今はあなたと逃避行


ス〒フ×アノレヒ°二ス夕
ス〒フ(28)、アノレヒ°二ス夕(18)ぐらいの設定
一応2人とも英語で話しています

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「『___Ne revenez plus jamais ici !』」

そう言ったのは誰だったか。
芦毛のお嬢様は、常識に囚われない男に連れ去られてしまった。



☔️♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎☀️



「______どこまで連れて行ってくれるの?」
腕の中におさまっている深緑の瞳が問いかけた。

「アンタが望むなら、どこまでも」
そう言うと、彼女は満足そうに微笑んだ。

「ふふっ、貴方ならそう言ってくれると思ったわ」
何も知らない少女のような笑みに、僅かに混じる目の覚めるようなラストノート。そのまま見つめていると、何故か今まで通りの俺には戻れないような気がした。

「アンタはどこに行きたいんだ?お嬢様」
「うーん、そうね………」
まだ幼い顔に少し浮く真っ赤なリップ、そこに細い指を当てて数秒黙り込む。
そして、



「…少しだけ、このままでいたい」
「………それでいいのか?」
「ええ」
そう言って、俺の手を握り込む。

(『連れ出して』と言ったと思えば、変なお嬢様だな)
そもそも、若くて強いウマ娘がこんな10も歳の離れた男にそんなことを言う時点でおかしいのだが。



🌙♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎🌙



連れ出してからどれほどの時間が経っただろうか。パリの街並みが、夜空に溶けていく。街灯と星が混ざり合うように、まるで夢と現実がごちゃ混ぜになるように。
今思えば、この状況こそ夢であるべきというか、あまりにも非現実的なことだった。
暗闇の中、光に照らされるシルクのようなロングヘアのお嬢様______『アルピニスタ』は、何故俺にあの場所から連れ出させたのか。

「…なあ、『お嬢様』______」
そう言いかけると、華奢な人差し指が俺の口に触れる。

「そんな呼び方はよして、名前で呼んでほしいわ」
「………アンタは、なんで俺なんかにあんなこと言ったんだよ」
「あら、つれないのね」
『連れ出して』など、そう簡単に言える言葉ではない。強いて言う場面があるとすれば______



(………『駆け落ち』とかな)
本来出逢うはずのない男女が、常識から抜け出すために、自由を求めるために言うような。雁字搦めの状態から逃げ出したい誰かが逃げ出すための言葉。
そんなことをぼんやりと考えていると、お嬢様はそっと口を開く。

「…貴方は、『恋』ってどんなものだと思う?」
「………恋?」
質問とは関係のない答え______むしろ質問が返ってきて、鸚鵡返しするしかない。

「…逆に、アンタはどんなものだと思ってるんだよ?」
「私?」
そう言って、再び唇に指を当てた。癖なんだろうか、この動き。

「私ね、恋って理由のないものだと思っているの」
「………ふーん」
「たとえば、こんなことないかしら?今までは元気で可愛らしい子が好きだったのに、ある日大人しい…今までとは違うような子を好きになること」
「あー、まあ聞く話ではあるな」
「でも、それってどうしてそうなるのか、理由なんて本人でも分からないじゃない?」 


「私、誰かを好きになるのに理由なんて本当はないと思うの」



「だから、私が貴方に言ったことにも『理由はない』わ。強いて言うなら一目惚れよ」



「………は?」
突然の告白に、時が止まってしまったかのような感覚に陥る。



「………あまり、オッサンを揶揄うなよ」
「あら、そんなつもりはないわよ」
ふっ、と甘い香りがする。
目の前には、少女______いや、1人の女性の顔があった。

「………本気にするぞ」
「…最初からそのつもりよ」
覚悟を決めた瞳の中に、まだ迷った顔の俺が映る。
その時、



(………タイトルホルダーかよ)
俺のスマホが鳴り響く。よく見たら大量のメッセージが届いていた。

『先輩今どこですか!?』『今ホテル大変なんですけど!』

『なんかアルピニスタさんもいないらしくて!』
『もしかして先輩と一緒にいます!?』
どうやら、俺たちの泊まっているホテルから行方不明者が2人も出てしまって大変らしい。

(普通なら、今すぐ帰るべきだが………)
チラリ、とお嬢様の方を見る。どうするつもりなのかしら、とでも言いたげに俺を見つめていた。

「…少しだけ静かにしてろ、お嬢様」
そう言うと、こくりと小さく頷く。
なかなか鳴り止まないスマホの通話開始ボタンを押すと、少年と大人の間のような絶妙な高さの声が耳に突き刺さる。

『先輩!?今ホテルなんですけど、先輩もアルピニスタさんもいなくって!!』
『なんかお客さんの1人が、先輩がアルピニスタさんを連れ出してるのを見たって言ってるんですけど______』
「タイトルホルダー」



「しばらく探すな」
慌てる後輩の声を遮るように、通話を切る。流石のお嬢様も驚いたようで、ただでさえ大きな瞳をさらに見開いた。
その瞳に映る俺の顔に、迷いはもうない。

「突然だがお嬢様、俺は嫌いなことが2つある」
戸惑うお嬢様の目の前に、二本指を突き立てる。



「俺は、倫理に反することが嫌いだ」
「だから、アンタの恋する気持ちには応えられねえ」
「………」



「………だが、常識に囚われることも嫌いだ」

「だから、アルピニスタ。アンタと『駆け落ち』してやる」
「______!」
途端、深緑の瞳が僅かに潤む。
目の縁から零れ落ちそうな雫をそっと拭ってあげると、これまた何かが溢れそうな勢いで笑う。
「どうしたんだよアンタ………」
「ふふっ、だって急に何をするのかと思ったらあんなこと言っちゃうんだもの!しかも、貴方の涙を拭う手が、あまりにも優しかったから」


「それに今、名前呼んでくれたわね」
「………調子のいいお嬢様だな」
「あら、もう名前で呼んでくれないの?」
「はいはいアルピニスタ」
やや雑に呼ぶとお気に召さなかったようで、頬を膨らませる。大人っぽい面もあるが、こういうところは案外子どもらしい。

「…まあいいわ!それより、私と駆け落ちしてくれるんでしょう?それなら、私をどこまでも連れて行って頂戴」
「はいはい、アンタの仰せのままに」
「ふふっ、それなら______」

夕日の沈んだパリの街、月明かりだけが俺たちを照らしていた。
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