シュヴァルグランがトレーナーの元カノと遭遇する話
作成日時: 2024-04-18 08:30:26
公開終了: -
「あっ」
「げっ」
それは、僕とトレーナーさんが、街へと出かけている最中のこと。
トレーナーさんは、正面からやってきた女の人を見て、凍り付いたように止まってしまった。
目を大きく見開いて、口元を引きつらせて────あまり見たことのない、表情だった。
それに対して女性の方は、そんなトレーナーさんの態度を見て、むっと眉を顰める。
「……何よ『げっ』って、私と会いたくなかった、とでも言いたそうね?」
「いや、そんなことは、まあ、その、今は、ほら、アレだしさ」
なんとも歯切れの悪い返答をするトレーナーさん。
二人が知り合いで、そして何やら、穏便な関係ではないのは明らか。
けれど、僕は間に割って入ることも出来ず、おろおろと視線を彷徨わせるだけであった。
我ながら情けないなあ、と思いながら、女性の方をちらりと見やる。
恐らくはトレーナーさんと同い年くらいの、ロングヘアーの、スーツ姿の女性。
いかにもキャリアウーマンといった感じで、姉さんが大人になったこうなるんじゃないかな、と思う。
それと、まあ、美人さん、なんじゃないかな、と思う。
……心が、少しざわつく。
この人と、トレーナーさんは、一体どういう関係なんだろうか。
「あら、その子は」
「……っ!」
女性は、今になって僕の存在に気づいたのか、興味深そうにこちらへ視線を向けた。
僕は反射的に帽子を深くかぶって、その視線から逃げ出してしまう。
すると、トレーナーさんは僕の前に割って入ってくれた。
「この子は、関係ないだろ」
「ちょっと見ただけじゃない……そっか、アンタ、トレーナーになったんだもんね?」
「……ああ、何年か前に」
「ふうん、それはおめでとう、夢が叶って良かったわね、それで、その子が今の担当ってわけ」
「そうだよ、ニュースで見たことないか? 結構活躍しているんだけど」
「さあ、興味ないし」
「…………そうか、そうだったよな、ごめん」
「……へえ、謝るってことは、付き合ってた頃の私がどう思ってたか、自覚してたんだ」
「……それは」
トレーナーさんの顔が、苦虫を噛み潰したかのように、歪む。
ただ、僕はそれ以上に、先ほどの女性の言葉が気になっていた。
付き合ってた頃の私。
それはすなわち、この人が、トレーナーさんと特別な関係を持っていたということ。
いわゆる、元彼女、ということだった。
ずんと、気持ちが沈み込む。
……いや、それは変だろ、シュヴァルグラン。
トレーナーさんだって立派な大人の男の人なんだから、恋人がいてもおかしくない。
僕にとっては初めてをたくさん経験した男性だけど、彼にとってそうとは限らない。
それは当然のこと、だから落ち込む理由なんて、ないはずなのに。
僕は何故か、とてもショックを受けていた。
「────へーい、かのじょー♪」
「ひゃっ、ひゃい!?」
「あっこら……!」
聞こえて来た軽い調子の声に、僕は我へと返る。
顔を上げると、目の前にはひらひらと手を振りながら微笑む、女性の顔があった。
思わず、変な声を出してしまう。
どうやら、トレーナーさんの脇をすり抜けて来たようで、彼も慌てていた。
そんな僕らの様子をまるで気に留めず、彼女は悪戯っぽく言葉を続ける。
「ちょっとさー、私とお茶しなーい?」
「へっ?」
「えっ?」
思いもよらぬ誘いに、僕とトレーナーさんは間抜けな声を出してしまうのであった。
◇
「────ここ、パンケーキもなかなか美味しそうね、二人は何を頼むのかしら?」
「……アイスコーヒー」
「……人参ジュースで」
「そっ、じゃあ私もアイスティーだけにしておこうかしらね、あっ、店員さーん!」
どうして、こうなった。
僕達は、元カノさんにあれよあれよと喫茶店に連れ込まれ、一緒にテーブルを囲んでいた。
