【閲覧注意】 アレクセイ・コノエ×アーサー・トライン


初めの違和感は、艦長との雑談。いや…もしかしたら、だいぶ前の任務の事だったと思うの。
その任務はミレニアムクルーも出張るほどの大きな紛争で戦争。ロゴスの、ブルーコスモスの負の遺産であるデストロイガンダムが最大で5機、加えて陸上型MS部隊の大規模展開がされ、目標とされた都市の被害は多かったわ…。幸い、政府の嗅ぎつけたのが早いためか住民のほとんどは避難が出来たが、軍の消耗は免れなかった。
すべてのMSを破壊、無力化に成功ののち避難民とがれきの撤去が始まる。生き残ったMS部隊に、コンパスも手を貸さなければ復興はまともに出来ないほど。
その日は、妙にコノエ艦長の機嫌があからさまなまでに…冷たい印象を受けた。あの時は、さすがに今回ばかりはブルーコスモスに対し血管が切れたのだろう、そう思っていたけど。
この時は艦長も副長も、AAたちも例外なく駆り出され皆、手には小さな傷を塞ぐための絆創膏がいくつも張られていた。
医療班も手が回らない中で、お互いに手当てをすることは仕方ないこと。
この時から、しばらくはコノエ艦長の期限があからさまなとは言わずも、ピリピリしていたことを覚えている。
それから、先日のことで少しだけ察する。

コノエ艦長は、アーサー副艦長とデキている、と。

タリア艦長とは違い、コノエ艦長はおおらかで冷静、それに修羅場を潜り抜けた経験からか頭が切れる人ね。アーサー副長はミネルバからの知っている中なのであまり言うことはないが、こちらも経験が敬虔なだけにあまり驚くような反応を示していない。むしろ、大幅に減ったと思う。
まぁ、それはさておき。
元々タリア艦長の補佐に徹し、こちらでもと言った感じの副長。コノエ艦長も扱いが上手いため、お互いにやりやすい仲だったのでしょうね。
そんな時、ひとつの会議が終わり船へと戻る際に…違和感があった。いや、確証を得る証拠の一つが起きたのよ。
終わった後、コノエ艦長はアーサー副長の影になるように少し前へと並んでいたのよ。狭い廊下じゃあ前方から来てもパッと見見づらいし、後ろからしかはっきり見えないのよね。そんな死角にアーサー副長を置くなんて、それこそ見せませんっていうようなものだと思うの。
気のせいだと思っていたけど、それを意識してみれば…ブリッジでもコノエ艦長ってば結構熱い視線送っていたのね。アーサー副長も一度目を合わせてから逸らして、気にしないようにしていたし。その時、顔が赤らんでいたわ…副長ってわかりやすいのよねー。
そんなわけで、ここ数日観察して確信しました。
「コノエ艦長、アーサー副長とデキていますよね?」
「まいったな。君を見くびっていたよ…いや、恋をしているからこその特権かな」
「むう、その答えは肯定、でいいですね。…そっかぁ」
アーサー副長ってば、すみに置けないんだから。ちょっとは私たちに相談してもいいのに。
…あの人のことだから真面目な性格が仇となって余計な心配をさせたくない、ってことよね。それに、グラディス艦長のことも、引っ張っているのかしら。
「アーサー副長は頼りないですけど、私たちのことを心配してくれて、ここまで付いてきてくれて𠮟るときは叱ってくれる、良い人なんです。
…泣かせたら、承知しませんよ?」
「解っているよ。…それで、出来れば解放してくれるかね?」
「良いじゃないですか。それで、どんなところが好きなったんです?きっかけは?どこまで行きました?」
「ううん。退路なし、か…」
やだなぁ、だって…恋バナは女の子の大好物なんですからっ。女の子を見くびってちゃ、この先翻弄されちゃいますよ?
さぁさぁ、白状してくださいね、コノエ艦長。


