「我が輩は紳士な猫である」


題名:我が輩は紳士な猫である 作者:草壁ツノ

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<登場人物>
猫王子:不問 猫の国の王子様。妻を探すため人間界に来た。キザな性格。感情が高ぶると猫語が出る。
女の子:女性 猫王子と出会った人間の女の子。高校生ぐらい。タカシに恋をしている。穏やかな性格。
タカシ:男性 少女が恋をしている男性。(※台詞が少ないです)チャラついている。
子供:男性 猫王子にちょっかいを出す子供。(※台詞が少ないです)
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<役表>
猫王子:不問
少女:女性
タカシ+子供:男性
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■注意点
猫王子の役は途中、人間に変身するシーンがあります。
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■利用規約
・過度なアドリブはご遠慮下さい。
・作中のキャラクターの性別変更はご遠慮下さい。
・設定した人数以下、人数以上で使用はご遠慮下さい。(5人用台本を1人で行うなど)
・不問役は演者の性別を問わず使っていただけます。
・両声の方で、「男性が女性役」「女性が男性役」を演じても構いません。
 その際は他の参加者の方に許可を取った上でお願いします。
・営利目的での無許可での利用は禁止しております。希望される場合は事前にご連絡下さい。
・台本の感想、ご意見は Twitter:https://twitter.com/1119ds 草壁ツノまで
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※少女の目の前に、直立する猫が立っている。

猫王子「私の名前はカルカン。カルカン・ドライフーズ・タマラン。
    ふふ、何を隠そう私はマンチカン族の第一王子。
    猫の国の中でもこのピンと立った長いヒゲは私のほかにはあり得ない。
    皆が私の元に傅(かしず)いて、みな、おやつの魚を私の前に差し出す。
    私ほど高貴なこの三毛の模様は見たことが無いだろう。
    特に三毛の雄!これ程高貴な猫はこの世にいるまい......」

女の子「は、はぁ......」

猫王子「おや。これはずいぶんと察しが悪いお嬢さんだ。ふふ。
    まぁ私は心が広い。私の心は猫の尾のように長く、
    猫の鳴き声のように軽やかに、そして猫の香箱座り(こうばこずわり)のように優雅な佇まい。
    さぁさぁさぁ、こんな私が来た理由、それを君に話そう。
    さて、どこから話そうか......おおそうだ。
    私は今回マンチカン族の第一王子として君の元に現れた。その理由は分かるかい?」

女の子「り、理由ですか......? ご、ごめんなさい。わからないです」

猫王子「おお~。それではお聞かせしんぜよう。
    私が今回人間の街に、君の元に現れたのはずばり、君を妃(きさき)にするためだ。
    人間の女性を、わが猫の国へ案内し、私の妻とするために、今回こうしてはせ参じた。
    どうかな? 悪い話ではないだろう?」

女の子「......えっと、夢でも見ているんですかね。私、喋る猫さんにプロポーズされてる......」

猫王子「夢ではない。現に私はこうしてここにいる。この毛皮の触り心地、実際に試してみるかい?」

女の子「......わ、ほんとにふわふわだ......夢じゃない......」

猫王子「そうだろう。ここは夢じゃないし、私も至って大真面目だ。で、君の返事を聞かせてくれないかな。まぁもちろん――」

女の子「えっと。お断りします」

猫王子「......ん、ん? 今、なんと。何と言ったのかな。
    いや、すまないな。どうもこちらの人間界の国は騒音が多くて、いささか耳が悪くなってしまったようだ。
    もう一度、もう一度だけ聞かせて貰えるかな」

女の子「すみません。ごめんなさい」
 
猫王子「ニャ? ニャア?! なんでニャ、なんで駄目なんだニャア?!」

女の子「お、落ち着いて。猫さん。急に喋りかたが」

猫王子「ん?! んんん。す、すまない。と、ところで。何故なんだい。理由を聞かせてくれないかな」

女の子「そ、それは。私は人間だし。あなたは......猫だから。
    やっぱりどう考えてもおかしいっていうか、そもそもこの状況がほんとに夢かどうかすら」

猫王子「夢ではない。何を言っているんだ。私のこの高貴なピンと立った耳が夢だとでもいうのか?
    まったく君は......そうだな。ではこうしよう。君を妃とするために、君は私にいくつかテストを設けてくれていい。
    そのテストを私が見事合格した暁(あかつき)には、是非とも君を私の猫の国の妻としてお迎え上がりたいと思うのだが、どうだろうか」