キタさんとヴィブロスを足して二で割った感じの押しの強さが、彼女にはある。
店内は、時間の関係もあって、お客さんはあまりおらず、注文した飲み物はすぐにやって来た。、
そして元カノさんはアイスティーのグラスをぐっと掴むと、それを高々と掲げる。
「それじゃあ、再会と新たな出会いを祝して、かんぱーい♪」
「えっ、あっ、その……かっ、かんぱーい……」
「シュヴァル、無理に乗らなくて良いから」
僕は、流されるままに、元カノさんとグラスを合わせてしまう。
すると、彼女は得意げな表情をして、トレーナーさんをじっと見つめた。
トレーナーさんはため息一つ、まずは僕とグラスを合わせて、それから元カノさんとグラスを合わせた。
「アンタはむしろその子を見習いなさいよ、はい、お砂糖」
「いや、コーヒーに砂糖は入れなくなったんだ」
「……もしかして、昔より太った?」
「…………まあ、それはともかく」
「うわ、露骨に話ズラした」
「と・も・か・く、お前はなんでこっちにいるんだよ、向こうの会社に就職したんだろ?」
「それはね…………秘密♪」
「…………出た、秘密主義、そういうところ昔から全然変わってないな」
「あはっ、まあ実際は仕事絡みの話だから、細かい内容を外部に漏らせないだけなのよね」
二人の間に、流れるような会話が続いていく。
少しだけ乱暴な口調のトレーナーさんと、先ほどよりも口調の柔らかい元カノさん。
僕の目の前で、二人だけの世界が形成されている気がして────少し、モヤッとした。
「あっ、あの!」
気が付いたら僕は、会話に割り込むように、声を出していた。
普段の僕だったら、絶対にしないであろう行動。
すると二人の視線が、揃ってこちらに向けられる。
トレーナーさんは、珍しいものを見るような目で
そして、元カノさんは、何か値踏みをするよう目で、こちらを見ていた。
臆してしまいそうなのを必死に堪えて、僕は何とか、喉から声を絞り出す。
「……その、ですね、お二人は、どのくらいお付き合いをしていたのかな……って?」
「ふふっ、それはね、ひみ──」
「同じ学校で、二年くらい付き合ってただけだよ、最後に会ったのは、いつだっけ?」
「…………卒業式の時。トレーナー学校入ってからは、アンタLANEすらしなかったわよね」
「ああ、そうだったな、だからもう他人みたいなもんだよ」
「……」
────いや、トレーナーさん、流石にその言い方は、ちょっと。
元カノさんがすごい冷めた目でトレーナーさんを見ていたが、僕は見なかったことにした。
どうにも、元カノさんに対して、トレーナーさんは言動が雑になっているような気がする。
僕に対してはとても気を遣ってくれているから────正直、ちょっと羨ましい。
大事に扱ってくれているのは、とても嬉しい。
でも、この二人のような、気安いパートナーのような関係が、僕には眩しく感じられた。
◇
それからしばらく、僕達は喫茶店で会話を交えていた。
話しているのは主に元カノさんとトレーナーさんの二人で、僕はたまに話が振られるくらいだけど。
それで、少し、わかったこと。
まず、元カノさんは多分、良い人なのだろう、ということ。
飲み物のお代わりを気にしてくれたり、時折、答えやすい話を振ってくれたり。
殆ど知らないであろう僕を、良く気にかけてくれている。
そして、その時に見せる、どこか懐かしそうな微笑みを前に、どうにも悪い人とは思えないのだ。
そして、二人はお互いを、悪く思ってはいないのだろう、ということ。
それは、お話をしている様子からもわかる。
ずっと会っていなかったはずなのに、お互いをちゃんと理解し合っている。
口振りはどうあれ、少なくとも、憎らしく思っているようには感じられない。
そうなると、ある疑問が浮かぶ。
僕には、それを聞く勇気は、なかったけれども。
