三日月が登る時、悪魔の狼王は吠える


「治せるの?俺の身体?」
「マジなのか!キラの兄貴!マクギリス!ミカの身体が治るって‼︎」

「うん。理論上はだけど。」
「但し、必ず治る保証はないぞ。」

オーブ近海の鉄華団地上支部「鉄華島」の社長室にて団長オルガ・イツカと遊撃隊長三日月・オーガスと対面し話しているのは、コンパスヤマト隊隊長キラ・ヤマトとギャラルホルンから出向して来ているマクギリス・ファリド。

彼等は先月、火星のハーフメタルプラントにて発生した厄祭のモビルアーマー暴走事件。
通称「ハシュマル騒乱」の折、ヤマト隊に鉄華団、並びにマクギリス達の総出でも苦戦とジリ貧を強いられたが、それをバルバトス本体はほぼ大破されながらも単独で撃破したガンダム ・バルバトスルプスこと三日月・オーガスだったが、
その代償は高く付いた。
 三日月は嘗てのエドモントン同様、バルバトスの阿頼耶識リミッターを解除。MSを超越した機動とパワーにてハシュマルを撃破したが、引き換えに左眼視力消滅、左手不随に加えて、新たに両足不随が追加されたことで、ほぼ人間として再起不能となってしまった。

本人はこれに関して、
「別に、農家が出来なくなっただけだし。バルバトスには乗り続けられるから、別に気にしてないよ」と、言っていたが
此れを誰よりも重く受け止めたのが、三日月達が兄貴と慕うキラ本人だった。
事件の際、相手との機体相性の悪さもありバルバトスとハシュマルの戦いをただ見ている事しか出来ず、三日月の足が動かない所を直で目撃したのも手伝ってしまい、
彼はあれから1日でも速く新兵器"プラウド・ディフェンダー"の完成を速めるべく、自宅に戻らず、ミレニアムで研究開発に没頭するようになった。

しかし、精細を欠いた状態の開発は暗礁に乗り上げ失敗が続き、更に頭を悩ませてしまい、恋人達とケンカにまで発展してしまう始末。すぐにキラが謝罪し、恋人達も配慮が足りなかった。と謝罪したが、三人の間に痼りを残す事になった。
悩むキラを憂い、見かねたマクギリスはある物を渡した。

それは、嘗てアインにも施されたギャラルホルン製阿頼耶識や、マクギリスがギャラルホルンで調べ尽くし、密かに研究を続けて集めた、これまでの阿頼耶識の研究データだった。

此れらを渡されたキラやハインラインは当初、大いに驚いた。こんな物をどうやってと。マクギリスは普通に、自分も元から興味があり調べ、集めていたと、嘘偽りなく答えた。

キラとハインラインは直ぐに、寝る間を惜しんで、研究やこれまでの鉄華団達の阿頼耶識の稼働データと合わせて調査を始めた。
その結果、色々な鉄華団側の阿頼耶識とガンダム ・フレームとの噛み合わせの問題点や解決法が見つかった。

①.鉄華団のガンダム・フレームとパイロット達に使われている阿頼耶識は、粗悪手術や機体側がモビルワーカーの流用だったのが原因でガンダム側からの情報処理に耐えられなかった。
接続するだけで鼻血を出したり、リミッターを解除すると、眼や鼻から出血するのはその為。
②.当時のパイロット達はリミッターを解除した後も、普通に乗り降りでき、普通の生活が出来たらしい。
③. 粗製の阿頼耶識では降りても『異常な状態稼働を続けるような命令』が脳から出ており、それが降りた状態でバグの様なものを発生させており身体が麻痺してしまうらしい。
④.阿頼耶識側の問題を解決する為、機体側がパイロットを情報処理と、操縦の為に最適化しようとしている。

などなど、他にも色々な問題点が発見されたもののたった一つで全て解決することもわかった。
それは、「粗悪阿頼耶識を摘出し、オリジナル阿頼耶識に置換する」
それだけで全て解決し、更なる力をパイロットやガンダム・フレームにデメリット無しで得られることも分かった。
キラやハインラインもこの研究結果に大いに喜んだが、良い事ばかりではなかった。

