夫婦善哉


「はい宮本さんお茶とお菓子です♡」
「忝い ……む?」
カルデアキャスター会と銘打たれたこの茶会に呼ばれるようになって暫く経つ。いつものように幹事である玉藻の前が茶と菓子を配っていたのだが、なぜか俺の前には二人分のが用意されていた

「あら?何かお口に合わないものでもございましたか」
「……いや特に苦手なものはなく出されたものはありがたく頂くが……、その玉藻の前、なぜ俺だけ二人分なのか……」
「え、お連れ様のほうがそうでしたの? それなら、今すぐ厨房から別の物をもってきますけれど……本日はブーディカさんがいらっしゃるでしょうから、クッキーやケーキなどいかがでしょう~?」
「うむ、そうではなくてな…… お連れ、様か?」
何やら全くもって思考の片隅にもありもしなかったことを、目の前にいる獣の耳と尾を持ち伝承に名高き貴人はにこやかに微笑んで伝えてきた。普段俺と行動を共にすることが多い彼女、由井正雪は本日別件があると聞き及んでおり、この会にはおらずいわゆるお連れ様の心当たりが、俺には全く持って無いと言える。

「ええ、ここ『カルデア』に召喚(来て)からずっと一緒におりましたでしょう……えっ、もしかしてなんですが玉藻ちゃん、なんかぁ……イケないこと言っちゃいましたかぁ?」
「私も知っているわ! 宮本のおじさまのおそばにいる雪のように真っ白なお姫様のことよね?」
「……ああ、そういえば何やら俺と似たような気配、がしたかもしれない。すまない確証が持てなくて」
やっぱりという声とそうだったんだという声が入り混じる。ナーサリーライム殿やジーク殿の反応により、一気に場の話題がそちらに傾いてしまったことに苦笑しつつも、しかし二人が言った同行者とやらの特徴には己には心当たりがあまりにも多すぎた。雪のように白い、異国の幼子から見れば姫に見えるであろう格好、そしてジーク殿と似たような気配となると――

「…………もしかして、いるのか」
「あ!宮本さん!例の同行者さんがようやく気が付いたのかって顔してますぅ!今ちょうど貴方の手に触れてますので、こうぎゅっと!ハートごとキャッチです♡」
やはり、俺にはいるのかどうかすらわからないが左手に意識を向けるとなにやらほのかに温かく慣れ親しんだ気配が幽かに感じ取れた。玉藻の前が急かすのでよくわからないなりに手を動かしてみる、するとどこからともなく白魚のような指と桜貝のような爪が見え、妻が養女の頃から俺の手に甘えるときにする仕草をとる。ああ、やはりお前なのか雪

「あらあらまあまあお姫様もあなたも、嬉しそうに笑っているわ!良かったわね、私たちと一緒にお茶会できるのかしら?」
「そうさな、ナーサリーライム殿、俺には今の今知ったばかりゆえ断言はできぬのだが……、せっかく茶と菓子を提供されたのだ。……お前もできるのなら口にするがいい。味は……うむ、問題なく食えることは保証する」
――もう、相変わらずあなたは食に関することはてんで疎いのだな、と懐かしむように笑う妻の声が聞こえたような気がした。



――
特に読まなくてもいい言い訳部分
○○の前って時点でもう敬称らしいんで、今回は呼び方こうさせてもらいました
ちょろっと出てきた人選理由。共通は所持してるんでセリフがまだ書ける枠ともいう
玉藻ちゃん:日本枠つよつよキャスター、恋愛大好き枠
ナーサリー:打掛姿見たらお姫様って言ってくれそうな枠
ジークくん:ホムンクルスでムジーク技術繋がり
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