バック・ドロップ・ギア　4話

バックドロップ・ギア　4話

■比率　♂３：４♀

※比率は目安です。全員の負担が少なくなる比率を記載しております。

□役表□

〇斉藤玲児♂(さいとうれいじ)２０代後半
　元暴力団担当の刑事。過去に闇を抱えているタイプの主人公。
　高身長のイケメンをイメージして演技してもらえると。


〇白塚 澪♀(しらつかみお)２０代前半
　ふわふわしたOL。素直で穏やか。
　清楚系王道ヒロイン。
　綺麗で可愛い私立大学のテニサーにいる感じをイメージして演技してもらえると。

〇佐山 茜♀(さやまあかね)
　元レディース暴走族総長。
　口が悪いがちょろい。可愛い。玲児の同級生。
　田舎のヤンキーをイメージして演技してもらえると。

〇安藤♂２０歳から２３歳くらい
　ネオン街のキャッチ。態度と口調が軽い。
　玲児とは昔から仲が良い
　
〇櫻田♂　※兼可
　「白金組」構成員。組長に忠誠を誓い仁義を重んじる。
　　若いので言動に軽さがあるが組長からの信頼は厚い。

〇暮葉咲良♀(くれはさくら)22歳
　青葉教会のシスター。
　引っ込み思案で照れ屋。可愛い。

・若頭
　白金の友人の息子
　古いタイプのオタク

・牧師
　カタコト外国人

・司会
　婚活パーティーの司会

・男
　建設現場の作業員

・瀬良
　ちょっとだけでてきます

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OP

◇アメイジンググレイスが流れる
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ケータイの液晶に映る文字

「あなたのこともっと知りたいな」
「僕もです！」
「お互いのことがわかったらお食事でもいきませんか？」
<ポイントがなくなりました>
<1000ポイント追加しました>

「よかったら、今度お食事にいきませんか？」
「ごめんなさい、もっとメッセージのやり取りをしてからのほうが私も安心できます」
「そ、そうですか。わかりました！」
<ポイントがなくなりました>
<1000ポイント追加しました>

<ポイントがなくなりました>
<5000ポイント追加しました>

<ポイントがなくなりました>
<10000ポイント追加しました>

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

暮葉　もうこんなことしなくていい？
　　　もう、遅いよ・・・。

4話

◆教会
◇牧師の前に並ぶ白塚と斉藤、ウエディングドレスとタキシードを着ている

牧師　新郎、汝は健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、
　　　これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか？
斉藤　は、はい
牧師　新婦、汝もその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか？
白塚　はい
牧師　それでは、誓いのキスを・・・
白塚　はい
斉藤　は・・・は。はひっ(声が裏返る)

安藤　カット！カット！カット！！！！

白塚　もう！斉藤さんっ！
安藤　何回めのNGですか？マジでいい加減にしてくださいよー。
斉藤　すまん・・・
安藤　いいっすか？婚活パーティーイベントのPVなんですよ。
　　　結婚したいなー、良い出会いがあったらいいなーって思ってもらわないと参加者増えないわけですよ！
白塚　もしかして、私が新婦役だから気持ちが乗らないとか？もっと可愛い人のほうがテンション上がりますよね？
安藤　そんなわけないじゃないですか！！白塚さんは俺的嫁にしたい女性ランキングで殿堂入りを果たしてるんですよ！？
斉藤　なんだ、そのランキング・・・。いや、違うんです。白塚さんが悪いわけではない・・・、いや正確には白塚さんが原因なんですが・・・
白塚　やっぱりそうなんですね！？
斉藤　白塚さんが新婦なのはすごく嬉しいですよ！？でも、その、嬉しすぎるというか・・・
白塚　？
安藤　実際キスするわけでもないし。顔近づけるだけですよ？
牧師　カエッテｲｲﾃﾞｽｶ？
安藤　あぁ、アンディさん。もうあがりの時間か・・・。
牧師　オツカレサマデス
安藤　お疲れさまです。もぉー！どうすんすか、レイジさん！アンディさん帰っちゃったじゃないっすかー！
斉藤　大体、誰なんだよあの人。
安藤　うちのアルバイトっす！
斉藤　国際色豊かなんだな。
白塚　私もそろそろお店戻らないと。
安藤　あぁ、もうそんな時間すか・・・
斉藤　すまん・・・
安藤　はぁー。このままだとPV作れないじゃないっすかー
白塚　まぁまぁ、安藤さん。また、声かけてもらえたらお手伝いしますよ？
安藤　ありがとうございます！やっぱ白塚さんは天使ですね！マイスイートエンジェル！！
白塚　ふふふ、連絡まってますね。
斉藤　お疲れさまでした・・・

