レベルズー反逆者たちー


桜井優作(さくらい ゆうさく):♂
  研究所の裏事情に興味を持ち、外部からから入ってきてる一人。
所長とは面識がなく、研究員に指示されるとおりに動く。
何故指示されたことをまもるか?殺されるから。
時東と接点を持つ唯一の理解者。
時東の精神面の管理を任されている。
密かに研究所内を探り始める。徐々に、研究所の秘密を明らかにしていく者。
  性格は優しく探究心がある。
裏の顔は実はレジスタンス組織のボス 通称ドク

本田 美咲(ほんだ みさき):♀
  レジスタンス組織のメンバー 陽気。
  機械に強く、凄腕のハッカー。数々の伝説を残している。通称ディー
  戦闘においても、腕が立つ。

時東 真人(ときとう まさと):不問
  名前覚えていない。気づけば真っ白な部屋にただ一人
ずっと閉じ込められている。
謎多き青年 精神科医によって記憶を辿り、記憶を取り戻す。
実は、裏組織サマサの若き戦闘員、若くして戦死しかけの所を、所長が助ける。
記憶を取り戻すと、精神科医と組みレジスタンスになる。
  性格は何にでも興味を持つ。

研究員:不問
  所長直属の部下。全棟管理をしている。研究所の秘密は知らない。
  死にかけている所を、所長に助けられる。
ただ、所長の言いなりになっている。精神科医を駒のように扱う
表向きは人間だが、完全に記憶を消され洗脳されている。

早坂 瑠奈(はやさか るな):♀
  所長が研究員だった頃に洗脳し、
  自由に言いなりになるよう仕込まれた一人。
唯一所長の研究員だった頃のことを知っているが、
  幼少期の記憶は洗脳によって消されている。
亜空間を移動することにより、一瞬にして場所を移動できる装置の実験
に携わる。性格は冷静。所長の娘。

斎藤陽子(さいとう ようこ):♀
  現在の研究員が孤児院から秘密裏に連れ出した1人。
精神興奮薬:ルサマルーナによって制御され、常に攻撃的。
元々、物作りが好きで、それを利用された。
制御した、攻撃的な性格を利用し、
  化学兵器、生物兵器、武装兵器を生み出させている。

早坂亮(はやさかりょう):♂
  謎多き黒幕。研究所の研究員から所長へ成り上がった。
所長になれた理由は、もともといた所長を殺し、自ら研究所を動かしている。
その理由は、裏組織サマサのボスだから。、亜空間移動や
化学兵器、生物兵器、武装兵器を利用しようと企む一人。

ナレ:不問

補佐:斎藤 陽子と兼ね役。

桜井:♂
本田:♀
時東:不問
研究員:不問
瑠奈:♀
陽子:♀
ナレ:不問
補佐:陽子と兼ね役


時東:「ぅぅ…ここは?」

ナレ:青年はベッドから体を起こし、辺りを見回すと
  真っ白な部屋の中に居た。
  正面にドア、
  天井には監視カメラ、
  そして、小さな窓がある。

時東M:「一体僕はなんでこんなところに…。
    ここは病院…いや違う。ここはどこだ!?」

ナレ:青年が戸惑っていると、そこに白衣の男性が入ってきた。

桜井:「お目覚めかい?気分はどうだい。」

時東:「…誰だ。」

桜井:「大丈夫、心配しないで。僕は精神科医の桜井優作といいます。
    君の主治医だよ。体調に問題なさそうだね。
    早速で悪いけど、君の名前や年齢を教えてくれるかな?」

