日記~手紙


~1章 日記~
日記を書こう。特に理由はない。私はいつも自分の意思で何かをしたことがなかった。
きっとこれも長続きしないだろう。
2021年12/1
いつも通りの一日だった。ご飯を食べて、学校に行って、なんとなく勉強をした。
中学に入ってから友達はいないから今日も一人で本を読んだ。
12/2
今日も教室の後ろで男子たちが騒いでいて先生に怒られていた。
怒られるにきまっているのになぜそんなことをするのかよく分からなかった。
12/3
最近一人で本を読んでいるだけの私に声をかけてくれる人がいる。
気遣いができて明るい。こういう人がみんなの人気者なのだろう。
12/4
今日も一人で本を読んだ。本は今まで思い出がない私の人生を彩ってくれるすばらしい
ものだと思った。
12/5
またあの子が話しかけてくれた。どうやら今流行りのドラマの話題で盛り上がっているらしい。
明日が最終回だと言っていた。せっかく教えてもらったし、見てみるか。
12/6
教えてもらったドラマを見てみた。10年以上片想いだった人に告白し振られるも、1年後
また告白しゴールイン。ありがちな感じがしたけど特になんとも思わなかった。
何かに感動したり、泣いたりできる人がうらやましいと思った。
12/7
今日は暇だったから読みたかったミステリー小説を読んだ。なかなか面白かった。
12/8
定期テストが返却された。よく話しかけてくれる子が数学で30点代をとったらしく
周りの女子が笑っていた。あの子も笑っていたけれど、嫌がっているように見えた。
なにかすごく嫌な気分になった。だから口にだしてしまった。
「人の失敗を笑って楽しいの」と。教室のみんなの冷たい視線を感じた。
12/9
放課後の帰り道。あの子が「昨日はありがとう」と言ってきた。
私はただ自分の思ったことを言っただけだよ。思いやりとか優しさじゃない。
でも、少しだけまともな人間になれたのかな。
12/10
最近はあの子とよくしゃべるようになった。やはり友達は多いようだ。
それ以来、私は人とよく会話をするようになった気がする。

~2章 未来永劫~
2023年1/23
高校受験も終わり、卒業が近づいてきた。行きたい高校に合格し喜ぶ人もいれば、
希望通りにいかずに泣く人もいた。私は普通の地元高校。仲良くしてくれた人たち
とは離れてしまうけれど、残りの時間を楽しもう。
3/9
今日は中学校生活最後の合唱コンクールだった。今まではなんとなく歌っただけだった
けれど、初めてみんなで一つのものを造り上げる楽しさを知ることができた気がする。
3/10
今日は久しぶりにいつも通りだった気がする。読みたかったけど時間がなくて
読めなかった本を読んだ。
3/11
卒業式まであと5日。
今日はなんとなく音楽が聴きたかったので卒業ソングを聴いてみた。
やはりレミオロメンの3月9日はいい曲だ。2日前に聴いておけば良かったな。
3/12
卒業式まであと4日。
今日は友達とショッピングセンターに行った。今まで一人でいることが多かった分
知らないものがいっぱいあった。帰りにみんなでアイスを食べて楽しかった。
3/13
卒業式まであと3日。
今日は家でのんびりテレビを見た。お笑い特番をやっていてとても笑った。
お笑い芸人さんは本当に尊敬する。名も知らない誰かを笑わせるために、日々奮闘している
のだから。
3/14
卒業式まであと2日。今日も仲間との時間を大切にしよう。
3/15
いよいよ明日は卒業式。
もっと友達と遊んでおけばよかったな。
3/16
卒業式を終えた。初めて別れを惜しむ涙を流した。
今思えば勝手に自分は何もできないと思い込み、一人で過ごしてきた。
今でも一人でいるのは好きだけれど、もったいないことをしていたなと思った。
別れは最後ではない。むしろこれから私の新しい人生が始まっていく。
一人ぼっちだった私を救ってくれた友達に、いつか手紙をだそう。

~3章 手紙~

2028年3月16日
咲希 へ
毎日寒くて、布団から出るのに苦労します。
体調は大丈夫ですか?私は元気です。中学卒業から5年経ちましたね。
私は今苦しんでいる人を少しでも救えるように医学部に進学し、
毎日奮闘しています。
いつも一人だった私を救ってくれたあなたを、私は忘れることはありません。
誰にでも優しく、明るくみんなの人気者の咲希がずっとうらやましかったです。
卒業式の日、たくさん涙を流しながら
「大人になってもずっと友達だよ。」と言ってくれましたね。
共に泣き、笑い合った日々を、今でも覚えています。
また咲希に会える日を楽しみに待っています。
                        逢坂 祈 より

~エピローグ~

私はいつも自分の意思で何かをしたことがなかった。
それでも私のことを大切にしてくれる人がいる。
それだけで私は頑張れる。

「僕、病気なおるかな。」
「うん。もちろん。」
「先生が必ずなおしてあげるから頑張ってね。」
「うん!頑張る!」
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