◇白塚　退場


安藤　あ、もう教会返さなきゃいけない時間だ・・・

◇庭からアメイジンググレイスが聴こえてくる。

斉藤　うめぇーな
安藤　すごい綺麗な声ですねー
斉藤　あ、俺もいかないと、掃除の時間だ。
安藤　そうっすか。じゃあ、また連絡します。

◇歌声に釘付けになる安藤。歌声の主を探す。歌っている女性を見つける。
◇暮葉登場。安藤に気付く。

暮葉　あ・・・(恥ずかしそうに)
安藤　綺麗な声ですね・・・
暮葉　あ、ありがとうございます
安藤　歌手なんですか？
暮葉　あ、えーっと。ここで働いてて・・・
安藤　シスターさん？
暮葉　ま、まぁ、そんな感じです。
安藤　だからそんなに歌上手なんですねー！
暮葉　そ、そんなことないです。
安藤　すごく感動しました。いや、感動っていうか心が洗われるというか、なんつーか。
暮葉　そんなそんな・・・
安藤　とにかく！好きです！
暮葉　ふぇ！？
安藤　その歌声！
暮葉　あ、歌・・・
安藤　もっと聴かせてください！！
暮葉　今からお祈りの時間なので・・・
安藤　じゃあ、また今度！
暮葉　え！？
安藤　来週も撮影に来るので！その時に！！じゃあ俺仕事の時間なので！
暮葉　え！？ちょっと！？
安藤　また来週！！


◆喫茶大場　前　次の日
◇掃除をしている斉藤。ぼーっと歩く安藤登場

斉藤　・・・。よぉ。
安藤　ざーっす
斉藤　お前の店の名前また変わったのか？
安藤　っすねー
斉藤　「揉み坂４６」ってもう、これ秋本先生に怒られるだろ。
安藤　っすねー
斉藤　どした？随分元気ねーな。
安藤　レイジさん。恋ってなんすか？
斉藤　は？
安藤　俺、綺麗な人たくさん見てきました。
斉藤　お、おう
安藤　店の子とか、白塚さんとか
斉藤　うん・・・
安藤　でも、こんな気持ちになったのは初めてで
斉藤　この間のシスターさんか・・・？
　　　あれから撮影もしないのに毎日のように通ってたのはそれでか？
安藤　レイジさん。恋ってなんですか？
斉藤　話が戻ってきた・・・
安藤　どうしたらいいっすか？俺。
斉藤　俺に聞くか？それ。
安藤　はぁ・・・
斉藤　ため息は下手な言葉よりも人を傷つけるんだぞ？
安藤　仕事戻ります・・・
斉藤　なんだ？あいつ。

