バディもの(3)


『南』と名乗った男は、少しだけ笑って首を傾げた。
「・・・あいつ、どう考えても、普通でもまともでもないでしょ? なにがなんでも息子さんの死の真相を知りたかったんじゃないの、グリュック様としては?」
グリュックは男をにらみ返した。そんな場合ではないのに、なぜか、やたらに腹がたっていた。
「ー 息子は ー 息子は死んだ。でも、あれはまだ生きている。私はあれを売ったりはせんぞ! ふざけるな!」
『南』と名乗った男は、少しだけ笑って首を傾げた。
「ファイナルアンサー?」
グリュックは男をにらみ返した。そんな場合ではないのに、なぜか、やたらに腹がたっていた。
「ああ、その通りだ!」
そうすると、男は、なぜか疲れたような笑みで、今乗っているバンの運転席のほうをみた。
「ー だってさ。まあ、それでも、お前さんは納得できないんだろうけど。・・・ああそうだ、そろそろ、バンを止めないとヤバいぞ」
そうして男は、グリュックに向き直った。にいっと、好戦的に笑う。
「シュラハトのやつ、あんたんとこのあのオーガをけしかけやがった!」
運転席の男は、なにかを怒鳴ろうとしていたが、言葉になっていなかった。バンが急停車して、頭をぶつけたグリュックがうめく。

ー そうして。バンの外に、緋色のオーガが現れた。

それは、マハトなのに、いつも見ているマハトではなかった。
目は金色に輝き、動きは猛獣のそれ。緋色の髪は、なぜか、風もふいていないのにうねっているように思えた。
「・・・グルルルルルル・・・」
「ああもう、シュラハトのやつ・・・おい、ゲオルグ、動くな、あんな状態でも不死身ってわけじゃないんだ、せがれを〇したいわけじゃないだろうが! うつんじゃなああい!」
ちょび髭の男が叫ぶ。
・・・ゲオルグ。マハトの父がそんな名前だったはず。そして、さっきまで運転していた男には、たしかに、見覚えがあった。
そうして『南』は ー そこでグリュックを抱え上げ、ドンっとバンの外に突き落とした!
「ほらよっ! こいつを回収しにきたんだろう、デカ猫ちゃんや?」

先ほどから、ゲオルグのほうをみて少し嫌そうな顔をしていたマハトが、グリュックをみてさらに目を輝かせた。
「・・・・・・ぐるるるるるるる・・・・・・・」
うれしそうに笑っている。マハトの口のなかに存在しない牙がかいま見えて、グリュックは自分の正気を疑いたくなった。
でも、自分のなかのなにかが動いている。こうしろと、指し示している。

「マハト。ひざまずきなさい」

マハトの父親がなにかわめいていたが、とりあえず無視した。
マハトが、さらに目を金色にかがやかせ、顔をよせてくる。
「・・・よしよし。でも、まずは、ひざまずいてくれ」
「・・・・・・・ぐるるるるるる」
笑顔ですとんとひざまずいたマハトをみて、なぜか笑ってしまった。よしよし、これで大丈夫だ。
とりあえず、マハトの頭をなでた。
「・・・では、家まで、連れて帰ってくれ。わたしは家に帰りたい」
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