やがて、お代わりの人参ジュースと、結局頼んでしまったパンケーキが届いた頃。
テーブルの上に置いていたトレーナーさんのスマホが────振動した。
「……」
「……」
「……」
トレーナーさんは無言のまま、画面を一瞥して、内ポケットにスマホを仕舞う。
けれど、静かな店内に、バイブレーションの音はずっと響き渡っていた。
多分、電話なのだろう。
しばらくの間、僕達は沈黙し続けていたが、やがて元カノさんが痺れを切らした。
「早く出なさいよ」
「……いや、店内で電話するのはさ」
「だったら外に出て、電話すれば良いでしょ?」
「…………ほら、シュヴァルを一人置いて行くのもさ」
「ぼっ、僕は大丈夫ですよ? 大事な用事かもしれませんし、どうぞ出てください」
「………………その、だな」
「随分と気遣い上手になったのね? 私と付き合ってた頃はデート中でもレースの速報見てたのに」
「……………………イッテキマス」
トレーナーさんは、苦々しい表情を浮かべて、逃げるようにお店の外へと向かった。
……というか、トレーナーさんそんなことしていたんだ、今じゃ考えられないけど。
そして、その場には僕と、元カノさんが残される。
気が付けば、店内のお客さんはいなくなっていて、店員さんも見えず、本当に二人きり。
お互い言葉を発さず、グラスの中で、氷がからんと転がる音が、妙に響く。
何か喋った方が良いだろうか、そう考えていた矢先。
「……ねえ、シュヴァルさん、で良かったかしら?」
「はっ、はい!? あっ、べっ、別にさん付けなんてされなくても……!」
「ああ、これは職業病みたいなもんだから気にしないで……それで、シュヴァルさん」
元カノさんは、じっと、僕のことを見つめる。
真剣な表情で、何かを見定めるように、視線を外すことなく。
普段だったら僕の方が目を逸らしていただろうけど、何故か、そうしてはいけないと思った。
今この時だけは、逃げてはいけないと、心の奥底で僕自身が叫んでいるから。
数秒、けれど無限にも感じられる時間が経った後────元カノさんはにぱっと、悪戯っぽく笑った。
「アイツのこと、好きなんでしょ?」
「…………ふえ?」
一瞬、何を言われたのか、わからなかった。
元カノさんの言葉が、じっくりと脳に浸透して、ようやく思考回路がそれを取り入れて。
僕の顔は、燃えるように、かあっと、熱くなった。
「なっ、ななっ! そんな! 僕が、トレーナーさんを、好きとか! そういう!?」
「あはっ、かわいー♡ うんうん、別に照れなくても良いわよ、アイツに言ったりしないし」
「あっ、あうう……」
それは、僕が、心の奥底に仕舞い込んでいた想い。
トレーナーさんにも、他の人にも、決してバレないようにしていたはずの想い。
……まあ、姉さんやヴィブロスには、すぐにバレちゃっていたけど。
…………もしかして、かなりわかりやすいのかな、僕。
元カノさんは楽しそうに笑いながら、ストローでアイスティーをかき混ぜる。
「いやあ、でもシュヴァルさんも、厄介なヤツを好きになっちゃったわね?」
「…………トレーナーさんは、とても優しくて、素敵な人です、厄介なんかじゃないです」
元カノさんの言い方に、思わず、むっとなってしまった。
確かに、過去の過失はあったみたいだけど、そんな言い方は良くないと思う。
けれど彼女は、僕の視線にまるで臆さず、言葉を続けた。
「えー、厄介でしょ、鈍感なくせに、本人すら知らない、言って欲しいこと伝えてくるし」
「うっ」
「やたらこっちが無理するのは拒否するくせに、自分は好き放題無理するし」
「ううっ」
「せっかくサプライズプレゼント用意したのに、カウンターでサプライズを返してきたりするし」
「うううっ」
「普段は指一本触れようとしないのに、感極まると気軽に手を握ったりさ」
「うううう……っ!」
ごめんなさい、トレーナーさん。