◆教会
◇数日後

安藤　こんにちは
暮葉　こんにちは。毎日お疲れさまです。あれ？今日は撮影なさらないんですか？
安藤　はい。もうあの大根役者には頼まないことにしました!
暮葉　ふふふ。毎回怒られていましたもんね。
安藤　大きな桜ですね。
暮葉　大きいですよねー。この教会ができた時に植えられたらしいですよ？
安藤　へぇー。あ、桜の花言葉、知ってます？
暮葉　花言葉・・・ですか？
安藤　「純潔」です。
暮葉　純潔・・・。
安藤　暮葉さんにぴったりですね
暮葉　純潔か・・・。(暗い表情、安藤の声も耳に入らない)
安藤　暮葉さん？
暮葉　は、はい？
安藤　どうしたんですか？ぼーっとして。
暮葉　いえ、なんでもないですよ！安藤さんって意外とロマンチストなんですね？
安藤　ははは、おばあちゃんに教えてもらったんです。おばあちゃんちの近所にあった公園もこんな桜があって。
暮葉　そうだったんですね。
安藤　あ、そういえば。暮葉さんはいつも教会にいますけど、おうちはこの辺なんですか？
暮葉　え？おうちはここですよ？
安藤　シスターさんって住み込みなんですか！？
暮葉　というよりもここが私の実家なんです。父も母も熱心なキリシタンで、私も学校以外は教会から出たことがないんです。
　　　でも、この辺の再開発でこの教会も取壊しが決まったみたいで。
安藤　教会も取り壊されたりするんですね・・・
暮葉　元々、この教会は寄付金やボランティアの人たちのおかげで成り立っていたんですけど、
　　　最近はそうもいかなくなってしまって。父は元々サラリーマンをやりながら牧師をやってたので生活は大丈夫なんですけど
　　　両親には物心ついた時からここのシスターになるよう言われていたのですが、突然自分のの好きに進路を決めていいって・・・
　　　急に自由だよって言われても、何をしたらいいのかわからないですよね(笑いながら)
安藤　・・・。じゃ、じゃあ！遊びに行きましょうよ！
暮葉　え？
安藤　遊びにでかけていろんなものを見たらなにかやりたいことが見つかるかもしれないじゃないですか！
暮葉　な、なるほど・・・
安藤　うんうん！どっか行ってみたいとことかあります？連れていきますよ！
暮葉　じゃあ・・・

◆青葉グランドホテル　入口
◇スーツ姿の斉藤、櫻田

斉藤　で、なんでこうなった？
櫻田　・・・

◇白塚・佐山登場

白塚　斉藤さーーーん！
佐山　ういー
白塚　みんなでサクラ！頑張りましょうね！！
斉藤　あんまり大きい声で言わないほうがいいと思うんですが！？
佐山　タダ酒！タダ飯！！
斉藤　はぁ・・・


◇回想

安藤　ということなんで！お願いします！！
斉藤　いやいや、サクラはまずいだろ・・・
安藤　仕方ないじゃないですか、大体PV作れなかったのは誰のせいだと思ってるんですか？
斉藤　うっ・・・
安藤　他にも何人か声かけておいたんで、よろしくお願いします！
斉藤　ちょっとまて？お前は来ないのか？
安藤　大事な予定ができまして！！
斉藤　はぁ！？

◇回想終了

斉藤　(溜息)とりあえず・・・。一応正規の参加者もいるみたいですし、目立たないようにしましょう
白塚　そうですね！
佐山　タダ酒！タダ飯！！

櫻田　レイジさん。
斉藤　はい？
櫻田　実は今日のパーティにうちが仲良くしてる組の若頭が参加しておりまして
斉藤　はぁ・・・？
櫻田　おじきとそこの組の頭は同級生で仲が良いんですが若頭は引きこもりでして。
斉藤　なぜ、婚活パーティに？
櫻田　社会勉強だそうです。俺にこの話を安藤さんが持ってきたときにおじきから言われたんですが
斉藤　嫌な予感がする・・・
櫻田　何がなんでも若頭に楽しい思いをさせて引きこもりから脱却させろと。
斉藤　勘弁してくださいよ・・・
櫻田　ちなみに若頭はアニメとゲーム好きのいわゆるオタクってやつですね。
斉藤　俺らにそういうの詳しいやついないけど大丈夫なんですかね？
櫻田　とにかく失敗したら落とし前はつけてもらうとのことでした
斉藤　完全に巻き込み事故なんだが？！


