フリオの最も疲れる一夜


その日、フリオ改めキラはホスト生活で一番苦労した日として一生忘れることはなかった。

「あの人って本当にちゃらんぽらんでお坊っちゃま気質が抜けないんだから!ねえ、聞いてるわよねキラ君!」
「はい、聞いてますよフラg「今の!私は!マリュー•R•フラガじゃなくて、マリュー•ラミアスよ!名字で呼ばないで!ワインおかわり!」 はい、マリューさん。あと店で僕の本名を叫ばないでください…」

彼女は「マリュー•R•フラガ」。ちなみにミドルネームのRは旧姓のラミアス(RAMIUS)の頭文字である。
キラがインターンシップで行った会社のメカニックで、とてもお世話になり気が付いたらお互い名前で呼びあうようになっており、今でもキラとは交流を続けている。
そんな彼女がキラの店に来てこうも荒れているのには理由がある。
それは昨年結婚した彼女の夫がなんと十代後半位の女の子と仲良さげに買い物をしていた所を目撃してしまったことだった。しかももうすぐ結婚記念日が近いので彼へのプレゼントを買ってきたその帰りに。
当然マリューは激怒し、夫を問い詰めるも「これには理由が…」とか「彼女とはそういった関係じゃ…」といった浮気がバレた夫の決まり文句しか出ず、そんな態度にマリューの怒りはさらに爆発。
家を飛び出しブラブラと町を歩いていたら、開店前に店の玄関を掃き掃除してたキラに遭遇。まさかのホストをしてるキラに面食らうマリューだがキラはすぐに事情を話し納得。そしたら「せっかくなら接客させて貰おう」となんとそのまま来店。酒が入ると夫への不満が爆発して今に至ることになった。

「ホント、ホントにあの人は女の子が大好きだけど…私と付き合ってからは"そういったお付き合い"を少しずつ減らして私との時間を増やしてくれたのに…それなのに…それなのに!」
「落ち着いてくださいよ。僕が知る限り、あの人に限ってマリューさんを泣かせるようなことはしませんよ。もうすぐ結婚記念日なのに」

号泣するマリューを宥めるフリオ。ちなみに"あの人"とはマリューの夫のことである。今は名前を聞きたくないとのことなのでこうしてる

「グスッ、私たちの結婚記念日、キラ君よく覚えてるわねそんなこと」
「だって先日あの人から電話ありましたから。『なぁお前のお袋さんに、夫から貰ったら嬉しいプレゼントって何か聞いてくれないか?今度、ネオっていう親戚が経営してる養護施設の子と一緒に買い物に行くんだが、そこでマリューへの最高のプレゼントを用意したいんだ。』って」
「え、ムウがそんなことを?だったら私が問い詰めた時にその事を言えば…」
「よくある『サプライズで!』とか、『当日に渡したかった』とかじゃないんですかね?
ムウさん、『俺はおじさんだから若いマリューとセンスが違うだろうからな。若いお前らの力を貸してくれ!』って頼んできてたんですよ」
「おじさんって。それなら私はおばさんよ。全くムウったら本当にカッコつけたがりなんだから」
「ハイハイ、惚気ご馳走さまです」

照れるマリューに対して、プライベートでも親しい間ゆえに顧客三人に対して見せないちょっと雑な対応のフリオ。そんな彼の冷やかしにも見える態度にマリューは、ちょっとこらしめてやろうとある提案を思い付く

「ふーん、少し見ない間に随分と女のあしらい方が身に付いてるじゃない。うちの人にそっくり」
「いやいやさすがにムウさん程では…」
「どうだか?ねえ、この後アフターって大丈夫?」
「え、アフターですか?僕は今日はフリーでいつでもあがっていいとは言われてますけど…」
「よし、ムウと仲直りするためにもキラ君!あなたにはこれから仲裁役として私と同行して貰うわよ!お勘定お願いします!あと彼とのアフターも!」
「は、はい?」

こうしてフラガ夫妻の夫婦喧嘩の仲裁役となったフリオは着替えた後、そのまま二人の自宅へ連れて、そこでやけ酒に沈んでたムウから
「どこの誰だか知らんが俺の愛しいマリューから離れろコノヤロー!」
と襲いかかれることに。(ちなみに趣味で格闘技やってるマリューが守ってくれた)
そこから仲直りの立会人になったり、仲直りした二人とカラオケに行ったり、居酒屋梯子したり、酔いが回って野外で『愛のドッキング』をしようとする二人を止めたりと人生で最も疲れる一夜だった
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