夜の森で
作成日時: 2022-10-11 04:58:17
公開終了: -
題名:夜の森で 作者:草壁ツノ
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<登場人物>
青年:不問 夜の森に住む青年。既に亡くなっており、亡霊のような存在。
少女:不問 夜の森に迷い込んだ少女。盲目。人間では無く、人や動物を生きたまま食べる。
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<役表>
青年:不問
少女:不問
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■注意点
特に無し
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■台本の規約について
過度なアドリブ×
一人称の変更×
作中のキャラクターの性別変更×
人数変更×
不問→演じる方自身の性別を問わない役、という意味
両声の方→男性が女性役、女性が男性役を演じる〇
(その際はほかの参加者の方に許可を貰った上でお願いします)
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※夜の森の中、真っ暗闇から一人の青年が姿を現す
青年:「――や、お嬢ちゃん。こんな辺鄙な所になんの用?」
女の子:「迷子!」
青年:「迷子の割には元気がいいね。どうやってここまで来たの?」
女の子:「灯りを目印に歩いていたら、ここに着いた」
青年:「そうか。たまに迷い込むんだよね、人間が。
でもね、ここは君のような女の子が来るような所じゃないよ。大人しく帰りなさい」
女の子:「帰りたいけど......」
青年:「けど、なに?」
女の子:「私、目が見えないの」
青年:「おやまぁ、それはそれは。
と言うより、目が見えない子がそんなふらふら出歩いたらダメでしょ」
女の子:「おっしゃるとおりです」
青年:「難しい言葉知ってるね」
女の子:「えへ。お兄さんは、ここの人?」
青年:「人、では無いかもしれないね」
女の子:「違うの?」
青年:「うん。僕は、ここに留まる怨念みたいなものだから」
女の子:「怨念?」
青年:「まぁ、ある意味だと君と同じ、迷子みたいなものだね」
女の子:「おんねんが、ここにおんねん!」
青年:「ハハ、つまんない事言うねキミ」
女の子:「えへ」
青年:「仕方ない、今日一晩はここに泊まりなよ。
明日の朝になったら、森の外まで案内してあげるから」
女の子:「お兄さん、いい人」
青年:「人じゃないってば」
※その夜
青年:「......おっと、いけない。眠ってた。
あれ、あの女の子、どこに行ったんだろう。探しに行くか。
おーい。女の子やーい、どこに行ったの?」
※女の子、暗闇の中で蹲り、なにか音を立てている
女の子:「じゅるじゅるじゅる......」
青年:「あ、居た居た。おーい、こんな夜の森、
君みたいなか弱い女の子が一人でいると危ないよ......」
※女の子、横たわる鹿の死体の肉に食らいついている
女の子:「じゅる......」
青年:「......あ、お食事中だった? ごめんね。邪魔しちゃって。
わぁ、凄い。鹿を丸かじりする女の子なんて、僕初めて見たよ」
女の子:「ぷは。お兄さんも、食べる?」
青年:「んーん。いいや、僕は食事とか必要無いから」
女の子:「美味しいのに」
青年:「僕はいいから、君一人で食べなよ」
女の子:「はぁい」
青年:「お嬢ちゃんはさ、いつからそんな風になっちゃったの?」
女の子:「むぉい?」
青年:「あ、ごめんね、食事中に」
女の子:「ごくん。ずっとこうだった」
青年:「そっか。お父さんとお母さんは、人間?」
女の子:「わかんない」
青年:「分かんないか」
女の子:「うん。だって、お父さんとお母さんは私が食べちゃったから」
青年:「......そっか。子供は食欲旺盛だものね」
女の子:「お兄さんは、お父さんとお母さんいる?」
青年:「......どうだろ。居たんじゃないかな。何十年か、何百年か前には」
女の子:「お兄さん、今なんさい?」
青年:「大人に年齢を軽々しく聞いたらいけないんだよ」
女の子:「そうなの?」
青年:「そうなの」
女の子:「そっかー」
青年:「記憶があるのは、二十三ぐらいまで。そこから先は、もう正確に覚えてないかな」
女の子:「すぐ忘れちゃうのは、おじさんなんだよ」
青年:「はは、年数だけで言えば、おじさんどころかお爺さんだよ」
女の子:「お兄さんは、どこか行かないの?」
青年:「行かない」
女の子:「ずっと?」
青年:「ずっと」
女の子:「そっかー」
※青年、腕についた手錠から伸びる、鎖を振る
青年:「......この鎖の音、聞こえる?」
女の子:「チャリチャリ鳴ってる」
青年:「僕はこの鎖でここに縛られてる。だからどこにも行かないし、どこにも行けない」
女の子:「可哀そう」
青年:「そうでもないよ。住めば都ってやつさ。
さ、食べ終わったら残りは土に埋めよう。虫が湧くからね」
女の子:「はぁい」
※翌朝
青年:「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん。朝だよ、起きて」
女の子:「......でっかい肉......」
青年:「ほら、しゃんとして。この近くに川があるから、顔洗っておいで」
女の子:「ふぁい......」
青年:「戻ってきたら森の出口まで案内するからね」
※二人して森を歩く、森の出口が近づいてくる
女の子:「明るくなってきた」
青年:「あとはこの道をまっすぐ進めば、森の外に出られる。
良かったね、元居た場所に帰れるよ」
女の子:「......」
青年:「どうしたの?」
女の子:「......お兄さんは行かないの?」
青年:「言ったろ。僕はここから離れられないって」
女の子:「......また会いに来てもいい?」
青年:「ダメ」
女の子:「どうして?」
青年:「僕は静かな方が好きなんだ。君みたいな子が毎回遊びに来たら、落ち着いて眠れない」
女の子:「やだ、遊びに来る」
青年:「強情だなぁ」
女の子:「......そうだ、お兄さん」
青年:「なに?」
女の子:「腕、出して」
青年:「腕? ......はい。出したけど、一体なにをするつもり」
※女の子、鎖にかじりつく。
女の子:「ばくん!」
青年:「あっ」
女の子:「ばり、ぼり......ごくん」
青年:「鎖が......」
女の子:「んん、口の中がザリザリする。変な味......」
青年:「どうして?」
女の子:「え?」
青年:「どうしてこんなことを?」
女の子:「お兄さん、どこかに行きたそうだったから」
青年:「え......」
女の子:「これで、どこにでも行けるでしょ?」
青年:「......そうだね。
ふふ、ずっとこの鎖が疎ましかったのに、
いざ手首がこんなに軽いと、なんだか落ち着かないな」
女の子:「?」
青年:「さ、僕のことはもういいから。早く行きなよ。
このままじゃ、もう一晩ここで夜を明かすことになるよ」
女の子:「分かった。ばいばい、お兄さん」
青年:「じゃあね、不思議な女の子」
<終>
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