それは手術難易度の高さだった。
確かにオリジナル阿頼耶識は年齢を問わず施行可能で、危険度も失敗率も低い。しかし、それは未施工の人間が対象であることと、粗悪阿頼耶識の摘出が初の試みな上難易度が高い事が問題視されていた。しかも、オリジナル阿頼耶識の手術を行う事も恐らく厄祭戦時代以来の事であり慎重に進める必要があった。
不確定要素はキラが限界まで潰し、ハインラインはバエルのコックピットからオリジナル阿頼耶識のデータを収集し、二人で理論を再構築し後は実行するのみとなった。

失敗による死亡率は大きく減り、約30%
成功するが不随治療失敗が、40%強
大成功し完全回復は30%弱

ほぼ半々の確率だがそれでもリスクはついてきてしまった。
もし失敗すれば死。
するしないにしても不随のままの確率の方が高い。
しかし、三日月は
「受けるよ。その手術」
「!ミカお前!」
「三日月君・・・」「三日月・オーガス・・・」
二つ返事で承諾したのだ。
「解ってんのかミカ!もし失敗したらお前は・・・!それに、成功しても」
「安全にリミッターを解除できるなら、コッチの方がいいでしょ。」「けどな!」
オルガは三日月に反論しきれなかった。三日月の考えてる通りだからだ。
今のままリミッターを解除し続けたら、その末路はバルバトスの部品そのものであり、ブルーコスモスの生体CPU以上の悲惨な末路が待っているのは確実。ならば、そうなる前にせめて動ける肉体を残そうとするのは利口な考えだ。
それに、三日月が今の内に手術を受けたいと言ったのには、ちゃんとした理由が有る。
「成功するも、失敗するにしても、俺が手術したら後の明弘達の役にも立つし」「それはそうだがな・・・」

「それに、あの鳥もどきみたいな奴がまた出てこないとは言えないでしょ」「ッ!」「それは・・・!」
三日月が手術すれば、データが集まり他の団員やそれ以外のヒューマンデブリ達の未来にも大きな貢献になるが、三日月が懸念していたのは火星のモビルアーマーの様な存在が、
火星の他の場所や、宇宙に、地球に、何処かにまだ埋まっているのでは?と、色んな仲間と知り合った今の三日月だからこそ考えたのである。
「いい質問だな。三日月・オーガス君」と、答えたのはマクギリスだった。
「おい!まさか、まだあんな奴らがいろんな場所に埋まってんのか!」「そうだ。厄祭戦から300年たった今も、奴らはまだ何処かで復活の時を待ち続けてるのだ」
「どうしてわかるんですか?」キラが真意をマクギリスから聞き出すと、マクギリスがあるデータを取り出し、皆にみせる。
「少し前に、イシュー家の御家騒動があったのだが、その時の事を調べていると、初代イシュー家の施設跡地で、ある一団と、火星のとは違うタイプのモビルアーマーが交戦した痕跡が見つかったのだ」
「マジなのか・・・」「つまり・・・」
「三日月君は、出来る限り早くモビルアーマー達への抑止力になりたいと、言うことか」「そうだよ。チョコの人」
三日月はハシュマルと交戦した際に考えていたのは、俺が居なかったら、仲間や、火星のクーデリア達が殺されていたかも知れない可能性だった。
手術の結果がどちらにしろ、自分ならモビルアーマー相手にも一人でなんとかなる。前は初見だったから大破にされたが、今度は無傷で倒せる自信があった。
それにもしも、自分が死んだ後、明弘達が自分みたいになっつ欲しくないという優しさからだった。
口にはしないがマクギリスの研究の役にも立つだろう。という考えもあった。

