初めてのお仕事


外出していたユメは1人の姿を見つけた
「あっ!黒服さーん!」
「おや?あなたはあの時の…」
「はい!梔子ユメです。先日はどうもありがとうございました。それで…その…お礼がしたいんですけど時間ありますか…?」
「クックックッ、ユメさんの様な方から誘われるのは中々ない経験ですね。構いませんよ、あのお店で奢ってください」

カフェの中

「あの…コーヒー1杯だけでいいんですか?」
「ええ、私にとってコーヒー1杯でも十分感謝の気持ちになります。そういえば、あの後いい仕事先は見つかり…いえ、失敬でしたね」
「うう、どうしよう…。一つだけ連絡がつかないのもあるし…。街の案内なんていい条件の仕事があったのに…」
「街の案内…? ……!!」
何かに気付いた黒服はポケットからスマホを取り出して何かを確認する。そして、「申し訳ありませんでした」と頭を下げたのだ
「えっ、ええと…?」
困惑するユメに黒服は説明した。自分がその依頼を出した者だと
「わっ!すごい偶然もあるんですね!」
恥じるように謝罪をする黒服に対してユメは呑気な事を言う。その態度に力の抜けた黒服は改めて依頼を受けてくれるか尋ねる。ユメの言葉は決まっていた
「もちろんです!」


依頼達成後

「まさかあんなところで襲われるとは思いませんでした」
「びっくりだったね。でも黒服さんが無事で良かったぁ」
「やはり私は現場は得意では…待ってください。何故帰ろうとするんですか?」
黒服の疑問にユメはきょとんとした顔になる
「もう遅くなるし、ホシノちゃんも心配してるだろうから?」
「そうではなく…!いえ、仕事に対する報酬を支払いたいのです」
「……ああ!?そうだった!黒服さんと探索するの楽しくて忘れてたけどお金が貰える仕事だった!」
(…もしやユメさんはバカなのでは?)
「ひぃん!黒服さんがホシノちゃんと同じ目で見てくるよぅ」

報酬の入った封筒を手渡されるとその金額の多さにびっくりする。凄い!!
「今回行ったところは中々の発見でしたからね。追加報酬を弾んでいます」
「やったぁ!これでホシノちゃんにも先輩らしいところを見せれる!」
そんな私を黒服さんはジッと見てくる
(うっ、またバカって思われたかなぁ?)
「ユメさん、あなたに大事な話があります」
「は、話ですか?」
(あれ…?『大事な』話って言った…?)
何の話だろうか、真剣な目の黒服に緊張してきたのか胸の鼓動が速くなる
「ユメさん」
「ひゃいっ!」
上擦った声をあげてしまった。だが、黒服はお構いなく告げる
「私と正式に『ビジネスパートナー』になる契約を結びませんか?」
「はいっ!…『ビジネスパートナー』…?」
「はい。正式にあなたを雇おうかと思いまして。今回の件でわかりましたが私はあまり現場が得意ではありません。正直あなたののんびりした態度は仕事をするのにどうかと思いますが、土地勘とその実力はこちらに有益と判断しました」
「ひぃん!罵倒と褒め言葉が両方やってくるよぅ」
「もちろん契約についてはあなたの意向も含めて詳細まで詰めます。…あなたがよろしければですが…」
「い、いえ!仕事を貰えるならやります!こちらこそやらせて下さい!!」


帰り道

ユメはモモトークに新たに追加された連絡先を見る。自然と笑みが溢れる
「えへへ、そっかぁ。新しい友達が出来たみたい『あなたののんびりした態度は仕事をするのにどうかと思いますが』…ハッ!」
ユメは先ほどの黒服の言葉を思い返す
(いけないいけない。黒服さんとはこれから仕事するんだから。私もビシッとしなきゃ!)

ポン モモトークが送られてくる
『お疲れ様です。契約の書類を作成したいのですが、日にちはいつがいいですか?』
『はい!明日でも大丈夫です!』

業務的な連絡。しかし、それだけでもユメの顔に笑みが浮かぶ
(そうだ!ホシノちゃんも誘ってみようかな?)
そう思ったユメだったが帰るなり待っていたホシノに
「こんな遅くまで何やってたんですか?」
「はっ?ユメ先輩がこんな大金を…?絶対危ない事してくるやつじゃないですか!とっちめてやりますよ!」
「ひぃん」
誤魔化す事にした
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