時東:「僕は……誰だ?」

時東:「思い…出せない。」
   
桜井:「そうか、では体と精神のチェックをしようか。」

時東:「体と精神のチェック?」

桜井:「立ち上がれるかい?」

時東:「立ち上がれるに決まって…あれ?」

ナレ:青年は、ベッドへよろめいた。

時東:「く…。立て…ない。」

時東:「なぜだ。」

桜井:「薬が効いているんだ。
    そうだな、二、三日もすれば、動けるようになるだろう。」

桜井:「君は過去のことを何も思い出せないようだね。
    恐らく、健忘状態、記憶喪失だと思ってくれればいい。」

時東:「記憶喪失……」

ナレ:桜井は、青年の青ざめた表情を見て、カルテを書き進めながらこう言った。

桜井:「まぁ、混乱するのもよくわかる。とりあえず落ち着いて。」

時東:「ここが何処かもわからない!自分が誰かもわからない!!
    落ち着ける訳無いだろ!!!」

桜井:「その事は、おいおい話していこう。」

時東:「今知りたいんだ!なぜ教えてくれない!
    わからないまま居ろっていうのか?」

桜井:「(被せるように)今はわからないとは思うが、
    そのうちわかってくるさ。安心しなさい。」

時東:「安心なんてできるわけが…」

桜井:「すぐには無理だろうね。」

時東:「やっぱり納得いかない、全部知ってるんだろ!」

桜井:「(被せるように)ここのことは何も聞かないように。」

時東:「なんでだよ!今すぐに教えろよ!」

桜井:「答えられない義務があるんだ。君のことはおいおい話そう。」

時東:「義務ってなんなんだ!義務なんて僕には関係ない!教えてくれ!」

桜井:「知ってしまうと、僕の命も、君の命もなくなるよ?いいのか?」

時東:「それは…」

時東:「あの…」

桜井:「なんだい?」

時東:「いや…なんでもない。」

桜井:「そうだ、話は変わるが、君は本は好きかい?
    本ぐらいならこの部屋にも持ち込み許可が出るはずだよ。」

時東:「本…嫌いじゃないけど…」

桜井:「嫌いじゃない、か。なら読んでみるといい。
    僕がおすすめの本を何冊か持ち込めるよう申請しとくよ。
    それでいいいかい?」

時東:「あ…あぁ……」

桜井:「じゃぁ今日はこれで失礼するよ。」

桜井:「君の体も心も回復してはいない。今は、大人しくしていなさい。」


               間

ナレ:桜井は問診結果をまとめ、研究員の部屋を訪れた。

桜井:「(ノック音)桜井です。報告に参りました。」

研究員:「お前か。
   (睨みつけるように)随分長く居たな。余計なことは話していないな?」

桜井:「彼の話を聞いていただけです。余計なことは言ってません。」

研究員:「ならいい。カルテを見せてくれ。…まだ完全ではない…か。」

研究員:「完全になれば…ケケケッ」

ナレ:綺麗に整えられた書斎の本棚に、研究員は、丁寧にカルテをしまった。

桜井:「ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?
    完全になればどうするおつもりで?」

研究員:「余計なことは聞くな。お前は様子を観察するだけでよい。」

桜井:「はっ、失礼いたしました。以後気をつけます。
    あっ!言い忘れてましたが、
    本の持ち込み許可をしていただけますでしょうか?」

研究員:「本?あいつにか。ふん……いいだろう。何冊か与えてやれ。」

桜井:「ありがとうございます。では明日にでも。」

研究員:「本来なら、ここには居れないはずの医者が、
     所長に拾ってもらった恩を忘れるな。」

桜井:「…はい。」

ナレ:桜井は不服そうな顔を浮かべながらその場を去った。

ナレ:翌日。

桜井:「おはよう!いい朝だね。青空だよ。気分はどうだい?」

時東:「はぁ。青空ですか。空の様子までは、
    この小さな窓からじゃよくわからなくって…。」

ナレ:桜井は窓の外を眺めながら言った。

桜井:「少し落ち着いたようだね。良かった。
    確かになぁ。 こんなに小さい窓じゃ空なんて見えないね。
    ああ、そうそう!本を持ってきたよ。」

時東:「なんだ難しい本ばかりじゃないか。はぁ…何だこのチョイス。」

桜井:「ははは。いやぁ君には難しすぎたかな?
    哲学はやってみるとなかなか面白いし、
    心理学は心を知れるし、宇宙工学なんて夢だぞ!夢!
    まぁ読んでみれば君にもわかるさ。」

時東:「知識の一つでも身につけろってか。わかったよ、読んでみる。」

桜井:「ところで、今日の体の調子はどうだい?」

時東:「またその質問ですか。今日はもう放っておいてください。」

桜井:「聞かなきゃいけない義務があるんだよ。それに監視されているんだ。
    悪いけど付き合ってもらうよ。」

ナレ:桜井は昨日同様検査をし、早々に部屋から立ち去った。
   青年は、おもむろに本を開いた。

時東:「はぁ宇宙工学か……、
    なんにもわからない状態でこんなの読んでどうするんだ…。」


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              間

ナレ:考え事をしながら歩いていた桜井は、
   区画を間違えたことに気づく。慌てて確認するとそこにはD区画と書いてあった。
             
桜井M:「この研究所、一体何の為の研究所なんだ?
    裏では何が行われているんだろう…。
    いや、今は時間がない。これ以上の詮索は今はよそう。とにかく、報告に行かなければ。」

研究員:「何をしていた!!あの部屋から出て、
     十分も経っているではないか!!まさかお前…」

桜井:「いや…その…考え事をしながら歩いていたら道を間違えまして…」

研究員:「そうか。 詮索すれば…わかっているな。
     わかったら下がれ。今日はもう用はない」

ナレ:桜井がカルテを渡し、去った後、
   研究員はA区画の亜空間移動実験室へと向かった。

              間

ナレ:ここはA区画の一室、亜空間移動実験室。辺りは実験機器に囲まれ、
   装置が置かれている。
   そこには研究員と研究員の補佐、そして女性がいた。
   亜空間移動実験とは、亜空間を扱い、
   一瞬にして別の場所へと移動することができる装置の実験。
   いわば、瞬間移動をする実験のようなものだ。

研究員:「早坂瑠奈、実験の準備は出来たか?」

瑠奈:「はい、できております。」

研究員:「では、これより亜空間移動実験を執り行う!」

補佐:「亜空間機作動!座標確認。亜空間、開きます!」

研究員:「瑠奈は亜空間移動後、カウントは10秒だわかったな。」
    
瑠奈:「わかりました。カウントを取り、戻ります。」

ナレ:瑠奈は閃光のような光とともに、亜空間ヘ足を進める。その瞬間姿を消した。

補佐:「10秒カウント始めます。[10秒カウントダウンしてください]
    瑠奈、戻ります。」

瑠奈:「戻りました。問題はありません。」

研究員:「うむ。亜空間を閉じろ!」

補佐:「亜空間閉じます。実験を終了します。」

研究員:「今日も成功だ。これで実験結果は得られた!
     どうだった?今日行った場所は?」

瑠奈:「とても綺麗な海でした。砂浜も綺麗で。無人島だったのでしょうか?」

研究員:「詳しい場所は言えないが、
    これでどこへでも移動できることが証明された!ははは」

瑠奈:「成功おめでとうございます。わたくしの任もこれで終わりですか?」

研究員:「いや、まだだ。まだ君にはやってもらうことがあるのだよ…ケケケッ」

瑠奈:「そうですか。命令であれば従いましょう。
    わたくしは、所長に会いに行ってきます。」

ナレ:そう言って瑠奈は所長の部屋へと向かう。


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瑠奈:「(ノック音)瑠奈です。」

早坂:「実験後、必ず来ると思っていたよ。」

ナレ:瑠奈は所長の部屋をぐるりと見渡す。
   そこは、乱雑に置かれた書類や、
   ブランデーの瓶が転がっていた。
   きちんと整理されている研究員の部屋とは真逆のようだ。

瑠奈:「早坂所長、少しは整理なさったらいかがです?
    来るたびに書類が散らかってませんか?」

早坂:「まぁ、気にすることはない。どこに何があるかは、わかっておる。
    で、亜空間移動の件はどうなっているんだ?」

瑠奈:「その件はもうご存知でしょう?
    後で研究員が報告に来るはずですよ。」

早坂:「そうかわかった。では待つとしよう。で、君の要件は?」

瑠奈:「今日来たのは…その…」

早坂:「なんだ言ってみなさい。思いつめては実験に差し支えが出る。」

瑠奈:「あの…その…昔のわたくしはどんな感じでしたか?
    最近気になって眠れなくて…」

早坂:「子どもの頃の記憶など知らなくていい。」

瑠奈:「何故ですか!わたくしは、わたくしはお父さまの、
    いえ早坂所長の研究員時代の記憶しかない!
    知りたいと思うのは当然でしょ!だって…お母様の事も知りたい…」

早坂:「知らなくていいと言っておるのだ!言うことが聞けぬのか!」

瑠奈:「…わかりました。わたくしは失礼します。」

早坂所長M:「なぜ昔の記憶を取り戻したがるのか…完全に洗脳したはずなのだが。
      チッ、研究員時代の記憶も全て塗り替えておくべきだった。」

ナレ:早坂はおもむろにブランデーを取り出し、
   やけになり瓶をあおった。
   飲み始めて数分後ノックの音が部屋に響いた。

研究員:「(ノック音)私です。」

早坂:(ロレツが回らない感じで)「お前か、入れ。報告に来たのだろう。」 

研究員:「所長、また酒ですか。私は大変苦手でして、良さがわかりません。」

早坂:「旨いんだ。お前は酒が苦手なのは知っている。」

研究員:「そうですね。あなたは部下であった私の全てを知っていますからね。
     あなたは、命の恩人です。」

早坂:「戦場で撃たれお前は瀕死状態だった。それを私が助けてやったのだ。感謝しろよ。
    それで、亜空間移動の実験の方はどうなんだ?」

研究:「報告いたします。亜空間を利用し、様々な場所へ瑠奈を向かわせました。
    一度も失敗はありません。しかしこれだけの規模を使っての実験、
    何にお使いに…もしや!?」