「「・・・・・」」
「本当に、良いのかい?」
「とっくに覚悟は決めてるよキラ」
キラは、三日月の目を覗き、自分も三日月信じる事にした。
オルガは、言ってもダメだと分かり、口を紡ぐ。
マクギリスは、三日月の覚悟に感服していた。

キラのデータはマクギリスに渡り、マクギリスが個人所有する施設にて秘密裏に手術が行われる事になった。
バルバトスも併せてテイワズ歳星の施設にてエリカやハインラインが加わりオーバーホールされる事が決まった。

後に、マクギリスや石動もバエルやムルムルを使いこなす為、同じ施設にて施行が行われる事になった。

キラは「手術が始まるまでにやる事はやっておいてね」と、三日月に伝えると、アトラと、そしてクーデリアを呼んでほしいと頼んだのだ。

「それで三日月、私たちにどう言った用事があって呼んだのですか?」
「三日月!何でも頼んで良いよ。話は聞いてるから!」
「うん。ふたりともありがとう。」
三日月の私室にて三人が語り合う。
三日月はいつも通りベッドに座り、アトラも慣れっこだが
クーデリアは、少し緊張している様だ。
三日月が語り出した。
「後ちょっとしたら、俺手術受けることが決まってるけど、成功するか分からないんだ。最悪失敗したら死ぬかも知れないから、やる事やっとこうと思ったから」
「・・・え」「・・・」
アトラは事前に聞いて神妙な顔をしていたが、クーデリアは今聞いた事だったので素っ頓狂な顔をしていた。
「アトラさん。・・・私、初耳なのですが?」
「ゴメンなさいクーデリアさん。三日月から聞いた方がいいと思ったから」
アトラが謝罪するが、クーデリアの頭の中は、疑問と混乱で一杯だった。三日月が手術して、失敗したら死ぬ。
突然聴かされた話で声が出ない。三日月やアトラから聞き出そうとしたが、
三日月が、自分とアトラを抱きしめてきた。
「あっ・・・」「三日月・・・?」
突然の事で二人は頭が混乱する中、三日月は語り出した。
「クーデリア、ゴメンいきなりの話で、時間も無いし、
最後になるかも知れないから」
「「・・・・」」二人は何も言わず、静かに聴く。
「俺は、戦いで死ぬなら、別にしょうがないで済むけど、戦い以外で死ぬと、なんて言うか、きっと、悔い?が、きっと残ると思うし、オルガや仲間達そしてキラの兄貴達が背中を押してくれたし、準備してくれたから、きっと上手くいくって信じてる」
「だから、これまで世話になった二人からも、背中を押してもらいたいのと、もしもの為に、二人との最後の思い出が欲しいんだ。アトラが前に言ってたアレが、二人分ほしい。」
此れが、三日月・オーガスから、人生最後になるかも知れない、遠回しの告白。
二人は
三日月をベッドに押し倒し、抱きついた。
その顔はポロポロと泣いていた。
   して三日月」
「約束
   してください三日月」
「「絶対にまた、帰ってきて(ください)ね・・・」」