それから、しばらくして艦長もおおむね察した様子で…私たちを見ている。ブリッジの任に就く女性ミレニアムクルーたちとラミアス艦長にストッパー役のムウ大佐、それに私ことルナマリアとメイリンが、コノエ艦長を囲むように集まっていた。
わぁ、まるで尋問ね。
あ、コノエ艦長の目がどんよりと曇った。いやぁ、さすがに数年は隠し通せるなんてすごいと思いますけどね?私もつい最近は本当に気付かなかったし…。
「スミに置けないねぇ、コノエ大佐?」
「よしてくださいフラガ大佐。あなたはただ本当にブレーキ役に徹してほしい…」
「わかってますよ。さすがに俺も同情しちゃうしね…聞いたな、レディたち。俺の顔に免じて手加減してやってくれないか?」
「解っているわよ。ちゃんと手加減するわ」
さらにコノエ艦長が死んだような目をし、生気を失わせているわね…。
この場の男性はフラガ大佐とコノエ艦長だけで、他はすべて女性。シンは隠し事できないから論外として、他の男性クルーは意図的に外させてもらったわ。アグネスは謹慎がまだ解けていないし、ヒルダさんはそもそも興味ないって感じ。
シンの方も一応理由はあるわね、昇進と共に船を任せようという案が出ているから今のうちに艦長や副長の仕事を覚えさせようというプランが進んでいる。
今頃、シミュレーター室でアーサー副長に教わりながらシンも艦長としての経験を積んでいるわね。いささかアーサー副長は頼りないけど、教え方はうまいし理解しやすいから、シンでも勉強になるでしょ。

「えっくしっ」
「副長、大丈夫ですかー?」
「うぅ…風邪でも引いたかな。でも僕一応コーディネイターだし…」
「俺だってコーディネイターですけど、風邪くらい引きますよー」
「今日は暖かくして寝よ…。えっと、どこまで教えたっけ」
「こっからっすね。…俺的には突っ込んだ方が良いと思うんすけど」
「あのね、確かに船を突貫させる戦法はあるけど。あれは、略奪するに対して効率よく運搬させるための海賊のやり口だからね。
普通は砲撃やビーム砲と言ったので戦うのが基本だよ。…このミレニアムはそういった突貫・物理戦法を主体としたモデルだけど」
「へぇー」

しばらくして、フラガ大佐からストップがかかるまでコノエ艦長からしっぽりと洗いざらい話してもらうこととなったわ。
へぇ、副長ってば結構大胆なんだぁ…それに、コノエ艦長も。
「これで勘弁してくれるかい?これ以上はさすがに副長との誓約に反してしまうからね…」
うっすらと困ったようで悲しい笑みを浮かべるコノエ艦長。誓約って、なかなか穏やかではない言葉が出てきたわね。副長ってば、何を約束させたのかしら…気になるけど、これ以上は話してくれなさそう。
「副長には内緒にしてくれよ。頼む」
「あ、はい…」
艦長らしくないしおらしい態度に、私たちはそれ以上問い詰めることはしなかった。メイリンに至っては、ぽやーっと珍しく呆けている。
それもそうね、ミネルバ隊が結成されて以降、ずっと副長の近くに居たんだもの。
「アーサー副長がかぁ…。ちょっと寂しいかも」
「なに、そういった感情持ってたの?」
「ちがうよぉ。…んー、私いろいろと調べていたことが多かったから、時々やんわりと忠告されていたんだよね。抜け目ない人だなぁ、と思っていたの。たしかに、優しくてちょっと間抜けな部分、好きだったよ…。
でも、ずっと私たちを支えていたし汚れ役もやってきたし…なんだか、感慨深いかな」
「メイリン…。ん?ちょっと待ちなさい、あんた…色々調べてたって何?」
やば、とメイリンは口を滑らせたと言わんばかりの反応を示す。あんた、まだ私に隠し事しているってわけね…良い機会だから、今日はとことん絞ってやるんだから。
ともあれ、メイリンもアーサー副長のことを思っている。あれだけ近くに居て、雑談する機会もあったのだ…そういった感情を持つのには驚くことはないわね。

そっかぁ。アーサー副長、コノエ艦長と恋人同士なんだぁ。
良かった…。と、少しは荷が下りるって感じがした。
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