何一つ、僕には、否定ができません。
というか、本当に昔からああなんですね、トレーナーさん……。
「────でも、気を付けた方が良いわよ、シュヴァルさん」
急に、元カノさんの声のトーンが変わった。
先ほどまで、どこか緩んでいた彼女の顔が、一瞬にして引き締まる。
これから伝えることが大事なことだというのが、嫌でも伝わって来て、僕は背筋を伸ばした。
「アイツはさ、一つのものに、とにかく夢中になるのよね」
「……一つの、もの?」
「付き合っていた頃は私、その次はレース、今はシュヴァルさん」
「……っ!」
「夢中になっている時は周りが見えないくらいに、そして、その対象が変わった時は」
────夢中になっていたものが、『周り』になる。
元カノさんじゃ、とても、とても深い実感のこもった声で、そう言った。
そして、トレーナーさんがいるであろう、外を見ながら、寂しそうに呟く。
「それで、そうなったらそっちに一直線…………薄情よね?」
今は、僕が担当ウマ娘だから、僕のことを見ていてくれる、一緒にいてくれる。
けれど、僕はいずれ、現役を引退し、トレセン学園からも卒業する。
そうしたら、トレーナーさんはどうするだろうか。
決まっている、また別のウマ娘を担当して、その子と一緒にいて、その子を見つ続けるだろう。
きっと、僕なんかに、見向きもしないで。
トレーナーさんの、『過去』になる。
それは、すごく寂しくて、すごく辛くて、すごく悲しくて────嫌、だった。
「…………あっ、ごっ、ごめんなさい!」
「…………えっ?」
「私ったら、つい……泣かせるつもりはなかったのよ……」
元カノさんが、慌てた様子で立ち上がって、僕にハンカチを差し出して来た。
何を言っているんだろうと思い、僕は目元をそっと触れる。
────目尻から、一筋の涙が流れていることに、僕はようやく気が付いた。
「……少し、脅かし過ぎてしまったわね」
「ぼっ、僕の方こそ、勝手に泣き出してしまって、すぐに、止めますから……!」
僕はハンカチを受け取って、目元に当てる。
何度か、大きく深呼吸をして、心を落ち着かせると、涙はぴたりと止まった。
元カノさんと僕は、ほぼ同時に大きく安堵のため息をついた。
「本当にごめんなさい、シュヴァルさんに、同じ想いをして欲しくなくて」
「あの、本当に気にしないでください」
「……お詫び、ってわけじゃないけど、もう一つだけ伝えておくわね?」
こほん、と元カノさんは咳払いを一つ。
「アイツは薄情だけど────繋いだ手を振り解くほど、薄情じゃないわ」
元カノさんは、自分に言い聞かせるように、言葉を紡いでいく。
そんなことは、わかっていた。
そんなことは、わかっていたのに。
懐かしむような、悔やんでいるような、そんな表情だった。
「だから、ずっと居たいのなら、ずっと手を離さないこと、いいわね?」
遠い過去を見るような目で、彼女は僕を見る。
その瞳に映し出されているのは僕なのか、僕の瞳に映る、自分自身か。
彼女の言葉には、筆舌に尽くしがたい、ずっしりとした想いが乗っかっている。
僕はそれを受け取りながら────口からすり抜けるように、質問をしていた。
「あの、どうして、トレーナーさんと、別れたんですか?」
それは、言うべきではない質問。
それは、聞くべきではない質問。
僕自身、何故、口にしてしまったのか、わからなかった。
元カノさんも、まさか聞かれると思っていなかったのか、目を丸くする。
けれど、すぐにくすりと微笑んで、口元に人差し指を立てて、彼女は囁くように言った。
「…………秘密♪」
◇
「いやあ、良いお店だったわね~!」
「……何で俺がお前の分まで払わなくちゃいけないんだよ」
「良いじゃない、慰謝料? 手切れ金? というわけで」
「人聞きの悪いこと言わないでくれるかな」