◆松島駅
◇駅前で待つ安藤、遅れてくる暮葉

暮葉　すみません！お待たせしました！！
安藤　おはようございます！
暮葉　結構待ちましたか？
安藤　いえいえ！自分も今着いたところですので！
暮葉　ふふふ
安藤　え？
暮葉　ドラマみたいだなって
安藤　確かに
暮葉　行きましょうか！

◆青葉グランドホテル

司会　それではランダム3対3のお時間となりましたので自分の番号が書かれた席へご移動くださーい！

◇斉藤、櫻田、若頭が並ぶ、向かい合う白塚、佐山、マユ

斉藤　明らかに意図的に作られたランダムなんですが？？？(小声)
櫻田　おじきが安藤さんにお願いしたみたいです(小声)
斉藤　もう一人の女性は？(小声)
櫻田　安藤さんのお店の子みたいですね(小声)
斉藤　サクラしかいねーじゃねーか!(小声)

司会　それではコミュニケーションタイムスタートです！

斉藤　え、えーっと・・・自己紹介でもしましょうか！
櫻田　そ、そうですね！
斉藤　じゃあ私から、名前は斉藤と申します。現在はその、えーっと、就職活動中でして・・・
マユ　へー！じゃあ今は無職なんですねー！
斉藤　うっ・・・
櫻田　出だしから心折れかかってるじゃないですか！しっかりしてください！(小声)
佐山　すみませーん！ビールおかわりでおねがいします！
白塚　わたしもおねがいします！
斉藤　はぁ・・・
櫻田　じ、じゃあ、俺も自己紹介しますね！名前は櫻田と申しまして、仕事は、えーっとその、金融関係で・・・
斉藤　はぁ・・・。俺は無職・・・。
櫻田　まだ落ち込んでるし(小声)
　　　えーっと、では(若頭のほうを見る)
若頭　あ、え、あの、その・・・。僕は田中と申します。僕もこの人と同じで仕事をしてません。
マユ　へー！お兄さんも無職なんですねー！すごーい！無職ばっかりだー！
若頭・斉藤　はぁ・・・。
櫻田　この女ぁ！どうすんだよこの空気！斉藤さんも心折れてるし・・・(小声)
佐山　すみませーん！ビールおかわりでおねがいします！
白塚　わたしもおねがいします！
櫻田　そ、そうだ、この状況を打破するには女性の力が必要だ。頼むぞ盛り上がる自己紹介をしてくれ！(小声)
　　　じ、じゃあ、女性のみなさんも自己紹介お願いしてもいいですか？

◇佐山、白塚はもう完全に酔っぱらっている

佐山　あ？あー、そうだった。佐山って言います！仕事はオタクから金を巻き上げてまーす！
櫻田　おいおいおいおい！(小声)
白塚　わたひはしらちゅかっていいましゅ！仕事はメイドしたりサクラしたりでしゅ！
櫻田　完全に終わった・・・(小声)
若頭　・・・い、いま、なんと？
櫻田　グッバイ、俺の小指・・・
白塚　メイドにサクラでーす！
若頭　メイド忍者サクラ！？
櫻田　ん？
若頭　メイド忍者サクラでござるか！？
白塚　ふぇ？うーん？うん？
若頭　やはりそうでござったか！一目見た時から似ていると思っていたでござるよ！
　　　レイヤーさんでござったかー！！
白塚　レイヤー？
櫻田　何か奇跡が起きてないか？
若頭　拙者、メイド忍者サクラからどっぷり深夜アニメにはまったものでござりまして。
　　　ブルーレイはもちろんのこと、劇場版も5回見たでござるよー！
　　　いやー、作画は確かにアニメ版のほうが良いという古参ファンが多かったものの
　　　やはりテレビシリーズ終了から3年の月日を費やして作られた劇場版はかなりのクオリティでありまして。
　　　拙者はやはり劇場版のほうが好きでござるなー！
　　　は！？もしかして隣のお方はメイド忍者カネマキのレイヤーさんでござるか！？
佐山　あ？うるせーな！お前も飲め！！
若頭　やはりそうでござったかー！「うるせーな！」はカネマキのキメセリフでござるものなー！
櫻田　奇跡が何度も起きてる！？
マユ　ちょっとまって？田中さん。
櫻田　お前は黙ってろ！せっかく良い感じなんだから！！(小声)
マユ　劇場版のほうがいいですって？これだから新参者は・・・
櫻田　知ってたー！！
マユ　あのね？いい？メイド忍者サクラの本質は・・・