早坂:「お前はそれ以上知らなくてよい。詮索することも許さん。さもないと…」

研究員:「はっ。仰せのままに。あっ、一つご報告が。」

所長:「なんだ?言ってみろ。」

研究員:「桜井優作のことなのですが…なにか詮索しているようです。」

早坂:「ほう…あいつが、か。秘密を知られるのはまずい。監視は必ず行うように。
    では今日はもういい。ほかに要件はないな?」

研究員:「はっ。では失礼いたします。」

早坂:「あいつがなぁ…。ははは!面白いことをしてくれる。
    何を企んでいるのかは、知らんが、
    監視の目を強化しなくてはな…」

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ナレ:その頃桜井は、小さな町の中にある雑居ビルの一室で密会を行っていた。

本田:「そんな目立つ格好で来たの?あとはつけられていないでしょうね?ここがアジトだとバレたら…」

桜井:「大丈夫だ、そんなヘマはしない。通信傍受もされないようになっている。」

本田:「それならいいけれど…そんな目立つ格好はないわよ。」

桜井:「これが俺のスタイルだ。で、話を戻そう。」

本田:「ドク、あなた、まだあのレベリスラボに出入りしてるみたいね?」

桜井:「あそこには、ここ一年通いっぱなしだよ。
    あの場所に行くのは大変なんだよ。
    でも、裏事情には興味があってね。」

ナレ:レベリスラボとは機密研究施設の通称。
   人里離れた山奥にあり、真っ白な建物である。

本田:「いやぁ、でもあなたがレジスタンス組織「ヴァンナル」のボスってことよくバレなかったわね
    入るにも、相当身元調査厳しかったんじゃない?」

桜井:「何を言ってるんだ、ディー。
    あいつにかかれば身元を変えることなんて、容易なことだよ。」

本田:「あはははっ。あの男ねー…通称ピッキー、
    本名は高尾翔(たかお しょう)よね。
    凄腕の詐欺師だっけ?あの子はまだ若いのに凄いのよねー。」

桜井:「まだ若いが腕は確かだよ。僕の一件で証明されたようなもんだ。」
    なぁ、ディー、ちょっと頼みがあるんだが。」

本田:「いいけど?何をお望みかしら?せっかく二人きりなのに、
    通称で呼ぶのやめにしない?ドクこと桜井優作さん。」

桜井:「なぜ本名を!?言ったことがないはずだぞ?
    さては盗み見したな?本田美咲さん。」

本田:「あははっ。今まで気付かなかったの?まぁバレるはずがないわよねー。
    このあたしにかかれば、
    痕跡一つ残さず、国家機密レベルでもハッキングできるわ。」

本田:「で、本題に入りましょ。私に何をして欲しいの?」

桜井:「隙を見て、部屋のマスターキーをコピーしたいんだが…
    君ならそんなツールを持ってないか、と思ってね。」

本田:「あるよー!こんなこともあろうかと準備しておいたのよ。
    あなたが潜入調査するー。って言い出してから気になってね。
    ラボのシステムに侵入したら、詳しいことまで分かってね。」

桜井:「ラボのシステムに侵入したのか!?早いな。あそこのシステムは
    難易度高かっただろ…いや、お前の手にかかれば一瞬か。」

本田:「まぁねー。実はね…あそこの監視カメラにも、ちょっと手を加えておいたのよ。
    あたしってば賢いわねぇーあははっ」

桜井:「監視カメラにもか…。望んでいた条件は揃った。今からラボに行くぞ!
    ディー、外から制御は可能か?できれば、指示もしてくれ。」

本田:「いいよーん。じゃ、外から一時停電にするわ。それで中はパニックっと。
    その間にマスターキーコピーして。
    情報によればE区画のみ、別電源でキーも別よ。」

桜井:「わかった。E区画以外のマスターキーコピー任務を遂行する。
    しかしE区画ってなんの区画なんだ?」

本田:「あたしにもそこまではわからなかったわ。とりあえず触れないことね。」

桜井:「わかった。じゃぁ急ごう。夜になったら決行だ。」

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            間

ナレ:レベリスラボでもD区画のとある一室で事件は起きていた。

ナレ:そこら中にあるものを破壊し、まだ更にむしゃくしゃしている少女、
  彼女の部屋は壊されたものが、そこらじゅうに散乱している。
  今まさに、彼女は目の前にある人形をカッターナイフで破壊しようとしていた。

陽子:「壊しても壊しても足りない!足りないんだよー!この人形だって簡単に
    壊れてしまうんだ…はははっ。ザクザクに切り刻んでしまえ。
    そうだ。この間作ったビームガン試してみようかな。……これはいい物だな。」


研究員:「何をしている!陽子、斎藤陽子。またこんなに破壊して…。あっ、ビームガンじゃないか
     まともに実験もしていないものをよく扱ったな。なんて危険なことを…」

陽子:「わたしが作ったからね!使ってみなきゃ。ワクワクしたよー使うの。あははっ」

研究員:「うっ。肩に…何をしている!やめろ!
     ビームガンの威力はここまでとは…うっ…」

研究員M:「精神興奮薬の量が多すぎたのか、
      奴の破壊衝動が強くなっているな。
      鎮静剤で一時暴走を止めるしかないか」

研究員:「おとなしくしろ!」

陽子:「きゃっ…何を使ったの?目の…前が…」

研究員:「ふぅ…この薬の効果侮れんな。初めて使ったが
     こんなに効き目があるとは。
     この傷では部屋片付けるの大変なんだからな…」

研究員:「はぁ…仕方がない。C区画の掃除ロボット持ってくるか…。」

              間

ナレ:瑠奈は自室へ戻り涙ぐみながら立ち尽くしていた。
   彼女のの部屋はすっきりしており、特にこれといったものはない。

瑠奈(独白):「どうして…どうして…
        過去を知ってはいけないの?私の幼い頃って何があったかしら?
        思い出せ!思い出せ!…だめ、どうしても思い出せないわ。
        お母様、お母様どこへ行ってしまわれたの?
        研究員だった頃のお父様は、もっと優しかったのに…
        変わってしまわれた…」