トレーナーさんが戻って来た後しばらくして、僕達はお店を出た。
愚痴を零しながら、トレーナーさんは財布をポケットに入れる。
……なんだかんだで支払っている辺り、ちょっと負い目を感じているんだろうな。
「じゃあ、私もう帰るわ、デートの邪魔して悪かったわね?」
「デッ、デートって……!」
「いや、デートとかそういうのじゃないから、シュヴァルに失礼だろ」
「……」
「……」
「えっ、なんで二人ともそんな顔で見てくるんだ?」
そんな顔ってどんな顔だろう。
そう思って、僕は元カノさんをちらりと見やると。
彼女は『何言ってるんだコイツ』と言わんばかりの表情を、トレーナーさんに向けていた。
多分、僕も同じ顔をしているんだと思う。
元カノさんは大きくため息をついてから、困ったような笑顔を浮かべた。
「シュヴァルさんも苦労するわね、まっ、アンタも精々頑張りなさいね」
「ああ、お前も元気で、なんやかんや言ったけど、久しぶりに会えて本当に嬉しかったよ」
「…………バカ」
なんとも複雑な顔で、元カノさんは声を漏らす。
零れたその一言には、きっと、色んな想いが込められていたのだと感じた。
そして、彼女は僕の方に向いて、柔らかな微笑みを浮かべる。
「シュヴァルさんも、頑張ってね?」
元カノさんの、心からのエール。
僕は、それに何とか応えてあげたいと、そう思った。
「……っ!」
「シュッ、シュヴァル!?」
「あら」
だから僕は、トレーナーさんの腕に、ぎゅうっと抱き着いた。
胸が当たってしまうのも気にせずに、しがみ付くように、強く。
そして、元カノさんに向けて、僕の気持ちを、出来るだけはっきりと言葉にした。
「ぼっ、僕は、絶対に、離しませんから……!」
元カノさんは、きょとんとした顔になる。
そして顔を伏せると、ぷるぷると肩を震わせて────破裂するように笑い始めた。
心の底から楽しそうに、嬉しそうに、色んなしがらみを晴らすかのように、大きな声で。
「あはっ、あははっ! いや、良いわね、シュヴァルさん! 次の天皇賞は応援させてもらうわ!」
「……レースは興味ないんじゃなかったのか?」
「あら、女の趣味なんて案外すぐ変わるものよ……男が絡んでいる時は、特にね?」
「……そっか、それは良かった」
トレーナーさんは、どこか安心したような顔をした。
きっと、彼は、誤解をしている。
元カノさんが意図した通りに、正しく、誤解をさせられている。
多分それは、あえて訂正しない方が、良いことなのだろう。
こうして────元カノさんとの出会いは、終わりを告げたのであった。
「……あの、シュヴァル、そろそろ離れてもらっても」
「……ダメです」
元カノさんと別れた後も、僕はずっと、トレーナーさんの腕にくっついていた。
通りすがりの人からも見られて、とても恥ずかしかったけれど、離れたくなかったから。
トレーナーさんの太くて、逞しい腕を、僕の身体で包み続ける。
困ったような顔をしながらも、彼は決して、それを振り解こうとはしなかった。
「あー、シュヴァル、それで、なんだけどさ」
「……なんでしょうか?」
諦めたトレーナーさんは、少し目を逸らしながら、言いづらそうに頬を掻く。
やがて、意を決したようにこちらを向いて、問いかけて来た。
少し、不安そうな顔をしながら。
「アイツさ、俺について、なんか変なこと言ってなかった?」
多分、元カノさんがここにいたら、呆れた顔で大きくため息をついていたことだろう。
それを思うと、彼女が少し、不憫に思えてしまった。
だから僕は、元カノさんの分の意趣返しも込めて、人差し指を口元に立てる。
そして目を細めて、微笑みを浮かべながら、トレーナーさんに伝えるのであった。
「……秘密、です♪」
お知らせ
実務でも趣味でも役に立つ
多機能Webツールサイト【無限ツールズ】で、日常をちょっと便利にしちゃいましょう!
▶無限ツールズ