◆松島水族館
◇水槽の前に立つ暮葉、安藤

暮葉　わぁ・・・
安藤　すごいっすねー
暮葉　安藤さんは初めて来たんですか？
安藤　いえ、小さいときに両親に連れられて来たことがあります。
暮葉　ふふふ、小さい安藤さん。
安藤　え？
暮葉　いえ、想像したら面白くて。
安藤　バカにしてます？(笑いながら)
暮葉　いえ、そうじゃないんです。誰にでも過去はあるんですよね。
安藤　？
暮葉　安藤さんが好きだって言ってくれた曲
安藤　アメイジンググレイス！
暮葉　あの曲の詞を書いた人、ジョン・ニュートンって言うんですけど。職業はなんだったと思います？
安藤　え？それはやっぱり詞を作った人だから・・・作詞家とかではないんですか？
暮葉　残念、不正解です！正解は・・・奴隷商人です。
安藤　え？
暮葉　ふふふ、びっくりしますよね。私も母からこの話を聞いた時はすごくびっくりしました。
安藤　でも、なんで・・・
暮葉　彼は輸送の途中に疫病や飢餓で死んでいく奴隷たちを見て改心して、アメイジンググレイスを作詞したんです。
安藤　そうだったんですね。
暮葉　だからこの曲は懺悔の歌なんです。
安藤　歌詞なんて気にしたことがなかったです。暮葉さんの歌声ばっかりで。
暮葉　・・・。そろそろ帰りましょうか！
安藤　そうですね！

◇歩き出す安藤、動き出さない暮葉

暮葉　あの、安藤さん？
安藤　はい？
暮葉　・・・。いいえ、なんでもないです！とても楽しい思い出ができました。ほんとにすごく、すごく楽しかったです！
安藤　俺もです！
暮葉　ありがとうございました。
安藤　なんか、最期の挨拶みたいになってますよ？
暮葉　・・・
安藤　暮葉さんが嫌じゃなかったら、またどこか行きましょうね！
暮葉　・・・・・・・。はい。
安藤　？

◆青葉グランドホテル

マユ　劇場版では監督すら変わっているのよ！？これはもう別の作品なの！わかる？
若頭　新しいものを受け入れることこそが今後のメイド忍者サクラの発展に繋がるというのがマユ殿にはわからないでござるか！？

司会　それではそろそろパーティを終了いたします！気になる方がいましたら一対一のお誘いなどを・・・

マユ　田中さん！
若頭　マユ殿！　◇同時

司会　さっそくあちらではカップルが成立したみたいですねー！おめでとうございます！

斉藤　俺が落ち込んでいるうちにすっかり仲良くなったみたいだな
櫻田　はい。なんとかなりましたね。ほんとはもう一つ仕事があったんですが・・・
斉藤　もう一つ？
櫻田　最近婚活サイト経由で詐欺まがいの被害にあってるうちの債権者がいましてね。
　　　こういう婚活パーティに参加してサイトでやり取りしようって声をかけるんです。
　　　そのサイトはメッセージのやり取りに有料のポイントがかかるんですが、メッセージでダラダラやり取りして
　　　その買わせたポイントの何パーセントかをサイトの運営会社からもらってるっていうわけですね。いわゆるサクラってやつです。
　　　うちの債権者は独身の男が多いんで何人か引っかかってるんですよ。それに犯人は随分と美人みたいでしてね。
斉藤　なるほど。
櫻田　こっちは犯人もわかってますんで軽く圧かけるだけでよかったんですが・・・どうやら今日は来てないみたいですね
斉藤　どんな奴なんだ？
櫻田　シスターです。潰れそうな教会を立て直すためにやらされてるって情報は掴んでまして。
　　　犯罪じゃないから余計にタチがわりぃんですよね。とにかく、うちに返すはずの金がそっちに流れるのは困りますんで。
斉藤　シスター・・・
櫻田　なんか知ってるんですか？
斉藤　その教会って青葉教会ってとこじゃないですか？
櫻田　えぇーっと、確かそんな名前だったような。
斉藤　・・・
白塚　うっ・・・吐きそう・・・
斉藤　白塚さん！？