               間

桜井:「マイクテスト、テスト聞こえるか?ディー。」

本田:「こちらディー。聞こえるわドク。準備は完了よ。」

桜井:「OK。では作戦を始める。なにか注意事項はあるか?」

本田:「停電させられるのはE区画を除く、全区画。でも予備電源があるから……
    30分しかないわ。知ってのとおり、
    A区画は作業場、B区画は研究施設、
    C区画は清掃用ロボット置き場、D区画は居住区画よ。
    くれぐれも、研究員と鉢合わせたりしないようにね。健闘を祈るわ。」

桜井:「ありがとうディー。じゃぁ始めてくれ!」

ナレ:合図とともに、電源が落ちた。一部光っているのがE区画だ。

桜井:「さてっと。とりあえずマスターキーの在り処だが…
    研究員の部屋、D区画だな。ディー、研究員の部屋に生体反応はあるか?」

本田:「残念ね。そこまではわからないわ。そこは戦場と同じよ。」

桜井:「戦場…か、昔を思い出すなぁ。」

ナレ:D区画へと足早に向かう桜井。

桜井M:「畜生、もうすぐ研究員の部屋だってのに。
    奴が部屋にいるかもしれない。鉢合わせないようにするには、
    さーて、どうするか…そうだ物音を立てて気をそらそう。」

ナレ:桜井は暗闇に隠れ、C区画に向かった。

研究員:「な…なぜ停電した!!?システムは異常ないはずだ!侵入者か!?
     いや、そんなはずはない。セキュリティは万全だった。
     ん?C区画で物音?やはり侵入者なのか?」

ナレ:桜井が掃除用ロボットを倒したのだ。
   そして研究員の部屋に向かった。

桜井M:「軽々と奴の気をそらすことができたな。
     ふぅ。やっと研究員の部屋だ。」

桜井:「しっかし、きれいに整頓されているなー。マスターキーはどこかなぁ。
    引き出しか?ちがうな…うーむ。ここか?おっ!あった。」

桜井:「あったぞ!ディー、コピーも成功だ。
    プロテクトが、かかっていたようだがー。
    まぁ、君は予測済みだったようだね。流石だ。」

本田:「成功したのね!良かったわ。やはりプロテクト、かかっていたのね。
    念には念を入れておいて良かったわ。残り時間15分よ。」

桜井:「わかった、僕はもう少し探索をするよ。
    もしかしたら、他の「何か」を見つけることができるかもしれない。」

桜井M:「以前から気になっていたB区画、
    関係者以外立ち入り禁止ときた。なにをしているんだ?
    ついでに、覗いていこうか。ここなら奴も来ないだろう。」

ナレ:桜井は扉を開き、実験室に目をつけた。

桜井:「な…なんなんだここは。なにかの実験室というのはわかったが、
    ここまで大規模とは…」

桜井:「おい!ディー。すごい収穫だ。
    やはりなにかの実験が行われているようだ。なにか情報はあるのか?」

本田:「恐らくそこは、亜空間実験室よ。
    ハッキングした時も厳重なセキュリティだったから、詳細情報も一部しかないわ。
    カメラを使って見ることはできるけど…
    詳細を調べたいから、写真を撮ってきてくれない?」

桜井:「わかった。だがこの実験の規模を見る限り、一度や二度の実験じゃないぞ。」


桜井:「これでよしっと…。残り何分ある?ディー。」

本田:「残り5分よ。そろそろ脱出したほうがいいわ。」

桜井:「わかった。後で写真を元に分析をよろしく。では離脱する。」

ナレ:桜井が探索している間、E区画では何事もなく、
ブランデーを呑みながら、早坂はうすら笑いを浮かべ、青年のカルテを眺めていた。

早坂:「うぃっく。あー飲みすぎた。」

早坂(独白):「はーはっはっはっ!もうすぐ我が軍の台頭が始まるのだ。
        サマサを再始動させ、私の任は変わる。
        世界を戦争の渦へと巻き込み、
        サマサが主権力を握る日が来るのだ!!
        はーはっはっはっは!」

ナレ:そう、早坂は裏組織サマサのボスでもあるのだ。
   裏組織サマサとは、好んで戦争をし、
   紛争を生み出す根源であり、主権力を握ろうとしている。
   サマサは現在、影に身を潜め、
   研究所で開発中の武装品の完成を待っているのだ。

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                間


桜井:「任務完了。脱出も完了だ。ディー、通信を切る。アジトで落ち合おう。」

本田:「ご苦労様、良かったわ。
    きっと内部は慌てふためいていたでしょうね。あははっ」


本田:「お疲れ様。久しぶりの潜入ミッションはどうだった?
    あなたのことだから、ワクワクしてたでしょ?」

桜井:「なんでわかるんだ?もちろんワクワクしたよ。昔を思い出してね。
    流石に研究員と鉢合わせそうになったときは焦ったけどね。」

本田:「そうだったの?あなたの対応がみたかったわ。あはは。」

桜井:「(咳払い)で本題だ、君のお望み通り、実験室の写真を隅々まで撮ってきた。
    分析結果が出たら、僕にも教えてくれないか?」

本田:「もちろんよ。凄く興味深いわ。恐らく、これが…亜空間移動装置ね」

桜井:「これが、亜空間移動装置…か。それで戦場に送り込む計画だな。」

本田:「恐らく…その計画の為に作られた。でもなぜこれが…。」

桜井:「どうした?何か思い当たる節があるのか?」

本田:「これは、最高機密情報よ。ハッキングした時に見つけた資料に書いてあったの。
    この実験は一度失敗してるはず…でも、なぜ再開できたの…?」

桜井:「失敗だって!?何があったんだ?あの青年とも何か関係があるのか?」

本田:「それは…」

ナレ:密会は一晩中行われた。朝日が昇り始めた頃、桜井は切り出した。

桜井:「せっかく潜入しているんだ。調査ぐらいしたっていいだろ?
    君の話だと、あと二人いるはずだ。とにかく会ってみないと…
    いや、三人とも助け出さなくては。
    今度、ラボに行くときにミッション遂行だ。
    君にもついてきてもらうよディー。準備はしておいてくれ。」

