られちまうから、気を付けてくれよ」
「うん」

昨日抜いたばかりなのにもう新しい雑草が生えていて、俺は植物の生命力に驚かされる。
これが雑草魂というやつなんだろうか……。

「よし!こんなもんだろ!」
「あとは水を撒くだけだね……うん?」

俺は視線の先、畑から少し離れた場所に、シロツメクサが咲いてあるのに気付く。

「どうしたトレーナーさん」
「ほらエース、シロツメクサが咲いてるよ」
「…ああ、本当だ!こんな所にも咲いてるんだなー」

俺達は花に近づき、一緒に腰を下ろして小さな白い花を見下ろした。
ふと昔のことを思い出し、シロツメクサを一本取る。

「エース、手を出して」
「え?おお」

差し出されたエースの左手の指にシロツメクサの茎を巻き付け、取れないよう工夫してやれば、指輪の完成。

「子供の頃、妹によく作ってやったんだ、もっと花があれば王冠も作れたんだけど…」
「…………」
「エース?」

エースは手を見つめたまま動かなくなってしまった。

「ど、どうしたんだエース?」
「っ!!な!何でもねぇ!そろそろ教室に行く準備しないと遅刻するから!またトレーニングの時間になっ!!」
「エース!?……行っちゃった……」

急にどうしたんだろう、何だか顔も赤くなっていたようだけど……。


…………ちょっと待て。
俺、エースのどの指にシロツメクサの指輪を作った?


〜〜〜⏰〜〜〜


始業前、エースは既に教室に居て、自分の席に着いていた。

「………」

彼女は朝方トレーナーから貰ったシロツメクサの指輪はそのままで、ただただソレを眺めている。
そんな彼女の元に、親友のミスターシービーが近付いてきた。

「おはよーエース……あれ、可愛い結婚指輪してるね?」
「はあ!!?」
『ザワッ』

シービーの言葉はエースの耳にはもちろん、クラスにいた学生全員に聞こえていた。
エースは驚愕し、顔を真っ赤にしながらシービーを見上げる。

「けっこ!結婚指輪じゃねぇよ!!」
「だって左手の薬指に指輪を付けてるなんて、そう言うことじゃないの?」
「ちっっっげーーよ!!あたしとトレーナーさんはまだそんな関係じゃな……」

思わず放ってしまった失言に、エースは咄嗟に自身手で口を塞ぐが、既に遅し。

『まだ…』
『まだ…?』
「あ、じゃあ婚約指輪か」
「〜〜〜〜!!」

弁解をしたいが、それ以上にまた失言をする可能性を考え、エースは口を塞いだまま机に突っ伏した。

終わり
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