◆夜道
◇白塚をおんぶして歩く斉藤。まだ酔っている白塚。

白塚　すみません、こんな・・・
斉藤　いえ、気になさらずに。

間

白塚　また、何か考えてるんですかー？
斉藤　え？
白塚　自分が困っててもそんな顔しないのに、誰かが困ってるとその顔しますよねー、斉藤さん。
斉藤　そうですかね・・・？
白塚　はい。いつも見てるのでわかりますよ？
斉藤　え！？
白塚　いーっつも見てますよ？私も店長も、安藤さんも斉藤さんのことが大好きだから。
斉藤　そ、そうなんですかねー？
白塚　そうですよー？だからもっと頼ってください。信じてください。
斉藤　はい・・・。
白塚　今の返事には気持ちがこもってませんでした。まだ信じられないですか？
斉藤　いえ、そういうわけではないんですが・・・
白塚　むぅ・・・。
斉藤　え？
◇斉藤の背中から降りて手を掴み振り向かせる白塚

白塚　斉藤さんのこと、みんな大好きなんですよ？
斉藤　え、あ、は、え(どぎまぎしてください)
白塚　私が一番好きですけどね？

◇引き寄せてキスをする白塚

白塚　これで信じられました？

間

斉藤　し、信じます。

◆教会
◇数日後、教会を訪れた安藤、作業服姿の男が近づいてくる。

安藤　あれ？誰もいない・・・？
男　　どうかしましたかー？
安藤　あの、この教会・・・
男　　あぁ、資金難で取壊しですよ。建物もだいぶ古いですし、解体業者の我々も結構困ってるんですよ。
安藤　そうですか・・・
男　　関係者の方ですか？
安藤　いえ、そうではないのですが・・・



◆喫茶大場　前
◇ぼーっとしている斉藤

◇回想
白塚　助けてもらった時からずっと好きだったんです。
斉藤　お、俺も初めて声を聴いた時から好きでした・・・
白塚　ふふふ、じゃあこれからは二人で就活頑張りましょうね？
斉藤　はい！
◇回想終了

斉藤　ふ、ふへへ・・・
櫻田　こんにちは、レイジさん。
斉藤　おわっ！びっくりした！
櫻田　この間の話なんですが。
斉藤　シスターの話ですか？
櫻田　はい。斉藤さん気になっていたみたいなので。
斉藤　ま、まぁ・・・
櫻田　やっぱりあの女、黒でした。ほんとはこの間のパーティーで現場を押さえたかったんですが。
斉藤　そうですか・・・

◇安藤登場、二人は安藤に気付いていない

櫻田　教会を立て直すために父親からやらされてたみたいです。
　　　しかし、シスターみたいな職業の人でもお金のためになればそういうことしちゃうんですね。
安藤　どういうことですか？
斉藤　安藤・・・
櫻田　青葉教会ってとこのシスターが婚活サイトで詐欺まがいのことをしてたんです。ひでぇ話ですよね。
斉藤　櫻田さん・・・
安藤　暮葉さんが・・・？
櫻田　？
安藤　レイジさん、どうしてずっと黙ってたんですか・・・
斉藤　それは・・・
安藤　お得意の捜査ですか・・・
斉藤　そうじゃない！
安藤　くっそ！こんな時ばっかり刑事気どりかよ！
◇走り出す安藤　　　
斉藤　おい！どこ行くんだ！

