いなくなるのは許さない
作成日時: 2024-03-07 22:57:42
公開終了: -
昼を過ぎ、太陽も傾いてこようかという頃。風にあたっていたクロコダイルへ影が落ちた。
水兵帽を被り、新聞の入った鞄を引っさげたカモメ。新聞配達に勤しんでいるニュース・クーの影だ。
見上げたクロコダイルからの合図を受けたニュース・クーは、ゆっくり旋回しながら下降した。
「ご苦労」
クロコダイルが新聞を受け取ると、ニュース・クーは「クー!」と元気よく鳴いた。
そのままニュース・クーが羽ばたくのを見送って、クロコダイルは視線を紙面に移した。と、同時に咥えていた葉巻は支えを無くして落下する。
「おい、これは何の冗談だ」
眉間の皺を深くしたクロコダイルは誰に問うでもなく口に出した。
そこには「神斬鋏の処刑決定」の文字があった。
「……あの馬鹿、最近顔を出さねぇと思ったら」
新聞をキツく握りしめたクロコダイルは、カツカツと木製の床を踏み鳴らしながら自室に戻り、すぐにまた部屋を出た。
その途中、タイミング良くダズがいたので指示を出す。
「航路の変更だ。甲板に出て準備をしておけ」
「……分かりました」
ダズが何かを言いたげに留まったのを見て、クロコダイルは自身も歩みを止め振り返った。
「取り返しに行くだけだ。他人に踏み荒らされるのは癪だからな」
そう言ったクロコダイルの手からは砂が零れ落ちていた。
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