その夜、三人は三日月が動けるようにバルバトスで夜を明かした。







『お〜い。三日月〜、出撃準備いいか〜』
「ん?ゴメン。ねてた。」
『準備、しときなよ?もうそろそろだからね』
「ん、わかった」

少し昔の出来事の微睡から目覚めると自分は、コックピットの中にいた。
タービンズのハンマーヘッドで、目的地までの輸送中に自分は眠りこけてた様だ。
三日月・オーガスは名瀬・タービン達に状況を聞く為、回線を開いた。
「ねえ。今どんな状況なの?」
『どうやら、ラクス総裁さんが無事救出されて、フリーダムのヤマト坊ちゃんが戦場に出てきたらしい』
『ブラックナイツの中に指揮官っぽい白い奴が出てきてフリーダムとやり合い始めたみたいだね』
「オルガ達、鉄華団は?」
『オルガのイサリビは〜、今はどうやら一部の部隊引き連れて、コンパスの船と一緒に奴さんと撃ち合ってるな』
『副団長君のヒヨウはレクイエムの方にオーブ艦隊やプラントの正規軍と一緒だね』
『明弘達はコンパスの部隊と一緒に例の親衛隊達とやり合ってるな。ギャラルホルンがなんか怪しい感じだな』
『総裁さんが救出されて、さっきから戦況が世界中に生放送されてるみたいだね?』
戦況は何処も混乱しており、正確な情報はわからない。
しかし、関係ない。自分のやる事は変わらない。
仲間の邪魔をする奴らは、オルガ達の命を狙う奴らは、全員叩き潰す、ただそれだけ。
『おや?フリーダムがちょっとニ対一、いや、セブンスターズが乱入して三巴になっちまったみたいだ!』
「じゃあ、キラの兄貴の方を助けに行くよ」
『よっしゃ!ギリギリまで戦場に近づくから準備しとけよ!』
名瀬から指示を聞いた三日月は繋がる前に「身体全体」を整え、力を込める。
「阿頼耶識ユニット接続」
後ろの座席から接続ユニットが伸び、背中の接続プラグにスーツを通して繋がった。
「ツッ・・・ふう」
前の様な不快感とは違い、快感の様な感覚が背中を通して身体全体に流れていき、文字通り自分は今だけバルバトスそのものになった。
「網膜投影スタート」
コックピットが網膜を投影し、視界がクリアになる。
「全店周囲モニター展開」
球体コックピットの内側全てに、外の景色が映り込んだ。
「リニアシート起動」
シートが後ろのアームに支えられ、まるで浮いた様に固定された。
「クタン参形接続。操作をバルバトスからクタンに変更」
阿頼耶識を通して、メイン操作をクタン側に変えておく。
準備は整った。
『これ以上は無理だな。他勢力から探知されちまいそうだ』
『私たちはここまでだね。あとはあんた次第だよ。アトラやクーデリア達に宜しくね』
『親父曰く、もしかするとこの戦いでギャラルホルンが滅ぶかも知れねぇって言ってたな。何が起こるかわからねぇ。気を付けろよ三日月!そしてオルガ達と生きて帰ってこい!』
「うん。ここまでありがとう。オルガにいっておくよ」
『良し!行ってこい!遊撃隊長さんよ‼︎』
タービンズ達から背中を押され、遂に出番がきた。
「三日月・オーガス ガンダム ・バルバトスルプスレクス」

「出るよ!」

三日月は真っ直ぐに月面の要塞跡地へ向かって行きながら、バルバトスを通して周りの空気を感じていた。
目的地を視認出来る距離まで来たが、状況は最悪であった。
フリーダムはボロボロになっており、今にもやられそうでありながら何とかドラグーンを使って踏ん張っており(あの動かし方はキラじゃ無くてフレイ総裁代理かな?)、白と黒の奴が、恐らくガリガリの機体をフリーダムに近づけない様に連携しながら追い詰めていた。狙いは恐らく同じ。
新しいメイスを構える。
黒い奴の胸が開く。
恐らく遠距離攻撃?
メイスをフルパワーでフリーダムと黒い奴の間に投げつけ、
メイスが盾になり攻撃を防ぎ切る。
接近しながらついでにガリガリをクタンに乗ったままぶつかり、跳ね飛ばす。ガリガリの呻く声が聞こえたがどうでもいいので、クタンの切り離し作業に入る。
「慣性制御をクタンからバルバトスへ移行。クタン全砲門自動射撃、ブースター全開」
切り離す前にクタンを特攻命令を出してから切り離す。
クタンが黒い奴へ突撃するが簡単に避けられる。牽制は充分。
フリーダムの前に着陸し、メイスを持ち、砂利を払いながらフルパワーで黒い奴に見舞う。が、ギリギリで避けられる。

