勇者と魔王の娘事情


勇者♂
『テトル王国』からきた勇者。

メディ&友達♀
魔王の娘。

サタン&国王♂
魔王。パパ。



勇者 :
メディ&友人:
サタン&国王:

♂2♀1

利用規約

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サタンN:世界の破滅を目論む魔王の城へと勇者はやっとの思いで辿り着いた。
    魔王が従えし四天王を見事打ち破り、今魔王が居るとされる扉を勢い良く開け放つ!

勇者:うぉぉお!!魔王、覚悟ォォおおおッ!!!

バァン!(開)

メディ :キャッ!?と、突然何事!?

勇者:ん?この部屋に魔王はいないのか?魔王の代わりに人間が一人....

メディ:アンタ誰よ!?

勇者:何故ここに人間が....?まぁいい。
   ....お嬢さん、魔王はどこにいるか知っているか?

メディ:魔王....?あぁ、パパのことね。

勇者:パパ?魔王を....パパ!?

メディ:そうよ。私は魔王サタンの娘『メディ』

勇者:む、むすめ?魔王に娘がいたのか!?こ、これはなんと....

メディ:なにか問題でも?
    でも残念。ここまで来たのは称賛してあげるけど
    貴方をパパには会わせれないわ。

勇者:なんと....

メディ:さっさとそのお粗末な剣を仕舞って帰りなさい。
    今なら見逃してあげてもいいわよ?
    ....ちょっと聞いてるの!?

勇者:う、うつくしい....

メディ:え、あ、はぁ!?

勇者:貴女は美しい....

メディ:ちょっと!?
    私は人間なんか好きじゃないわ!

勇者:あなたは女神だ。オーマイマリア!

メディ:ちょっと地味に近づかないで!!燃やすわよ!

勇者:是非ッ!是非是非ッ!!是非是非是非ッ!!!

メディ:ひぃっ....なんなのよアンタ!気持ち悪いっ!

勇者:あぁその玉を転がすような声で詰られるのも悪くはない....
   申し遅れた。私は西の国『テトル王国』の....

メディ:王子?

勇者:いえ、王様の召使の下僕の友人の友人です。

メディ:ガクッ、ええぇぇぇ....勇者なのにぃ....?

勇者:このような危険な旅を王子様に担わせる訳にはいきません。
   ということで私が務めているのです。

メディ:ふ~ん。....なんだか他人任せな王国ね。
    普通こういうのは王子がするものだと思っていたわ。

勇者:今のご時世仕方がないのです....
   いやぁ、それにしても美しい!
   見れば見る程に、聞けば聞く程に....
   貴女は美貌の神そのもの....!

メディ:神って....私一応魔族なんだけど....

サタン:貴様ッ!
    今この娘を美しいと口にしたか!

勇者:ん?どこからともなく声が!

メディ:あー....まーた始まった....もう何度目よ....

サタン:美貌の神とも言ったな?

勇者:当然ッ!このような美しさ神に例えずとしてなんとする!!
   神、いや神すらも嫉妬の目を向けるに違いない!!

メディ:はぁ....

サタン:ではこの娘をきさ─────

メディ:パパッ!!

サタン:ビクッ!

勇者:ぱ、パパ?

サタン:なんだいメディ?
    せっかくパパが婿探しを手伝ってあげようとしたのに....

メディ:何度も言ってるけど
    私はパパに婿探しなんて頼んでいないでしょう!

勇者:その異形の姿、この肌がピリピリと軋む迫力....貴様が魔王『サタン』!!

サタン:あぁ、如何にも私が魔の王サタンだ。よくぞ来た娘の婿候補よ。

メディ:婿候補って....

勇者:貴様のせいで....我が国『テトル王国』は....ッ!!

サタン:テトル?テトルテトル....あの西の国の事か。

勇者:貴様のせいで平和になって闘争本能を忘れてしまったではないか!!!

メディ:....ん?それは良いんじゃないの?

勇者:我が国は過去に他国の侵攻を一度たりとも許したことがないまさに〝武の国〟!
   だが貴様によって闘争本能を剥奪された我が国はまるで抜け殻のように平和ボケに酔いつぶれ....
   いつしか他国から『虚栄国』と揶揄されるまでに....!
   なんとも嘆かわしい、憫然(ビンゼン)の極み。

メディ:えぇぇぇぇぇ....めんどくさい国だなぁ....
    人間達は平和を求めてるんじゃないのぉ?