女の子「え、えっと、えっと」

猫王子「おお。いい返事だ。よーしそれではテストを始めよう。さあ、君は私に何のテストをさせる?」

女の子「テ、テスト、ですか?」

猫王子「あぁそうさ。私はこう見えて運動神経も頭脳も抜群。なんのテストでも容易く切り抜けてみせよう」

女の子「そう、ですね。で、あれば。そうだなぁ......ふふふ」

猫王子「何を笑っている?」

女の子「であれば。猫さんの、猫の国の、お話を聞かせて欲しいです......」

猫王子「猫の国の? ほぅん。別にそれぐらい容易いが、そんなもので良いのか?」

女の子「そう、ですね。であれば、私がドキドキするような猫の国の話をたくさん聞かせて下さい」

猫王子「なるほど。それは中々難題だな。分かった。では最初の試験、わたくし見事それを突破してみせよう。
    あぁ、私の国はそうだな、山深い場所にあってな。そこでは大勢の猫たちがそこで一緒に暮らしている。
    皆悠々自適なものだ。昼間は寝転がり、日向ぼっこをして、そして気ままに虫や魚を追いかける。
    時にはお互いの毛づくろいをして、今日の天気について特に目的もなくただのんびりと話をする」

女の子「素敵ですね」

猫王子「あぁそうさ。猫にとって一番大事にしていることは何か分かるかな?
    それは、何者にも縛られないことさ」

女の子「何者にも、縛られない」

猫王子「あぁそうさ。多くの動物達が首に枷をかけられ、人間の元で一緒に暮らしている。
    あれはあれで確かに一つの関係性というものなんだろう。生活を保障され、食事を与えられ、そして、愛する者の元で共に生涯を過ごす。
    あれはあれで素晴らしい。だが、我々猫にとって枷というものは我らの自由を脅(おびや)かすものに他ならない。 
    あの生活は我らにはとてもじゃないが受け入れられない。そういった者たちが寄り集まって出来たものが、我らの猫の国さ」

女の子「そうなんですね。素敵だな」

猫王子「ははは。そうだろうそうだろう。私もあの国が大好きだ。私も彼らのために、今よりもっと国をよくしていきたいと思っている。
    そのためには私を支えてくれる妻が必要だ」

女の子「そうなんですね、えっと。質問してもいいですか?」

猫王子「いいとも。私が質問を受け付けないほど心の狭い猫に見えるかな?」

女の子「ふふ。いえ......えっと、どうして。人間の女性を探すとなった時に、私が候補に挙がったんですか?」

猫王子「そのことかい?それはね、私が君の事を知っていたからさ」

女の子「私を? そうなんですか? 私はあなたを見るのは初めてのように思うのですが」

猫王子「それはそうだろう。あれはいったいどれ程前の事だったか......あの時、まだ猫の国の王子という身分を嫌がって
    ふらりふらりと各地を渡り歩いていた時の事だ。そんなある日港町でたまたま飢えに飢えていた私はそこで倒れてしまったのだ。
    もうこのままでは猫の国に帰る事も難しいだろう。周りに身内も居ないし、餌を取る体力もない。いよいよ駄目かとあきらめかけたその時、
    君が目の前に現れた。君はまだ今よりも随分幼く、私を一目見るなり『猫ちゃんだ』何だと言って、私をすぐに抱きかかえた。
    あの時の私はあちこちを旅していたこともあって、お世辞なりにも身ぎれいとは言えなかった。そんな私を君は躊躇なく抱きかかえた。
    あれに私はいたく安心したのを覚えている。このまま人間の元で一緒に暮らしてしまうのも悪くはないのかもなと。
    そして私は君の元で人間達の手厚い治療を受け、餌の施しを受け、そうして無事に回復するまでに至った。
    私はあの時の事を感謝してもしきれない。そうして、今こうして王子となった私が改めて君の世界の事を調べた時に君に辿り着いた。そういうわけさ」