俺もバルバトスも、遂に戦場に帰って来た。
みんなの居るこの場所、鉄華団の居場所に。
皆んなに通信を繋げて、

「オルガ、皆んな。ただいま」

仲間皆んなの通信から、喜びが沸き起こった。


皆んなと再開を喜んでいると、キラ達から通信がきた。
『三日月君かい⁈』『手術成功したのね!』
「うん、何とかね。二人とも間に合ってよかった」
二人とフリーダムの無事を確認していると、
『貴様!何者だ!』と、通信に割り込んで来た奴がいたので
「誰?」と返事して無視した。
『貴様ッ!俺の邪魔をしただけでなく、無視までするかっ‼︎』めちゃくちゃうるさい上にキザったくてウザい。
更に他にも、
『お前、あの時の少年か?』
「やっぱ、ガリガリか。アンタの相手なんかしてる暇無いんだけど」
ある意味、一番面倒な相手がいるのは目が離せない。
『お前はそうでも、俺と言うより彼がお前を殺したがっていてな。付き合って貰うぞ』
ガリガリは今までとは違う姿で簡単には行かなそうだ。
『余計な邪魔をしてくれたな貴様。命で償ってもらうぞ。宇宙ネズミ』
白い奴もヤバそうだ。勝てなくはないが、またおやっさんからバルバトス壊したら怒られそうだ。
三対一が始まると思ったら、
赤い機体が、ガリガリとカチあった。聞こえた声は、ある意味嫌いな奴からだった。
『三日月!聴こえるか?』「聞こえるよアスラン」
『コイツは俺に任せろ!お前はブラックナイトを頼む!』
アスランのずんぐりが、ガリガリと戦ってくれる様だ。
俺は目の前の黒い奴に向き合った。フリーダムはいつの間にかラクス総裁さんが持って来た新装備を装着して、白い奴の攻撃を防いでいた。
『そこを退け!宇宙ネズミ!俺はアスラン・ザラを倒しに行かねばならんのだ!』『貴様ら宇宙ネズミや骨董品のMSが我らに勝てはしないのだ。死にたくなくば・・・』
「うっさいんだよ。お前、さっきからつまんない演説しかできないの?」『は?』
オルガ達からコイツらがどんな奴らなのかは聞いている。
コイツらは細かい事は関係なく、俺たちの敵。
それが分かるなら後はどうでもいい。
「オルガから言われてるんだよ。お前らを徹底的に叩き潰せって。どっち道、お前らは死ぬんだから、何喋ろうが誰と戦おうが関係無いでしょ」
『ほざけっ‼︎宇宙ネズミがっ‼︎』
黒い奴が剣を構えて突っ込んで来た。
メイスは小回りがきかないと思い、腰裏にしまい背中のレンチメイスを構えて迎え撃つ。
武器で打ち合い鍔迫り合い、蹴りで相手の武器を勝ち上げ、腕を叩き付ける、内蔵された機関砲で撃つ。
しかし、何れも避けられたり、カチあったり、防がれたりして有効打にならない。それに、まだ新しいバルバトスと阿頼耶識に慣れていないせいも有る。
いや、少し違う。バルバトスの調子が良すぎて俺がついて行けてないのだ。後もう少し乗り回せば慣れそうだが、相手はそんな時間は与えてはくれないだろう。
すると相手がまた喋り出した。
『成る程。確かに噂に違わぬ強さだな。鉄華団の白い悪魔』
「・・・」俺は無視しようとしたが勝手に喋りつつける。
『だが、所詮はネズミ!母上に歯向かおうとし、我々の統治を受け入れる思考すら存在しない人喰いネズミ如きが、俺に敵うはずがないのだ!』
相手が喚きながら、突進して来たのを正面から迎え撃つ。
剣とメイスが鍔迫り合った瞬間、相手が自分の武器と一緒にメイスを蹴り上げたのだ。腕が上がってしまい隙を晒す。
『死ね!宇宙ネズミ‼︎』
あ、ヤバい。
と、思った瞬間、頭に浮かんだのはオルガ達ではなく、

