春空の下で


春休み、今日は親子3人で嫁の実家に遊びに来た。
薄い雲がかかった青空と桜並木の下、嫁に抱き抱えられた娘は手を伸ばして、ヒラヒラと落ちてくる花弁を捕まえようとしている。
俺は2人から少し離れた場所で、彼女達の後ろ姿をスマホのカメラで撮影していたが、娘が嫁の手を離れて俺の元へ駆け寄ってきた。

「パパ!かたぐるま!」

どうやら娘は、もっと木の枝に近付けば花弁を掴めると思い、嫁より背の高い俺に目をつけたようだ。

「よいしょっと」

スマホを鞄にしまってから娘を肩に乗せる。
少し前まで腕の中にすっぽりおさまっていたのに、いつの間にかこんなに大きく重くなって、子供の成長は早いものだ。
きっと直ぐに肩車も出来なくなってしまうのだろうとしみじみ思っている最中、娘は宙を舞う花弁を掴むために体を激しく動かしていて、俺は娘を落とさないようバランスを取っていると、いつの間にか嫁が直ぐ近くまで来ていた。

「……とれた!」
「お、よかったなぁ、パパのおかげだ」
「パパありがとー!」
「どういたしまして」
「とったのあげる!」
「あいたぁ!!」

娘はいきなり俺の額を叩いた。
何事かと思っていると、嫁が笑いを堪えながらスマホ画面を見せてきた。
画面には俺の写真が写っているのだが、額の娘が叩いた箇所が赤くなっていて、そこに桜の花弁が張り付いている。

「……ありがとう、娘」

娘は善意でやったことだろうから、怒らずにお礼を言うと、娘は「どういたしましてー!」と頭に抱きついて来た。

「そろそろ移動するか、もう少し歩いたらお団子屋さんがあるからな」
「おだんご!」
「あんみつも美味しいよ」
「あんみつ!どっちもたべたいー!」
「流石に食べきれないだろ」
「じゃあパパとママで2つ頼むから、娘と半分こしてあげるね」
「やったー!」

俺は娘を肩車したまま、嫁は隣で、娘の鼻歌を聞きながら、桜の花弁で出来た薄紅色の絨毯の上を、再び歩き出した。


終わり
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