本田:「わかったわ。ドク、くれぐれも気をつけてね。」

桜井:「ああ、わかっている。」

ナレ:数日後、桜井は資料を持って、青年の元へ向かう。

桜井M:「そういえば、ディーが監視カメラに、何か手を加えたと言っていたな。
     安心して話ができそうだ。」

桜井:「こんにちは。調子はどうだい?」

時東:「……」

桜井:「どうしたんだい?浮かない顔をして。黙っていちゃ何もわからないよ?」

ナレ:青年は、何も言わずベッドから立ち上がり、桜井の目を見た。

桜井:「自由に動けるようになったようだね。よかった。どうしたんだい?」

時東:「昨夜、夢を見たんです。戦争中に目の前で女性が打たれる夢を…。
    それも、すごく鮮明で、なんだかその女性が懐かしい感じがして。」

桜井:「夢、か。そんなに鮮明なだったのか…懐かしい感じの女性?」

時東:「はい。とても優しそうな目をしていて、僕をかばって撃たれる夢でした…
    とても悲しかったです。」

桜井:「それは、悲しい夢だったね。
    その女性ってどんな女性だったか覚えてるかな?」

時東:「夢でなかったかのように、はっきりと覚えています。」

桜井:「そうか…それはもしかすると過去の記憶の一部かもしれないよ。」

時東:「過去の…記憶ですか。もしそうだとするなら、もっと知りたいんです。
    先生、何か知りませんか?僕、記憶を取り戻したいんです。」

時東:「あっ。でも監視されているんでしたね。義務もあるし…
    無理…ですよね。」

桜井:「それは、今気にしなくていい。
    僕が知っている限りの事を話せる時が来たようだね。」

ナレ:桜井は、資料の中から女性とその息子らしき人が写った写真を取り出し見せた。

桜井:「夢の中の女性って、こんな感じの女性ではなかったかい?」

時東:「…!!これは…夢と同じ女性。横に写っているのは…僕?」

桜井M:「いいきかっけだ。今なら記憶を戻せるかもしれない、やってみよう。」

桜井:「そう、横に写っているのは君だ。」

時東:「じゃぁ、横に写っているのは…母さん?」

桜井:「そう、君のお母さんだよ。」

時東:「か…母さん?この女性が…」

桜井:「その通りだ。夢の中の出来事は実際に起こった事なんだよ。」

時東:「実際に!?先生は何故事実を知っているんです?
    僕の過去を知っているんですか?」

ナレ:桜井は青年に背を向け、こくりと頷いた。

桜井:「君は全てを知りたいのかい?知りたいのなら、知っている限りを答えよう。」

時東:「過去を…全て?怖い。だけど知りたい!!
    お願いします先生。教えてください。」

桜井:「これから話すことは、君にとってかなり衝撃的なことだ。
    本当にいいのかい?」

時東:「お願いします。先生が知っていることを、
    いえ、僕の過去を知りたいんです。」

ナレ:桜井は側にあった椅子に腰をかけた。

桜井:「話は長くなる。君も楽にしていてくれ。辛くなったら伝えるようにね。」

時東:「はい。お願いします。」

桜井:「ここに写っているのは、紛れもなく君と君のお母さんだ。
    君のお母さんは、機密組織サマサが街で戦闘中、
    君が撃たれそうになったところをかばって撃たれた。
    そして死んだ。君の目の前でね。
    この写真は、唯一残っていた写真なんだ。
    いつか君の記憶が戻った時に、見せるつもりだったが、
    まさか、これを使って記憶を取り戻せるとは思ってもいなかった。
    夢の通り、君のお母さんは本当に優しい人でね、
    街でも知らない人はいなかったんだよ。
    お母さんの名前は、時東梓(ときとう あずさ)。
    どうだい?記憶は鮮明になってきたかい?」

時東:「時東 梓…母さん…うぅ、頭が…くっ」

桜井:「無理もない。すごくショッキングな出来事だったから…ん?」

ナレ:青年は頭を抱えながら、静かに涙を流していた。

桜井:「大丈夫かい?今日はこれくらいに…」

時東:「(遮るように)大丈夫です。続きをお願いします。」

桜井:「わかったよ。では、君の名前思い出せそうかな?」

時東:「時東…うぅ。思い出せない。」

桜井M:「自力では無理なようだな。とにかく今、記憶を蘇らせる為にできることは
     過去を知ることしかない。体調に最善の注意を払いながら、全て伝えてみよう。」

桜井:「そうか…君の名前は時東 真人(ときとう まさと)だよ。」

時東:「時東 真人…僕は、時東 真人っていうのか。」

桜井:「時東君、今の調子なら、きっと思い出せるはずだよ。」

ナレ:桜井は資料から更に写真と書類を取り出した。

桜井:「これを見てくれるかい?」

桜井:「それが記憶をなくす前の写真と詳細なことが書かれた書類だ。」

時東:「武装!!?戦っていたのか?一体僕は何を!?」

桜井:「詳細はその書類を読めばわかるはずだよ。」

時東:「分かりました。でもっ。監視カメラ!
    先生。こんなことして大丈夫なんですか?」

桜井:「最初に言ったはずだよ、今は気にしなくていいと。」

時東:「これ、機密文書。先生あなたは一体…。」

桜井:「僕のことはいい。まぁゆっくり読んで欲しい。落ち着いてね。」

時東M:「時東 真人、敵支部を一人で撃破。
     数百人の敵をたった一人で撃破するとは素晴らしい。
     完全に洗脳しきった甲斐があった。
     だが、次の戦場で背後から撃たれ瀕死の重傷。
     記憶も危うい模様。」

時東:「敵支部を一人で!?洗脳!?撃たれて瀕死!?なんなんですか!これは。」

桜井:「それが、全ての情報だよ。全て本当のことだ。」

桜井:「君は、幼い頃、サマサに連れ去られ、
    ボスから完全に洗脳され、幼くして兵士となった。
    成長した頃には、サマサの非常に優秀な兵士になっていた。が、
    戦場で撃たれ瀕死になり記憶を失ったわけさ。
    気づかなかっただろうが、背中の傷がその証拠だ。」

時東:「じゃぁ、僕を助けたのは誰なんですか?」

桜井:「それは…サマサのボスであり、ここの所長の早坂だ。」

時東:「えっ。ここは一体…?」

桜井:「ここは、偽装されているが、武装研究所なんだよ。
    君がここに連れてこられた理由は、再び洗脳して利用するため。」

時東:「ここに閉じ込められていた理由、そういうことだったのか!」

桜井:「そういうことさ。
    義務といったのも研究員から話をとがめられていたからだよ。
    すまなかったね。これが時東君の全てだよ。
    受け入れるのに時間がかかるだろう。
    今日のところはこれで失礼するよ。あ、っと。心理学書を渡しただろう。
    253ページ辺りを心の整理に読むといい。ではこれで。」


時東:「心理学書の253ページか。どんなことが書いてあるのだろう?…!?
    なんだこの手紙。」

時東M:「時東君、これを読んでいる頃には君は記憶を辿った後ではないだろうか?
     実は僕の裏の顔はレジスタンス組織「ヴァンナル」のボスなんだよ。
     これをこういう形で明かしたのは、言葉で言うと混乱すると思ってね。
     君もレジスタンスにならないか?きっと所長に恨みを抱いている頃だろう。
     僕について来い。前向きに考えて欲しい。ではこれにて、桜井。」

