いなくなるのは許さない


 昼を過ぎ、太陽も傾いてこようかという頃。風にあたっていたクロコダイルへ影が落ちた。
 水兵帽を被り、新聞の入った鞄を引っさげたカモメ。新聞配達に勤しんでいるニュース・クーの影だ。
 見上げたクロコダイルからの合図を受けたニュース・クーは、ゆっくり旋回しながら下降した。

「ご苦労」

 クロコダイルが新聞を受け取ると、ニュース・クーは「クー!」と元気よく鳴いた。
 そのままニュース・クーが羽ばたくのを見送って、クロコダイルは視線を紙面に移した。と、同時に咥えていた葉巻は支えを無くして落下する。

「おい、これは何の冗談だ」

 眉間の皺を深くしたクロコダイルは誰に問うでもなく口に出した。
 そこには「神斬鋏の処刑決定」の文字があった。

「……あの馬鹿、最近顔を出さねぇと思ったら」

 新聞をキツく握りしめたクロコダイルは、カツカツと木製の床を踏み鳴らしながら自室に戻り、すぐにまた部屋を出た。
 その途中、タイミング良くダズがいたので指示を出す。

「航路の変更だ。甲板に出て準備をしておけ」
「……分かりました」

 ダズが何かを言いたげに留まったのを見て、クロコダイルは自身も歩みを止め振り返った。

「取り返しに行くだけだ。他人に踏み荒らされるのは癪だからな」

 そう言ったクロコダイルの手からは砂が零れ落ちていた。
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