女の子「なるほど、さすがにもうその頃の事は覚えていませんが、今でもたまに、小さい頃少しだけ猫を飼っていた話を聞かされる事があります。
    もしかしたらその時のことかもしれませんね」

猫王子「あぁそうだな。きっとその猫の特徴としては私の毛皮と同じ、美しい三毛の柄だったと言うだろう。いや、今よりもっとくすんでいたかもしれないが。
    他に何か聞きたい事はあるかな?」

女の子「そう、ですね。何があるかな」

猫王子「なんなりと、時間はまだまだあるからね」

※後ろから子供がそっと近づき、ぎゅっと猫王子の尻尾を掴む。

猫王子「ゲニャア?! だ、誰ニャア! 私の高貴な尻尾をつかんだのは誰ニャ!」

子供 「やーいやーい。変なの。お尻に変な尻尾つけてる。やーい、変態」

猫王子「だ、だ~れが変態ニャア! 私の高貴な尻尾を馬鹿にするニャア~~!」

女の子「ま、まぁまぁ、猫さん。落ち着いて」

猫王子「ぐぬう。あの子供たちぃ。今に見ていろ......そのうち奴らイクラ漬けにしてやるからニャア......」

女の子「い、イクラ漬け......?」

猫王子「おおっと......げほん。げほげほ。あぁ、すまない。私としたことがつい、取り乱してしまった」

女の子「大丈夫ですか、猫さん?」

猫王子「あ、あぁ大丈夫だ。ところで君は普段、何をして過ごしているのかな?」

女の子「私、ですか? 私は普段......そうだなぁ。友達と一緒にクレープ食べに行ったり、あとはなんだろう。
    ウィンドウショッピングに皆で行ったり、映画見に行ったりカラオケ行ったり......色々です」

猫王子「ふうん? くれえぷ? うぃんどうしょっぴんぐ? からおけ......? 色々あるのだな」

女の子「ふふ、ええそうです。色々あるんですよ」

猫王子「ほう。それはとても興味深い。ぜひとも私を一度そこに連れて行ってはもらえないだろうか?」

女の子「えっ。でも、猫さんの格好じゃ......」

猫王子「そんなこと雑作もない。今に見ていてくれ(指をパチンと鳴らす)」

※王子が指をパチンと鳴らすと、たちまち王子の体の周りに光が集まります。そして光がふっと解けると、
 王子は少女と同じぐらいの背格好で、眉目秀麗な男性に変わっていました。

猫王子「さ、これでどうだろうか」

女の子「わ、すごい。猫さん、魔法使いだったんですね」

猫王子「ふふふ、さすがに我々でも、こちらに来る時はそれなりに用意はしているさ。
    さて、どこに行く?くれえぷ? からおけ? うぃんどうしょっぴんぐ?」

※シーン切り替え

女の子「あぁ、楽しかった」

猫王子「ふふふ。人間というものは色んな遊びを知っているな。普段私がしないような遊びばかりで、とても新鮮だった」

女の子「あ、猫さんは帰ったらどうするんですか?」

猫王子「ん、私か? 私は帰ったらそうだな。そのまま、妻を迎え入れ、そしてやがては父上の跡を継ぎ王になるだろう。
    何故そんな事を聞く?」

女の子「え、いや。猫さん、こっちですごく楽しそうだったから」

猫王子「ふふふ。間違いなく楽しかったぞ。普段やったことの無いことに触れる事が出来て、非常に刺激的な一日であった」

女の子「そうですか。なら、良かった」

猫王子「うむん」

女の子「逆に猫さんは、普段どんな事をしているの?」

猫王子「私か? 私はそうだな......とは言っても、仮にも私は王族だから、毎日ごろごろしているというわけにはいかないのだが。
    普段の雑務を済ませ、城下町の猫達の様子を見に行き、今後どうしたらいいかと話を聞いて回ったり、会議をしたり。まぁ色々だな」

