円環の理を求め舞い降りた輝けし者


ある日、トレーニングが終わった後に部室に戻ると…

(ガヤガヤ…)

部室の前に4〜5人程の行列が出来ていた。

「………why?」

いや、なんで?チームの部室に行列が出来るなんて事ある?並んでるのほぼ見知らぬ顔だし。

そう考えてるうちに、一人二人と行列が徐々に伸びていく。

………何故だろう、所属チームの部室なのに、行列を無視して入るのが躊躇われるのは。

俺は仕方なく列の最後尾に並び、数分間の居心地の悪さの末に部室のドアの前まで辿り着いた。

…何故だろうか、行列に並んでいる時から薄々感じていたが、ドアの向こうから甘い匂いがする。部室で一体何が起こっているんだろうか?

「次の方、どうぞー」

扉の向こうから聞き慣れたジャックの声がする。俺は意を決して使い慣れたドアを開いた。

ガチャッ

(ガヤガヤ…ガヤガヤ…)

扉を開けた俺の目に飛び込んできたのは、カラフルに中身が敷き詰められた大きなショーケース、いくつもの丸テーブルに座って甘味を頬張るウマ娘達、そして…

「よく来たな!”円環の理(サンサーラ)“を求め舞い降りた”輝けし者(ホルアクティ)“よ!」

「あ、いらっしゃいヤクモちゃん。ご注文をどうぞ」

問:ある日いきなり部室が破壊神とハジケリストの手によって行列の出来るドーナツ屋さんになっていた時の最適な行動を求めよ(配点:10点)

………バタンッ!

「………うん、そうだよね?俺、間違ってないよね?」

答:一度何も見なかった事にして扉を閉め、部屋を間違えていないか確認する

誠に遺憾ながら、ここはアルシオーネの部室で間違い無さそうだ。

そして後ろに並んでる人の『何してるの?入らないの?』と言いたげな視線に押され、もう一度ドアを開ける。

………ガチャッ

「よく来たな!”円環の理(サンサーラ)“を求め…」

「いや、何やってんのギム姐さん」

「まぁ、まずは座りなよ。一名様ご案内でーす!」

やけに似合っているエプロン姿のギム姐さんとジャックが、何事も無かったかのように席まで案内してくれる。

「いや、ジャックが部室で謎の店を開いてるのはまだ百歩譲っていつもの事だから分かるけど、ギム姐さんはなんで店員を…?」

「フッ…破壊神たる俺に天より神罰が下った…聖徒に血肉を分け与えし“神の子(ヨシュア)”のように、ワタシは万人に分け隔て無く愛を捧ぐ…」

「………ジャック、通訳お願い」

「柵を壊しすぎてたづなさんから怒られたから、罰としてボランティア活動してるんだってさ」

「あぁ、なるほど………ちょっと待って?なんでこの店?の店員?がボランティアとして認められてるの?部室を勝手にドーナツ屋さんにするのはたづなさん的にはセーフなの?」

「たづなさんなら、さっきドーナツをいっぱい買って笑顔で帰っていったよ」

「え、えぇ…?」

どうやらたづなさん公認のようだ。
それで良いのかたづなさん。

「さて、ご注文は?おすすめはカラフルチョコドーナツとリングチュロスだよ」

「………おすすめでお願い」

「”輝けし者(ホルアクティ)“よ、汝は如何様にして喉を潤す?」

「ブラックコーヒーで」

「注文入りましたー!」

最早何も分からないし、何も考えないでおこう。うん。美味しいもの食べれるし、それでいいや。

「はい、お待たせ。カラフルチョコドーナツとリングチュロス、そして最高等級のブルーマウンテンだよ」

「は?………は???………ちなみにお値段は?」

「タダだよ」

「………(歓喜)(驚愕)(困惑)(恐怖)(ドン引き)(申し訳無さ)(感情のオーバーフロー)(そして考えるのをやめた)………ありがとう」

こうして、俺はトレーニング終わりのブレイクタイムを楽しむのであった。

ヤクモノヒカゲの体力が30回復した!
ヤクモノヒカゲのやる気が上がった!
ヤクモノヒカゲのスキルptが20上がった!
ヤクモノヒカゲの賢さが5下がった!


ネハンジャクジョウ
事ある毎に部室をお店に改装するやべーやつ。
彼女の作る料理は一見庶民的なように見えて、素材と製法の妥協が一切無い至高の逸品。
それを大人達はともかく生徒達には毎回タダでお出ししているので誰がどう見ても大赤字なのだが、果たして大丈夫なのだろうか?(ヒント:究極のラーメン)

タニノギムレット
事ある毎に柵を蹴り壊して自分で修理するやべーやつ。
普段からバーで働いているのでホールスタッフとしての動きは一流そのものであり、全ての所作が完璧である。
…たまに何を言っているのか分からない事を除けば。

ヤクモノヒカゲ
タニノギムレットと仲が良いらしい。
感情がオーバーフローして考えるのをやめた。
ドーナツおいしいね。コーヒーおいしいね。
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