アトラやクーデリアと最後に過ごしたあの日の事だった。
今思えば、何と言えばいいのか、凄く、それまでの中でも
一番可愛い?、いや煽情的だったと言えばいいのだろうか?
アトラの方が何だか凄く煽情的で、クーデリアはどちらかというと可愛かったと考えていた。
走馬灯かな?と、考えていると、
『は?、え⁇な、何だコレは?』
と、素っ頓狂な声を上げていた黒い奴に向かって俺はバルバトスの上がったままの両腕をメイスと一緒に振り下ろした。
ガギョンッ‼︎
という、いつも聴く鉄同士がぶつかった音が響いた。
左手は盾で防がれたが盾がへしゃげて変形、右手は武器と一緒に潰れて、ちぎれ飛んだ。
『う、ウワアアアアアア!』
流石に、相手も冷静になり距離を取った。
『き、貴様アッ・・・!神聖な戦いの場で何とハレンチな・・・し、しかもっ、ふっ二人も・・・だと・・・っ!』
相手が何か喚きながら慌てふためいているのを見て、三日月はオルガ達の言う通り相手が思考をよめる事を確認すると、
別の作戦を考えついた。
「神聖?コンパスのみんなを味方のフリして撃とうとして、挙句に罪をなすり付けようとしたお前らのどの口が言ってんだ・・・‼︎」
『この、ケダモノがァァァァ!!!!』
相手が吠えながら突っ込んで来た。
三日月はバルバトスのリミッターをちょっとだけ外し、わざとらしく右へ動く。と、同時に思考を手放す。
相手も合わせて右へ動き足サーベルで切り付ける!
が、そこにバルバトスは存在せず空を切り、一瞬で左のバルバトスから背中にヤクザキックを喰らう、と同時に足裏のパイルバンカーが炸裂!致命には至らなかったが、スラスターが死んだことでまともには動けなくなった。
『な、何故だ!一体どう言うんだ!』
相手は慌てふためいて、自分が追い詰められている事が理解出来ていない。
やはり、反射神経からの行動は読めない事を三日月は確信した。此処からは自分の番だと。レンチメイスをしまい、背中から太刀をとったバルバトスは構えた。
「もう、新しいバルバトスにも慣れたし、アンタの相手も飽きたし、殺すけど、いいよね?
アンタ達は、別に・・・死んでもいい奴らだし」
『このネズミ如きがアァァァァァァァァァッ‼︎』
黒い奴が向かってくるが全ての攻撃が空を切り、バルバトスの太刀で斬られ、素手や足を食らわされ、吹っ飛ばされ、死角からのテイルブレードに貫かれ切り付けられる。

気付いて見ると、黒い奴は既にスクラップになっており両手足は既に無く、ハッチにヒビが入り中が確認出来るほどに損傷し、頭部はテイルブレードに貫かれ、胴体から引きちぎられ宙に漂っていた。

相手とカメラアイ越しに目が合ったが、三日月は何も考えずに左腕を貫手を構えて後ろへ大きく、力をこめて引き絞る。
パイロットが泣き喚くが、存ぜぬ、知らぬと言わんばかりに左腕をコックピットに叩き込み九十度右へ捻り、引き抜くと、物言わぬ肉塊に、ガラクタになり立てた。

少し余韻に浸っていると、オルガから通信が入った。
『ミカ!そっちは終わったか⁈』
「オルガ?うん、こっちは終わったよ」
『そうか!悪いんだが、他んとこの援護にいってくれ!
あのロリババア、厄祭のモビルアーマーをアルテミスに隠し持ってやがった‼︎すぐにマクギリス達やオーブ艦隊の援護に行ってくれ!!』
「わかったよ、オルガ」
団長から新たな指示を聞いた遊撃隊長は、ゴミをその場に置いて現場へ急行した。

その後は、リミッターを完全解除したバルバトスとバエルの暴れる様な活躍によりモビルアーマーは殲滅され、闘いはコンパス・連合・プラント正規軍の勝利に終わった。

仲間達は自分の両足で歩き、左手を上げて、両目で見つめてくる三日月の完全復活を大手を振って喜んだ。
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