『私』の悪夢(1)


───悪夢を見た。
否、見続けていると言った方が正しいかも知れない。
毎晩眠りにつく度、大切な人がいなくなる。
何処かで釦をかけ違えた、私の夢。
初めにホシノ先輩のヘイローが砕けた。
次にセリカが行方不明になった。
その次にアヤネが自ら生命維持装置を外した。
昨日はノノミが『そう』なった。
じゃあ、今日は?
目が覚めれば、いつもの皆がアビドスで待っている。
怖い。
本当は、あの悪夢が現実なんじゃないか。
私の見ている現実が、夢なんじゃないか。
寝ても覚めても見続けている悪夢に、もう1人の『私』の姿が重なった。
これが、『私』の見た現実だったの?
誰か、私を夢から覚まして。
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"成程、それで私に相談しに来てくれたんだね。"
深夜、眠れずにいた私が訪れたのはシャーレ。
仕事で忙しいはずなのに、嫌な顔一つせず迎え入れてくれた先生に胸が温かくなる。
「"ホットミルクで良かった?"」
そう言いながら先生は私の横に座る。
目元に浮かぶ隈を見て心配になるが、私も人の事を言えないだろう。
ふと、心配そうに覗き込む先生と目が合った。
顔が熱くなるのを感じながら、マグカップに口をつけたその時───。
『先生が、もう蘇生の可能性がないという連絡を、もらった時?』
『私』の声が聞こえる。
「うっ……ぐっ!」
急激に込み上げた吐き気に、口に含んだ牛乳を全て吐き出してしまった。
「"シロコ、大丈夫!?"」
背中を優しく擦る大きな手の感触、それを遥かに超える不快感。
何故気づけなかったんだろう。
あれが本当に『私』の見た現実で、私の悪夢なら───。
次にいなくなるのは、先生なのに。
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