サタン:ふむ....私はただその国一番の〝必要とする物〟を奪っただけなのだがなぁ....
    奪った私が言うのはなんだが....むしろ世間からすれば私は功労者なのではないのか?
    魔王が世界を貶めるどころか〝平和〟にするというのは....

勇者:我が国から奪った闘争本能を返せ魔王!
   黙って返さぬというのならば....

サタン:闘争を求める為に、その身をまた闘争に燻らせるとは....真(マコト)哀れな人間だ。

勇者:貴様を倒せば我が国はまたあの誉れ高き武の国と返り咲くのだァ!!
   うぉぉぉぉおおおおおお!!!

サタン:見ていられん、メディ。

メディ:えー私?あとでお小遣い頂戴ね!
    融解魔(ビストロェア)!

勇者:ぐぉッ!?あっ!あっつぁ!!?あつつつつつつっっ"っ"っ"!

サタン:流石私の娘だ。着々と力を付けている。

メディ:パパ、もういい?疲れるんだけどこの魔法。

サタン:ん、もういいぞ。ありがとうメディ。パパはお前の成長が見れてとても嬉しいぞ。

メディ:....パパ、そんなもん返しちゃえば?
    別に要らないでしょう?

サタン:しかしだなぁ....その『テトル王国』というのはパパの部下達を一番倒してる国なんだぞ?
    部下達からの目もあって...一応パパは統括官として─────

メディ:この部屋私の部屋なんですけど?さっき燃えた奴の服がちらばってんだけど?
    パパの命令のせいで汚れたんですけど!

サタン:ん、ここはパパの部屋じゃなかったか?

メディ:パパが模様替えとか言って私が居ない内に勝手に家具やらなんやら変えたんでしょ!!
    前の部屋は日当たりも風通しもよくて気に入ってたのに!
    私が文句いっても気分屋のパパは聞く耳持たないから我慢してたんでしょう!?

サタン:ごめんごめん!!謝るから!パパが悪かったからその怖い角引っ込めて!

メディ:母さんがいたら今頃パパ燃えてるよ。

サタン:母さんのことはいうな....

勇者:ハァハァ....もっと燃やして....って何だこの空気は。

サタン:ん、いや気にするな。....その、なんだ。
    闘争本能とやらを返して欲しいんだったな?むぐぐぐ....ハッ!
    ....今しがたお前の国に施していた呪いを解いてやったぞ。
    これでお前の国は元通りのはずだ。

勇者:何!?本当か!?戦っていないのに....その、あ、ありがとう....?
   それでその....どうかしたのか?

メディ:アンタに関係ないよ。用が済んだならとっとと帰りな。

勇者:いや....でも、帰るに帰れないというか....
   やはり名ばかりとはいえ勇者として....正義感的なものが疼いて....

サタン:....。

メディ:私の母さん、ウリエルに捕まったんだよ....そんだけの話。

サタン:メディ。

勇者:....ウリエルといえば大天使の異端審問官と聞くが
   まさか....召されたのか?

メディ:バカ、勝手に殺さないでよ、ただの飲酒浮遊運転よ。

勇者:....え?はい?い、飲酒浮遊運転....?え、ナニ、じゃあ生きてるの?

サタン:当たり前だ。たかだか飲酒して浮遊してたら捕まっただけだ。

勇者:へ、へ~、そ、そうなんですか....じゃあなんなんださっきの凍り付いた空気は....

サタン:その....母さんの大事にしていたお皿を私とメディが割ってしまってな....
    いつ帰ってきて怒鳴られるか怖くて怖くて....

メディ:あれはパパが悪い!

サタン:あれを勝手に使おうとしたメディが悪い!パパ悪くない!取り上げた拍子に落としてしまったんだ!
    あれは共犯だ!パパだけ怒られるのは理不尽だと主張するね!!

メディ:パパがそこの皿持ってきてっていうから!

サタン:その隣の皿を持って来てくれるとパパは思ったんだよ!

メディ:〝そこ〟じゃ分からないでしょ!

サタン:だったら聞けばよかったじゃないか!

メディ:うー!

サタン:ぐぬぬ....!

勇者:凄い団欒的会話で困惑。

メディ:てか!!さっきも言ったけど用事済んだんだから早く帰りなよ!

勇者:そ、そうだな!じ、じゃあ帰らせてもらうよ!

サタン:待て待て勇者よ!!

勇者:え、何ですか!?

サタン:お前は私に奪われた大切なものを取り返しに来たのだろう?

勇者:そうだ。そしてアンタはそれを返してくれた。後は帰るだけだ。
   事が穏便に済んで互いに何よりじゃないか?