時東:「えっ…ヴァンナル!?レジスタンス??」

時東(独白):「お母さんを殺したのが、ここの所長か…。
        機密組織サマサに俺はいて、この手で人を殺めたというのか…
        うわぁぁぁ!わけがわからないよっ!でも、うっすらと脳裏によぎる、
        戦場の記憶…。やはり本当なんだな。ここから出ることができるのなら、
        再び洗脳されないようにするには、レジスタンスになるしかない。
        わかったよ。先生いや桜井さん。ついていく。」

ナレ:時東は手紙を握り締めながら強く頷いた。

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                   間



ナレ:ここはD区画会議室。そこには早坂瑠奈と斎藤陽子の姿があった。

瑠奈:「陽子ちゃん、今日はお薬飲んでないの?」

陽子:「まだだよー。渡されてないから…。
    あれ飲むとイライラしちゃって困ってるの。
    でもね、開発の方は薬飲んだほうが進むの。なんていうか、意欲が増すの。」

瑠奈:「そうなのね。陽子ちゃん、
    兵器結構作ってるみたいだけど完成品は出来たの?」

陽子:「瑠奈ちゃんよく知ってるねー!
    ビームガンや爆弾、化学兵器、それからー生物兵器まで作ったよ!
    楽しかったぁ~。所長様に褒められちゃったもん!」

陽子:「みてみてー!このビームガン、改良したんだぁー。
    威力が倍以上になったの!」

瑠奈:「それ勝手に持ち出していいの?こんなところで撃っちゃダメよ?」

陽子:「いいのいいのー。ロックかけてるから、安全安全!大丈夫だよ。」

瑠奈:「間違ってもわたくしを撃たないでちょうだいね。心配だわ。」

桜井M:「あの子達は一体何を話しているんだ?…話をしてみよう。」

桜井:「やぁ、君たち。こんにちは。」

陽子:「あなた誰なの?部外者なら撃つよ?」

桜井:「おっと、その武器を向けるのはやめてくれないか。
    研究員から聞いてなかったかな?
    はじめまして、僕は精神科医の桜井優作といいます。」

瑠奈:「桜井優作…聞いてません。」

陽子:「お医者さんなの?私のお薬作ってくれたのかな?」

桜井:「薬?薬は作っちゃいないよ。ただ、君たちの事に興味を持ってね。」

桜井:「君たちの話を聞かせてくれないか?
    その武器は誰が作ったんだい?素晴らしいね。」

陽子:「私だよ。所長様に褒められたんだ。改良までしてあるよ。」

瑠奈:「こら、陽子。そんな簡単に機密情報を漏らしてはなりません。」

陽子:「ごめんなさい。でも、話すとワクワクするの!」

桜井M:「この子が、情報にあった斎藤陽子か。
     だとするともう一人の方は早坂瑠奈?」

桜井:「斎藤陽子さんと早坂瑠奈さんかな?」

瑠奈:「なぜわたくしの名前をご存知で?」

桜井:「研究員から名前は聞いてはいたよ。ただ会ったことがなかっただけさ。」

瑠奈:「そうでしたか…。てっきり部外者だと思いましたが、
    勘違いしてしまいました。すみません。」

桜井:「いいんだよ。いきなりだったからね、部外者だと思われても仕方なかった。」

陽子:「私は最初から部外者ではないと思ったよ。
    白衣も着てるし、怪しそうではないからね。
    それに、ここまで部外者が無事で来れるはずないから。
    でもなんで、私たちの話を聞きたいの?」

桜井:「精神科医だから、君たちの事を知るのも義務なんだ。協力して欲しいな。」

陽子:「いいよ!何が聞きたいの?生物兵器のことかな?それとも武器?
    私は、人を幸せにするものを作ってるんだよ。凄いでしょ!」

桜井:「ん?武器や生物兵器が人を幸せにすると…?
    君は自分の過去や戦争のことは、知っているのかい?」

陽子:「知らないよー。興味もないもん。」

桜井:「そうなのか。楽しんで作ってるんだね。」

陽子:「うん!」

桜井:「早坂瑠奈さん、君は一体何の実験に関わっているんだい?」

瑠奈:「いくら関係者でも、それは最高機密なので話すことができません。」

桜井:「亜空間移動の事はご存知かな?」

瑠奈:「な、なぜそれを…確かに関わってはいますが…」

桜井:「やはり。では、君は過去のことを知りたいとは思わないかい?」

瑠奈:「知りたいです。でも、それは所長にとめられてるのでは?」

桜井:「知りたいなら全て教えよう。どうだい?知りたいかい?」

研究員:「何をしている!貴様!ここのセキュリティキーは渡していないはずだ。
     どうやってここに入った!
     重大な規律違反だぞ、命はないと思え。」

桜井:「ちっ。こんなとこで来客か。ディー聞こえるか?出番だ。」

ナレ:本田は物影で待機していた。研究員の背後から忍び寄り、注射器を構えた。

本田:「ここで開発された、注射を食らいな!効き目は一瞬よ。」

研究員:「うっ…。何故その注射を持っている…。侵入者はお前たちか。ぐわっ。」

ナレ:物陰から急に飛び出してきた研究員補佐が本田を襲おうとした。

本田:「おそいっ。(銃声)あたしを甘く見ないで。」

ナレ:本田の撃った弾丸は、研究員補佐の頭を打ち抜いた。

瑠奈:「きゃー!」

陽子:「うっ…」

本田:「あなた達大丈夫?無理もないわ、
    戦場を目の当たりにするのは初めてでしょうから。」

桜井:「こっちは大丈夫だ。君たちは見ないほうがいい。さぁこっちへ。」

本田:「あとは任せて。研究員は薬の効き目が切れるまで、眠っているわ。」

桜井:「ディー、君がいてくれて助かったよ。ありがとう。」

本田:「礼は、その子達を助け出してからにしてちょうだい。」

桜井:「わかったよ。必ず助け出す。」

桜井:「今のが戦争だ、君たちはこれに加担しようとしているんだ。」

瑠奈:「そんな…人殺し!あなた達は一体何者?やはり部外者だったのね。
    陽子ちゃん、そのビームガンで!」

陽子:「さっきのが戦争…聞いていたのと違う。戦争って人を幸せにするものじゃ…
    できない。もうあんなの見たくないもん。」

桜井:「二人とも落ち着いて聞いてくれ。
    僕たちはレジスタンス組織「ヴァンナル」さ。君たちを助け出しに来た。」

陽子:「レジスタンス組織?聞いたことあるけど、悪い奴らじゃなかったの?」

瑠奈:「助け出す?どういうことですか?またそそのかそうとしているのでは?」

桜井:「君たちが加担し作り出された物で、
    戦争が始まり、沢山の尊い命が奪われていくんだ。」

陽子:「私の作ったもので、人の命が…なくなるなんて…」

瑠奈:「そんな事に加担していたなんて……嘘よ!」

桜井:「いや、本当のことなんだ。君たちは所長によって、洗脳され、
    何も罪悪感を覚えず、兵器を作らされてきた。
    君たちを利用してきたのは所長なんだ。憎くは思わないか?」