櫻田　すみません、俺。なんかまずいことを・・・
斉藤　いや、櫻田さんは悪くないです。なかなか言い出せなかった俺が悪いんです。

◇教会へ向かう安藤

◇回想
暮葉　純潔か・・・

暮葉　懺悔の歌なんです

暮葉　とても楽しい思い出ができました。
◇回想終了

安藤　くそっ、なんで暮葉さんが苦しんでるのを気付いてやれなかったんだ！
　　　くそ！くそ！くそ！！！！

◆教会
◇桜の木の下で半分取り壊された教会を見つめる暮葉

安藤　はぁはぁ。暮葉さん！！
暮葉　安藤さん！？
安藤　よかった、やっと会えた。
暮葉　すみません連絡もしないで・・・。
　　　後継者がいない教会を継がないかって言ってくださる方がいて家族でそちらに引っ越すことになったんです。
安藤　そうだったんですね
暮葉　それで、ばたばたしてて・・・　　　
安藤　俺も話したいことがあって。
暮葉　・・・。
安藤　全部聞きました。暮葉さんがやってたこと。
暮葉　・・・。そうですか。
安藤　・・・
暮葉　最低ですよね。人の好意に付け込んで・・・。
安藤　最低だと思います。
暮葉　・・・。
安藤　暮葉さん・・・。ジョン・ニュートンはどうして奴隷商人になったか知ってますか？
暮葉　え？
安藤　父親が奴隷商人だったからです。彼は家業を手伝うために奴隷船に乗ったんです。
暮葉　知らなかった・・・
安藤　暮葉さんが教えてくれた後気になって調べたんです。
　　　たしかに、彼がやったことは家のためとはいえ許されることじゃないのかもしれない。
　　　けれど最後には改心してあんなに美しい歌詞を書いたじゃないですか！
　　　暮葉さんがやったことも家のためとはいえダメなことだったのかもしれないけど！
　　　それでもあんなに美しい歌声で歌えるじゃないですか！！
　　　懺悔の気持ちでもいい、後悔の気持ちでもいい！新しい教会に行っても、歌うのを辞めないでください。
　　　暮葉さんの歌、大好きです。
暮葉　ありがとうございます


間

暮葉　じゃあ、そろそろ行きますね。
安藤　はい。
暮葉　メールしますね？
安藤　ジョン・ニュートンは奴隷商人をやめるときに自分で奴隷船を沈めたんです。
暮葉　え？
安藤　メールはやめて、手紙にしませんか？
暮葉　・・・。はい！
安藤　じゃあ、さようなら！
暮葉　あ、そういえば。私も気になって調べたことがあるんです！
安藤　え？
暮葉　桜の花言葉。もう一つあるんですよ？
安藤　そうなんですか？
暮葉　はい！「私を忘れないで」です。

4話「サクラ」


ed
◆喫茶大場　前
◇掃除をしている斉藤、歩いてくる安藤

安藤　この間はあんなこと言ってすみませんでした。
斉藤　・・・。いや、俺もすぐに教えたらよかったんだ。悪かった。
安藤　もういっこ謝ることありませんか？
斉藤　へ？
安藤　白塚さんのことですよ！！！！なんすか！いつの間に付き合ったんすか！！無職のくせに！！！！
斉藤　誰から聞いたんだよ！
安藤　白塚さんですよ！くっそ！俺のスイートエンジェルを奪いやがって！！
斉藤　いつからお前の天使になったんだよ・・・

◇瀬良登場

斉藤　瀬良さん・・・。
瀬良　斉藤、もう遊んでる場合じゃなくなったぞ。
斉藤　俺は刑事を辞めました・・・
瀬良　白金組が襲撃された。
斉藤　！？
瀬良　いい加減逃げるのはやめろ、斉藤。あの事件は。まだ終わってねーんだよ。


END