サタン:ならば、お前はもうあの国には必要なくなったわけだ。

勇者:....は?

サタン:私が話すより実際に見聞きした方が速いか....この魔法の鏡を見ろ。

勇者:魔法の鏡?

サタン:覗いてみろお前の国だ。

勇者:こ、これは....王様と私を推薦した王様の召使の下僕の友人の友人じゃないか。


国王(サタン):ハッハッハッハ!見ろ!貴様の推薦した〝アレ〟のおかげで我が国に活気が戻った!!
       やはりこの国の闘争本能は素晴らしい!皆高らかに声を上げ始めたぞ!

友人:ははは!そうですね!

国王:〝アレ〟を推薦したお前には褒美として地位を与えよう!

友人:ハッ!過分な評価を感謝します!。


勇者:なんだ喜んでくれているじゃないか!私を〝アレ〟と称するのは聊か腑に落ちぬが
   王様は私にも彼と等しく地位をくれるだろう。

サタン:このあとだ。本性が滲み出る頃だろう。人間は醜き生き物だ、すぐに分かる。


国王:しかし、貴様のアレは生きてるのかのぉ?

友人:さぁ?昔から何をやらせても出来損ないでしたから
   コロッと死んでるんじゃないですかね?

国王:そう悪くを言うな、ま、そうかもしれんがな!!ハッハッハッハッ!

友人:それじゃあ〝アレ〟の骨を拾うだけの兵でも向かわせますか!!

国王:ハッハッハッハッハッ!



サタン:どうだ勇者よ?これを友と言うのか?

勇者:ぐぬぬぅ"....!!遺憾、私は憤怒を覚えたぞ!
   私はただの使い捨ての道具か!

メディ:人間なんてそんなものよ。期待する方が馬鹿を見るわ。

サタン:それでな、私の娘ももう今年で二百歳になる。
    人間で計算すると十七歳前後だろう。

メディ:え、ちょっとパパ!?

サタン:勇者よ。私の娘を貰わぬか?

勇者:....わ、私が....魔王の娘さんを?妻に迎える?

サタン:そうだ!もちろんタダとは言わん、世界の半分とこの城と人間界にいる全魔族の指揮権を譲ろう。
    ついでに寿命も娘と等しくしてやろう。

メディ:城あげたらパパどこに住むのよ!

サタン:魔界にある城にでも移動するさ。
    なぁにメディのためならばパパは城の一つや二つなんてどうでもいいのだよ。
    ここは拠点に過ぎんしなぁ

勇者:私が第二の魔王に....

サタン:あぁそうだ!悪い話ではなかろう。

メディ:ちょっと誰が勝手に!それに私は人間好きじゃないの!

サタン:何を言ってるんだ?お前昔から人間の男と結婚したいと言ってたじゃないか。

メディ:でもそれは子供の頃の話だし....

サタン:以前、魔界の貴族のベルゼブブを紹介したが嫌だ嫌だの一点張りだったじゃないか!

メディ :だってアイツ蝿の王じゃん!汚いじゃん!
    なんなのアイツの趣味!世界の未消化物博覧会巡りって!

サタン:いやだから、こうして人間の男をだな....?

メディ:で、でも四天王だって倒しちゃったじゃん!私達の仲間なのに!

サタン:あぁそれなら心配ない。
    奴等はもう生き返らしてある、奴等も審査員として勇者と戦っていたのだよ。

メディ:....なんですって?

サタン:いやはや見事全員口を揃えて認めるほどの実力だそうだぞ。
    たった独りでこの城に挑み四天王を打ち負かし、こうして帰る郷を失った勇者。
    人間の底を知った....哀れな男。きっと悍ましい程に立派な魔王へと成長することだろう。

メディ:え、えぇぇ....

勇者:私はどうすればいいのだ....

サタン:我が魔族の一員となるのだ〝元〟勇者よ!
    気にくわぬ国や世界など薙ぎ払ってしまえ!

勇者:....。

メディ:ち、ちょっとパパ....!

サタン:さぁどうする〝元〟勇者よ。

勇者:....します。

サタン:ん?

勇者:結婚します....!いえ、させてくださいお父様!!
   娘さんを私に下さい!

サタン:よく申した!快く承諾致そう!

メディ:ぇぇえええ"え"!!??



サタンN:後日、無事我が娘と結ばれた元テトル王国の勇者。
    彼は故郷であるテトル王国を、第二の魔王誕生の祝砲として滅ぼしたとさ
    めでたしめでたし

第二の魔王(勇者):人間共ォ"!目にものみせてくれるわぁあ"あ"!!

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