瑠奈:「お父様が…そんな、そんな事をしているなんて…信じられないわ
    もう昔のお父様じゃないのね…」

陽子:「憎い。人を殺す為に利用されていたなんて…」

桜井:「君たちは悪くないんだ。全て所長の陰謀さ。
    洗脳は過去を知ることによって解けるだろう。」

瑠奈:「過去を知る…あなたが全てを知っているのなら教えてください。
    わたくしは、もう人殺しの道具作りに加担したくはありません。」

陽子:「考えたこともなかったけど…これ以上、人が死ぬのは見たくないよ…」

桜井:「意見は一致だな。では早坂瑠奈さんの過去から話していこう。
    かなり辛いことだが大丈夫かな?」

瑠奈:「はい。覚悟は出来ています。よろしくお願いします。」

桜井:「君のお母さんの事は思い出せそうかな?少しでもいいんだけど。」

瑠奈:「研究員だった頃のお父様の事はわかるのですが…
    お母様のことはわかりません。
    でもずっと、お母様のことを知りたいと心から願っていました。」

桜井:「十年前、事故が起こってしまったんだ。
    その光景を、君は見ていたはずだよ。当時研究員であった君のお父さんとね。
    当時の記録されていた、現場の映像がある。見て欲しいんだけど…いいかな?」

瑠奈:「見ます!見せて頂けませんか?」

桜井:「相当ショッキングな内容だよ。覚悟してくれ。」

瑠奈:「はい…。」


補佐:「亜空間移動実験準備完了しました。」

早坂:「うむ。では亜空間開け!」

補佐:「座標確認完了。亜空間開きます。」

早坂M:「今日も無事で戻ってきてくれよ。梓…」

早坂:「亜空間実験開始!十秒カウントする。
    その後亜空間を閉じろ。まだ暴走の危険が有る。」

瑠奈:「なにがはじまるのー?あっ。お母様が消えた!?お母様。」

早坂:「瑠奈は黙って見ていなさい。母さんは必ず帰ってくる。」

補佐:「十秒カウント始めます。10・9・8・7・6……早坂研究員大変です。
    亜空間装置暴走!」

補佐:「梓さんの生体反応感知不可!」

早坂:「いかん!梓を何とかして戻せ!!」

補佐:「これ以上亜空間を開いていると全て飲み込まれてしまいます!」

早坂:「梓、梓ー!うぅ…」

補佐:「強制的に亜空間を閉じます。宜しいですか?」

早坂:「くそっ。止むを得ん……亜空間を閉じろ。」

瑠奈:「えっ。お母様、お母様はどうなってしまうの?」

補佐:「緊急事態発生!亜空間移動装置強制的に電源落とせ!」

ナレ:映像はそこで終わっていた。事実を見た瑠奈は涙を流している。

瑠奈:「お母様ー!」

桜井:「大丈夫か?君のお母さんは君と同じように実験に参加していた。
    十年前そこで事故が起こり、事実上お母さんは消滅。
    そのことを知ると、記憶が戻り洗脳が解けるのを危惧し、
    早坂は言わなかったのだろう。」

瑠奈:「これは…本当の事なの…?」

桜井:「全て本当の事だ。そこに居るディーが、
    この研究所のシステムにハッキングして得た情報なんだよ。
    一度失敗した実験が、再開出来たのも、君を利用出来たからなんだ。」

桜井:「映像を見て、何か思い出したことはあるかな?」

瑠奈:「ええ。さっきお母様の映像を見たので、はっきりと思い出しました。
    美味しいお料理を作ってくれたり、一緒に遊んだ記憶も。」

瑠奈:「わたくしはなんて恐ろしい事を…
    戦争の為の兵器作りに加担していた、
    お父様に利用されていたなんて…信じられない!」

桜井:「まぁ、その怒りの気持ちもわかる。が、今は少しこらえてくれないか?
    もう一人の子も、洗脳を解かなきゃいけなくってね。」

瑠奈:「うぅ…わかりました。」

桜井:「次は君の番だ、斎藤陽子さん。君も加担していたことになるのだけれど、
    心境の変化は出てきたかな?」

陽子:「うーん。戦争っていうのがわからないけど、
    私の作ったもので、人が死ぬのは嫌だ。
    あと、私の過去も知ってるの?」

桜井:「戦争が起これば、人は必ず死ぬ。君が作った武装が使われてね。
    君の過去の情報もあったよ。」

陽子:「よく覚えてないから私の過去も知りたいの。」

桜井:「わかった。よく聞いていてくれ。」

桜井:「君は、幼少期に秘密裏に孤児院から連れてこられた。
    その後、洗脳され、薬で破壊意欲を高め、武装や生物兵器を作らせてきた。
    今日は運良く薬は飲まされていないようだね。」

陽子:「孤児院にいたのかぁ…。
    瑠奈ちゃんみたいにお父さんやお母さんのことはわからないのね。
    そう。今日は、瑠奈ちゃんとお話するって言ったら、
    薬は、後でってことになってたの。」

桜井:「そういうことだったのか。運が良かったようだな。
    おっと、忘れていた。精神安定剤と飲んでた薬の中和剤だ。
    飲んでおいてくれないかい?」

陽子:「なんか難しいお薬。毒…じゃないよね?」

桜井:「毒ではないよ。即効性があるから、
    心が安定してきっと破壊意欲も消えるよ。」

陽子:「破壊意欲も消えるのかぁ~。今までのような、楽しみがなくなるんじゃないの?」

桜井:「大丈夫。楽しみは別のことが必ず生まれてくるさ。心配はいらないよ。」
    
桜井:「君は、こんな狭い場所から出て自由に生きてみたくはないかい?」

陽子:「自由?もっと広い世界があるの!?知りたい。行ってみたい。」

桜井:「じゃぁ、破壊欲は消さないと。
    街の人たちを犠牲にするわけにはいかないからね。
    とにかく、飲んでみてくれるかな?」

陽子:「うん!飲んでみるよ。」

ナレ:斎藤陽子の顔からは徐々に殺気が消え、穏やかな笑顔が生まれてきた。

桜井:「世界は広いぞ。自由になれたならそれが実感できる。」

陽子:「自由か。早く広い世界へ出てみたいなあ。」

桜井:「ようやく二人共正気に戻ったようだな。よかった。」

桜井:「ディー、こっちの準備は出来た。そっちはどうだ?」

本田:「えぇ。こっちも準備OKよ。研究所内に、
    ありったけのC4爆弾を仕掛けておいたわ。」

桜井:「よし。じゃぁ時東君も連れて脱出だな。」

研究員M:「うぅ。。ここは…。縛られている!?何が起こっているんだ。
     侵入者か。ケケケッ生きて逃げれると思うな。
     緊急システム作動させなければ!」