女の子「へぇ。大変そう。猫さん。猫なのに、全然休めてないですね」

猫王子「ははは。さすがにそれは難しい話だ。皆が自由に休めるようになるために、私達がこうして働いている。
    ま、そこをとやかく言っても始まらない」

女の子「そう、なんですね」

猫王子「あぁ、そうだ。そういうものなのだ」

女の子「じゃあ、じゃあ。せっかく久しぶりに自由になれたんですから、私と一緒にのんびりしませんか?」

猫王子「のんびり。のんびりか......ふふ。そんな風に考えた事、最近は全然無かったな」

女の子「あ、そうだ。あの場所に連れてってあげます!」

猫王子「あの場所?」

女の子「ええ、今の時間だったら、とっても気持ちが好いと思います」

猫王子「ほう。どこに連れて行ってくれるのだろうな」

女の子「ふふ。それは着いてのお楽しみ。さ、こっちに来て!」

猫王子「やれやれ。君は本当に元気だな」

※シーン切り替え

女の子「見てください!ここが私の特等席なんです」

猫王子「おお。これはこれは......」

※とある公園。芝生が生えたそこに、二人は並んで寝転がっている

猫王子「はぁ......いい気持ちだ。こんなにも穏やかな気持ちで、時間をまったりと過ごすのは、一体いつぶりだろうか」

女の子「ふふ、大変なんだね王子様っていうのも」

猫王子「ははは......いやいや。これでも私は楽な方だ。もっと日々、大変な思いで暮らしている者達もいる。
    そんな者達に報いるための苦労。その程度。何てことはないさ」

※少女が寝転がりながら、携帯を見ている。液晶には男性が映っている。

猫王子「なんだい? その薄くて光る板は? 男の顔なんてじろじろ見て......ふうん。君はその男が好きなのか?」

女の子「えっ、ふえっ?! な、なんでそんな事突然聞くんですかっ?!」

猫王子「猫は表情に出ないというが、君は逆だなぁ。それ程までに顔に出るとは。ふふ、案外前世は犬だったんじゃないか?」

女の子「もう、何言ってるんですか!」

猫王子「はは、これは失敬。だがそうだな。君に一つ良い事を教えてやろう。人生というのはかくも短い。
    何を為して何を為さないか。ま、それを選ぶのはもちろん自分次第だが、何も為さないままでいると、
    人生というものは驚く程あっけなく終わるものだ。
    自分の気持ちに素直になって行動するという大切さを一度実感してみるのも悪くはないと思うよ。
    たとえその結果失敗したとしても、ふふ。その際は私めが君を猫の国へと案内し、私のフィアンセとして君を迎え入れよう。
    私の妻になる女性だ。それぐらい堂々と、色々な事に挑戦する意欲が無ければ、私としてはいささか不安だね」

女の子「ふふ。猫さんったら。口ばっかりうまいのね」

猫王子「ご生憎(あいにく)。口だけではなく、頭脳も運動も、素晴らしいぞ私は」

女の子「ふふ。はぁ、なんだか悩んでるの馬鹿らしくなっちゃった」

猫王子「そうだろう。私に出来る事があればなんなりとしてやろう」

女の子「ありがとう、猫さん」

猫王子「いやいや。それこそが私が君の元に現れた理由なのかもしれないな」

タカシ 「あれ、こんな所で何してんの?」

女の子「あ、た。タカシ君......!」

猫王子「(ほう、こいつが)」

※タカシが近付いてくる

タカシ「こんな所で会うなんて偶然~~~。え、何してんの。え、その人。彼氏?」

女の子「え、この人は、えっと」

猫王子「......ただの付き添いだ」

タカシ「そうなんだぁ。なるほどね。あ、そうだ。これから俺カラオケ行くんだけど、一緒に行かない?」

女の子「え、え。いいんですか......?」

タカシ「いいよいいよ」

女の子「......あの、タカシ君。聞いてほしい事が......あるんですけど」

タカシ「ん? どしたの急に」

女の子「......わ、私。ずっと。ずっと前から、タカシ君のこと......」

猫王子「(ほう......)」

タカシ「......え」

女の子「......突然、こんな事言って、ビックリするかもしれないけど――」

タカシ「え。いやいやいや。さすがにそんな事言われても困るよ。俺彼女いるし」

女の子「え......」

猫王子「.......」

タカシ「あれ、知らなかった? 一か月前ぐらいから付き合ってる彼女いるんだよ。
    ......まぁでも、その彼女とも近いうちに別れようとは思ってるんだけどね。なんか合わないしさ。重いし」

猫王子「......」

タカシ「あ。そういやさっきの話だけど、気が変わった。付き合ってあげてもいいよ? 
    まぁ、今の彼女の次って形にはなっちゃうけど。それでも俺は分け隔てなく女性に優しくする紳士だし」

女の子「え、あ、いや――それは」

タカシ「は? なに? そっちが好きだって告白してきたんじゃないの?――っかー。白けるわ。
    何勘違いしてんの? そっちが好きだっていうから俺から譲歩してやったってぇのに。意味わかんね」

女の子「た、タカシ君......そんな、言い方」

タカシ「申し訳ないけどお前のことなんて、俺全然眼中にないから。っつーか、女子としてレベル低すぎるでしょ。
    俺も大概紳士だけど、それでも限界があるからさ。告白する気があるなら、最低限自分のレベルは自覚した上で――」

猫王子「貴様が紳士を語るんじゃない」

※シーン切り替え タカシに猫王子が掴みかかる
    
猫王子「おい貴様。今一度言ってみろ。誰に向けてその言葉を放った?
    貴様が前にしているのは将来、この私の妻になる女性だ。貴様がそのように軽んじていい人ではない。
    撤回しろ。さもなくばその舌、今私がこの場で切り落としてやる」

女の子「やめて、猫さん!」

タカシ「はっ。ね、猫さん? なんだおいおい。そんなあだ名で呼ばれてんのかアンタ。可愛いらしいじゃねえの――うっ!」

猫王子「まだ減らず口を吐けるようだな。この場でその減らず口と性根。両方とも叩きのめしてやってもいいんだぞ」

タカシ「けっ。は、離せよ! っだよ全く。へっ!」

※タカシが去っていく

女の子「猫さん!」

猫王子「あぁ、すまないな。余計な事をしてしまったか」

女の子「い、いえ」

猫王子「全く。あいつは紳士の風上にも置けないやつだ。こんな身目麗しい人を差し置いて。全く。触れた手が汚(けが)れてしまう」

女の子「......猫さんってあんな風に怒るんだね」

猫王子「あぁそうさ。王子とは庶民には優しく、愛しいものにはなお優しく。ただし。
    それらを侮辱するものには何よりも厳しい態度で接すること。それが私のポリシーだ」

女の子「ふふ。猫さんかっこいい」

猫王子「はっはっは。今頃気付いたのかい? 私の魅力に、一層惚れてしまったかな?」

※シーン切り替え

女の子「そう言えば、猫さんって好きな食べ物は何があるんですか?」

猫王子「私の好きな食べ物......? そうだな、取れたての新鮮な魚を、こう、酸味のあるオイルで和えて、
    サラダと一緒に食べるのが私は大好きだ。あとは、そうだな。私は猫舌ではあるのだが、
    魚の揚げたフライと野菜を甘酢で和えたあれも美味い。
    あぁ。あとはパンで魚を挟んでバーガーにしたあれも絶品だ。いやあ、思い出すと、ヨダレが出てきた」

女の子「ふふ。猫さん、結構食いしん坊なんですね」

猫王子「いや、お恥ずかしい。君は?」

女の子「私は、そうですね。うーん。色々あるんですけど、でも、最近ちょっと太ってきちゃったから」

猫王子「太った? 太ったというのは、ふむ。うーん......人間でいう所の基準が分からないが。君はその太っているのか?」

女の子「え。そ、そんな面と向かって聞かないで下さい」

猫王子「おっと、これはすまない。だが私の目から見て君は、どうなんだろうな。非常に美しく見えるが。まだ何か気にしているのかい?」

女の子「べっ」

猫王子「ど、どうした?」

女の子「なっ。な......ね、猫さんって、なんだか......なんだか、あれですね。なんか、なんか、なんだろう。なんかあれですね」

猫王子「なんかあれとは、何だ?」

女の子「う、ううう。わ、分からないですけど。なんか、なんか女性に対してこう、なんかデリカシーが無いというか」

猫王子「でり菓子……?なんだ、その菓子は、美味いものか?」

女の子「もう~~~。......いいです!」

猫王子「ど、どうした。説明してくれないと、さすがの私でも分からないぞ」

<完>
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