(警報音)

桜井:「なんだ!?ディー。何が起こった!」

本田:「ちっ。研究員の奴を生かしたのが間違いだったよ。
    注射の作用は、もう少し長いはずなのに、目を覚ましたようだわ。
    緊急システムを作動させたみたいよ。
    早く外に出ましょ。各区画が閉鎖され、脱出できなくなるわよ。」

桜井:「二人とも、おちおちしている暇がなくなった。走れ!さもないと死ぬぞ。」

瑠奈:「えっ、走るって?死んでしまうの?」

桜井:「こちらとしても不測の事態だ。すまない。」

瑠奈:「お父様は……お父様はどうなるの?」

桜井:「彼は、機密組織サマサのボスで俺たちの敵、所長になれたのも、
    ここの技術を悪用しようと、以前の所長を殺し成り上がった男だ。
    君のお父さんはもう変わってしまったんだ。」

瑠奈:「そんなっ。そんな過去がお父様に!?
    でも、わたくしはお父様を置いては行けません。」

桜井:「これもサマサ解体の為だ。協力してくれ頼む。」

瑠奈:「嫌です。わたくしはお父様を迎えに行きます。」

桜井:「馬鹿な事を言うな。死にたいのか?君たちを死なせるわけにはいかない。」

桜井:「今は、これしか方法がないんだ。急ぐぞ、ついて来い。時間がない。」

ナレ:桜井たちは時東の部屋に向かう。E区画から順に閉鎖されていく。

桜井:「時東君、逃げよう。俺について来い。」

時東:「逃げるって…さっきから警報音が鳴っていたのは訓練じゃなかったのか。
    あと、その子達は?」

桜井:「説明してる時間がないんだ。とにかく走って脱出だ。」

時東:「わかったよ。急ごう。」

本田:「もうすぐ出口よ。急いで。」

桜井:「さぁ、三人とも、もう少しだ。頑張れ。」


早坂:「はーっはっはっは!私も甘く見られたようだな。
    ただの精神科医がなにか勘付いただけと思っていたが、
    まさか、ヴァンナルのボスだとはな。
    ここは通さん。ヴァンナルごと消してやるわ!」

桜井M:「くそっ。もう後ろまで閉鎖された。そうだ!このビームガンでっ。」

ナレ:桜井は早坂をビームガンで撃った。

瑠奈:「お父様!!いやぁー。」

早坂:「無駄だ。無駄な抵抗はやめろ。
    ホログラムに気づかなたったのか。甘いなお前。」

桜井:「ちっ。ホログラムだったのか。このままじゃぁ。打つ手がない」

早坂:「もう全員に用はない。
    ここで、レーザー光線に切り裂かれるがよい。はーはっはっはっはっは。」

瑠奈:「もう、こんな事はやめてっ。お父様!」

早坂:「洗脳が解かれたのか…いくら娘であろうともう用はない。一緒に死ね。」

瑠奈:「本当に…昔のお父様ではないのね。あんなに優しかったのに…さようならお父様。」

桜井:「ディー、光源の場所は特定可能か?光源がわかれば消すことが出来る。」

本田:「今割り出したわ。光源はコンピューター制御で場所がコロコロ変わってるわ。
    右下に来たら合図するから撃って、チャンスは一回よ。」

時東:「レーザーが迫ってくる!急いでくれよ。」

桜井:「まだか、ディー。もう時間が…。」

本田:「今よ!撃って!」


桜井:「成功か!?」

ナレ:早坂の姿は徐々に消えてゆく。

早坂:「光源を割り当てただと!?くそっ!ではこれでどうだ。」

ナレ:早坂が消えた後、マシンガンが桜井たちに狙いを定めた。

桜井:「邪魔だ。これでも食らえ!」

(爆破音)

桜井:「破壊成功。さぁ急いで脱出だ!」

ナレ:桜井たちは、研究所を出てしばらく走り森を抜けた。

桜井:「ここまでは追って来ないだろう。さぁディー爆破だ。」

瑠奈:「お父様、さようなら。」

本田:「ん?作動しない……。」

桜井:「なんだって!?作動しないと意味がない。」

陽子:「それってもしかして電波かな?だとすると…
    電波妨害システムが作動したかな。」

本田:「そんなシステムが実装されていたなんて知らなかったわ。」

ナレ:本田が研究所を眺めると同時に、研究所が爆発した。

(爆発音)

本田:「自爆!?」

ナレ:研究所は跡形もなく砕け散った。

ナレ:数日後、アジトにて。

桜井:「みんな聞いてくれ、
    手がかりがないかと、探索してみたが何も見つからなかった。
    レベリスラボの爆破は、僕たちの手によるものではないことは確かだ。
    遺体も見つからなかった。」

桜井:「さて、奴らはどこに…」

本田:「きっとサマサのアジトに戻ってるんでしょうね。
    研究結果が残ってるとするならば…
    再び研究所が作られ、レベリスラボで
    完成されたものが量産されるのだろう。」

桜井:「それは阻止しなければならない。時東君、君の腕を見込んでのことなのだが、
    君もレジスタンスにならないか?」

時東:「先生、僕、思い出したんです。戦場での記憶や母さんの事も全て。
    悪の陰謀は阻止しなければいけない。
    はい。桜井さんについていきます。」

桜井:「じゃぁ決まりだ。お嬢さんお二人は自由の身だ。
    これから平和に暮らすのもいいだろう。
    安全を保証できるよう、街のメンバーには伝えておこう。どうかな?」

瑠奈:「わたくしは、もう戦争には加担したくありませんので、静かに暮らします。
    安全を保証していただけるのでしたら安心です。
    自由にしていただきありがとうございます。桜井さん、本田さん。」

桜井:「僕たちの使命だからね。礼はいらないよ。で斎藤陽子さんはどうする?」

陽子:「私も、戦争には加わりたくない。
    だから、私は街で、皆のためになる物作りをしていこうと思いました。」

桜井:「そうか皆のための物作りか。いいね。いい職人を紹介するよ。」

陽子:「ありがとうございます。いい腕身に付けます。」

桜井:「いい心意気だ。じゃぁ僕はお二人を街まで送っていくよ。
    その後、メンバーを集めて次の作戦会議といこうじゃないか!」

ナレ:時東は、ヴァンナルに所属し平和への誓いを立てた。
   早坂瑠奈と斎藤陽子は、自由を手にし羽ばたいてゆく。
   これからそれぞれの本当の人生が始まるのだ。
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